都区内とはいえ外れとなると、けっこう畑が多い。住宅地にしては大そうな面積で野菜を育てていて、大部分は農協に収めているのだが、地元向けに小さな野菜販売所を設けているところもある。コインロッカーを設置しているところがあって、100円か、200円コインで小松菜、大根、ゆずなどが買える。
先日、200円にしては高いかなと思った大根。よく見ると、おつりの50円玉がテープで止めてあった。
都区内とはいえ外れとなると、けっこう畑が多い。住宅地にしては大そうな面積で野菜を育てていて、大部分は農協に収めているのだが、地元向けに小さな野菜販売所を設けているところもある。コインロッカーを設置しているところがあって、100円か、200円コインで小松菜、大根、ゆずなどが買える。
先日、200円にしては高いかなと思った大根。よく見ると、おつりの50円玉がテープで止めてあった。
東野圭吾著『予知夢』(2000年6月20日文藝春秋発行)を読んだ。
物理学者で通称ガリレオ先生とこ湯川学と、同級生の警視庁刑事の草薙俊平が活躍するガレリオシリーズの第2弾。
第一章 夢想る(ゆめみる)
森崎家に深夜、男が侵入したが、母親・由美子が猟銃を発砲した。侵入男坂本信彦は逃走途中で死亡ひき逃げ事故を起こし、逮捕された。坂本は娘礼美からの招待状を受け取ったと示し、さらに「この家に住む女性 "モリサキレミ" と17年前から結ばれる運命にあった」と供述。調べてみると、小学校時代の文集などに"モリサキレミ"と書かれていた。17年前には礼美本人は生まれていなかった。「予知夢」としか考えられず、草薙刑事はガリレオ先生湯川の元を訪ね、湯川は調査し、推理を進める。
第二章 霊視る(みえる)
深夜、マンションの自室で長井清美が扼殺され、同じ店のホステス織田不二子が発見し、階段を逃走する男を目撃した。逮捕された小杉浩一は、犯行を認めた。しかし、殺害と同時刻、小杉の友人で、密かに清美と付き合っていた細谷が、窓の外の清美の姿を目撃していた。オカルト事件になってしまうと危惧した草薙は湯川に助けを求める。
第三章 騒霊ぐ(さわぐ)
草薙は姉・森下百合から神崎弥生の夫俊之が行方不明になり、たびたび通っていた老女高野ヒデも最近亡くなった聞いた。その後、高野に家を見張っていた弥生から、甥夫婦達、4人が毎日夜8時になると家を出ると連作を受けた。草薙は彼らを尾行したが、そのまま家に戻ってきた。その間、家の前にいた弥生は「家の中から物音が聞こえる」という。俊之は監禁されているのか? 草薙は湯川を訪ね‥‥。
第四章 絞殺る(しめる)
矢島忠昭がホテルで絞殺された。しかし、ベッド横のカーペットに焦げ跡があり、紐の絞め痕に皮膚の擦り切れがあったことから草薙は、現場に湯川を呼ぶ。多額の生命保険にかけられていたが、妻の貴子のアリバイは完璧だった。しかし、その家を訪ねた草薙に娘・秋穂は、「事件前日に火の玉を見た」と聞いた。湯川の第十三研究室でトリックを解く実験が行われた。
第五章・予知る(しる)
菅原直樹は瀬戸富由子と不倫をしていたが、キャリアウーマンで魔性の女でもある富由子は直樹の向かいのマンションに引っ越してきて、直樹の生活を覗いていた。富由子は直樹に電話をかけ、「奥さんと別れなければ覚悟がある」といいながら、首を吊るところを見せつけた。
しかし、直樹の隣の部屋に住む少女が「事件の2、3日前、夜中に目が覚めてカーテンを開けると、女性が首を吊るのを見て、気を失ってしまった。しかし、その女性は翌日、ベランダで楽しそうに電話をしていた」と語る。少女が自殺を予知していたと報告書に書くわけにもいかず、草薙は強引に湯川を捜査に引っ張り込む。
