2020年4月24日に届いた花
7本のガーベラ、右端の開いた傘のようなレースフラワー、中央上にチラチラするカスミソウ、左下がブプレリウム。
4日後、茎を切り詰めた。
おまけに散歩中に見かけた溢れんばかりのモッコウバラ
2020年4月24日に届いた花
7本のガーベラ、右端の開いた傘のようなレースフラワー、中央上にチラチラするカスミソウ、左下がブプレリウム。
4日後、茎を切り詰めた。
おまけに散歩中に見かけた溢れんばかりのモッコウバラ
知念実希人著『十字架のカルテ』(2020年3月18日小学館発行)を読んだ。
また、小学館の紹介文は以下。
最注目ミステリー作家が挑む、究極の頭脳戦
正確な鑑定のためにはあらゆる手を尽くす――日本有数の精神鑑定医・影山司の助手に志願した新人医師・弓削凛は、犯罪者の心の闇に対峙していく。究極の頭脳戦の果てに、影山が見据える未来とは。そして凛が精神鑑定を学ばねばならない理由とは……。
第一話「闇を覗く」 歌舞伎町無差別通り魔事件の犯人・白松京介。重度の統合失調症と診断された彼は、本鑑定を受けるため影山たちの病院に移送された。
第二話「母の罪」 横溝美里は生後五ヶ月の娘を抱き、マンションから飛び降りた。重い抑うつ症状が見られた美里は、面談で「悪魔が娘を殺せと脅した」と言う。
第三話「傷の証言」 高校中退後、自宅に引きこもっていた沢井一也は、姉を刺し逮捕された。影山たちが鑑定に赴くが、支離滅裂な発言をし恐慌状態に陥ってしまう。
第四話「時の浸蝕」 傷害致死で起訴された小峰博康には、精神疾患の疑いが。簡易鑑定を行った影山は「罪を逃れるための詐病」と証言したが、第二審で思わぬ反撃にあう。
第五話「闇の貌」 同僚を刺殺した桜庭瑠香子。過去にも殺人事件を起こしていた瑠香子だが、解離性同一性障害、すなわち多重人格と診断され不起訴となっていた。
弓削凛(ゆげ・りん):影山の助手。医学部で研修を終え、今年光陵医大精神医局に入局し、雑司ヶ谷病院へ配属。
影山司:精神鑑定の第一人者。光陵医科大学付属雑司ヶ谷病院(精神科専門病院)医院長・大学精神科学講座准教授
「闇を覗く」
歌舞伎町無差別通り魔事件犯人・白松京介を、検察庁の簡易精神鑑定では統合失調症と判断し、検察庁は心神喪失者として不起訴にしたがっていた。しかし、担当の熱血検察官は4人も犠牲者がいることから、なんとか起訴に持ち込みたいと影山に鑑定を依頼してきた。白松の父は地元一帯に君臨する支配者で、京介の……。
「母の罪」
乳児・玲香を殺し飛び降りた元看護師の横溝美里は、統合失調症で心神喪失で無罪か、産後うつで心神耗弱状態で減刑対象か?
