hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

薬丸岳『刑事弁護人』を読む

2022年07月31日 | 読書2

薬丸岳著『刑事弁護人』(2022年3月20日新潮社発行)を読んだ。

 

新潮社の内容紹介。

現役女刑事による残忍な殺人事件が発生。弁護士・持月凜子は同じ事務所の西と弁護にあたるが、加害者に虚偽の供述をされた挙げ句、弁護士解任を通告されてしまう。事件の背後に潜むのは、幼児への性的虐待、残忍な誘拐殺人事件、そして息子を亡くした母親の復讐心? 気鋭のミステリ作家が挑んだ現代版「罪と罰」。

 

 

凛子に、被疑者・現職の警察官・垂水涼香の弁護依頼が入る。容疑は殺人。被害者・加納怜治は涼香の通うホストクラブのホスト。涼香は加納の部屋で襲われたため仕方なく酒瓶で加納の頭を殴ってしまったと容疑を否認。4年前に息子を亡くし、夫もうまくいかなくなった涼香は、ホストクラブ通いは単なる気晴らしで、加納との間に特別な関係はないというのだが。

 

涼香に接見した凛子は、所長・細川の強い勧めで、気が進まないながら態度が良くない西と二人で弁護を担当することになる。調査を進めると、被害者の加納には窃盗の前科があり、ホストとコンビニのバイト以外にも別の仕事があったらしい。

 

加納と涼香の関係は単なるホストと客なのか? 警察官である涼香は真実を語っているのか? 古巣の警察から憎まれ、かならずしも容疑者第一でないことから弁護士たちにも評判が悪い西を凛子は信頼できるのか?

 

 

初出:「小説新潮」2017年2月号~2021年1月号

 

 

薬丸岳の略歴と既読本リスト

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

凛子が語り手だが、推理は西が先行し、「すべての点がつながったらきちんと話す」(p334)となかなか凛子に推理過程を明かさない。コナンドイル(シャーロックホームズ)以来の伝統的手法だ。

 

息子の復讐のためなら母親は手段を選ばないというテーマが基盤になっているので、私には、涼香の謎はかなり早い段階からなんとなく推測できた。それでも加納の正体に不明な点があり、話に引っ張られて一気読みしてしまった。

 

刑事弁護人は、常に正義を追及するのか、場合によっては目をつむってでも被疑者の唯一の見方として働くのかという問題は、純粋に突き詰めていっても意味がない問題で興味が湧かなかった。

 

 

以下、メモ

 

持月凛子:主人公。30歳。人権派弁護士として名高い細川正隆の「細川法律事務所」に所属する新人弁護士。弁護士だった父は7年前、高嶋千里に殺された。弁護し大幅減刑した犯人に、子供を殺された母親だった。
西大輔:凛子の同僚。37歳。愛想が悪く、担当する被告人の利益を第一としない法廷態度で、弁護士仲間にも評判が悪い。大学在学中に司法試験に通りながら警察官となる。5年前に曙川(あけがわ)事件で退職後、細川に拾われてあらためて弁護士になったという変わり種。弁護士になってまだ3年。

日向(ひなた)清一郎:捜査一課刑事。西大輔と警察学校同期。

桧室(ひむろ):公判担当検察官。相棒は入庁6年目の女性検事・須之内。上司は菅原

 

垂水涼香(たるみ・すずか)33歳。埼玉県警毛呂署に勤める現職の警察官。結婚9年目の新聞記者の夫は輝久。4年前に3歳の息子の響(ひびき)を亡くした。母は晴恵。

加納怜治:涼香の通うホストクラブのホスト(ショウゴ)で、バンドのボーカル(ミドくん)でもある。デビュー間近のときに窃盗事件の犯人とされ、デビューを逃した。

葉山文乃(あやの):一人で育てていた4歳の息子・俊太郎を誘拐事件で殺された。逮捕された林哲成は否認したが、垂水が見つけた証拠が決め手で起訴された。

曙川事件:6年前民家が全焼し、刺し傷のなる資産家の内海茂雄・幸代の遺体が発見され、借金していた曙川が逮捕され自供したが、裁判で否認した。捜査陣の一員の西は弁護側証人として違法な捜査が行われたと証言した。

 

 

「裁判を受けた方が楽かもしれない」という涼香に西が言う。

「どういう経緯であれ、人を死なせたのが事実であるなら、あなたは楽をしてはいけないんです。……たとえどんなに苦しかったとしても、その人たち(亡くなった人、親睦など関連の人)に事実を伝えなければいけない。それが人の命を奪ってしまったあなたの最低限の務めだと私は思います」(p208)

 

ペドフィリア(英: pedophilia):幼児・小児(通常13歳以下)を対象とした性愛・性的嗜好。俗にペド。 

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東野圭吾『マスカレード・ゲーム』を読む

2022年07月29日 | 読書2

 

東野圭吾著『マスカレード・ゲーム』(2022年4月25日集英社発行)を読んだ。

 

集英社の内容紹介

解決の糸口すらつかめない3つの殺人事件。
共通点はその殺害方法と、被害者はみな過去に人を死なせた者であることだった。
捜査を進めると、その被害者たちを憎む過去の事件における遺族らが、ホテル・コルテシア東京に宿泊することが判明。
警部となった新田浩介は、複雑な思いを抱えながら再び潜入捜査を開始する――。
累計495万部突破シリーズ、総決算!

 

マスカレード・ホテル』、『マスカレード・イブ』、『マスカレード・ナイト』に続く第4弾。

 

「ホテルを訪れるお客様は、皆さん仮面を被っておられます。その仮面を守るのが私たちの務めだと思っています。…」(山岸尚美p224)。マスカレードmasqueradeとは仮面舞踏会。

 

新田浩介:警視庁捜査一課・係長。過去と同じくホテルマンになって潜入捜査。部下は富永、西崎。

本宮:新田のかっての上司で、警視庁捜査一課・係長。

梓真尋(まひろ)女性。捜査一課・係長。部下は定年間近の能勢他2名。

稲垣:新田の上司の管理官。本件の指揮官。

尾崎:捜査一課長。

 

入江悠斗:12月1日夜自宅アパートで刺殺された。17歳の時、駐輪禁止の場所に自転車を止めて注意された大学生・神谷文和を暴行し、少年院へ。文和は植物状態のまま1年後に亡くなった。悠斗は溶接の腕を買われて工場に勤務だったが、毎週土曜日夕方2時間、延々と町中を歩き回る謎の行動をとっていた。