直樹の妻静子は実は夫の不倫に感づいている。また、直樹の後輩の峰村英和にも秘密があった。
初出誌は『オール読物』の、「夢想る」は1998年11月号、「霊視る」は1999年2月号、「騒霊る」は1999年4月号、「絞殺る」は1999年9月号、「予知る」は2000年1月号。
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
短編集なのですいすい読めて読みやすい。しかし、読み終わって、なるほどねと思うが、それだけで終わってしまう。また、5編も並ぶと同じパターンを感じて、安心して読み進めることができる反面、マンネリ感が漂う。
前回「小石川後楽園へ(1)」に続く第2回。
北東の端に「藤田東湖の記念碑」がある。水戸藩士・藤田東湖は藩主斉昭の信任あつく、水戸上屋敷に居たが、安政大地震で藩邸が瓦解し、老母をかばって鴨居に下敷きになり、圧死した。藩邸のあった白山通りにこれをたたえた「藤田東湖護母致命」の碑があったが、のちに後楽園へ移設された。
北西は小高い丘になっていて、急な坂を上ると、八卦堂跡がある。
京都の愛宕山にちなんだ47段の愛宕坂。
上から見て、
下から見て。
ちなみに、上り下りはできません。急すぎて、しない方が良いし。
花菖蒲田の向こうに九八屋。
水面に映り、満月のような円月橋。当時のままといわれている。
淡いグラデーションが美しい紅葉。
大泉水の縁に立つ「一つ松」。
西側のエリア。京都嵐山の大堤川。
渡月橋の途中から、西湖の堤がのびる。
小石川後楽園を大きく一周して、楽しんだ。7万平米は広く、くたびれる。
おまけ。帰り道、都営大江戸線飯田橋駅C3。中央・城西職業能力開発センタの裏側になるのだが、何?
東京および近郊に70有余年、天下の名園、小石川後楽園へ行ったことがなかった。
突如、決意し、紅葉にはまだ早いとはわかっていたが、断行。というほどではないが。
11月21日、飯田橋駅東口から約10分。唯一の出入口である西門へ。
小石川後楽園は、水戸徳川家の始祖頼房が、中屋敷(後に上屋敷)の造り、二代藩主の光圀の代に完成した。現在は国の特別史跡および特別名勝に指定された都立公園で、約7万平米ある。その名は、范仲えんの「岳陽楼記」にある「天下の憂いに先じて憂い、天下の楽しみに後れて楽しむ」からとられた。
入ってすぐ、借景に驚く。東側には、左手に文京区役所、真ん中にド~ンと東京ドーム、右手に東京ドームホテル。
大泉水の中に浮かぶ蓬莱島の向こうにも東京ドーム。まるでドーム見学に来たようだ。
大泉水の周りを時計と反対方向に回ってみる。紅葉はまだまだ。12月上旬か?
西行堂跡の看板
階段を登ってみたが、ただ、西行法師の木像が安置されていた堂の跡だけ。
蓬莱島の北側には、これも見事な借景、左手に中央大学、右手が文京区役所。
林の中の小径を進む。龍田川や木曽川とあり、都心なのにまるで深山幽谷(?)。
やがて、内庭へ。ここが水戸藩の書院のあったいわばメイン。大泉水側は「後園」とよばれていた。
東屋で休憩と登ってみたが、座るところなし。
見事な枝ぶりの松。
蓬莱島には渡れない。
大泉水に映る景色。紅葉の盛りには水もと合わせて2倍楽しめそうだ。
江戸時代の風流な酒亭(復元)の「九八屋(くはちや)」。
看板には、「酒を飲むには昼は九分、夜は八分と、何事にも控え目に」とあったが、昼から九分で控え目??