「傷の証言」
ひきこもりの沢井一也が姉・涼香を刺した。会話が成り立たない一也の簡易鑑定が影山に依頼された。面接の結果、一也の状態はあきらかに心神喪失だった。そうなると単なる措置入院として治療の質は保証されないことになる。しかし、姉の言うように「ぶっ殺してやる!」と叫んで刺したとなると、明らかな殺意があり医療観察法の対象で、専門的治療を受け、退院後のことも考慮されることになる。父・貞夫は世間体を気にして一也を精神科に受診させなかった。そのため、涼香は……。
「時の浸蝕」 略
「闇の貌」
桜庭瑠香子の、ストレスを受けると現れる別の人格はDV父・桜庭源二や、桜庭絵里香4歳だったが、殺人を主導した人格は……。
初出:「STORYBOX」2019年1月号~2020年1・2月号
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
心の闇と犯罪の関係が見事に描かれている。精神鑑定の内容は難しいが、よく読めば素人でも理解できる。
ほとんど知られていない精神鑑定の実際(?)がよくわかる。法律を逆手にとって目的を達成しようとする犯人の意図を、裁判で明示できるほど明快に取り出して提示する鑑定はすごい。
そもそも精神病をよそおう犯人の詐病(さびょう)を見破ることができるのかどうか疑問だったが、小説とはいえ、その手段、例がいくつか提示されていて、なるほどと思った。
知識
嬲り殺し:なぶりごろし
蠕動:ぜんどう
島本理生著『生まれる森』(角川文庫し36-8、2018年7月25日KADOKAWA発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
あの人に出会ってから深い森に落とされたようになり、すべてはガラスごしにながめている風景のようだった――。失恋で心に深い傷を負った「わたし」。夏休みの間だけ大学の友人から部屋を借りて一人暮らしをはじめるが、心の穴は埋められない。そんなときに再会した高校時代の同級生キクちゃんと、彼女の父、兄弟と触れ合いながら、わたしの心は次第に癒されていく。恋に悩み迷う少女時代の終りを瑞々しい感性で描く名作。
主人公は大学生の女の子で野田(下の名前は不明)。高校生のとき予備校の講師で、離婚したばかりのサイトウさんと出会い、恋に落ちた。親子ほど年が違い、サイトウさんとは結ばれなかった。反動で、幾人もの男性と関係を持ち、妊娠した野田は、中絶し、より深い森の落込む。
傷心のまま大学生になり、同じ学科の加世ちゃんから夏休みの期間、一人暮らしの部屋を借りることになる。高校の同級生で、キャパクラ勤めで停学になったキクちゃんからキャンプに誘われる。地方公務員という兄・雪生と、15歳の弟・夏生と知り合う。
雪生が野田について言った。
「一緒に話して笑っていても、いつもなにかべつのことに気を取られているように見えたよ。キクコが、野田ちゃんと一緒にいると片思いしているときの気分になるって」
野田は「子供をおろしちゃったんです」と少し打ち明ける。
立教大学在学中の2004年、講談社より刊行され、2007年に講談社文庫。2018年角川文庫より新装版発行。
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
変な恋愛をして深い森に囚われてしまった少女が再生へ向かうという物語。いいんじゃない。
当時大学生だった著者は、まだ少女といってよい若い女性の未熟で傷つきやすい心を鋭く理性的な文章で描いた。しかし、もっとも遠い所に位置するおじいさんの心を揺さぶることはできなかった。
弱冠21歳で。第130回芥川賞の候補にあがったが、受賞したのは綿矢りささん・金原ひとみさん。受賞作には負ける。しかし、著者の才能は万人の認めるところで、2018年に直木賞を受賞した。
物足りないのは、サイトウさんがあまりに漠然としか描かれていないから、野田の気持ちも納得しにくい点。