高坂義広:11月末に刺殺された。20歳当時、森元俊恵を強盗殺人。懲役18年、昨年出所。

村山慎二:34歳。中3の少女・前島唯花の全裸画像を公開し、少女は1年後自殺。懲役3年、執行猶予5年。

神谷良美:文和の母親。夫と死別。病院の事務職。入江悠人死亡時のアリバイあり。ホテル宿泊。

森元雅司:森元俊恵の長男。ホテル宿泊。『マルチバランス』というブログの開設者。

前島隆明:リベンジポルノで自殺した少女・唯花の父親。ホテル宿泊。

沢崎弓枝:宿泊客。

三輪葉月:宿泊客。新田と大学の同期。検察官から弁護士に。

小林三郎:夫婦で宿泊。

 

山岸尚美(なおみ):シリーズで新田とコンビを組んだフロント。ロサンゼルスから呼び戻された。

ホテル・コルテシア:宿泊部長は久我。総支配人は藤木。

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

話が複雑すぎて楽しめない。練達な東野さんだから、ゆっくり読んで、頭を整理しながら進めば、理解できるようになっているのだが、くたびれる。

 

刑を終えた過去の殺人事件の加害者3人がほぼ同時期に殺された。そして、殺された加害者に依然として恨みを持っていると思われるそれらの事件の被害者家族数組が何を目的なのか、ホテルに次々と宿泊する。

 

この物語、登場人物は多数いて、中には偽名の者も絡み、話は複雑怪奇。何を目的にホテルに集まって来たのかという謎は最後の最後まで明らかにされない。

捜査側も、ホテルの立場を尊重し正攻法で捜査を行おうとする新田と、男社会の警察内で明快な成果をあげなければと意気込む有能な女性刑事・梓の意見対立も激しい。

 

 

東野圭吾の略歴&既読本リスト

 

 

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7月(2)の花

2022年07月27日 | リタイヤ生活

 

7月18日に届いた花

 

届いた時にはまだグラジオラスは蕾もかすかに赤が見えるだけ。

 

ふっくらした青いリンドウの蕾と、

 

黄色いヒメヒマワリが咲いていただけだった。

 

3日後、グラジオラスが咲き出した。

「お手入れ方法」に、「グラジオラスは、穂の先端の蕾までは咲きにくいため、上の10㎝くらいのところで折り、蕾の数を減らすことで花を1輪でも多く咲かせることができます。」とあった。下の写真は、オドオドと上の5㎝くらいを切り取ったもの。

 

なぜかヒメヒマワリは水を吸い上げず、早くも翌日に萎れてしまった。

 

そこで小さな花瓶に挿して延命措置を施し、3日後にどうやら奇跡の復活を遂げた。

 

切り取った先端部のグラジオラスの蕾を手でむいて、最後の命を安らかにと、カップの「ホスピス」に移した。こちらも3日後にかすかに蕾がゆるんで、その片鱗を見せてくれた。

 

5日後が最盛期。

 

オレンジのグラジオラスが一番あでやか。

 

赤は濃厚すぎる。

 

ピンクは、なぜか一番下と先端のみ開花。

 

白も意外と綺麗。

 

リンドウの蕾は膨らんだが、いくつかはそのまま一部が茶色くなって、摘み取られてしまった。

「お手入れ方法」にあるように、エアコンの風を避けて、葉を取り除き、こまめに(とは言えないが一日おきに)水を替えていたのだが。

 

1週間後、多分これが飾られる最後の姿だろう。

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砂原浩太朗『黛家の兄弟』を読む

2022年07月25日 | 読書2

 

砂原浩太朗著『黛家(まゆずみけ)の兄弟』(2022年1月11日講談社発行)を読んだ。

 

講談社BOOK倶楽部の内容紹介

第35回山本周五郎賞受賞作!

第165回直木賞、第34回山本周五郎賞候補『高瀬庄左衛門御留書』の砂原浩太朗が描く、陥穽あり、乱刃あり、青春ありの躍動感溢れる時代小説。

道は違えど、思いはひとつ。
政争の嵐の中、三兄弟の絆が試される。

『高瀬庄左衛門御留書』の泰然たる感動から一転、今度は17歳の武士が主人公。
神山藩で代々筆頭家老の黛家。三男の新三郎は、兄たちとは付かず離れず、道場仲間の圭蔵と穏やかな青春の日々を過ごしている。しかし人生の転機を迎え、大目付を務める黒沢家に婿入りし、政務を学び始めていた。そんな中、黛家の未来を揺るがす大事件が起こる。その理不尽な顛末に、三兄弟は翻弄されていく。

令和の時代小説の新潮流「神山藩シリーズ」第二弾!

~「神山藩シリーズ」とは~
架空の藩「神山藩」を舞台とした砂原浩太朗の時代小説シリーズ。それぞれ主人公も年代も違うので続き物ではないが、統一された世界観で物語が紡がれる。

 

前作と同じ架空の藩・神山藩(10万石)で、代々筆頭家老で3千石の家の清左衛門が50歳を迎え、代替わりを考え始めた頃、強力で手段を選ばぬ次席家老・漆原内記が策略を次々と打ってくる。対する黛家の3人の息子、頭脳明晰・眉目秀麗の長兄・栄之丞、体力自慢の次兄・壮十郎、主人公で17歳の新三郎は、時の流れに流されながらも兄弟の結束を軸に対抗していく。

 

 

物語は、鹿ノ子堤の花見客で賑わう中に3兄弟と新三郎、さらに新三郎の道場仲間の由利圭蔵がいた。由利家は20石で家格は違うが、肩身の狭い三男同士で、親友だった。同じ場所に大目付・黒沢織部正(おりべのしょう)のひとり娘・美人で名高い・りくがいた。

りくに絡む酔客と兄弟の喧嘩が始まろうとしたとき、「やめい」と一喝で制したのが次席家老・漆原内記だった。

 

その後、黛家の三男・新三郎は、黒沢家に婿入りが決まり、大目付の仕事を学び、織部正の名を継ごうとする。しかし、栄之丞に思いを寄せるりくは、新三郎には心も体も開こうとしない。栄之丞は藩主の次女・靖姫との婚儀が決まる。壮十郎は無頼仲間を集め、色町で飲み遊んでいる。

 

 

漆原内記は、娘のおりうが藩主・山城守の側室となり、又次郎産んだ。世継ぎは正室の子・右京正就と決まっていたが、藩主のおりゅう・又次郎への寵愛をいいことに、不正の臭い、不穏な動きがある。

 

いきなり、第二部は13年後に飛び、31歳になった新三郎は大目付に就任し、黒沢織部正となっている。彼が、2人の兄弟と連携していかに逆境に立ち向かっていくのか?

