hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

葉室麟『乾山晩愁』を読む

2013年07月31日 | 読書2

葉室麟『乾山晩愁』(角川文庫)を読んだ。

江戸時代の絵師、尾形乾山、狩野永徳、長谷川等伯、清原雪信と狩野探幽、英一蝶の人生の悲哀、苦悩、野心を、時の権力者、綿密な資料調べで描いた5編の短編集。

「乾山晩愁」
江戸中期を代表する画家尾形光琳の弟の尾形深省(陶工としての号は乾山)(1663-1743年)は、いかにも才能あふれ、生活も派手な兄と違い、地道で、自らの才能に自信がもてない。光琳亡き後、乾山の陶器に絵付けしてもらうこともできない。光琳のように江戸に出た乾山は、晩年に語る。
「結局は人の情や。人の情をしのぶのが物語や絵なんや」「兄さんにとって絵を描くことは苦行やった。この世の愁いと闘ったのや。そうしてできたのが、はなやかで厳しい光琳画や。わしは、愁いを忘れて脱け出ることにした。それが乾山の絵や」

「永徳翔天」
足利将軍、織田信長、木下藤吉郎など権力者に取り入ることを、土佐派の土佐光元、光茂などと争いながら、狩野源四郎(のちの永徳)(1543-1590年)は、その卓越した絵筆で、狩野派の御用絵師としての座を盤石のものにする。
永徳は、織田信長による天下城、安土城の1階から7階まで「天を飛翔する」一世一代の絵を描くが、城とともに焼失してしまう。
子は凡才であり、やがて長谷川等伯の名が高まっていく。

「等伯慕影」
日本画のトップ、巨匠だった狩野永徳に戦いを挑んだ長谷川等伯を描く。武田信玄の肖像画で名を知られ、派手嫌いの千利休に取り入り、狩野派の一角を破る。やがて靄に煙る黒一色の松林図で高名を得るが、長谷川派を託そうとした才能豊かな息子久蔵は若くして死ぬ。

「雪信花匂」
三家に分かれた狩野家の分家でありながら、狩野探幽は16歳で御用絵師となり、やがて天下一の絵師となる。その探幽の姪の娘で、狩野派随一の女流画家、清原雪信は若くして評判をとったが、恋に生きた。

「一蝶幻景」
絵師の多賀朝潮(ちょうこ)は俳諧師宝井其角の家を訪ねる途中で蝶の群れを見る。朝潮は伝統的狩野派の絵に飽き足らず、今の風俗画を描き、師の安信をしのぐ評判を得た。その結果、吉原通いを咎められて破門になった。
将軍綱吉の愛妾お伝の方は綱吉の生母桂昌院のお気に入りであることから大奥で勢力を強め、公家からの御台所正室信子夫人は京の官女を呼び寄せて対抗しようとしていた。いわば、大奥を舞台にした幕府の禁裏の争いに巻き込まれた朝潮は島流しとなる。11年後、赦免船で江戸に戻る途中、蝶を見たことから、英一蝶(はなぶさ・いっちょう1652-1724年)と名乗る。



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

江戸時代の絵師に興味のある人には喜ばれるだろう。しかし、良く調べた歴史的事実を巧みに組み合わせて丁寧に描いているのだが、ただ、事実の羅列というか、潤いやユーモア、深みがない。一話の創作部分をもっと書き込んで、連作でなく、長編にした方がよかったと思う。

歴史の組合せ方も多少強引だ。例えば「一蝶幻景」では、英一蝶、狩野派内の争い、大奥、赤穂浪士討入り、日蓮宗の不受不施派を強引に絡み合わせている。



葉室麟さん(はむろ・りん)
1951年北九州市生まれ。西南学院大を卒業し地方新聞記者。
2005年「乾山晩愁」で歴史文学賞受賞しデビュー
2007年「銀漢の賦」で松本清張賞
2009年「いのちなりけり」と「秋月記」、2010年「花や散るらん」、2011年「恋しぐれ」で直木賞候補
2012年「蜩ノ記」で直木賞受賞 


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西荻駅前のこけし屋へ

2013年07月29日 | 食べ物
西荻附近の有名な料理店というと、荻窪近くのそばの「本むら庵」、看板も出さない「鮨たなか」と、西荻駅前の洋菓子とフランス料理の「こけし屋」が思い浮かぶ。

こけし屋の本館は1Fがケーキ売場、2Fが喫茶、3Fが今回行った仏蘭西料理。その他、別館がある。



3Fに上がると昼時とあって狭いながらも満席。皆さん予約のようだ。さすが老舗、平均年齢60以上だろう。親族顔合わせの一組だけに若い人がいる。

テーブルの花



オードブル



カボチャのスープ



メインは魚を選択し、金目。いつものように、がばついて写真を撮り忘れ。



デザートのアイスクリームは美味しいのに、ケーキがいまいち。ケーキ屋なのに。



ということで、雰囲気も含めてちょっと古くなり過ぎで、3800円では??