加世はストーカーになった元カレについていう。
「だめなんだよ。あの人、私が文句を言うと、それならぜんぶ直すなんて言うし。なにも考えずにぜんぶ直すなんて、そういうところが嫌いだったなんてこと、わからないんだよね」
自分をしっかり持って、女性の言うことに反論しても嫌われるし、受け入れてもだめだし。トホホ。
4月10日届いた花
3本の白いカラーと、アンスリウムの大きな葉が目立つ。
紅白のアルストロメリアと、青く丸く固まったブルーパフュームにも注目。
パフューム(香水)と言っても匂いはほぼない。
10日後、生き残ったのは、アンスリウムとブルーパフュームのみ。
一本刺しにいけると仏の座みたいでおごそか。
東野圭吾著『クスノキの番人』(2020年3月25日実業之日本社発行)を読んだ。
不当な理由で職場を解雇され、その腹いせに罪を犯し逮捕されてしまった玲斗。
同情を買おうと取調官に訴えるが、その甲斐もなく送検、起訴を待つ身となってしまった。そこへ突然弁護士が現れる。依頼人の命令を聞くなら釈放してくれるというのだ。依頼人に心当たりはないが、このままでは間違いなく刑務所だ。そこで賭けに出た玲斗は従うことに。
依頼人の待つ場所へ向かうと、年配の女性が待っていた。千舟と名乗るその女性は驚くことに伯母でもあるというのだ。あまり褒められた生き方をせず、将来の展望もないと言う玲斗に彼女が命令をする。「あなたにしてもらいたいこと――それはクスノキの番人です」と。
『秘密』『時生』『ナミヤ雑貨店の奇蹟』に続く新たなエンターテインメント作品。長編書き下ろし。
このサイトの「特設PV」の「ロングバージョン」を見ることをお勧めする。
直井玲斗(れいと):母は美千恵。父は妻子があり面倒は見てくれたが、交通事故死。母の死後、祖母・富美に育てられる。千舟の甥。
直井美千恵:玲斗の母。富美の家で水商売をしながら玲斗を育てるが、玲斗が小学校低学年の時病死。
柳澤千舟(ちふね):ヤナッツ・コーポレーションの顧問。宗一と恒子の娘。美千恵の異母姉。祖母・靖代から柳澤家が任されているクスノキの番人を引継ぐ。
柳澤宗一:恒子の婿養子で千舟の父。恒子の死後、旧姓の直井となり、22歳下の富美と結婚して美千恵が生まれる。
柳澤将和(まさかず):ヤナッツ・コーポレーション社長。勝重の兄。千舟のハトコ。
柳澤勝重(かつしげ):ヤナッツ・コーポレーション専務。将和の弟。千舟のハトコ。
岩本義則:弁護士
佐治寿明:工務店店主。祈念する。兄は喜久夫。
佐治優美:父・寿明の行動に不審をいだき、玲斗と調査する。
大場壮貴:和菓子メーカー「たくみや本舗」の跡継ぎ。祈念する。
福田守男:「たくみや本舗」常務
飯倉孝吉:千舟の幼馴染。祈念する。
桑原秀次:「ホテル柳澤」の支配人
私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき)(最大は五つ星)
ちょっと甘いが、このところ四つ星ばかりなので出血(?)サービス。
「祈念」の内容をほんの少しずつしか明かさないで、どんどん引っ張っていく手腕はさすが。ちょっと引っ張りすぎ? 話の流れはスムーズで、相変わらず読みやすい。
単純理工系に近い東野さんが“念”がテーマの小説を書くなんてびっくり。ただし、おどろおどろした所はなく、冷静に仕組みを解り易く解説していて、不可思議な余白がない所は東野流。
悪事に走っただめ男が、急にチャンスを与えられて、教育されて、成長していく姿を見るのは楽しい。それにしても、そこいらのあんちゃんが、急に、弁も立ち、読みも鋭すぎるようになったのは、ちょっと不自然?
最初に柳澤千舟が登場するシーン(p22)で、「やや吊り上がり気味の目で」と東野さんの好みがまたまた登場。
新月:陰暦で、月の初めに見える細い月。朔に同じ。
塒:ねぐら
貧しい時代の貧しい家に育った私には、おもちゃらしいおもちゃはなかった。