 

 

第一章「花の堤」は小説現代2021年2月号初出。その他の章は書き下ろし。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

第一部で、主な人物が登場し、あらかたの状況が解り、第二部ではいきなり13年後に飛んで始まる。いったいあの人は、あの件はどうなったのか、疑問一杯で読み進めてしまう。なかなかな構成だ。

 

ともかく面白く読んでしまった。以下、あえて、不満な点を挙げる。

 

漆原内記がしたたかではあるが、単なる悪役となっていて、深みが無く、したがって、ほとんど単純な善と悪の戦いに思えてしまう。

 

とくにキャラが立っていない新三郎が主人公で、長兄の頭脳明晰・眉目秀麗の栄之丞の活躍の場が少ない。

 

藤沢周平の作品に比べると、時代の雰囲気が十二分に漂ってこない。活劇シーンも現実的なのかもしれないが、印象が強くない。

 

 

砂原浩太朗(すなはら・こうたろう)

1969年生まれ。兵庫県神戸市出身。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社勤務を経て、フリーのライター・編集・校正者。

2016年「いのちがけ」で第2回「決戦!小説大賞」を受賞しデビュー。
2018年『いのちがけ 加賀百万石の礎』を刊行。

2021年2作目『高瀬庄左衛門御留書』が第34回山本周五郎賞・第165回直木賞候補。第9回野村胡堂文学賞・第15回舟橋聖一文学賞・第11回本屋が選ぶ時代小説大賞を受賞。

 

本作に関する著者インタビュー

 

 

 

 

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白川優子『「国境なき医師団」看護師が出会った人々』を読む

2022年07月23日 | 読書2

 

白川優子著『紛争地のポートレート「国境なき医師団」看護師が出会った人々』(2022年4月30日集英社発行)を読んだ。

 

「国境なき医師団(MSF)」看護師として、18回も紛争地・災害地へ赴き医療活動をしてきた著者は、ずっと語りたいと思ってきた圧倒的な暴力の中での「紛争地の人間愛」、「活動中の暮らし」、「MSFの仲間たちの素顔」などのエピソードを描いている。

 

白川さんは、あまりにも悲惨、無慈悲な戦場に絶望し、怒り、戦争そのものを失くさなくてはと、ジャーナリストになろうとしたことがあった。派遣先で、空爆で両足が無茶苦茶になり、ふさぎ込んで心を閉ざしていた高校生の少女がいた。白川さんは毎日話しかけたが、帰国日が迫ってきた。

私はもう帰国してしまうけど、あなたのことを忘れたくない。日本でもあなたの顔をずってみていたいから、だから一緒に写真を撮りたいのだと伝えた。すると、シャッターを切る時、ついに彼女が笑った(口絵の写真)。看護師として現場に戻ってきてよかった、看護師という職業の素晴らしさに改めて気づいた瞬間だった。

 

MSFは一般市民も兵士も同様に患者として受け入れる。シリアの反政府軍兵士、反政府地域の市民の患者が多い病院の中に、政府軍の負傷兵モハメドが収容された。彼には付き添う家族、知人がいなかった。壁を伝いようやく歩いていくモハメドのそばに付き添い、支える人は、他人の家族だった。やがて、相部屋で(戦争の被害者同士の)両軍の兵士が談笑する姿が見られるようになった。最も自然な形で国際人道法を守っていた。

 

フランスのボルドー空港の傍にMSFの物流センターがあり、テント、薬品、医療機器、生活物資など2万点があり、すべて通関手続き済で、24時間以内に送り出すことができる。

 

MSFの活動資金にうち公的資金は10%以下に抑えていて、94%は民間からの寄付だ。日本の寄付者も2020年度は43万人に増えた。
MSF職員は世界で4万5千人。医療従事者と非医療従事者の割合はほぼ半分。8%が海外派遣スタッフ、9%が事務局、83%が現地採用スタッフ。

 

 

初出:集英社ウェブイミダス『「国境なき医師団」看護師が出会った人々』

 

 

私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき、 最大は五つ星)

 

危険で過酷で、劣悪な環境の紛争地へ飛び込み、無念の想いに打ちのめされながら、明るさ、優しさを失わないか弱げに見える白川さん。その彼女が見た、悲惨な患者たち、疲労困憊の仲間たちの言動は、人間の底力、逞しさを我々に知らしめ、無益な戦争を繰り返す世にあっても、希望の光を与えてくれる。

 

 

白川優子(しらかわ・ゆうこ)          

1973年、埼玉県出身。坂戸鶴ヶ島医師会立看護専門学校卒。Australian Catholic Unibersity(看護科)卒。

日本で7年、オーストラリアで4年の看護師経験を積み、2010年36歳で「国境なき医師団」に参加。

イエメン、シリア、イラク、南スーダン、パレスチナ(ガザ地区)、アフガニスタンなど、紛争地や被災地に派遣。

2018年以降はMSF日本事務所・採用担当。

2021年9月時点で10ヵ国、18回の派遣経験。

著書に『紛争地の看護師』」。

 

最後に、国境なき医師団の宣伝を。

「国境なき医師団・白川優子が語る - 【公式】国境なき医師団日本」

 

 

以下は、私のメモ

 

ニカーブは両目の部分は小窓のような隙間があるが、あとは真っ黒な布を頭にかぶる。ブルカはその両目の部分が細かい網目状になっていて全身を黒い布で覆い隠す。

 

 

かってのパレスチナ贔屓をいまだに引きずっている私の、ブログ『紛争地の看護師』(白川優子著)から引用。

帰国時のテルアビブの空港の出国審査は残酷だった。パレスチナ支援関係者への嫌がらせだった。真っ裸にされ、渡航した国での接触した人の詳細、連絡先をしつこく質問された。部屋の外には荷物が散乱し、家族へのお土産の包装紙は破られ、財布内のレシート1枚まで取り出されていた。
しかし、白川さんは書いている。