長くなったので、後は次回。
白川優子著『紛争地の看護師』(2018年7月11日小学館発行)を読んだ。
「国境なき医師団(MSF)」は、独立・中立・公平な立場で医療・人道援助活動を行う民間・非営利の鉱区再団体。1971年設立。活動資金はほとんどを民間からの寄付でまかなっている。白川優子さんは、MSFの看護師。
この本には紛争地での医療活動がいかに危険で、困難な環境にあるかが、多く語られている。この点については、是非この本を読んでいただきたい。以下では目次のみ書き記す。
第一章「イスラム国」の現場から ─モスル&ラッカ編─
第二章 看護師になる ─日本&オーストラリア編─
第三章 病院は戦場だった ─シリア前編─
第四章 医療では戦争を止められない ─シリア後編─
第五章15万人が難民となった瞬間 ─南スーダン編─
第六章 現場復帰と失恋と ─イエメン編─
第七章 世界一巨大な監獄で考えたこと ─パレスチナ&イスラエル編─
「広大な農場も水道のシステムを破壊されたために荒廃している。工場も同様だ。電気の供給が機能せず、ガザでは電気をイスラエルから買わなくてはならないという屈辱的な仕組みが出来上がってしまった。……
屈辱感、従属感を与え続けるのもイスラエルの政策なのだろう」
最終章 戦争に生きる子供たち
口絵に小さいながらカラー写真が30枚掲載されていて、本文を読んだ後で見ると、実状が分かりやすい。しかし、悲惨な状況でなく、スタッフや現地の人の笑顔の写真が多いのでほっとする。
私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき)(最大は五つ星)
あらためて、戦争ほどばかげたものはないと思った。とくに内戦は無意味だ。いかにシリアの現政権が独裁的で無慈悲であっても、内戦はより酷い状況に国民を陥れる。じっと耐えて時を待つ方が良いと思ってしまう。
帰国時のテルアビブの空港の出国審査は残酷だった。パレスチナ支援関係者への嫌がらせだった。真っ裸にされ、渡航した国での接触した人の詳細、連絡先をしつこく質問された。部屋の外には荷物が散乱し、家族へのお土産の包装紙は破られ、財布内のレシート1枚まで取り出されていた。
しかし、白川さんは書いている。
「私が受けた嫌がらせと屈辱は、パレスチナ人がうけているものの比にならない。だけどこの時は、ここまでしなくてはならないほど追い込まれてしまったユダヤ人にたいする同情の涙も混じっていた。」
ただただイスラエルの暴虐に怒るだけの私に比べ、白川さんのやさしさにはあきれ果てるしかない。過酷な紛争地へ飛び込む勇敢な心と、敵を思いやる優しい心は同居できるのだ。
白川優子(しらかわ・ゆうこ)
1973年、埼玉県出身。坂戸鶴ヶ島医師会立看護専門学校卒。Australian Catholic Unibersity(看護科)卒。
日本とオーストラリアで看護師経験を積み、2010年「国境なき医師団」に参加。
シリア、イエメン、イラク、南スーダン、パレスチナなど、紛争地に派遣。
2018年6月、17回目の派遣先イラク・モスルに出発。
以下メモ
第1章「イスラム国」の現場から ─モスル&ラッカ編─
2016年10月モスル奪還作戦開始直後にイラク第二の都市モスルに入った。クルド人自治政府内に巨大なテント病院を設置。
ISは残酷だ。指の匂いを嗅がれ、タバコの匂いがすると、その場で指を切り落とされる。携帯電話所持はスパイ容疑で斬首されたという。
地雷で右足を切断した女性は、痛さでなく恐怖でいつも叫んでいた。傷は治せても、心理療法士、義肢装具士、理学療法士、そして帰る家がない。
外気温は50度、冷房がない。私の辛さには帰国という終りがあるが、もっとつらいシリア人には終りがない。
第二章 看護師になる ─日本&オーストラリア編─
オーストラリアで看護師の資格を得て、就職し、収入も安定し、永住権も取得した。しかし、すべてを捨てて帰国し、37歳で目的だったMSFへ参加登録した。
第三章 病院は戦場だった ─シリア前編─
デモから始まったシリアの騒乱は、政権側がデモを起こす市民に銃を向けたことで内戦になった。ケガした市民は病院に運ばれるが、政権側は病院でデモ参加者を逮捕し、やがて医師たちも逮捕されるようになった。政権側がMSFなどの病院を爆撃することがあるのはこのためだ。秘密にしていたMSFの拠点をネットニュースに報じられてしまい、翌日空爆された。
第四章 医療では戦争を止められない ─シリア後編─
MSFの現場では輸血用血液不足は深刻な問題だった。しかし、シリアの現場では一般市民の自発的献血で十分確保できた。
第五章15万人が難民となった瞬間 ─南スーダン編─
紛争地の活動でよく言われる言葉。
「怖いと思うものは帰国した方がよい。ただし怖さに麻痺してしまった者は一番に帰国させなくてはならない」
第六章 現場復帰と失恋と ─イエメン編─
第七章 世界一巨大な監獄で考えたこと ─パレスチナ&イスラエル編─
「2014年、激しい空爆が51日間続いた。現在一ヶ月に1、2回の頻度で起こる単発の空爆は」話題にもあがらない。
「広大な農場も水道のシステムを破壊されたために荒廃している。工場も同様だ。電気の供給が機能せず、ガザでは電気をイスラエルから買わなくてはならないという屈辱的な仕組みが出来上がってしまった。……
屈辱感、従属感を与え続けるのもイスラエルの政策なのだろう」
国際連合パレスチナ難民救済事業機関が無料で小中学校教育を提供し、教育レベルは高い。ガザには大学だけでも8つあるが、卒業したとたんに行き場がなくなってしまう。
最終章 戦争に生きる子供たち
誤植
国連墓地→国連基地 p164の 2行目 初版
ピーター・スワンソン著、務台夏子訳『そしてミランダを殺す』(創元推理文庫 Mす16-1、2018年2月23日)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
実業家のテッドは空港のバーで見知らぬ美女リリーに出会う。彼は酔った勢いで、妻のミランダの浮気を知ったことを話し「妻を殺したい」と言ってしまう。リリーはミランダは殺されて当然だと断言し、協力を申し出る。だが殺人計画が具体化され決行の日が近づいたとき、予想外の事件が……。男女4人のモノローグで、殺す者と殺される者、追う者と追われる者の攻防を描く傑作ミステリ!