家でよく遊んだのは、風呂敷をマントに、物差しを刀にしたアメンホテプ遊びだ。風呂敷はゴワゴワした木綿地で、紺色だったような気がする。物差しは三尺の竹尺で、持つところの節が少し出っ張っていて色が薄くなっていた。一人っ子なのでチャンバラをするわけでもなく、ただ扮装して貸本漫画に出ていたエジプト王になりきるのだ。
親父の碁石でも遊んだ。畳の上に陣形に並べて白と黒で戦うのだが、勝ち負けのルールがあるわけでもないので、味方と決めた方がどんどん勝って行くだけだ。頭の中の戦いのイメージが遊びの主体で、碁石はその結果を示すのに使うだけだったのではないのだろうか。貝でできた白石は薄く艶があり、黒はくすんでいた。碁石を入れる碁笥(ごけ)の蓋の丸みが何故か懐かしい。
庭では木登りをし、屋根にもよく登った。一人で遠くを眺めていると、自分の狭い世界が広がったような気がしたものだった。
メンコやベーゴマも、ときどき商店街の抜け目ない彼等の所へ出かけ勝負した。しかし、ベーゴマに鉛を盛ったり、角を削って尖らしたりし、勝負にかける意気込みが違う悪童達にのんびりした私が勝てるわけもなく、わずかな持ち物をすぐに巻き上げられてしまった。
小学校に入ってからよく遊んだのは、車がめったに通らない未舗装の裏通りでの三角ベースの野球だ。隣に住む同級生と、その弟がいつも一緒だった。二歳ほど下の弟はまだ下手でよくエラーする。私が「またエラーしたぜ」と友達と笑っていて、さらに「ほんと駄目だよな。どうしよもないよ」と言う。すると、いつも一緒にバカにしていた友達がちょっと変な顔をして、「だけどあいつけっこう打つぜ」と言った。私は「ああ、友達よりやっぱり兄弟なんだ」と黙りこんでしまった。
「いつも結局ひとりだったんだね」と慰めてやりたい。
今のような巧みに作られたおもちゃや、ましてコンピュータ内蔵の高度な玩具などなかった時代、子ども達は身近なものを空想でおもちゃ道具に変え、工夫して手を加えて遊んでいた。今となっては懐かしさもあって、結構楽しく遊んでいたように思えてくる。部屋一杯に散らかった孫のさまざまな工夫されたおもちゃを見ていると、本当に幸せなの?と思う。
齋藤孝著『齋藤孝のざっくり! 万葉集 -歴史から味わい方まで「すごいよ!ポイント」でよくわかる』(2019年8月10日祥伝社発行)を読んだ。
第1章 仰天! 国家プロジェクト
7世紀後半から八世紀後半ごろまで、100年がかりの一大国家プロジェクト、4500首以上。
短歌、長歌、施頭歌、仏足石歌体歌などがある。
宮廷サロンから東国の農民、防人へ拡散。身分や男女の差別もない。
第一期(629~672年)舒明天皇時代~壬申の乱
額田王、舒明天皇、天智天皇、天武天皇
第二期(~710年)平城京遷都までの藤原京時代
柿本人麻呂、高市黒人、大津皇子、志貴皇子、持統天皇
第三期(~729年)天平元年あたりまで
山部赤人、山上憶良、大伴旅人、高橋虫麻呂、坂上郎女
第四期(~759年)天平元年以降の30年
大伴家持、笠郎女、中臣宅守、狭野茅上娘子
第2章 探訪! 万葉仮名ワールド やまとことばに漢字をあてるという「神業」
難しい理由
(1)常に同じ音に同じ漢字を当てるとは限らない
(2)一音に漢字一字とは限らず、二音以上を漢字一文字で表す場合もある
(3)漢字の読みが幾通りかあり、推測するしかない
岩激 垂見之上乃 左和良(女比)乃 毛要出春(「ひとがしら」の下に小) 成来鴨
岩ばしる 垂水の上の さ蕨の 萌え出る春に なりにけるかも 志貴皇子
第3章 古代の歴史が透けて見える 後継者をめぐる血なまぐさい事件がてんこもり
この時代の天皇を巡る血なまぐさい争いには凄惨なものがあることを改めて思い出した。とくに残忍なのは中大兄皇子(後の天智天皇)だ。大化の改新で蘇我入鹿の首を刎ね、有間皇子を処刑し、石川麻呂、古人大兄を多分陰謀で殺した。そして、死後に古代史上最大の内乱「壬申の乱」が起こる。このあたりの生々しさが万葉集からも直接、間接に読み取れる。