「私が受けた嫌がらせと屈辱は、パレスチナ人がうけているものの比にならない。だけどこの時は、ここまでしなくてはならないほど追い込まれてしまったユダヤ人にたいする同情の涙も混じっていた。」
ただただイスラエルの暴虐に怒るだけの私に比べ、白川さんのやさしさにはあきれ果てるしかない。過酷な紛争地へ飛び込む勇敢な心と、敵を思いやる優しい心は同居できるのだ。

 

第七章 世界一巨大な監獄で考えたこと ─パレスチナ&イスラエル編─
「2014年、激しい空爆が51日間続いた。現在一ヶ月に1、2回の頻度で起こる単発の空爆は」話題にもあがらない。
「広大な農場も水道のシステムを破壊されたために荒廃している。工場も同様だ。電気の供給が機能せず、ガザでは電気をイスラエルから買わなくてはならないという屈辱的な仕組みが出来上がってしまった。……
屈辱感、従属感を与え続けるのもイスラエルの政策なのだろう」

国際連合パレスチナ難民救済事業機関が無料で小中学校教育を提供し、教育レベルは高い。ガザには大学だけでも8つあるが、卒業したとたんに行き場がなくなってしまう。

 

 

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絲山秋子『まっとうな人生』を読む

2022年07月21日 | 読書2

 

絲山秋子著『まっとうな人生』(2022年5月30日河出書房新社発行)を読んだ。

 

河出書房新社のそっけない内容紹介

ひょんな場合で偶然再会することになった「花ちゃん」と「なごやん」。あの『逃亡くそたわけ』から数十年後、富山県を舞台に、家族を持ったふたりの新たな冒険の幕を開ける。

 

「子供の一日は長い。あたしの一日は短い。」で始まる。

 

しずか:旧姓花田、花ちゃん。著者と同じく双極性障害を持つ37歳。17年前の前作(「逃走くそたわけ」)の十数年前、友達の名古屋出身の「なごやん」と精神病院から九州縦断の逃避行を繰り広げた。いまは嫁ぎ先の富山県で夫と娘・佳音(カノン)10歳と幸せな家庭を持っている。コロナ禍、ときどき病が顔を出して、いっとき夫と不安定な関係になっても、なんとかまっとうに生きていく。

アキオちゃん:しずかの10歳上の夫。富山の農機具販売の仕事。

なごやん:蓬田司。かって、しずかと一緒に福岡の病院を逃亡した。今は高岡に妻・亜里渉、小1の息子・拓海と暮らす。一緒にキャンプに行ったり、しずか一家と家族ぐるみの付き合いとなる。

 

 

初出:「文藝」2019年冬号~2022年春号

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

当方にはまったく興味のない富山の町のショッピングセンタなどローカルな固有名詞がズラズラ。うんざりしながら適当に飛ばし読みしたが、こんなのんびりした生活、これこそが人間の本来の生活、つまり「まっとうな人生」なのかもと思わされた。

 

読みながら、「田舎には住めないなあ」と思ったが、東京に住んでたってほとんど外出せず、人込みや、文化的イベントにはすっかりご無沙汰で、実際は「自然が遠い田舎住まい」になっていることに唖然。

 

 

絲山秋子の略歴と既読本リスト

 

 

のんびりした富山の生活、間が抜けたような方言(失礼)の中で、ときどき絲山さんの辛口、なにげない深い言葉が飛び出す。

 

「ママ友のランチは配慮オバケやマナー警察がうろつくホラーハウス。」

 

気を楽にと思って口にする言葉「ほどほどで」

「ほどほどという言葉の裏には、あなたの努力に関心はないけれど私の期待するレベルは満たしてくれよ、という要求が隠れている」

 

「暑いときも寒いときも、体が苦しいときも頭がおかしいときも、その気持ちをきちんと感じる。不安も恐れも受け止めるしかない。楽しかったら笑い、美味しかったらちゃんと喜ぶ」

 

「動物にしか教えてもらえないことはたくさんある。食べること、眠ること、運動、狩りや遊び、甘えること、安心すること、気持ちを伝えること、命あるものにとってそれがどんなに大切なことか。そして、今この時がすべてであること。」

 

「生命は飴みたいなもの」、「途中で噛んでしまったらつまらない」、(飴が細くなってぽっきっと折れる)「それがあたしの終わりだとしても、それを味わえばいいのではないか」

(ダメ男の発想:あっと思った時には「のど飴」をそのままスルリと飲み込んでしまった。意味ないじゃん!)

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今野敏『探花』を読む

2022年07月19日 | 読書2

 

今野敏著『探花 隠蔽捜査9』(2022年1月20日新潮社発行)を読んだ。

 

新潮社による内容紹介

神奈川県警刑事部長となった竜崎のもとに現れた、同期入庁試験トップの八島という男。福岡県警から赴任してきた彼には、黒い噂がつきまとっていた。さらに横須賀で殺人事件が発生、米海軍の犯罪捜査局から特別捜査官が派遣されることに――。次々と降りかかる外圧に、竜崎は警察官僚(キャリア)としての信念を貫けるのか。新展開の最新刊。

 

横須賀の薔薇で有名なヴェルニー公園で刺殺遺体が発見され、横須賀署に捜査本部が設置された。目撃者の堂門はナイフを持った白人が逃走したと語った。横須賀米軍基地と、NCIS(海軍犯罪捜査局)と警察の領分について議論し、捜査担当者リチャード・キジマが捜査本部に現れた。日本側は米軍の捜査参加に拒絶的だったが、竜崎は自分の責任で参加させた。

やがて、被害者は三竹という福岡の運送業者と判明し、福岡・横須賀間フェリー開通との関連が……。

 

 

探花:中国の科挙の最終合格者のうち、首席が状元、2位が榜眼(ぼうがん)、3位が探花。

 

神奈川県警

竜崎伸也:新任の神奈川県警刑事部長。東大法学部卒のキャリア。妻は冴子、長男は邦彦、長女は美紀。

佐藤実:神奈川県警本部長。竜崎の二期上。

阿久津参事官:刑事部長の補助役。情報通。

板橋捜査一課長:現場を任せられるベテラン。

八島:福岡県警から警務部長へ異動。東大法学部卒で竜崎と同期。入庁時の成績1番。2番伊丹、3番竜崎。

 