偶然出会った見知らぬ二人が殺人計画を相談するという、出だしから予想を裏切る展開だ。
第一部 空港バーのルール、第二部 未完成の家、第三部 死体をうまく隠すの三部構成で、34章の半分(偶数章)がリリーの一人称で語られ、奇数章で殺人が現在進行し、偶数章では少女時代からのリリーの秘められた過去が語られる。
登場人物
リリー・キントナー:ウィンズロー大学の文書保管員。美人だが常に冷静で恐怖感情を持たないサイコパス。
テッド・セヴァ―ソン:実業家、大金持ち。ボストン在住だが、ケネウィック・インに豪邸建築中。
ミランダ・セヴァ―ソン:テッドの妻。豪邸建設に専念。大学時代にリリーと張り合った。
ブラッド・ダゲット:工事業者。いかつい離婚男。
シドニー(シド):貸し馬亭のバーテンダー
ポリー・グリーニア:ブラッドの恋人
ディヴィッド・キントナー:リリーの父。イギリスの小説家。大きく古いモンクス・ハウスに住む。
シャロン・ヘンダーソン:リリーの母。抽象芸術家
チェット:リリーが14歳の時、母が家に連れ込んだ画家。
エリック・ウオッシュバーン:最初フェイスの恋人で、リリーが奪い、奪い返され、そして……。
フェイス:エリックと同学年の女子学生
ヘンリー・キンボール:ボストン市警の刑事
ロバータ・ジェイムズ:ボストン市警の刑事。キンボールの相棒
原題は、”The Kind Worth Killing” (殺されて当然の者たち)で、2015年刊行。
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
なかなかスリリングな展開で、次が予想できないまま読み続ける羽目になる。だが、各殺人の犯人ははっきりしていて、誰が犯人かという推理は存在しない。どのように殺すのか、どちらが殺すのかなどでハラハラするという話になっている。
湿っぽいところがないので、残酷な殺人もさらりと読める。そしていつの間にかサイコパスの味方になっている自分に気づく。
主な登場人物はすべて悪者で、しかも次々とバタバタ死んでいく。そして、最後には、あの「太陽がいっぱい」のアランドロンのように、その運命を暗示、いや明示させる終わり方となる。
ピーター・スワンソン Peter Swanson
アメリカ、マサチューセッツ出身。コネチカット州のトリニティ・カレッジ、マサチューセッツ大学アマースト校、エマーソン・カレッジに学ぶ。2014年に『時計仕掛けの恋人』でデビュー。2015年に刊行された第二長編となる『そしてミランダを殺す』は、英国推理作家協会(CWA)賞のイアン・フレミング・スチールダガー部門で最終候補となった。その他の著作にHer Every Fear(2017)がある。現在はマサチューセッツ州サマーヴィルで妻や猫と暮らす。
務台夏子(むたい・なつこ)
会社勤め七年、アルバイトと下訳の生活約五年のすえ、翻訳専業に。
訳書:オコンネル『クリスマスに少女は還る』、デュ・モーリア『鳥』『いま見てはいけない』『人形』(いずれも東京創元社刊)など。
好きな小説家:いまはとにかくピーター・スワンソンに夢中。また、タイプはぜんぜんちがう作家ですが、Allen Eskens という人の作品を追いかけて読んでいます。さらに、デュ・モーリアの長編のなかに数点、翻訳をめざしている好きな作品があります。
読めない漢字
杳(よう)としてつかめない
香山リカ(かやま・りか)
1960年北海道生まれ。東京医科大学卒。精神科医として臨床に携わりながら、立教大学教授などを歴任。
学生時代から雑誌などに寄稿。その後も、臨床経験を生かして、新聞、雑誌などの各メディアで、社会批評、文化批評、書評など幅広く活躍。2022年北海道むかわ町国民健康保険穂別診療所に総合診察医として着任。
本名は中塚尚子。ミュージシャン・フリーライター・歯科医の中塚圭骸は弟。
『弱い自分を好きになる本』『しがみつかない生き方』『だましだまし生きるのも悪くない』『人生の法則』『できることを少しずつ』
『若者のホンネ』『がちナショナリズム』『半知性主義でいこう 戦争ができる国の新しい生き方』『リベラルですが、何か?』『ソーシャルメディアの何が気持ち悪いのか』
『おとなの男の心理学』『女はみんな『うつ』になる』『ノンママという生き方 ~子のない女はダメですか?~』