こけし屋について

こけし屋は戦後できたときから、西荻界隈の文化人を講師としてこけし会を開いていて、昭和24年から中央線沿線の文士や画家などによる「カルヴァドス会」で石黒敬七、井伏鱒二、丹羽文雄、徳川無声、東郷青児などが集まっていた。今でも包装紙などに描かれている西洋人形の絵は、吉祥寺南町にいた鈴木信太郎が描いたものだ。
こけし屋というと、職場に職員食堂とは別に幹部食堂というのがあって、こけし屋に委託されていたのを思い出す。昔々のことだ。


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藤原緋沙子『百年桜』を読む

2013年07月27日 | 読書2

藤原緋沙子著『百年桜』(2013年3月新潮社発行)を読んだ。

「書下ろし時代小説の女王」が隅田川の渡しでの5人の男女の切ない人生模様、新たな一歩を描く5つの短編。

「百年桜」 “竹町の渡し”
奉公人が100名もいる大店、日本橋呉服問屋「大津屋」の手代新兵衛は、長年真面目に勤め、小頭一歩手前まで来ていた。悪の道にはまった故郷蒲生での幼馴染、伊助を助ければ未来はない。どうする新兵衛。ケーン、ケーン、小鹿の声が聞こえる。船の行く手の岸には満開の桜。新兵衛にはまるで蒲生の百年桜に見えた。

「葭切」 (よしきり)“橋場町の渡し”
お見合いをしている茶道具「大和屋」の娘おゆきは22歳。もはや行き遅れだが、3年前に会った薬売りの啓之介が忘れられない。しかし、啓之介は山流しとなり、・・・。ギョ、ギョシ、シキリの声が聞こえる。

「山の宿」 “山の宿の渡し”
出奔した奥井継之助が亡くなったとの知らせを受けて、離縁された元妻のおまきは江戸に向かう。継之助出奔の経緯は? 江戸で何をしていたのか?

「初雪」 “富士見の渡し”
甲州勝沼の秀治はぶどうを運んで江戸へ来る。そして、小さい頃家を出ていった母を探し出す。川の中ほどで見えた富士山は初雪を頂いていた。許嫁の心配をよそに、秀治は・・・。

「海霧」 “本湊町の渡し”
土屋禮次郎は妻多紀をたぶらかし、不義を働いた伊沢重三郎を追って13年。寄せ場送りの船着き場には重三郎を待つ女がいて・・・。

初出:「百年桜」(蒲生の桜)小説新潮2012年3月号、「葭切」小説新潮2012年7月号、他は書下ろし



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

時代物や、いわゆる人情物が好きな人には四つ星だろう。読みやすいし、良く書けている。確かに、“隅田川の渡し場”には、人生の縮図があり、人生の哀歓が色濃く漂っている感じがする。

脚本家出身の作家は、人生の機微を描くのがうまく、文章も簡潔な人が多い。ただ、あまりの手練れぶりに、左脳がいささか反抗的になる。このまま固まってしまいしょうな私の脳には、何か新しい刺激が欲しい。



藤原緋沙子(ふじわら・ひさこ)
高知県生まれ。累計部数300万部を超えるという。
小松左京が主宰する「創翔塾」を経て、脚本家、小説家。
テレビドラマ「長七郎江戸日記」、「はぐれ刑事純情派シリーズ」「藍染袴お匙帖シリーズ」などの脚本。
2002年「隅田川御用帳シリーズ」の第一巻『雁の宿』で小説家デビュー。
2013年、『隅田川御用帳』で第2回歴史時代作家クラブ賞シリーズ賞受賞。


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永六輔×矢崎泰久『ぢぢ放談』を読む

2013年07月23日 | 読書2

永六輔×矢崎泰久『ぢぢ放談 激闘篇』(2013年5月創出版)を読んだ。
2010年5月発刊の第1弾に続く、月刊「創」の連載対談集第2弾。今回は2011年2月から2013年4月までの対談。
第2弾では、東日本大震災の発生、永さんの交通事故や骨折入院、パーキンソン病などとの格闘との意味から「激闘篇」と名付けられている。

いくつか抜き出す。

「親鸞」を「おやどり」、「法然」を「ほうぜんと」と読む人がいる。

でも、そういう話を聞いても、驚かない自分が怖い。(永)



永さんの家はお寺だから、子供のころ、誰かが死ぬとおかずが一品増える。(もちろんジョークです)

