堀井憲一郎著『ホリイのずんずん調査 かって誰も調べなかった100の謎』(2013年8月文藝春秋発行)を読んだ。
どうでもいいこと、役に立たないことを、大真面目に調べて笑いをとるという奇書だ。
「週刊文春」に1995年4月から2011年6月まで連載の「ホリイのずんずん調査」792回から100本を抜粋。
当時の調査、そしてそれに対する今日のホリイさんのコメントが書かれている。
どんな調査かというと、
いきなり銀座の高級寿司店に行って寿司を食べるといくらかかるか。
吉野家の「つゆだく」が許せなくて154店食べ歩いた結果のまとめ。
「冷やし中華始めました」の告知はいつ貼りだされるか。(237軒電話調査で、4月中が1/3、GWには5割)
エスカレーターで右に立つのは大阪だけ。京都は右には立ちませぬ。
12月29日に投函しても年賀状が元旦に着くエリア着かないエリア(年末年始、毎日毎日年賀状を日本の複数箇所に送って、配達状況を調査)。
新書だけを書いて印税生活が可能なのか試算してみる。(赤字にならない限界の1.2万部、756円の一割で90万円で、年2冊で180万円ではキツイ。3万部で220万円、10万部で756万円。いずれにしても暮らしは厳しい。)
「柿ピー(ピーナツ入り柿の種)の黄金比率は柿6にピー4だった」
週間天気予報はまったく当たってない気がするんですけど。(7日後の雨を当てる可能性は3%)
小学4年生にもなってサンタを信じている5%の人々
“子”の付く名前の女子が半数を切ったのは1979年生まれから。
Vサインをテレビで初めて見せた日本人は「星一徹」。(1967年)
バブルの最中は誰も「バブル」と呼んでいなかった事実。(初めてそう呼ばれたのは1990年)
「OK牧場」がガッツ石松のものではないことを知っている世代。(境目は1970年生まれ)
こんな調子だが、苦労した調査は、
「郵便ポストの回収は表示時間通り来るか」で、九日間、台風の日もポストの横に立って、回収車が来るのを待っていた。結論としてはね・・・「だいたい時間通りに回収に来る」ですかねえ(笑)
「チョコボールを1021箱買ったら金のエンゼル1枚銀のエンゼルが64枚」(300箱買うと12kgになる。高田馬場周辺ではチョコボール空白地帯になった。
「4桁の暗証番号をどうやって決めたかを194人に教えてもらう」など、どうやって聞き出すのだろうか?
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
大真面目に大変な労力をかけて調査し、結果はたいして意味ない、そんなことを面白がる人にはお勧め。
全部読むと、時代の変遷を感じることもができる。
こんなコラムを17年も続けるなんてすごい。ご本人は、「体を張って『大変だった、大変だった』と見せるのが芸になったというかね。基本的に、邪道ですよねえ」
というのだが。
堀井憲一郎(ほりい・けんいちろう)
1958年生まれ。京都府出身。早大漫研出身。コラムニスト。キャッチフレーズは「何でも調べるフリーライター」。
1993年から2006年まで日本テレビ「TVおじゃマンボウ」に番組開始から終了まで出演。TBSラジオの出演歴も多い。
主な著書に『ねじれの国、日本』『いつだって大変な時代』『若者殺しの時代』『落語の国からのぞいてみれば』