『精神科医ですがわりと人間が苦手です』『親子という病』『いまどきの常識』『新型出生前診断と「命の選択」』『「発達障害」と言いたがる人たち』『61歳で大学教授やめて、北海道で「へき地」のお医者さんはじめました』 『精神科医はへき地医療で”使いもの”になるのか?』
『<雅子さま>はあなたと一緒に泣いている』『雅子さまと新型うつ』『女性の定年後』『皇室女子』
共著 北原みのりと共著『フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか』、佐藤優との共著『不条理を生きるチカラ』
香山リカ著『「発達障害」と言いたがる人たち』(SB新書437、2018年6月15日SBクリエイティブ発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
「あなたは発達障害です」と言ってほしい人たちがいる。誤解を避けるために言っておくと、私は、実際に発達障害と診断を受けながら生活している人やその家族、その医療に携わる人たちや支援する人たちを批判するつもりはまったくない。そうではなく、その可能性は低いのに、「私は発達障害かも」と思う人が増えているという、医療の問題というより社会的な現象について取り上げ、その原因などを考えてみたい、というのが本書の目的だ。
「私、発達障害じゃないんでしょうか?」と香山さんの診察室を訪れる人が多くなってきた。話を聞いてから「障害の可能性は低い」と告げると、がっかりする。自分が思うとおりに整理整頓や書類の提出ができないのは「自分のやる気や性格のせいではなくて、障害のせい」と思いたがり、「何か特別な自分」でいたいと願っている。
ごく軽度な発達障害や、特殊な才能に恵まれた発達障害の人に注目が集まりすぎているため、重度の発達障害患者はなかなか理解を得られない。
また、言葉では対話できない発達障害の人も脳内ではさまざまなことを考えていて、それが表現できないだけだという例も示され(東田直樹著『自閉症の僕が飛び跳ねる理由 会話のできない中学生がつづる内なる心』)ていて、まだまだ分かっていないことが多い。
発達障害は「脳の発達の障害」だが、「どこに問題があるかは見えない」、「生まれつき」だあり「しつけやストレスは関係ない」。
発達障害による機能障害の代表例は、「人ともコミュニケーションがうまく取れない」「まわりの空気が読めず、暗黙のルールが守れない」「一つのことにこだわってやめられない」「注意や集中、関心を保てない」「落ち着きがなくミスが多い」「ほかのことは問題なくできるのに計算だけがあまりにもできない」など。
2012年の文部省の全国調査では、通常クラスの生徒の約6.5%。特別支援教育を受けているのはこのほかに約2.9%。
発達障害の分類は進化中で混乱ぎみ。
「自閉症スペクトラム」の中に、より重篤な「自閉症」とより軽度な「アスペルガー症候群」があり、この他これらと重なることもある「注意欠如・多動性障害(AD/HD)」と「学習障害(LD)」がある。ただし、最近の分類ではアスペルガーという名前は消えている。
私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの?)(最大は五つ星)
発達障害の解説本ではなく、社会現象の分析本でもない。「私って発達障害じゃないかと思っているんです」と半分自慢気に話す人が多いことに気が付いて、ちょっと書いてみました本だ。最近の香山さん、筆が荒れている。安倍晋三氏にまた「香山氏は論外!」って言われそう。
10月中旬に届いた花。
ともかく、ユリ(LAリリー)4本が豪華だ。
2日後には6輪になって、
近くで見るとまた豪華。でも、めしべの花粉がテーブルに落ちて往生する。
毎朝の水の取り換えに加え、花粉の処理が大変だ。
10月下旬の花。
カーネーションの小、スプレーカーネーションと、普通のカーネーション。
ドラセナが目立たないので拡大
10月30日には
遅れに遅れたが、今回は2018年9月の花。
9月14日に届けられた花は、
ワレモコウが小さい、こんな小さかったっけ? 吾亦紅って書くと、なにか意味深。確か歌があった。
9月28日に届いた花は、
リンドウの青が濃い。
室生犀星著『現代語訳 蜻蛉日記』(岩波現代文庫B225、2013年8月20日岩波書店発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