矢崎さんが、橋下さん、猪瀬さんのことをぼろくそに言う。

永:じじいの対談らしく、愚痴ばっかりになってきたね(笑)
矢崎:都知事選では宇都宮健児さんの応援に、佐高さんと俺であちこち行ったけど、候補者をろくに紹介しないで、二人でずっと猪瀬の悪口を言っていた。あれじゃ誰が候補者かわからない
永:猪瀬直樹の宣伝になっちゃう(笑)

矢崎:以前の井上ひさしさん夫婦は凄かったね。・・・離婚した元女房が何か言うと、すぐに手が出る。・・・亭主だけが殴っていたわけじゃない。元女房も噛みつく、ひっかく、飛び道具を使う(笑)、噛んだら離さない。そのうち井上さんは血だらけになるんだけど、でも原稿は書かなくちゃいけないから、「右手はやめてください」と右手だけかばうんだ。・・・
子供たちはすっ飛ばされて部屋の隅で怯えてる。普通じゃないよ。芸術家には天才的な狂人がいるけれど、井上さんも一種の素晴らしい狂人だったね。




私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

バカバカしい話が多く、笑える。しかし、話に出てくる人は年寄りばかりなので、若い人には向かない。また、政治的立場がリベラルで、橋下大阪市長、石原慎太郎、猪瀬都知事をぼろくそに言っているので、右翼の人は(偏見でラベリングしてはいけません。どうもすいません)読まない方が良い(読むわけないか!)。



永六輔(えい・ろくすけ)
1933年生まれ。TBSラジオ「土曜ワイドラジオTOKYO 永六輔その新世界」
浅草の最尊寺16代住職の次男で、現住職。
『大往生』『あなたの「いのち」をいただきます』『あの世の妻へのラブレター


矢崎 泰久(やざき やすひさ)
1933年東京生まれ。編集長、フリージャーナリスト。
早稲田大学政治経済学部政治学科中退。日本経済新聞社記者や内外タイムス記者を経て、
1965年『話の特集』を創刊、1995年休刊。
中山千夏とは意気投合し、二人のユニット「狭間組」を結成して著作活動などを行なった
『「話の特集」と仲間たち』永六輔との共著『バカまるだし』