我孫子:横須賀署長。57歳。

伊丹:警視庁刑事部長。竜崎の同期で幼馴染。私大出。

大西渉:福岡選出の文部科学副大臣。八島が取り入った。

真喜田:北九州の指定暴力団・真喜田組組長。大西と小学校同級生。

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

シリーズ9作目となると、安定の筆力、安心して読め、そして面白い。
ただ、全体が単調で、竜崎が悩むような山場が欲しかった。

 

警察官僚の真骨頂を常に発揮し、まったくぶれず、単調とも言える竜崎には、最後の方では少々飽きる。息子・邦彦の危機では厳しい判断を迫られるかと思ったのだが、肩透かし。

 

陰険で竜崎も危ないかと思わせる八島が、オドオドするだけでほとんど出番がないのはもったいない。さらに、せっかく捜査に引き込んた特別捜査官・キジマや、相棒にさせられたベテラン刑事・潮田の活躍の場がほとんどなかったのも残念。

 

 

今野敏(こんの・びん)

1955年北海道三笠市生まれ。上智大学在学中の1978年に「怪物が街にやってくる」で問題小説新人賞を受賞。東芝EMI勤務を経て、執筆に専念する。1999年空手道今野塾を主宰。

2006年、『隠蔽捜査』で吉川英治文学新人賞
2008年、『果断 隠蔽捜査2』で山本周五郎賞と日本推理作家協会賞
2017年、「隠蔽捜査」シリーズで吉川英治文庫賞   を受賞。

さまざまなタイプのエンターテインメントを手がけているが、警察小説の書き手としての評価も高い。
近著に『宗棍』『ロータスコンフィデンシャル』『暮鐘 東京湾臨海署安積班』『ボーダーライト』『清明(せいめい) 隠蔽捜査8』、本書『探花 隠蔽捜査9』『無明 警視庁強行犯係・樋口顕』など。

 

 

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7月(1)の花

2022年07月17日 | リタイヤ生活

 

7月4日に届いた花

 

 

私、コロナ院中だったので、写真撮った時には小ぶりのヒマワリ数本が枯れて寂しくなっていた。

 

ヒマワリって、花言葉が「情熱」というように、本当に元気いっぱい。

 

リアトリスは北アメリカ原産で、花がアザミに、葉がユリに似ていることから「ユリアザミ」の和名がある。

 

「ソケイ」を検索すると、「素馨:モクセイ科ソケイ属の落葉性の灌木、ジャスミンの仲間」とあった。灌木って木じゃん! 色々な種類があるらしいが、5弁の白い花の写真があった。我家の花瓶の葉っぱを見ても、そんなそぶりはないし、香りもしない。

 

花はやはり盛りに見ないといけませんね。〇〇もそうだけど。

おっと失礼、年輪と共に美しさが深くなる方もいますがね。

 

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桐島洋子の略歴と既読本リスト

2022年07月15日 | 読書2

 

桐島洋子(きりしま・ようこ)
1937年東京生まれ。文筆家、エッセイスト。
1956年都立駒場高校を卒業し文藝春秋入社。1965年退社。
1967年ヴェトナム従軍記者。
1972年『淋しいアメリカ人』 大宅壮一ノンフィクション賞受賞。
以来独身のまま、かれん(モデル)、ノエル(エッセイスト)、ローランド(カメラマン)の3児を育て上げる。
1982年美術鑑定家勝見洋一と結婚。2002年離婚。
1987年、50歳で人生の「林住期」を宣言しバンクーバーに家を買い、「林住庵」と名づけた。
2008年中目黒の自宅で私塾「森羅塾」を主宰。
2014年アルツハイマー型認知症と診断が下る

 他の著書、『渚と澪と舵―ふうてんママの手紙』、『マザー・グースと三匹の子豚たち』、『ガールイエスタデイ -わたしはこんな少女だった-』(絶版)、『わたしが家族について語るなら』、『バンクーバーに恋する』、『林住期ノート』、『刻(とき)のしずく 続・林住期ノート』、『林住期を愉しむ 水のように風のように』、『林住期が始まる』、『聡明な女たちへ』、『 50歳からのこだわらない生き方』、『人生はまだ旅の途中』、『80歳のマザーグース』、『ペガサスの記憶

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桐島洋子『ペガサスの記憶』を読む

2022年07月14日 | 読書2

 

桐島洋子、桐島かれん、桐島ノエル、桐島ローランド著『ペガサスの記憶』(2022年6月20日小学館発行)を読んだ。

 

小学館の内容紹介

桐島洋子と三人の子供たちが繋ぐ家族の物語

 

「この伝記を読めば、なぜ私たちが桐島さんにあれほど熱狂したかわかる」・・・林真理子(作家)

 

フリージャーナリストとしてマス・メディアで活躍するかたわら、未婚のまま、かれん、ノエル、ローランドの三姉弟を育て上げ、「女性の自立と成熟」の代名詞として女性の絶大なる人気を集めた桐島洋子による、破天荒で波瀾万丈な自伝に加え、三人の子供達が、母への思いを存分に綴った、最初で最後の「桐島家」本格自叙伝。長年の桐島洋子ファンをはじめ、自分らしく生きることを模索する現代の女性たちに、年代を超えて勇気と元気を与えてくれる1冊。

 

「大胆不敵で聡明で驚くばかりの行動力。お嬢様育ちで女王様のようでもあり、恋をすると熱烈――」(桐島かれん)

「人間としての母に対する私たちのリスペクトは揺るぎないものです。その絆はどんなことがあっても変わりません」(桐島ノエル)

「現代のシングルマザーたちが置かれている環境も大変ですが、母の生き様が少しでも励みになってくれたら幸いです」(桐島ローランド)

 

今こそ知りたい! 「桐島洋子」という生き方

 

前半(第一章)は、桐島洋子さん自身の筆で、祖父が三菱財閥の大番頭の家柄、幼少期の思い出、破天荒な恋愛と3人子供の出産、自由奔放に我が道を行く「桐島洋子ワールド」が語られる。これまでのいろいろな媒体に書かれて来た内容が多いが、約100頁と要領よく語られる。

 

その後の話は、洋子さんがアルツハイマー型認知症を患って雑誌連載を中断していた。3人の子供たち、かれん、ノエル、ローランドがその後の話を追加し、反発も含めて母への思いを語り、後半(第二章)を追加して一冊の本としてまとめた。

 

「ペガサス」は、ギリシア神話に登場する伝説の生物である。鳥の翼を持ち、空を飛ぶことができる馬。

 