『蜻蛉日記』は、大政治家の藤原兼家の妻として、波瀾に富んだ生涯を送った道綱母が、その半生を書き綴った王朝女流文学の代表作。結婚生活の苦しみ、夫兼家とその愛人たちへの愛憎の情念が、流麗にして写実的な筆致で描かれる。作品中の和歌は、一段の精彩を放っている。韻文と散文が互いに交響することで、物語に独特の陰翳を与えている。室生犀星の味わい深い現代語訳により、日本古典文学の豊穣な世界に、現代の読者を誘う。(解説=久保田 淳)
藤原道綱母は摂政関白にまでなった藤原兼家の妻の一人で、975年頃に書かれた。人の細かい心の動きを描き、『源氏物語』などに影響を与えた。
また、当代の一流の歌人の一人とされた道綱母などによる約120首の和歌は,韻文と散文が交互に混じりあい、独特の物語を紡ぎだしている。
夫兼家とその愛人たちへの憎しみ、嫉妬に苦しむ。
兼家がちょっと用があるのでと言って出ていくので、跡をつけさせたら、別の女の家だった。数日後、門をたたくので、くやしいのであけさせないと、女の家へ行ってしまった。朝になってそのままにしておくのも気になるので、
嘆きつつほとりぬる夜のあくる間はいかに久しきものとかは知る
といつもより少しつくろった字で書いて、色あせた菊にさして持たせてやった。
寂しい晩年に期待した子供(藤原道綱)は、正妻時姫の子、道隆,道兼,道長が栄華を極めたのに対し、結局一地方官で終わる。
巻頭に「蜻蛉日記関係系図」があり、解り易い。というか、これがないとごちゃごちゃになりわからない。
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
あれほど熱心に自分の所に通っていた兼家がぱったり姿を見せない。毎日イライラと待っていたくせに、突然の久しぶりの訪問に、意地を張って戸を開けなかったり、返歌を返さなかったりする。本妻の他に別の女もいるんだから、しょうがないじゃないかと思うが、面倒くさい女なのだ。「巻の下」になってようやく悟りの気持ちが出てきている。
でも、美人で、歌の才能が抜群で、兼家はなんだかんだと忘れた頃に訪れたり、歌をよこしたり、世話をやく。肝心な時にはけっこうこまめだったり、ご無沙汰でもずうずうしく平気な顔で訪れ、戯れかかったりする。さすが、関白太政大臣に上り詰めた男だ。と感心したりして。
でも、結局後世に名を残したのは、兼家より、道綱母ということなのだ。芸術は強し。
それにしても、今も女と男の関係は変わらないことにあらためて驚く。さらに、1000年以上前にここまであからさまに自分の気持ちを書き記した日記があったことに驚き、誇らしく思う。歌が貴族の生活に密着したものであったとわかるし、私には評価できないのだが、優れているという歌が生まれた詳細な経緯が分かることも素晴らしい。
室生犀星(むろう・さいせい)
1889‐1962年。石川県金沢市生まれ。詩人・小説家
詩集に『抒情小曲集』、小説に『杏っ子』、句集『犀星発句集』など。
室生犀星は,この本を書いた後、綱母が敵視・蔑視する「賤の女」「町の小路の女」主人公をにした『かげろうの日記遺文』(1959年)を書いた。
約220年の歴史を誇る「永坂更科本店 布屋太兵衛」麻布総本店でランチした。麻布十番の豆源本店で買物して時間調整したのだが、11時まで店の前で立ちんぼう。
私は、野菜天ぷらそばで、
相方は、とろろそば
この店は昔「元祖更科」と名乗っていたのだが、裁判になって、現在の店名に落ち着いた。
墓参りの後の定番の店で、もうおそらく70年近く利用しているだろう。
柚月裕子著『検事の本懐』(宝島文庫C-ゆ-1-4、2012年11月20日宝島社発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
骨太の人間ドラマと巧緻なミステリー的興趣が見事に融合した連作短編集。県警上層部に渦巻く男の嫉妬が、連続放火事件に隠された真相を歪める「樹を見る」。東京地検特捜部を舞台に“検察の正義”と“己の信義”の狭間でもがく「拳を握る」。横領弁護士の汚名を着てまで、恩義を守り抜いて死んだ男の真情を描く「本懐を知る」など、全五話。第25回山本周五郎賞ノミネート作品。待望の文庫化。
『最後の証人』に出てきたヤメ検弁護士佐方貞人の検事時代を描く5編からなるオムニバス。
「樹を見る」