目次

1 救急車なんて知らない
タクシー事故で初めて救急車に/搬送先の病院で待っていた医者は?/事故の影響で予想外の事態が… 他

2 地震なんて知らない
手が震えるから病気のせいかと思った/防災服の似合わない政治家/原発反対のきっかけは吉行淳之介 他

3 土下座なんて知らない
ロボットみたいな土下座/番組途中で永さんが消えたことも/唐十郎と寺山修司のしゃれたケンカ 他

4 データなんて知らない
『永六輔 戦いの夏』NHK出演の反響/パーキンソンのキーパーソン/五木寛之さんの「おやどり」!? 他

5 骨折なんて知らない
右肩脱臼の2日後に骨折/立川談志の死「ダンシガシンダ」/「ぢぢ放談」収録の朝、最初の怪我 他

6 病人なんて知らない
1年前と同じ病院に緊急搬送/4~5日間は不思議な空白/大変だと自覚するまで時間がかかった 他

7 入院なんて知らない
2カ月の入院生活で考えたことは/元気で輝いているのは女性ばかり?/オリジナリティがテレビからなくなった 他

8 全快なんて知らない
日本の政治家は“蚊帳の外”/葬儀屋にもいいのもいる/今はふたりとも転ばないのが先決 他

9 がれきなんて知らない
聞いている人の半分が「引いた」/東京大空襲も震災も語り伝えることが大事 他

10 がんなんて知らない
パーキンソン病と骨折と、さらにもう一つ加わった/文化として捉えてがんと向き合う 他

11 原発なんて知らない
反原発集会に参加した/「原発の明かりで原稿は書かない」/沖縄に原発がない理由は… 他

12 維新なんて知らない
まやかしの道具に使われた「船中八策」/マスコミはなぜあれほどもち上げるのか 他

13 有権者なんて知らない
史上最悪のひどい選挙だった/不愉快だった猪瀬直樹の都知事当選/小沢さんは軍歌を反戦歌にしていた 他

14 戦争なんて知らない
永さんの辛さが初めてわかった/いつのまにか戦争が始まる雰囲気/安倍首相には一刻も早く退陣してほしい 他

15 暴力なんて知らない
電車の優先席であわや乱闘に/我慢を強いられる東北と沖縄の人たち/井上ひさし夫妻の壮絶な殴り合い 他
あとがき


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絲山秋子『忘れられたワルツ』を読む

2013年07月21日 | 読書2

絲山秋子著『忘れられたワルツ』(2013年4月新潮社発行)を読んだ。

震災の影響が裏にある7編の短編集。

恋愛雑用論
「恋愛とは雑用である。不要でなく雑用である。」で始まる。忙しいときに限ってオトコというものが現れると嘆く40歳過ぎで独身の日下部。何かというとおしゃべりに来る小利口くん(金子くん)を軽くあしらう。
30歳過ぎてからはイキオクレのレッテルでもってまだ少しだけ責められたが35をすぎてからはヘンクツのレッテルに上書き保存されてすっかり楽になった。40過ぎたらなにひとつ更新されなくなった。肩の荷が下りてせいせいした。
県庁所在地から車で1時間余り、町の大半を占めるのは自衛隊の演習場というR・・・町に住む。恋愛についてシニカルな主人公も、災害派遣に向かう自衛隊の車を見て涙する

強震モニタ走馬灯
フェイスブックのなかのバブル世代の知人たちは、ささやかな幸せに満足しているよ、無難なこと以外は話したくないよ、と食べ物の写真ばかり載せる。
やらないというためには文明を否定するぐらいの強い理由が求められるような気がして登録してみたものの、他人の真似して「恵比寿なぅ」「ランチなぅ」と打ち込んだ井出は自分がイヤになって、それからあまり見なくなった。

離婚した友人魚住は、震災後とりつかれたように地震計の揺れを配信する「強震モニタ」のリアルタイムマップを見続ける。
井田は、「私なんかほんとに面の皮一枚だ」「身体にいい食べ物とか適度な運動とか美白とか、或いは大人のふるまいとか気遣いとか品のいいしゃべり方とか、なにもかもうすっぺらだ。中身がない。あさましい」と思う。

葬式とオーロラ
巽は、小学校の恩師の葬式に出るため、激しい雪の中、車を走らせる。途中でオーロラ発生装置を運送し、高速道路のスタンプラリーを集める女性に会う。また、譲ってもらった閉校記念のマグカップを会社で使っていた女性が後に妻になった人だった。譲る方も譲る方、使う方も使う方。

ニイタカヤマノボレ
土埃の中のシマウマの夢。「ニイタカヤマノボレ」の暗号を送出した巨大な鉄塔。預言者のおばさん。死んだいとこの峰夫。鯖江君との付き合い。おまえはひとの気持ちに寄り添うってことができないからアスペルガーだと彼が言う。私は叫ぶ「ニイタカヤマノボレ」。

NR
津田はホワイトボードにNR(直帰、ノーリターン)と書き、部下の湯浅といつもの電車に乗ってM市・・・の取引先へ出かける。二人は電車の中からアパレルワールドに迷い込んでしまう。もう帰れないNRか?

忘れられたワルツ
テレビに出始めて家にいることが少ない母、20ヵ国の言語を学ぶ父。ピアノを弾く姉は母を探して出かけて戻らない。大学生の風花は痒みの発作が。

神と増田喜十郎
増田喜十郎は高校の同級生タカちゃんを助け、彼は市議から市長となる。やがて、老人となった増田は女装するようになる。
災害は都市も農村も根こそぎにした。
神はいつもそこにいた。お力になれず、申し訳ない―― 神は跪いて人類に詫びた。

初出:「新潮」2012年3月号~2013年3月号



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

わけのわからない話が多い。しかし、どの短編にも、底流には3・11以後の不穏な空気が漂っている。著者はさまざまな形で3・11を知ってしまった後の世界感を描いている。このような形で大災害による哀しみを描くことも小説の役割の一つなのかもしれない。
それにしても、跳んでいる。



絲山秋子(いとやま あきこ)
1966年東京生まれ。早大・政治経済学部卒後INAXに入社し、営業職で数度転勤。
1998年に躁鬱病を患い休職、入院。入院中に小説の執筆を始め、2001年退職。
2003年『イッツ・オンリー・トーク』で文學界新人賞を受賞。芥川賞候補。
2004年『袋小路の男』で川端康成文学賞受賞。
2005年『海の仙人』で芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。『逃亡くそたわけ』で直木賞候補。
2006年『沖で待つ』で芥川賞受賞。
他に、『ばかもの』『北緯14度』など。


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高田郁『残月』を読む

2013年07月18日 | 読書2

高田郁著『残月 みをつくし料理帖』(ハルキ(時代小説)文庫 た19-10、2013年6月角川春樹事務所発行)を読んだ。

「みをつくし料理帖」シリーズの第7弾。吉原の大火で「つる家」の助っ人料理人の又次が死ぬなど悲しみで終わった前作から、希望の芽が大きく育ちそうな最新作だ。謎のままだった芳の息子の佐兵衛が姿を見せ、その芳にも幸いが姿をみせる。