それにしても、天智、天武の時代の人物関係図(p108)はややこしい。血縁の近い者同士の結婚が当たり前の時代だった。なにしろ異父兄妹は結婚できたのだからゴチャゴチャだ。
第4章 恋の歌に知性キラリ 万葉人が歌で楽しんだ「恋愛ゲーム」
第5章 万葉人に共感 庶民の暮らし・思いはいまも同じ
作者未詳歌は万葉集の約半数弱、2100首余り。
西の市に ただ独り出でて 眼並べず 買ひにし絹の 商じこりかも
(西の市に一人で出かけて行き、ほかのものと比べもしないで絹を買ってしまったが、あれは失敗だったなあ)
付録 使える“万葉言葉” 日常会話にさり気なく歌の表現・言い回しを添えよう
万葉集 索引
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
私は、とくに万葉集に詳しいわけではないが、寝っ転がって万葉集解説本を読み、名歌を口ずさむのが好きだ。このブログで紹介した本も既に4冊になる。
岡野弘彦『万葉の歌人たち』、池田弥三郎『万葉集-美しき“やまとうた”の世界』、佐佐木幸綱『万葉集』、佐々木幸綱監修『覚えておきたい順 万葉集の名歌』
歌そのものを知り、味わうには、この本より例えば上記の本の方が良い。この本は万葉集の背景を、それを示す歌とともに解り易く解説しているところに特徴がある。
例えば、万葉仮名について私は初めて具体的に理解できた。また、複雑怪奇な系統図から血縁が極めて近い者同士の不倫がらみの恋愛が高らかに歌われているのも下世話な興味を引いた。
高野秀行 略歴と既読本リスト
高野秀行(たかの・ひでゆき)
1966年東京生れ。早稲田大学第一文学部卒。
1992-93年タイのチェンマイ大学日本語科、2008-09年上智大学外国語学部講師、トンデモな冒険記を書く「辺境作家」。
早稲田の探検部当時、『幻獣ムベンベを追え』でデビュー。
中国の山奥へ野人を探しに行く『怪しいシンドバット』、
幻のシルクロードを探す『西南シルクロードは密林に消える』、
アヘン栽培をする少数民族と生活する『ビルマ・アヘン王国潜入記』、『辺境の旅はゾウにかぎる』、『異国トーキョー漂流記』、『謎の独立国家ソマリランド』、『世にも奇妙なマラソン大会』、『語学の天才まで1億光年』
角幡唯介氏と共著『地図のない場所で眠りたい』、13人の共著エッセイ『楽しむマナー』
講演会で講師が話し始めるとき、話慣れた人でも多少硬くなるし、聴衆も「さて、どんな?」と改めて構えてしまい、こちらも多少緊張があることが多い。
そこで、冗談好きのアメリカ人などは冒頭でとっておきのジョークを飛ばして笑いをとり、双方の緊張を取って、話しやすく、また聞きやすくして一体感を作ろうとすることが多い。落語のまくらのようなものだ。
私が今まで聞いた中で一番強烈だったジョークをここでご紹介したい。
講師は某有名クレジットカード会社の女性幹部。午後最初の講演に登場した彼女は、典型的?アメリカ女性で、体にぴったりな服装に濃い化粧が似合っている派手な美人だった。彼女は大股で登壇し、ほとんど日本人男性が並ぶ会場を自信満々でゆっくり見渡してから話し出した。
英語だったので、おおよそのことしか理解できなかったが、こんなジョークだった。
「午後一番の講演で、皆さん眠くなること間違いありません。もし、うとうとしたら、どうぞ私の裸の姿を想像して、目を覚ましてください」
目が覚めた!!
15年ほど前のことで、講演内容は全く覚えていないが、冒頭のジョークの時、会場が一瞬あっけにとられ、静かになってから、遠慮がちの、ためらいがちの笑いがざわめいた。あの光景は未だに鮮明に目に浮かぶ。
3月13日に届いた花
黄色とピンクが、「青山・フラワー・マーケットのTEA HOUSE」で飾られていたラナンキュラス。
イチゴのような花が文字通りイチゴソウ。
6日後、ガク?がオレンジで、花びら?が緑の花が咲いた? これもラナンキュラス?
10日後、完全に咲いた??