初出:第一章は月刊「本の窓」2016年5月号~2017年2月号、第二章は書き下ろし。

 

 

桐島洋子(きりしま・ようこ)の略歴と既読本リスト

 

 

私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき、 最大は五つ星)

 

私は桐島さんとお会いしたことがあった。バンクーバーの桐島宅を訪問し、「古希の祝いのパーティ」に参加し(「Capilano Golf Clubでパーティ」)、東京でのオトナの寺子屋「森羅塾」にも一度だけだが参加した(「桐島洋子の森羅塾へ」)。

歳を感じさせないきっぱりとした物言い、早口と早足に驚かされたあの桐島さんが認知症とは! 信じられなくて、悲しくて、この本を読んだ。

 

 

前半は、上海での幼少期の細かい話が私には初めてで面白かった。また、既に故人になったからだろうか、唐牛健太郎や、3人の父親・ダグなどとのあからさまな恋の話が興味をそそる。子供にはクールだが、愛人にはえらく情熱的なのが桐島さんなのだ。

 

女性に対する偏見に満ちた時代、不倫をものともせず恋に突進し、会社を騙して出産し、子どもは人に預け、したいことを諦めることなく実行に移す、底抜けのポジティブさと勇気と知性、それが彼女の貫いた生き方だ。

 

 

以下、私のメモ。

 

私は「かれん」はモデルやサディスティック・ミカ・バンドのボーカルなどやっていたので、派手な性格だと思っていたが、子供の頃から目立つのがいやで、普通がうらやましかったという。小学校のスクール水着を買ってもらえなくて、持っていた派手な水着を着て行って先生に怒られた。

母は、人の悪口も絶対に言わないし、泣き言も言ったことがありません。とにかくネガティブなことが嫌いで、私たちが弱音を吐いたりしようものなら、ムスッとして嫌がります。(p158)

 

1982年、母が45歳のときに結婚したお相手(勝見洋一)が私たち家族の中に入ってくると、歯車が狂い始めます。…自分のことを必要以上に大きく、よく見せるために、本当でないことも、本当のように話すのです。……母は話が上手な彼に、すっかり洗脳されてしまったかのようでした。(p166)

桐島さんは、2002年に勝見さんと離婚したが、その後も友人として仲よくし、病気になっても最後まで面倒をみたと聞いた。

 

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伊岡瞬『朽ちゆく庭』を読む

2022年07月13日 | 読書2

 

伊岡瞬著『朽ちゆく庭』(2022年6月10日)を読んだ。

 

集英社による紙版の紹介は簡単すぎるので、デジタル版の紹介

かつてのセレブタウンに引っ越してきた山岸家。中学生の真佐也は、転校前に部活をやめ、以来、学校をサボり、部屋にこもるようになる。けれど、その部屋には小学校からの友人・純二がこっそりと遊びに来ている。心配する母親・裕実子と対照的に、父親・陽一は不在がちであまり関心を示さない。真佐也はある日、家の向かいの公園でうずくまっている少女・あかりを見かける。その少女には怪しげな噂がつきまとっていた。一方、陽一は急に在宅勤務だと言って会社に行かなくなり、裕実子は勤務先の税理士事務所の上司と“残業”という名の密会を続けていて……壊れゆく家庭を描く“危険”なサスペンス長編。

 

山岸一家が多摩地区の朝陽ヶ丘ニュータウンに引っ越す場面から始まる。

山岸裕実子(42歳)は佐藤税理事務所で一般事務のパートタイマーをしている。夫・陽一(45歳)はゼネコンの東京本社で現場管理に仕事をしていて、泊まり込みの仕事も多い。

一人息子の真佐也(中2)は、学校をさぼりがちになっていて、引越しによりガラの悪い連中がいる赤川二中をやめてあさひ台中学に転校した。しかし、転校後もほとんど学校に行かない真佐也の部屋には、裕実子の出勤後に赤川二中からの友人・滝野純二がゲーム・「コルタワ」を一緒にやるために忍び込んで来ていた。

 

赤川二中で純二を虐めているのは、いやみな松野琉生と、乱暴な相沢恭太たちだ。純二をかばった真佐也に、恭太がスマホの画面を見せて「あまえの態度しだいで拡散するかもな」と脅した。真佐也は学校を休むようになった。

 

裕実子は勤め先の所長・佐藤一郎(52歳)と浮気していて、同僚には恭太の母親・相沢桃子がいた。

やがて、近所の小2の少女・坂井あかりの死体が山岸家で発見され、真佐也が自供し、白石真琴弁護士が担当する。そして、二転三転が始まる。

 

初出:「小説すばる」2020年8月号~2021年9月号(「濁流」を解題)

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

スイスイ、どれどれと読み進めてしまうが、読後に残るものは少なく、後味も爽やかではない。

複雑過ぎる殺され方をしていて、それによって最後の詰めを複雑にしているのは、公正と言えるのか?

 

子供は親が思っているよりも両親の真実、事情を良く知っていることが多い。たいして、親は、思春期の子供の本心は掴みにくい。どうしても幼い時の記憶に引きずられ成長を把握しがたいし、悪いことは信じたくない気持ちもある。また、親の嘘がばれていないと思いこんでいることも多い。

 

白石弁護士が言う。「…当職も、今まで少年事件をいくつも扱ってきました。彼らが本質のところで純真さを残していることはよく感じます。その一方で非常に場当たり的で、感情や雰囲気で発言を変え、正邪の判断基準にバラつきが多いのも現実です。 大人の犯罪者が否認から自白に転じると、かなりの割合で真相を語ります。しかし、子供の場合は『本当のことを言っても信じないなら騙してやろう』と考えたりします」

 

 

伊岡瞬の略歴と既読本リスト

 

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コロナ病床日記(2)

2022年07月12日 | 日記

 

まずは昨日書いた(コロナ病床日記(1))お迎えの車。救急車のような民間の搬送車。

 

以下、昨日の続きの入院生活の紹介。なにしろ79年生きてきて、生まれた時もお産婆さんにお世話になったので、入院は初めて。最初は物珍しく写真など撮っていたが、病室から一歩も出られず、見舞いもなしの8日間は長すぎた。なお、相方は陰性だが、濃厚接触者なので8日間自宅待機だった。

 