第1話:「残月-かのひとの面影膳」
又次をしのび、「三方よしの日」に出した精進料理が「面影膳」。そして、又次に助け出された摂津屋が「つる家」を訪れる

第2話:「彼岸まで-慰め海苔巻」
玄関番のふきが調理師見習いになり、りうが玄関番、兼巧みな呼び込みとなる。一柳の柳吾により、佐兵衛の消息がもたらされる。心配でたまらない芳に澪が作ったのが、江戸で初めて出会った海苔巻。

第3話:「みくじは吉-麗し鼈甲珠(べっこうだま)」
登龍楼の采女宗馬(ほとんど唯一となった悪役)は、澪を引き抜こうとし、吉原に相応しい料理を創作できるかと賭けに誘う。澪が期限ぎりぎりで出した作品は、玉子の黄身を味噌とみりん粕に漬け込んだ「鼈甲球」。

第4話:「寒中の麦-心ゆるす葛湯」
料亭「一柳」の柳吾の看護に望まれた芳は、大阪天満一兆庵のご寮さんだった実力を発揮し、店の者たちや、なんといっても柳吾に・・・。回復した柳吾が芳と澪を葛湯でもてなす。

巻末付録「澪の料理帖」の他に、特別収録として、「みをつくし瓦版」「秋麗の客」



私の評価としては、★★★★★(五つ星:是非読みたい)(最大は五つ星)

シリーズの途中で「五つ星:是非読みたい」と言われても今まで読んでいなかった人は困るだろうが、でも、今からでも読まないと、次回あたりで終わっちゃうかもよ。

前作に比べ、今回は明るい話題、兆しがあって、耐えた分、一気に突っ走る気配があり、ますます次回への期待がふくらむ。
私の予想では、次回は、芳と柳吾は当然のこととして、ふきは一人前となり「つる屋」の料理人となるだろう。では、肝心の澪は? 源斎と? 野江はどんなふうに助け出されて澪と会うのか? 佐兵衛が犯した料理人がやってはならないこととは何か? 
一代限りと決めた料亭「一柳」の後を佐兵衛が継ぎ、女将が芳で、料理人が澪では落ち着き過ぎ?
著者は、最後のシーンを頭に置いて書き進めていると聞くと、悔しく、気がせいて、もう次回が待ち遠しい。



高田郁(たかだ・かおる)は兵庫県宝塚市生れ。中央大学法学部卒。
1993年、川富士立夏の名前で漫画原作者としてデビュー。
2006年、短編「志乃の桜」
2007年、短編「出世花」
『みをつくし料理帖』シリーズ
2009年~2010年、『第1弾「八朔の雪」第2弾「花散らしの雨」第3弾「想い雲」
2010年『 第4弾「今朝の春」
2011年『 第5弾「小夜しぐれ」
第6弾「心星ひとつ」
2012年『 第7弾「夏天の虹」
みをつくし献立帖
その他、『銀二貫』『あい



又次の死を悲しんで泣くふきに種市が言う。
「この齢になってわかることだが、残された者が逝っちまった者のために出来ることは、そう多くは無ぇのさ。中でも大事なのは、心配をかけないってことだ」

娘のつるを亡くした種市だからこその言葉だろう。


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芙蓉亭で外食

2013年07月16日 | 食べ物

2020年5月、残念ながら、「芙蓉亭」は閉店しました。


2013年6月、芙蓉亭でランチしました。

吉祥寺をプラプラしていて、玄関へのアプローチが長いレストランがあったのですが、たまたま休みで入れませんでした。知人がここで会食した話を聞いて思い出し、行ってみました。



井の頭公園に面した一軒家レストラン。ダイニングにはモダンな空間が広がり、公園の緑がテーブルを演出・・・
とある「芙蓉亭」です。


内部は落ち着いた雰囲気で、サーブしてくれる方は60代?の男性でした。年相応で、背筋をピンと伸ばした男性の給仕さんがいると、店の風格が上がりますね。喫茶店でも、西荻のこけし屋や、鎌倉駅前の豊島屋がそうでした。

まず、私は、岩手・地養鶏胸肉のサラダ仕立て ブルーチーズのソース



相方は、アボガドの冷たいポタージュスープ





私のメインは、スペイン産ガルシア栗豚の網焼き マスタードクリームソース



相方は、クロムツのポアレ ソース



あとは、デザートにコーヒー





二人で5,500円は、雰囲気代を含めて納得です。でもこれが一番安いランチで、高いと一人6,600円。ディナーとなると、13,860円もありです。

いつも、「ランチだけじゃない」と言われて、「夜は出歩かないから」と負け惜しみを言っていましたが、よくランチする吉祥寺のラトリエ・ディ・グーでディナーしました。証拠写真です。