連続放火事件は17件も続き、犯人への手がかりがつかめず、米崎東警察署所長の南場は会議などで、警察学校同期で、試験の成績や身体能力で劣る刑事部長・佐野にいじめられる。真面目だが不器用な南場に対し、佐野は巧みに県警本部長・小林にとりいり、南場が成果を上げるのを妨害する。
複数の火災現場の写真から新井という男が浮び、南場は家宅捜査令状(ガサ状)請求に、直接米崎地検に行き、地検刑事部副部長の筒井から担当の任官3年目の佐方貞人に紹介される。そして、13件目だけが問題となる。
「罪を押す」
皺くちゃワイシャツ、よれよれスーツ、ぼさぼさ髪の佐方が筒井のところに赴任し、相棒となる事務官の増田を紹介される。さっそく、累犯者・小野が起こした単純な窃盗事件の裏を探る
「恩を返す」
高校時代の同級生・天根弥生のために悪徳警官・勝野と佐方が対峙
「拳を握る」
山口地検から中経事業団疑獄事件の東京地検特捜部に応援に出た事務官の加東は、佐方と組むことになる。特捜主任刑事・竹居、特捜部長・近田、副部長・輪泉らが検察の正義のため、参考人・葛巻を探し出し、供述とれと命ずる。佐方は徹底した調査の末、求められる証言が事実ではないと確信し、……。
「本懐を知る」
ニュース週刊誌の専属ライター。兼先は、ネタに困っていたとき、10年以上前に弁護士なのに起訴猶予にもならず実刑を食らった弁護士がいたことを思い出した。業務上横領で逮捕された弁護士は佐方陽世、佐方の父親だ。小田島建設の創業者・隆一郎が死去後、遺産管理していた陽世が5千万円を横領したことが発覚した。金は返却したが、陽世は黙秘を貫き、控訴もせずに服役し、獄中で病死した。兼先はこの謎を追い続ける。
本作品は、」2011年11月宝島社から刊行した単行本を文庫化し、加筆修正したもの。
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
謎解きの要素はあまりないが、警察内部の男社会の醜い争いや、恩義に報いるため職業倫理を曲げて、そのことから自らに罰を課すという感涙ものの男の矜持などは見事に描けている。
この小説では、佐方が、筋を絶対に曲げず、突っ張り続ける不愛想なだけの男として描かれているので、後にヤメ検弁護士として登場する『最後の証人』での優しく、情けある男としての面が出てこない。
池上冬樹の解説にあるのだが、唯川恵は「巧い小説だと思った」「主人公の佐方という検事を、さまざまな角度から描いて彼の人物像を浮かび上がらせる手法は、とても成功していると思う」と評していて、池上は、「主人公なのに脇役のように途中から出てきたり、第三者が回想で語ったりと変化をもたせているからである」と書いている。
解説を書いている池上冬樹は、「小説家になろう講座」の講師で、受講生だった柚月裕子のエピソードを紹介している。
柚月裕子は、東日本大震災で宮古の両親を亡くし、遺体を探して山形から岩手に通う日々だった。最後の三作はこの過酷な状況下で書き下ろされたという。残骸の中から父を腕時計を発見し、修理に出してみたら奇跡的に動き出した。彼女は改まった席にはこの時計を腕にはめていくという。
放火:アカウマ、放火魔:アカネコ、現行犯逮捕:ゲンタイ、警察官:サツカン、
秋霜烈日(しゅんそうれつじつ)のバッジ: 検察官のバッチは,紅色の旭日に菊の白い花弁と金色の葉があしらわれており、霜と夏の厳しい日差し(秋霜烈日)のように、刑罰や志操の厳しさを理想とする厳正な検事の職務を表すバッジ。(法務省HP)
「かわいそうだは、惚れたってことだ」太宰治の小説の中のセリフ。
今日は珍しく一人ランチ。相方が辛さが苦手なので、かねて念願の、いやそうでなく、やむを得ず一人で寂しく、辛そうな店、吉祥寺・末広通り「蒙古タンメン 中本」に入った。
「中本」は上板橋を発祥とし、現在20以上の店舗を東京および近辺に展開する、辛さ0から10までのタンメン、ラーメンを主体としする店だ。
券売機の二番目に、一番人気の「蒙古タンメン」があり、これにしようと思ったのだが、「辛5」とあり、ビビっり、軟弱にも「辛3」とある一番目の「味噌タンメン」780円を選択。
12時になると、カウンターの後ろの待ち席にも何人か座る。二人の料理人は手際よく作り続け、サーブする女性は元気よい声をだす。
確かに辛いが口の中が火のようではない。具も各種野菜、きくらげ、豚肉2切などたっぷり。麺は断面が丸く、麺としての味がある。量も年寄にはたっぷりで、ご満足。
やむを得ず、一人のときはここにしようかな?