部屋は8畳間ほど。入口の右手に洗面台。左手にトイレとシャワー室。

さらに左手には、3段ほどの物入れと、小さな冷蔵庫の上に鍵の掛かる引き出しとTV。ひじ掛けイスと、奥にリクライニングベッド。コンパクトではあるが一応贅沢な個室。

 

窓の外に、昇る朝日。

 

窓からの眺めは良いのだが、緑はなく、ビルが並ぶだけ。

 

ポケっと雲が流れるのを眺めるも、時間を潰せるのも多くても数十分。

 

夜間、ビルの灯りや、交差点を眺めても、すぐに飽きる。

 

幸いにも入院初期から体調は良く、ただただ、退屈だった。退屈しのぎにやったことを以下に述べる。

 

読書

持参した本は一冊で伊岡瞬『朽ちゆく庭』(明日、13日にブログに掲載)。読みながら、看護師さんに買って来てもらった学習ノートにメモしていって、記事を手書きでほぼ書き上げた。図書館で借りていた他の本は入院期間中に返却日が来るので、持って来られなかった。

 

電話

スマホで相方には毎日電話し、久しぶりの友人たちに電話やメールして、コロナでベッドからだと言って驚かせた。

 

ネット

家ではYouTubeで長い時間音楽を聴くことが多いが、Wi-Fiの電波が弱くてつながらず、データ量が小さな契約なので、ニュースぐらいにしか見られなかった。昔スマホに記録しておいた音楽を聴いた。久しぶりのモダンジャズがけっこうイケた。

 

TV

久しぶりに見る地デジは全滅で、BSで、パラグライダーでアルプスを越えるレースなどほんの少ししか面白い番組はなかった。

 

 

食事

 

朝食

 

昼食

ご飯はこの後、半分にしてもらった。

 

晩飯

昭和の匂いのする食事で、年寄向きの健康食。薄味だが、味付けは極上。若い人は足りないのでパンなどを買っていると聞いた。

 

 

以下、さらに細かい話

 

毎日のスケジュールは、朝7時起床、朝飯前健診(体温、血圧、血中酸素飽和濃度)、8時朝飯、12時昼飯、夕飯前健診、18時夕飯、21時消灯が基本。

 

身体に、心電図センサーを3カ所貼り付けられ、指に血中酸素飽和濃度を測るパルスオキシメータのセンサー部を巻きつけられ、測定部・通信部の機械(テレメトリー式心電送信機)をパジャマのポケットに入れた。したがって、シャワーを浴びる時には看護師さんに声を掛けて取り外し、取り付けを頼まなくてはならない。

 

この病院ではパジャマ・バスタオル・タオルのセットが数百円円/日でレンタル(洗濯付き)でき、シャンプーリンス・ボディーソープや、菓子、パンなどは看護師さんに頼むと(月水金AMのみ)、下にあるコンビニで買って来てくれる。持参する必要があるものは、下着類だけだ。爪切り・糸ようじ・ハサミなど旅行用品も持参した方が良い。

 

運動不足になるので、簡単なストレッチや、室内歩きに努めた。部屋の端から端まで約10歩、一日千歩歩いた。狭い部屋を行ったり来たりで檻の中のトラになった気分だった。

 

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コロナ病床日記(1)

2022年07月11日 | 日記

 

某日、コロナ病床から復帰して帰宅しました。

 

このブログ、時間、場所が特定されると関連の方にご迷惑をかけるといけないので、いつもにもまして、あいまいな形にして報告します。

なお、私のブログはあらかじめ予約投稿(多い時は半月以上先まで)してあり、臨時の場合は割り込んで投稿するというやり方にしています。したがって、入院中も、過去の投稿が自動でAM5時にアップされて続いていました。

 

 

某月某日、歩いて数十分、武蔵野市の図書館へ行き、本を自動機械で借り出して、千円+αで10分の床屋(吉祥寺に3か所ある)へ行き、野菜を買って帰りました。途中ほとんど人と話すことなく、人込みにもまぎれませんでした。この日の近辺の日には外出していないので、なぜかこの日に感染したと思われます。

皆さんも、感染拡大の中、いつどこで感染するか分からないので、ご注意ください。

 

翌日は何でもありませんでした。

3日目に咳が出始めましたが、体温は37.1度でしたので、風邪薬を飲みました。

4日目、朝から37.8度で、喉に何かあるかのような激しい咳が出て、誤嚥したかなと思いました。かかりつけ医に電話すると、17時まで待って発熱外来に来るように言われました。まさかと思いながら、行くと、「COVID-19抗原定性検査+」で、コロナ感染が確定しまし、明日の保健所からの指示を待つように言われました。この日が発症日となりました。

かかりつけ医から新薬ラゲブリオ(カプセル200mg 一日2回4錠)を紹介され、効果・副作用などの説明を受け、新しもの好きな私は即OKしました。

 

5日目、10時前に保健所から電話あり、年齢や容態を聞かれ、自宅から入院か希望を聞かれました。相方に負担がかかるので入院を希望しました。まだ感染拡大直前だったからでしょうか、入院希望がとおり、病院を探してからまた電話しますので、〇〇、〇〇などの入院の準備をしておいてください、発症日から10日間が隔離期間ですと切れました。

12時半に保健所からの電話で急ですが13時に迎えの車が行きますと言われ、車が来ました。車は、中央に寝台がある民間の搬送車で、私は端の椅子に座りました。

 

病院に着くと、ビニールシートで囲まれた車椅子が来ていて、車を降りると、すぐにこの車椅子に入れられて、いくつもの鍵の掛かったドアを開けて複雑な通路を通り、隔離病室へ入りました。以後、退院までこの部屋以外を見ることもなく、ここで9日間(発症日から10日間が隔離)を過ごしました。

 

長くなったので、また次回とします。

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防衛力増強に思う

2022年07月09日 | 世の動向

ウクライナでの戦争ニュースを見ていて思った。

防衛費を日本が倍にすれば、経済が大きい某国は3倍、4倍にするだろう。確かに兵器の最先端化、情報戦能力向上は必要だと思うが、最も大切なことがある。

戦場で戦うのは金持ちでなく、貧しい若者なのだ。今、多くの若者が、死をとしてまでこの日本を守らねばならないと思うだろうか?

