本上まなみ著「はじめての麦わら帽子」2009年8月新潮社発行を読んだ。
女性誌VERYに連載した幼児との生活をつづった「はじめての日々」を中心として様々な雑誌などに掲載のエッセイを集めたものだ。
31歳で妊娠が判明したときの話から、幼児の世話に奮闘する本上さんの様子がありありと分かる。
ブログサーチをしていると、一般の女性の育児ものブログも多いが、面白いものは少ない。さすが本上さん、観察力もあり、文章も上手いし、ぽわんとした人柄も良いので(多分)、スイスイ読める。働きながらの育児だし、時代も、生活レベルも私とは違うのだが、そうそうこんなこともあったと思い出すことも多い。
妊娠中の話が続く。超音波モニターの映像を見て、月々の成長を知る。あんな心霊写真のようなものを見て、実感がわき、可愛いと思うのは母なるもの不思議だ。
妊娠して、食の嗜好が変わった。ネギ、炊き立ての御飯がだめで、フライドチキン、タンタンメンがブームになったという。輪ゴムブームやチョークブームになる人もいるというから不思議。うちの奥様は何の変化もなかったので、当然かと思っていたが、30年近くなってから安心した。
・・・ももわあと湯気が出てそうな赤子を抱えるのは、はっきり言って忍耐力も必要。本当に“熱い”んだよ。・・・子どもの頃以来の汗疹が自分の肘の内側にできたときはびっくりしましたね。
私も外出したときだったが、子供を抱いて熱くて、熱くていやになったのを思い出した。「火の玉、○○くん」と呼んで、奥様にすぐ押し付けたものだ。冬は、湯たんぽがわりに、奪い合いになったのだが。
第4章「本の話、映画の話」は私の知らない絵本などの本、マイナーな映画の話が多く私には面白くなかった。ひとつご紹介。
向田邦子の「父の詫び状」についてこう語る。
章の始めの一文でひゅっと持っていかれる。例えば・・・
『この間うちから、蝦蟇口の口金がバカになっている』、『歩行者天国というのが苦手である』、『その晩は、乗った時から調子づいていた』
・・・ええ?なんだ?どういうこと?一瞬で技にはまる。
一行目が勝負というが、確かに引き込まれる。本上さんもいろいろ勉強しているらしい。
1歳、2歳の自分の娘をふうたろうと呼んだり、関西弁を使っておどけたり、擬音語、擬態語(オノマトペとも言うらしい(私の辞書にはオノマトペアとあった))を多用して、女の子らしく、ホンワカとした雰囲気を出した文章だ。
本上まなみは、1975年東京生まれ、大阪育ち。女優。番組の司会やナレーター、声優として活躍中。エッセイスト、絵本作家。この本に収められている「なぞのおかん。」はベスト・エッセイ2008に選出された。
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)
奥様の借りた本が置いてあったので、本上まなみさんはほんわかしていてどちらかといえば好きなので、読んで見た。深い話があるわけではなく、どうということない内容だが、のんびり、楽しく読める。
陣痛、出産のときの話で思い出した。息子が生まれたのは日曜日だったので、午前中に病院に駆けつけたら、ベッドで寝ている奥様の脇にメータがあった。陣痛が来ると針がぐんぐん上がり、奥様はウンウン言ってしばらく耐え、やがて針が下がる。この繰り返しだ。針がグーン、グーンと上がると、私は見ているだけで気分が悪くなって、耐えられなくなった。
か弱い身体で女性は強い。あとから、そのことを話すと、「しょうがないわね」と言われてしまった。くやしまぎれに、「女性は出産に耐えられるように、動物的にできているんだ」と言って、「失礼ね!」と怒られた。しかし、30年近く前でも、奥様によれば、「痛いよ!お母さん助けて!」と叫んでいる女性がいたということだった。自分がお母さんだろうに。