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牟田和恵『部長、その恋愛はセクハラです!』を読む

2013年07月13日 | 読書2
牟田和恵著『部長、その恋愛はセクハラです!』(集英社新書0696B、2013年6月発行)を読んだ。

現実に生じるほとんどのセクハラが、グレーゾーンで生み出される。セクハラをしていること、セクハラと受け取られることになぜ男性は気づかないのか、そしてセクハラと訴えられてもその理由が理解できないのはなぜか。また、なぜ女性ははっきりとノーと言わないのか。
恋愛に関する、妄想系とリアル系の二つのパターン違いは? また、訴えられたらどうすればいいのか? セクハラ裁判にも多く係わる、セクハラ問題の第一人者が、具体例に基づき、合意の付き合いだった、相手が嫌がっているとは思わなかった、悪気はなかったと、男の勘違いの原因を明らかにする。

女性が喜んでいるように見えてもセクハラでありうる。困っているように見えなくても実はセクハラでショックを受けている場合もある。

嫌がっているそぶりを見せなくとも、仕事の立場上、望まないのに受け入れざるを得ない状況に追い込まれることもセクハラなのです。

妄想系
男性「合意の付き合いだった」「女性もその気だったはず」
女性「上司だから親しく接していましたけど、特別な関係になろうとは思ってませんでした、それなのに・・・」

「真剣な気持ちなら許される」「男なら押しの強さが大事」はセクハラである。

女性はなぜはっきりノーを言わないのか、男性はなぜ女性のノーに気付かないのか
不快な性的誘いや働きかけに、「逆らわずにいる」ことで女性は拒否のメッセージをあらわそうとする傾向を持っている・・・見かけは喜んでいるように見せて巧みに男性の面子をたててやり・・・。
電車で痴漢に遭った女性が・・・不快感を押し殺し、黙って身体をずらしてなんとか逃れようとするだけ、という女性が多数派・・・。声を出すことができたとしても、か細い声で「やめてください」と・・・命令ではなく依頼、礼儀正しいお願い・・・。

男性にしてみれば、女性の「感じよい沈黙」は、男性のアプローチを女性が「恥じらいながらも受け止めた」・・・であって、まさか「内心の不快感を押し殺してにっこりしているだけ」「無視することでノーの意思表示をしているつもり」とはなかなか想像がつかないでしょう。

女性の身体をじっと見つめて上から下へ、下から上へと目線を動かすのは「エレベータ・アイ」といって、典型的なセクハラの一つです。・・・職場の女性たちは働く女性。ステージに立つ芸能人やモデルではないのですから、男性の目を楽しませるために職場に来ているのではありません。




私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

会社で女性に接する男性は読むに越したことはない。男性が何でもないこと、相手の女性はニコニコしていたから当然のことと思っていても、女性側は、耐えられないことがあると哀しい現実をわからせてくれる。

突然、女性から訴えられないためにも、とくに古い価値観を引きずっている男性は読むべき本だ。
昔の会社の宴会などでは、ご機嫌なオヤジが下ネタを連発したりして、喜んだふりをしている女性をさばけているなどといって歓迎したものだ。また、女性に触ったりしても、何分酔っていたもので、ということで許される時代でもあった。

様変わりの現代でも、セクハラで訴えられた男性が、とんでもないと反論するニュースが時々ある。当事者でない私にはどちらの言い分に利があるのかわからないこともあるが、この本を読むと、当事者の男性にも腑に落ちないままで、実際はセクハラしている場合が多いようだ。



牟田和恵(むた・かずえ)
1956年生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科教授。社会学者(歴史社会学、ジェンダー論)。一九八三年、京都大学文学部社会学専攻卒業。八五年、同文学研究科修士課程修了。八七年、同博士課程退学。八九年、日本で初めて「セクハラ」の語を流通させるきっかけとなった福岡セクハラ裁判に関わる。現在「キャンパス・セクシュアル・ハラスメント・全国ネットワーク」の中心メンバーのひとりとして、この問題に理論・実践の両面から取り組む。


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椰月美智子『ガミガミ女とスーダラ男』を読む

2013年07月10日 | 読書2

椰月美智子著『ガミガミ女とスーダラ男』(2009年9月筑摩書房発行)を読んだ。

宣伝文句は以下。
下ネタ好きでおちゃらけ者の夫にイライラを爆発させる妻。口で言うこと聞かなきゃ殴るまで! 最大級に低レベルな争いを繰り広げる仁義なき戦いの日々、そして第二子懐妊。捺印済みの離婚届を用意していながら今日もまた人生を共にする、夫婦という摩訶不思議な絆。百パーセント真実の、ある夫婦の愛の記録。


階段の最後の2段目をジャンプしてスーダラ男が叫ぶ。
「いってぇ、いってー、いってーよう。骨が折れたよう!」「・・・ああ、膝がおかしい。痛い痛い。骨が折れてる。絶対に」「膝が痛いよ、ねえってば」
「ここだよ、ここがいたいんだよう。ちょっと見てみてよう。腫れてるみたいだよう」・・・
げぇつ! 気付けば、あたしの手を自分の股間にあてがって喜んでいるではないか。
(ふざけんな! 殺す!)


