文藝春秋の担当の丹羽健介さんの言葉
第一話:母の遺品整理で見つかったメモには「パパの銃で撃たれて死んでしまいたい」とあった。このパパとは誰か? 泣くばかりの父、葬式を取り仕切る叔母、家族があれこれ邪推する。
第二話:犬におしっこをかけられ続ける電信柱が足元に生えてきたさくら草に恋する。花言葉は無言の愛。
第三話:精神病院のアルコール病棟に入った夫にお弁当を作って通う妻。
第四話:GIと遊んだ話(一)。 これは(五)まである。
初出:「文學界」2010年1月号~9月号、「オール読物」2006年2月号、2007年2月号
私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
確かに上手いと思う。しかし、どうしても短編は技巧が見えてしまうところがある。
あとがきで山田さんは言っている。
短編は一気に書きあげて、いくつかの中に良い物が少しあるということなのだろうか。
なんといってもやはり、「GIと遊んだ話」がいい。私の知ることができない世界を垣間見られる。
(五)で、白人のくせにつねに黒人たちと行動を共にし、“Yo! man”と黒人特有のあいさつをし、上半身を揺すりながら歩く奴が、影では「なりたがりっ子(ワナビー)」と呼ばれて笑われていた。詠美さんも、人種差別の議論になって、「ミカ、おまえだって、所詮、あのワナビーと一緒だろ!? 」と言われる。
山田 詠美
1959年 東京生まれ。明治大学文学部中退。
1985年「ベッドタイムアイズ」(文藝賞受賞)で衝撃的デビュー。
1987年 『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞
1989年 『風葬の教室』で平林たい子賞
1991年 『トラッシュ』で女流文学賞
1996年 『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞
2001年 『A2Z』で読売文学賞
2005年 『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞を受賞
その他、『学問』