3月27日に届いた花
左下がリューココリーネ、左上がコデマリ。
一週間後、チューリップが開いたぐらいであまり変化なし。
おまけで、3月13日に散歩中に見かけたツバキ。
赤白まだらの花に、真赤な花が混じっている。
「緊急事態宣言」が出た翌日。病院の帰りに足を伸ばして井の頭公園まで散歩。
井の頭公園駅北の三角公園のベンチには、オカリナ?を練習するおじいさんが。文部省唱歌に聞こえるのだが。
井の頭公園の「思い出ベンチ」は、寄付者の思い出のプレートが張り付けられている。
さまざまなメッセージがあるが、人生訓を見つけた。
「人生は長い、疲れたら休め 脇道を行くのも又良し エリナとプリン」
桜の季節は過ぎ、若葉がまぶしい。
神田川の水源にも桜の花びらが少し溜まっていた。
それどころか、ひょうたん池(?)は花びらが一杯。
「花いかだ」というにはあまりにも一面だ。
花びらを取っていると思ったら、藻を取っているという。
左にはその様子を撮影する暇なお二人。さらに、彼らを撮るもっと暇な私。
翌々日のひょうたん池は、だいぶんの花びらが除かれ、手前だけが花いかだになっていた。ご苦労さまでした。
「お花見は 自粛願います」の看板がある。
ベンチには座れないように綱が貼ってあり、
広場のベンチにはテープが。
ゴミ箱はシートにくるまれ、
違反者ににらみを効かせて警察官が暇そうにしていた。
このさくらでは花見する気にもならない。
毎年、花見時の土日には渋滞で前に進めなくなる駅からの階段もガラガラ。
4/8水曜日の10時とはいえ、丸井からのメイン通りも人影なし。
七井橋からの井の頭池。藻ばかり目立つ。
藻・ツツイトモは光合成で酸素を作り、水質を浄化させると言うのだが‥‥。
自然文化園には「3/28(土)~5/6(水) 臨時休園」の看板。
いつも人が少なければ良いのにと思うのだが、勝手なもので、これではなんだか元気がでない。
ジョギングする人とフラフラ歩く年寄がチラホラな井の頭公園だった。
篠田節子著『となりのセレブたち』(2015年9月20日新潮社発行)を読んだ。
5編の短編を収録。
「トマトマジック」
調理したドライトマトがセレブの女性たちの欲望をあからさまに噴出させる。
美千子:主婦の仕事を第一と考える手芸作家が自宅で料理教室を開く。
沙哉子:美千子の一人娘。30歳過ぎたキャリアウーマン。
ケイ・ミズマ:国際的染色アーテイスト。
よしみ:3本組の豪華な指輪をする40代主婦、豊子:太めの50代主婦、志摩子:大学教授の妻。
「蒼猫のいる家」
エリカは楽器販売会社で海外を飛び回る。来年中学生の娘・真理子の世話を義母にまかせ、自分はこの家に居場所はなく、客だと感じる。娘に甘い夫が許可して買ってきてしまった猫のツヨシ。猫は家の者には懐かず、暴れ、エリカにだけ近づくのだった。結局、大嫌いだった猫だけが彼女の孤独を理解してくれていた。
「ヒーラー」
邦夫の友人・雄平はリストラの心配で不眠症に悩む。40代の邦夫の妻・香織と、雄平の妻・佐知子はエステを楽しみ、粘液状の湯に入り、不思議に肌が馴染んだ。その後、魚に吸い付き中味を吸いだす「吹き流し」を知る。その体内からにじみ出る粘液は美容にいいとして主婦の間で流行した。どんどんグロになる記述が続く。
「人格再編」
20年以上の寝たきり老人を二人以上抱える世帯が増えた社会では、介護の負担を軽減させることを第一優先にし、暴言を吐くなど面倒な老人の人格再編手術が開発された。若い脳外科医堀純子医師は老女の頭に内視鏡でチップを固定する。人格者へ再編させるチップにより老女はバングラデシュへ向かう。
「クラウディア」
カメラマン・岡本孝純は35歳で独立し、膨大な借金を抱え、スタイリストの直美の許に転がり込んだ。車を追突させて金を強請るのに失敗した孝純はその筋の男たちに拉致されるが、直美の飼っていたアフガンファウンド犬のクラウディアが現れ、助けられる。ともに山小屋に隠れ時を過ごすが、犬は逞しかった。やがて、謎の女が現れる。
初出:「小説新潮」1995年6月~2011年1月号
私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの?)(最大は五つ星)
「トマトマジック」:セレブの女性たちの欲望が通俗的過ぎてオモロない。
「蒼猫のいる家」:家に居場所はないならさっさと家を出ればいいのに。猫が何故エリカを選んだのか不明。
「ヒーラー」:あまりにもグロテスクな話がどんどんエスカレート。
「人格再編」:今後の社会の変化を偉そうに語るな!