大声で罵り合っている間に、自然に手や足が出てきます。
「見なよ! こんなになってんだよ! 訴えるからな!」と翌朝、赤くなった腕をみせながらあたしが言えば、
「うるせえっ! 俺のほうがひどいじゃねいか! ほら、見ろよ! この肩、この背中! この首! 真っ青じゃねえか」
と、互いのアザの数を競い合い、どちらがより多く負傷しているかで、悪い方が決まるという、みじめな勝敗を一応つけます。


喧嘩で一方的にやられてマジ切れしたスーダラ男が、テーブルの上の2歳児ポポジのおもちゃを腕で払い落とし、和室に逃亡し、蒲団をかぶっている。
ポポジは、「おとーたん、いやねぇ、ねっ? ねっ? ねっ?」 そして、スーダラ男が散らかしたおもちゃを、普段はいくら言っても片付けないのに{いやねぇ、ねっ? ねっ? ねっ?」と言いながら片づける。


黒ださんという猫を飼っている。
こないだポポジが「ぶう」という元気のいいおならをしたときのこと。
「あれれ? 今のだあれ?」と、とぼけて聞いてみたら、
「くろだ」と平然と答えたので、本気でびっくりしました。




私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

あまりにも低レベルで凄まじい夫婦喧嘩に、あきれ、笑うしかない。我々もここまでひどくないなと安心させてくれる。
女性がやられっぱなしだったら、DVで面白いどころではないが、著者は盛大に口でやり返し、さらにでこピン、足の指でのつねり、こぶしパンチ、足けりなどを駆使する。最後はいつも惨めなスーダラ男。

これだけ滅茶苦茶に書かれて、旦那さんは怒らないのだろうかと思ったら、ほとんど本は読まない人で気づいていないという??



椰月美智子(やづき・みちこ)
1970年神奈川県生まれ。
2002年「十二歳」で講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー2007年の「しずかな日々」で野間児童文学賞、坪田譲二文学賞を受賞
2009年『るり姉』 





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朝井リョウ『何者』を読む

2013年07月06日 | 読書2

朝井リョウ著『何者』(2012年11月新潮社発行)を読んだ。

大学生の二宮拓人(たくと、語り手)、ルームシェアしている神谷光太郎、そして光太郎の元カノの田名部瑞月、瑞月の友人の小早川理香、理香の同棲相手宮本隆良。彼らのそれぞれの就活の過程が語られる。
エントリーシートESの提出に始まり、WEBテスト、集団面接、筆記試験を経て、グループディスカッション、個人面接といった流れに沿って、それぞれの迷い、悩み、疑念が交差する。 2013年直木賞受賞作。

就活が始まると突然、自分を上手に、誇大にアッピールすることを強制される。それでも何度も試験に落ち、拒絶される辛い体験を先が見えないまま繰り返すと、自信を失い、プライドを守ろうと依怙地になり、友人と距離が生じ、やがて自分が何者か混乱してくる。

これまで、仲間同士で批判することを避けてうまく付き合っていたのに、突然、「なにがなんでも就職しなければならない」という人間が、就活のために考えを曲げるのはおかしいと非難する人間に強烈に反論する。主人公も「頭の中にあるうちは、いつだって、何だって、傑作なんだよな」「おまえはずっと、その中からでられないんだよ」と決めつけるのだが、・・・。

仲間が徐々に内定を決める中で、依然落ち続ける一人が「イタクて、カッコ悪い姿であがき続ける」ことの意味を強く説くことになる。



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

現代の就活事情はよくわかるが、古希の身には若書きと映る。若者だから生硬なんだろうが、文章も固く、生々しい。直木賞は、作品にではなく、実績を認められた作家に与えられるのだと思っていたが。

文の中にしょっちゅうツイッターの文が混じり、新しいというより、あまり意味がないと感じる。
主人公がTwitterのIDをメールアドレスから検索できることを知らなかったとは信じられない。それにメールアドレスはいくつでも持てるでしょうに。

