鎌倉恵子監修『一冊でわかる 歌舞伎名作ガイド50選』(2006年2月10日成美堂出版発行)を読んだ。
表紙裏にはこうある。
四百年の歴史をもつ歌舞伎
◎歌舞伎は、いつの時代もその舞台美と独特の型、ストーリー性、そして作品によっては荒唐無稽とも思われるおもしろすぎる「すじがき」で、日本人の心に訴える伝統芸能として君臨してきました。二十一世紀の今日も、現代を生きる役者が「見得」を切り、踊り、名台詞で私たちを酔わせてくれます。
◎本書は、上演頻度の高い名作、傑作を中心に五十演目を選び、歌舞伎デビューしたいあなたのためにわかりやすく解説しました。舞台写真は、今日活躍の現役役者で構成、ほかにも観劇に必要な基礎知識やうんちくがいっぱいのコラムと、歌舞伎の楽しさが存分に伝わる内容となっています。
歌舞伎は出演者は男性のみ(子役は例外)だが、1603年京都に現れた出雲の阿国(おくに)という女性が始めた。色っぽい出し物「かぶき踊り」が人気だった。
やがて本物の遊女たちによる「遊女歌舞伎」へ発展し、客引きと結びつき、幕府から禁止された。
そこで、見目麗しき美少年が白粉はたいて舞い踊る倒錯的な「若衆歌舞伎」に変わったが、これも禁止。
媚を売る姿態を止め、踊りよりも芝居を重視した「野郎歌舞伎」の形が定着し、歌舞伎の原形となり、女形の芸が磨かれ、発展した。
名台詞
「人間わずか50年‥‥同じことならあのように騒いで暮らすが人の徳、一人殺すも千人殺すも取られる首はたった一つ。……こいつは滅多にしなれんわい。」(求女を殺し、ワルに目覚める清心の台詞)十六夜清心(いざよいせいしん)
しがねい恋の情けが仇、命の綱の切れたのを、どう取り留めてか木更津から、めぐる月日も三年(みとせ)越し、江戸の親にゃあ勘当受け、よんどころなく鎌倉の、谷七郷(たにしちごう)は食いつめても、面に受けたる看板の、傷がもっけの幸いに、切られの与三と異名を取り、押し借り強請りは習おうより、なれた時代の源氏店、その白化けが黒塀の、格子作りの囲い者、死んだと思ったお富たあ、お釈迦様でも気がつくめえ。(与三郎の超有名な名台詞)切られ与三 源氏店 与話情浮名横櫛
鎌倉恵子(かまくら・けいこ)
元・東京文化財研究所・芸能部演劇研究室長
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
読み終わってブログ書きのために奥付を見ると、発行が2006年。どうりで写真に登場の役者が亡くなった人や襲名前の名前が多かった。
目次 歌舞伎の世界へようこそ
華・粋・美
凡例(本書を読む前に)
第1場 三大名作
菅原伝授手習鑑(“車引”に“寺子屋”、屈指の一幕ものもある通し狂言)
忠臣蔵=仮名手本忠臣蔵(歌舞伎のなかでもっとも人気があって有名な傑作)
義経千本桜(滅びゆく者の悲哀、怨念と恩愛、全編にあふれるロマン)
第2場 歌舞伎十八番
勧進帳(ドラマ性と様式美で人気の十八番)
毛抜=雷神不動北山桜(姫の病気は磁石が原因だったという、奇想天外なお話)
暫(市川團十郎家代々がつくりあげてきた荒事芸がたっぷり)
助六
鳴神
矢の根
第3場 世話物・時代物
十六夜清心=花街模様薊色縫/小袖曽我薊色縫(心中場面から始まるどんでん返しが醍醐味の悲劇)
伊勢音頭=伊勢音頭恋寝刃(十人斬りで白い浴衣に血汐が飛ぶ、夏狂言の代表作)
略
第4場 舞踊・新歌舞伎
鏡獅子=春興鏡獅子(可憐な女小姓から勇壮な獅子の精へ、至芸に酔う)
藤娘=歌へすがへす余波大津絵(可憐な藤の精の踊りを楽しむ、人気舞踊)
略
資料編
年表、歌舞伎用語、全国劇場案内、家系図、屋号一覧など