丸山宗利著『昆虫はすごい』(光文社文庫710、2014年8月20日光文社発行)を読んだ。
表紙裏にこうある。
地球上で最も多種多様な生き物たちの生態に迫る
私たち人間がやっている行動や、築いてきた社会・文明によって生じた物事は、ほとんど昆虫が先にやっている。狩猟採集、農業、牧畜、建築、そして 戦争から奴隷制、共生まで、彼らはあらゆることを先取りしてきた。特に面白いのは 繁殖行動。相手と出会うため、あの手この手を使い、贈り物、同性愛、貞操帯、子殺し、クローン増殖と何でもアリだ。どうしても下に見がちな私たち の思考を覆す、小さな生物のあっぱれな生き方を気鋭の研究者が大公開!
カラー口絵写真(8ページ)、本文中にも100枚を超える写真があり、イメージが湧きやすい。百万種以上ある昆虫は、各々実にユニークな生きるための策略をめぐらしている。
第1章 どうしてこんなに多様なのか
第2章 たくみな暮らし
第3章 社会生活
第4章 ヒトとの関わり
ゴキブリが大嫌いな人(好きな人もいないだろうが)に著者のブログ「断虫亭日乗」の写真(本書の写真と同じ)を是非ご覧いただきたい。
丸山宗利(まるやまむねとし)
1974年生まれ。農学博士。九州大学総合研究博物館助教。
北海道大学大学院農学 研究科博士課程を修了。
国立科学博物館、フィールド自然史博物館(シカゴ)研究員を経 て、2008年より現職。
アリやシロアリと共生する昆虫の多様性解明が専門。毎年精力的に国内外での昆虫調査を実施し、数々の新種を 発見、多数の論文として発表している。
著書『ツノゼミ ありえない虫』、 『森と水辺の甲虫誌』(編著)、『アリの巣をめぐる冒険』『アリの巣の生きもの図鑑』(共著)。
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
子孫を残すための昆虫のあの手この手の多彩な工夫にびっくり。昆虫のこれでもかというほど奇抜な戦略が、ずらずらと並ぶ。これらがランダムな遺伝子異常と適者生存で生まれてきたとは驚異だ。
私はただただ「すごい」と驚くばかり。次々と出てくる例に最後まで興味を切らさずに読んだが、正直、驚きながらの一本調子に少々中だるみした。
著者は昆虫大好きで、是非その面白さを知って欲しいという思いが溢れる。
イノシシを祖先とするブタは、安全で餌の心配のない長い家畜生活で脳の体積が極めて小さくなっているという。そして、「利己的な遺伝子」的な見方をすれば、家畜が子孫を残すためにヒトを支配しているともいえる。ということになると、イノシシが一番上で、その下にブタ、そして底辺にヒトがいるとも考えられる。
以下、メモ
はじめに
第1章 どうしてこんなに多様なのか
現在知られている昆虫の種数は百万種以上で既知の全生物(菌類、植物、動物など)の半数以上を占める。
「ダンゴムシ、ムカデ、ヤスデ、クモ、サソリ以外のものは、だいたい昆虫で、ナメクジやカタツムリは貝のなかま」
99%の昆虫は飛び、80%以上の昆虫は完全変態する。
第2章 たくみな暮らし
ワモンゴキブリはヒキガエルの舌の風を検知して反応するのに、ヒトの約10倍の速度0.022秒しかかからなかった。
ヒトについても、フェロモンに相当する「匂い」がさまざまな場面で恋愛に関係しているがわかりつつある。近親交配を避けるために思春期の娘は(自分に近い)父親の匂いを嫌悪し、自分とは異なる匂いの異性を好む。
「恋に焦がれて鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす」
ある種の肉食系ホタルは別属ホタルの雌と同じ点滅信号を出して雄を捕まえて食べる。そして自らの交尾に際しては異なる発光パターンで同種の雌に信号を送る.
カマキリの雄は上半身を食べられながらも、下半身は生きて交尾を全うする。
蝶のアサギマダラは秋に日本から南西諸島や台湾へ移動する。蝶は世代をくり返しながら北上し、最後の世代が南下して越冬する。
第3章 社会生活
サスライアリやグンタイアリのなかまは、効率的な狩猟方法として行列の先端を扇のように広げ、絨毯攻撃を行う。
バクダンオオアリは、敵に出会うと、頭部から腹部にある袋を爆発させて粘液で敵を動けなくする。爆発したアリは仲間の犠牲になって死ぬ。
第4章 ヒトとの関わり
おわりに