伊坂幸太郎著『AX(アックス)』(2017年7月28日KADOKAWA発行)を読んだ。
殺し屋・兜を主人公とした、『AX』『BEE』『Crayon』『EXIT』『FINE』5編からなる連作短編集。
「兜」は超一流の殺し屋だが、家族は文具メーカーの平凡な営業マンだと信じている。戦えば無敵の「兜」も家では妻に頭が上がらない。常に妻の機嫌に気を付けていて、すぐ妻に追従する。口答えなぞんてとんでもない。一人息子の克巳もあきれるほどだ。夜帰って来てからも妻を起こさないようにし、食べるものも音がしない魚肉ソーセージに限定している。
兜は克巳が生まれた頃からこの仕事を辞めたいと思っていたが、仲介役の医師はなかなか辞めさせてくれない。そして、次々危険が迫る。
兜:名前は「三宅」で、40代半ば。驚異的身体能力で同業者も圧倒する超一流の殺し屋だが、常に妻にビクビクしている恐妻家。普段は文具メーカーのベテラン営業社員。他人の感情をくみ取ることが苦手。
妻:兜の妻で共働き。夜遅く帰宅した兜の物音で目が覚めてしまった妻が、翌朝「うるさくて、まるで眠れなかった」とついた溜め息が積もって、床が見えなくなり、兜は息が苦しくなる。
克巳:兜の一人息子。第一話では大学受験を控えた高校生。危機に陥った父を助け家庭の平和を守る。
医師:診療所の医師で兜の裏稼業仲介役。兜を辞めさせない。「手術」は殺人依頼。「悪性」は殺人対象が同業者
松田:兜がボルダリングで知り合った唯一といえる友人。恐妻家。娘が克巳と同じクラス。
奈野村:百貨店に配置されていう警備会社社員。
同業者の殺し屋:機関車トーマスを溺愛する「檸檬」、仕事仲間の「蜜柑」、E2事件で死んだという「スズメバチ」、「DIY」がちょこっと登場する。その他、「蝉」「槿(むくげ)」「天道虫」など。
茉優(まゆ):克巳の妻
大輝:克巳の長男、3歳
初出:「AX」「小説 野生時代」2012年1月号、「BEE」『ほっこりミステリー』宝島文庫、「Crayon」
「小説 野生時代」2014年2月号、「EXIT」と「FINE」は書き下ろし
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
殺し屋が主人公で、殺し合いの場面もでてくるが、絵空事にようで、生々しさ、残酷さは感じられない。それどころか、殺しの腕前は抜群なのに、稼業に迷いが出ていて、妻にはビクビクする兜がユーモラスだ。なにより「いかに妻を不機嫌にさせないか」を常に最優先とする兜の妻えの対応に思い当たることがあり、ほほえましい。
メモ
妻と恐妻家の兜のやりとりが面白い
厳しい裏稼業をこなして深夜に帰宅し、眠くてぼんやり妻の話を聞いていたら、「あなた、聞く気がないんだったら、聞かなくていいよ」をむくられた。以来、少々やり過ぎだと思うほどに大きなジャスチャー、派手な相槌をうつようにしている。
一緒に暮らし始め、とりわけ克巳が生まれて以降、妻が抱える苛立ちや不満の大半は、「自分の大変さをあなたは正しく理解していない」ということに還元できる。と兜は分析していた。
「どうして怒ってるのか?」と訊ね、「別に怒っていない」と答えがある場合は、基本的に「怒っている」
「蟷螂の斧(とうろうのおの)」
カマキリが大きな車に向かってきた故事(荘子)。はかない抵抗のたとえ。
自分の罪に慄く(おののく)