格差を少なくし、若者が将来に希望を持てる国にすることこそが、根本的防衛力強化なのだ。少なくとも現政権では駄目だと思うのだ。

コロナ病床にて、なれないスマホ入力で。

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海野聡『森と木と建築の日本史』を読む

2022年07月09日 | 読書2

 

海野聡著『森と木と建築の日本史』(岩波新書(新赤版)1926、2022年4月20日岩波書店)を読んだ。

 

表紙裏にはこうある。

衣食住から信仰に至るまで、日本の歴史とは、木とともに歩んだ歴史であるといっても過言ではない。森のめぐみを享受した先史時代、都城や寺院などの大量造営が展開した古代から、森との共生を目ざす現代まで――建築のみならず流通にも着目し、また考古・民俗・技術などの知見も駆使して、人びとが育んだ「木の文化」を描く。

 

古代から現代まで、大規模寺院建設に伴う巨木入手が徐々に困難となってきた中で、さまざまな工夫、苦労の歴史を詳細に語っている。

 

日本は、国土の70%が森林であり、現代までの日本人の住居はもちろん寺院なども豊富な木材を利用した木造だった。木々はさまざまな家具なども含め、日本人の生活の中に溶け込んでいた。しかし、大規模寺院建築が続き、ヒノキの巨木の入手ができず寺院建設に困難がともなうようになってきた。樹種の多様化とともに巨木の伐採地域が奥地へ拡大し、運搬手段も進歩を強いられた。いよいよ入手が限界に近づき、森林の伐採と育成のバランスの試みが始まった。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

タイトルは『森と木と建築の日本史』だが、主な話は大規模寺院建築の巨木に限っていて、一般住宅についてはほとんど触れていない。また、個別例だけで全体のデータは示していない(存在しないのかも)。

 

巨木の話は興味を引き付ける話題で、いかに巨木を求めて苦労したかは面白い話になっている。

 

寺院建築の細部に話が及び、聞きなれないし、読めない漢字の名前が出てくるのだが、図などで明示したり、出てくるたびに振り仮名をふって欲しかった。

 

海野聡(うんの・さとし)

1983年,千葉県生まれ.2009年,東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程中退.博士(工学).奈良文化財研究所を経て,現在は東京大学大学院工学系研究科建築学専攻准教授(専門は日本建築史・文化財保存)

著書『奈良で学ぶ 寺院建築入門』(集英社新書)、『日本建築史講義――木造建築がひもとく技術と社会』(学芸出版社)、『古建築を復元する――過去と現在の架け橋』(吉川弘文館)、『建物が語る日本の歴史』(吉川弘文館)、『奈良時代建築の造営体制と維持管理』(吉川弘文館)

 

 

目次

序章 日本の森林と木の文化
第一章 木と人のいとなみ
 一 森林と人のかかわり
 二 生活のなかの木材と森林の変化
 三 木の特性を知る
 四 木を加工する
第二章 豊かな森のめぐみ――古代
 一 豊富な資源が可能にした大量造営の時代
 二 産地から現場まで――どのように運ばれたか
 三 適材適所の利用――各地の事例から
 四 木の特性を熟知していた古代人
第三章 奪われる森と技術のあゆみ――中世
 一 巨材の減少――大仏殿造営からわかる資源枯渇
 二 進む利権化
 三 樹種を使い分ける
 四 革新的な道具の登場
 五 海をわたる木材
第四章 荒廃と保全のせめぎあい――近世
 一 消極的保全から積極的保全へ――資源保護の模索
 二 大火がもたらした流通の変化
 三 広がる樹種の選択
 四 信仰を受け継ぐために――御杣山と神宮備林
 五 巨材の探求と技術革新
終章 未来へのたすき――近代から現代
 一 今もつづく運搬の苦労
 二 木材不足から紡ぐ森林へ
 三 おわりにかえて
あとがき

 

 

以下、私のメモ

 

広葉樹は細胞が蜜で硬く重く、針葉樹は密度が低く柔らかく軽い。

杣取り(そまどり):山から木材を伐り出す。

杣(そま):木を植え育てて木材をとる山。山から木材を切り出す人。

 

古代

7~8世紀は、仏教の公伝以降の寺院建設や都城の建設など大きな造営ラッシュの時期で、これを支えたのが日本列島の豊富な森林資源。

法隆寺をはじめとする古代の諸建築はヒノキで建立されてきた。

ヒノキの植生限界は福島県付近。東北には秋田のスギ、青森のヒバ(アスナロ)がある。

日本の塔は基本的に上層に登ることはできず、二層以上はみせかけの装置で、中心の心柱を保護するために存在するといっても過言ではない。

屋根の板葺きには、一枚の厚板を葺く厚板葺と薄い板を何層も重ねて葺く柿葺(こけらぶき)がある。檜皮葺(ひわだぶき)はヒノキの樹皮を剥ぎ、何枚も重ねて葺材とするもので、ヒノキが日本と台湾にしかないために日本独特なもの。

唐から持ち込まれた仏像は南方系の香木類のビャクダンで造られている。日本では代わりに、榧(カヤ)やクスノキが使われる。

 

中世

鎌倉時代再建の大仏殿の、柱は約20m太さ156㎝や、22m太さ144㎝。棟木は長さ39mで、畿内の森林資源の枯渇のため木材集めが第一の課題で、運搬も困難だった。

 

近世

森林の荒廃と保全のせめぎあいが起こる。奥地からの新しい運搬ルート開発も角倉家や紀伊国屋文左衛門により行われ、特権的膨大な利益を上げた。

 

伊勢神宮のための森

伊勢神宮では内宮、外宮ともに、それぞれ東西同じ大きさの敷地があり、20年ごとに隣りに新しい社殿を造り替え、とくに式年遷宮という。690年以来、中世の中断をはさみつつ2013年の第62回遷宮まで続いている。

式年遷宮による古社殿の部材は、鳥居など他の場所で再利用される。

用材のヒノキは非常に太く、長い材で、20年毎に1万本以上必要になる。供給する山を御杣山(みそまやま)といい、当初は近隣の山々から供給されていたが、平安時代以降困難になった。1709年からは遠く木曽に御杣山が移された。大正4(1915)年には造営材備林制度が定められ、100年伐採しない永久備林と今後100年の造営材とするための臨時備林の二つによる神宮備林が設けられた。

 

毛綱

東本願寺御影堂建設にあたり巨材を運ぶための引綱は強度を上げるために、女性の髪と麻を編み込んだ太さ30㎝の毛綱が用いられた。

 

 

 

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