大学の就職課には、先に内定した学生が、内定者ボランティアとして就活生の相談に乗る。そこにはその人の名前よりも大きな文字で内定先企業名が書かれているという。そんなことやってるの今の(私立)大学は。



朝井リョウ
1989年、岐阜県生まれ。2012年春早稲田大学文化構想学部卒業。半官半民の会社の営業部員。
2009年、『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞受賞。現役大学生作家として注目
その他、『チア男子!!』『星やどりの声』『もういちど生まれる』(直木賞候補)、『少女は卒業しない』などを在学中に刊行。
大学を卒業して就職後、エッセイ集『学生時代にやらなくてもいい20のこと』



二宮拓人 …主人公、大学の劇団プラネット所属、心配性、
神谷光太郎…主人公のルームメイト。明るく人付き合いが良い。バンドのヴォーカル
田名部瑞月…光太郎の元カノ。真面目。大学途中でコロラド州に留学。
小早川理香…高校、大学で留学。ストレートな性格。学級委員女子がそのまま大学生になった感じ。
宮本隆良 …理香の彼氏。アーティスト志向でぶっているので、よそ者扱い。
以上4人とも、御山大学生。
烏丸ギンジ…かつて拓人と御山大の劇団で演出。退学し劇団を主宰。ツイッターでしか多く登場しない。
サワ先輩・・・沢渡、理系院生、内定済、拓人のバイト先の先輩


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伊坂幸太郎『SOSの猿』を読む

2013年07月02日 | 読書2

伊坂幸太郎著『SOSの猿』(中公文庫2012年11月発行)を読んだ。

特設サイトのあらすじ

システムの社員・五十嵐真は、20分間で300億円の損失を出した菩薩証券の株誤発注事故の調査を命じられる。 菩薩証券は、ミスの原因をシステムのせいにしたがっているという。聞き取り調査を始めた五十嵐は、なぜ家電量販店の店員・遠藤二郎は、イタリアで修行した「エクソシスト」というもう一つの顔を持つ。遠藤は他人の発する「SOS」を見過ごせない性格だった。ある日、知り合いの「辺見のお姉さん」にひきこもりの息子・眞人の悪魔祓いを依頼され、辺見家に赴く。
 一方、桑原か奇怪な幻想に翻弄されていく。
 眞人の部屋で「西遊記」を発見する遠藤。そして五十嵐の前には異形の猿が・・・。これは現実か妄想か。二つの物語のゆくえはいかに.



このサイトで、伊坂さんは、ここ2、3作は、自分が書きたいことを書くなど、最近の心境をたっぷり語っている。

本作は五十嵐大介著「SARU」(漫画)との競作で、五十嵐さんが孫悟空とエクソシストを結び付け、伊坂さんがそこに株の誤発注を加えたというめちゃくちゃぶりだ。(特設サイトより)


初出:単行本、2009年11月中央公論新社



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

伊坂さんは、最近、読者受けするものでなく、自分の書きたいものを書いているという。この小説も、随所に伊坂節は見られるが、怖くないオカルトで、深い落ちのないミステリーで、夢のないファンタジーで、付いていくのに骨が折れる。著者自身、意識的にこうしているようで、「モヤモヤシリーズ」「肩すかしもの」とも呼んでいる(解説より)。



伊坂幸太郎&既読本リスト



「救急車ってどこへ行くの」という二郎の問いに、若かった母は答えた。「どこかでね。誰かが、痛い、痛い、って泣いてるんだよ。だから、助けに行くんだよ」これが、二郎のその後を決めたといってもよい。しかし、一方、

あの時、あんな風に繊細な物言いをした母親が、今や、還暦を超え、間食と雑談だけが生き甲斐で、「甘い物を我慢してまで長生きしたいなんてちっとも思わないわよね」と豪快に笑うような人間となっているのだから、人間の成熟とは不思議なものだ。

子供のことは分かります。親ですから。
自信満々に言い切る親には注意を払いなさい。・・・「分かる、と無条件に言い切ってしまうことは、分からないと開き直ることの裏返しでもあるんだ。そこには自分に対する疑いの目がない」

精神的な疾患とひきこもりの一番の違いは、「他者のことをどれだけ気にかけているか」という点らしかった。

「あのシステム、警告メッセージがしょっちゅう出るんです。何かするたびに、『よろしいですか?』『承認は得ましたか?』と訊いてくるんです。『警告メッセージが煩わしいですか?』というメッセージすら出しかねない、ってみんな笑ってました。・・・」

会議の終盤に突然現れ、自分の気まぐれで一声発し、決定事項をひっくり返し、部下や関係各位を絶望の底へと突き落すタイプだ。・・・自らの思うがままに振る舞い、他者を愚弄することで、自らの影響力を確認する人間だ。


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