「クラウディア」:変な女など登場させずに、犬に支配される生活を書き込んだ方が面白かったのに。
何事にもスケジュール、タイマーを設定して計画的な生活を送っている。定年後もなるべく規則正しい生活を送り、かつ都合・気分にあわせた変更が可能な生活を送るためだ。
スマホのカレンダー・ソフトに、予定のある日付・時間を設定し、30分前などにアラームを鳴らしている。この設定はパソコンの同じソフトにも自動で設定・変更される。逆も真。
なお、このブログもあらかじめ入力して予約投稿してあり、隔日AM5時ジャストにアップされるようにしてある。
こんな風に、一日中、スマホはピー、ピー、ピカピカしているが、私はロボットではなく、ご主人様なので、従う場合にも一応迷ったふりして、決断してから実行しているし、気分が乗らないばあいは、中止したり、延期したりしている。あくまで主人は私なのだ。ちょっと必死こいているが。
井上荒野著『あちらにいる鬼』(2019年2月28日朝日新聞出版発行)を読んだ。
白木篤郎と長内(おさない)みはる(後に寂光)は不倫関係にあり、白木の妻の笙子との三角関係がテーマだ。
白木篤郎は小説家の井上光晴がモデルで、長内みはるは瀬戸内寂聴がモデル。笙子とみはるの視点から交互に語られる。作者は井上光晴の長女である井上荒野。
人気作家・長内みはるは、半同棲の小野文三を捨て、昔婚家を飛び出した原因となった真二と再び暮らしていた。みはるは、気鋭の作家・白木篤郎と講演旅行をきっかけに男女の関係になる。そうなると篤郎はみはるに一層妻・笙子の自慢を語るようになった。
妻・笙子は、夫・篤郎が手を出して自殺未遂した女の見舞いに頼まれて行くなど、夫の不倫を黙認、協力していた。その頃、長女・海里(井上荒野)は5歳で、笙子は次女・焔(ほむら)を妊娠中だった。
出家してからは3年目のこと。あのときすでにわたしは、自分と白木の間にあるものは友情だとー男女の感情はそれにすっかりとってかわったのだと信じていた。それでも三年経って思い返してみれば、頭を撫でられたときの感触も、「俺があんたを殺してやる」という白木の言葉の響き、それを聞いたときの自分の胸の鼓動も、性愛の記憶に近いものとしてよみがえる。
わたしたちは(みはると笙子)、ほのめかさなかったし、探り合いもしなかった。白木の嘘吐きぶりを話題にし、笑い合いながら、わたしたちはわたしたちの愛については、注意深く何も語らなかった。
背景は、「好書好日」の井上荒野さんへのインタビューに詳しい。
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
妻の笙子さん黙認とはいえ不倫であり、そんな話が延々と続くのはうんざり。瀬戸内寂聴のほぼ実話だという下世話な興味がなければ読み切れなかった。
篤郎をめぐる笙子とみはるの共感関係も、理解できないわけではないが、少なくとも妻の笙子の方には少なからずストレスがあるので、読んでいて気持ちが良いものではない。
なににもまして篤郎という男が嘘ばかりで、何の魅力も感じられない。そもそも井上光晴という作家にはたいした才能を感じられない。
井上荒野(いのうえあれの)
1661年東京生まれ。成蹊大学文学部卒。
1989年「わたしのヌレエフ」でフェミナ賞
2004年『潤一』で島清恋愛文学賞
2008年『切羽へ』で直木賞
2011年『そこへ行くな』で中央公論文芸賞
2016年『赤へ』で柴田錬三郎賞
2018年『その話は今日はやめておきましょう』で織田作之助賞 を受賞
その他、『ひどい感じ 父・井上光晴』、『綴られる愛人』『夜をぶっとばせ』『キャベツ炒めに捧ぐ』など。
角田光代、井上荒野、森絵都、江國香織『チーズと塩と豆と』、角田光代、井上荒野、栗田有起、唯野未歩子、川上弘美著「女ともだち」
メモ
旗竿地(というのかどうか):2軒の住宅に挟まれた細長い通路の先にある土地
絲山秋子著『小松とうさちゃん』(河出文庫い40-3、2019年12月20日河出書房新社発行)を読んだ。
さえない52歳の非常勤講師小松とネトゲに熱中する飲み友達のサラリーマン宇佐美。小松に訪れた人生最後(かもしれない!?)恋に、宇佐美は奮闘するのだが……「完全恋愛小説」の誕生!
