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山田詠美編『幸せな哀しみの話 心に残る物語-日本文学秀作選』文春文庫や23-1、2009年4月文藝春秋発行、を読んだ。
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山田詠美さんが選んだ美しく妖しい8つの物語。
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中上健次 「化粧」
法事で熊野の実家に帰り、飼っていた鳥の事を思い出し、数日前に久しぶりに会った別居中の妻と娘達のことを想う。中上初期の作品だそうだが、すでに「死」の臭いがする。
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半村良 「愚者の街」
夜の新宿で偶然会った高校の同級生が先生を呼ばれている。貧乏のためクラスで一人大学に進めなかった彼は、バーテンを経て小説家になった。冴えないサラリーマンの私と彼との微妙な関係、会話。バーテンダーの経験のある半村の飲み屋のシーンには奥行きがある。
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赤江瀑 「ニジジンスキーの手」
ニジンスキーの再来と言われた日本人の舞踏家の傲慢さと数奇な運命。
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草間彌生 「クリストファー男娼窟」
派手な水玉模様で知られる芸術家草間彌生の小説。ニューヨークの美しい黒人大学生が男娼になり麻薬中毒に落ちて、さらに・・・。隠微なクリストファー通りと麻薬による幻想の描写がリアルで草間らしい。
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河野多恵子 「骨の肉」
出ていった男の残していった荷物を処分できずにイジイジする話だが、二人で生牡蠣を食べる場面はやけに詳しく、グロともエロともいえる。
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遠藤周作 「霧の中の声」
毎日同じ時間に帰って来て、お金に細かい夫との生活にうんざりする妻が予知夢を見るようになる。夫が胃ガンになり、夢に出てきた夫は、・・・。
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庄野潤三 「愛撫」
主人公の女性が、少女、娘、妻になって受けてきた愛撫。妻は夫にその話しをし、夫は・・・。
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八木義徳 「異物」
男たちが、女の斜視や刺青を異物と感じ、刺激を受けて燃える。家庭では、夫は足首にひび割れが治っては再発する。妻は足首に脂肪の塊ができる。異物だ。
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私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
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妖しく、質の高い短編がそろっている。読書家の作家がお気に入りの短編を集めた(アンソロジー)もなかなか良いものだ。それぞれの短編を楽しみ、編者の、どこが気に入ったかなどの解説を楽しめる。
私は、半村良の「愚者の街」、赤江瀑の「ニジジンスキーの手」と、草間彌生の「クリストファー男娼窟」に魅せられたが、後は、まあまあ。
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山田 詠美
1959年 東京生まれ。
1985年「ベッドタイムアイズ」(文藝賞受賞)で衝撃的デビュー。
1987年 『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞
1989年 『風葬の教室』で平林たい子賞
1991年 『トラッシュ』で女流文学賞
1996年 『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞
2001年 『A2Z』で読売文学賞
2005年 『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞を受賞
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