ーー「小松さん、なんかいいことあった?」
52歳の非常勤講師小松の恋と、
彼を見守るネトゲに夢中の年下敏腕サラリーマン宇佐美の憂鬱
52歳の非常勤講師小松は、新潟に向かう新幹線で知り合った同い年の女性みどりが気になっているが、恋愛と無縁に生きてきた彼は、この先どう詰めればいいか分からない。一方、みどりは自身の仕事を小松に打ち明けるかべきか悩んでいた。彼女は入院患者に有料で訪問サービスをする「見舞い屋」だったのだ。小松は年下の呑み友だち宇佐美に見守られ、緩やかに彼女との距離を縮めていくのだか、そこに「見舞い屋」を仕切るいかがわしい男・八重樫が現れて……絲山秋子が贈る、小さな奇蹟の物語。
「小松とうさちゃん」
宇佐美:蓄電会社勤めで妻子持ち。ネットゲームの42名の同盟員の盟主でハンドルネームは「うさぴよん」。
小松:3大学で5コマの非常勤講師を務める研究者。52歳。犬猫文鳥の世話のため実家暮らし。
長崎みどり:52歳の離婚経験者。偽装「見舞い屋」。元自動車教習所教官。
八重樫:みどりが雇われている「見舞い屋」を経営。
「ネクトンについて考えても意味がない」
南雲咲子は瞑想により精神を持つミズクラゲと会話する。
ネクトン:水の流れに逆らって自力で泳ぐことができる生き物。
プランクトン:自分から泳ごうとしない生き物。クラゲはプランクトン。
ベントス:クラゲでも海草でも貝でも、ずっと海底で暮らす生き物。
「飛車と騾馬(らば)」
飛車のような面構えをした宇佐美と、子孫を残さない一代雑種に喩えて騾馬世代と呼ばれる小松は飲み友達。
この6枚足らずの掌編が短編「小松とうさちゃん」に発展した。
本書は2016年単行本として刊行。
初出:「小松ととうちゃん」(「文藝」2015年夏号、秋号)、「ネクトンについて考えても意味がない」(「文学界」2014年3月号)、「飛車と騾馬」(「文藝」2014年秋号)
絲山秋子(いとやま あきこ)
1966年東京生まれ。早大・政治経済学部卒後INAXに入社し、営業職で数度転勤。
1998年に躁鬱病を患い休職、入院。入院中に小説の執筆を始め、2001年退職。
2003年『イッツ・オンリー・トーク』で文學界新人賞を受賞。芥川賞候補。
2004年『袋小路の男』で川端康成文学賞受賞。
2005年『海の仙人』で芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。『逃亡くそたわけ』で直木賞候補。
2006年『沖で待つ』で芥川賞受賞。
2016年『薄情』で谷崎潤一郎賞受賞。
他に、『ばかもの』、『北緯14度』、『忘れられたワルツ』、『小松とうさぎちゃん』など。
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
おっさん二人と、50歳過ぎの女性の話は、ゆったりとほのぼのと、楽しく読める。
しかし、絲山さんって、もっと鋭くとがったものを持っているはずなのにと思ってしまう。
メモ
「予想」の回文は「うそよ」