hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

柚木麻子『王妃の帰還』を読む

2015年05月30日 | 読書2

 

柚木麻子著『王妃の帰還』(2013年1月25日実業之日本社発行)を読んだ。

 

宣伝文句は以下。

聖鏡女学園中等部二年の範子は、地味グループで仲良く平和に過ごしていた。ところが、公開裁判に掛けられ地位を失った勝ち組美少女滝沢さんを迎えることとなりグループの調和は崩壊! 範子達は穏やかな日常を取り戻すため「プリンセス帰還作戦」を企てるが……。女子中学生の波乱の日々を描いた傑作長編!

 

聖鏡女学園

カトリック系中高一貫校、等々力駅から20分、広尾にお嬢様大学、高収入の夫と専業主婦の父兄が多い

 

姫グループ

滝沢:(美少女、わがまま、範子はひそかに王妃と呼ぶ)、父はスポーツ用品メーカー3代目社長、母は元モデル

村上恵里菜:(ナンバー2、ブレーン、大人びた容姿)

安藤晶子:(アッコ、噂好きお調子者、滝沢の代わりに姫グループに潜り込む)

 

地味なオタクグループ

前原範子:(主人公、あがり症)、母・久美子はバツ一でファッション誌の編集長

遠藤千代子:(チョジ、範子の親友、広報担当)、母は亡く、父は新聞社勤務

鈴木玲子:(スーさん、大柄で色白、学年トップの成績、安心ブランド)、母は有名教育評論家

リンダ・ハルストレム:(リンダさん、碧色のギョロ目・獅子鼻、失言王、毒キノコ)、父母は建築事務所経営

 

チームマリア(クリスチャン家庭、お淑やかな優等生、聖歌隊かハンドベル部)

伊集院詩子

 

ゴス軍団(ロックが好き)

黒崎沙織:(軍団代表)

 

教師

星崎卓己:(ホッシー、3年B組担任、32歳、ピースの綾部似)

 

 

初出:「紡」Vol.2 2011 Spring~Vol.6 2012 Summer & Autumn

 

柚木麻子の略歴と既読本リスト

 

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

なにしろ、お嬢様女子中学校の話だ、正真正銘のおじいさんが付いて行けるわけがない。一度は少女小説を読んでみようと、「ランチのアッコちゃん」の著者が書いた話なら何とか読めるのではと、挑戦してみたのだ。

 

著者がこんなものでいいんじゃないと、読者を見切って繰り出してくるさまざまな仕掛けが、乗り切れないおじいさんをうんざりさせるのだ。手練れの時代劇でもお定まりの我慢美などが折りこまれるのだが、それには意識的に乗れてしまう。その差は何か? やはり、話の舞台が私の世界とは違いすぎるのだろう。

 

でも、大なり小なり、こんな世界を経て、多くの女性たちは相手のことを思いやることができる真の大人になったのだ。大部分の(?)男性が子どものままでおじいさんになってしまうのに??

 

刊行記念インタビュー

 

柚木 私の出身校はプロテスタント系でした。以前確か酒井順子さんが、負け犬が多いのは都内の中高一貫のプロテスタント系の女子校出身者だって書いていて、すごく納得できたんです。女子校って一括りにされがちですが、実は全然違う。プロテスタントは迫害されて戦った歴史があるので校歌の歌詞も「勇み戦わん」とか「大進軍に吾等も続かん」とか、モテない歌詞なんです。でもカトリック系はマリア様のような女性を目指そうという教えなので校歌も「私たちの泉よ」とか「みなの母にならん」みたいな歌詞。お行儀にもうるさく言われて、つまりはリア充教育を受けるんですよね。受験の時も母親が仕事をしているのはマイナスになることが多いそうで、結局父親がお金持ちの家庭の生徒が多くなる。そういう環境だからこそ、クラス内のカーストのあり方も違ってくるだろうなと思いました。

 

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桐島洋子『ほんとうに70代は面白い』を読む

2015年05月25日 | 読書2

 

桐島洋子著『ほんとうに70代は面白い』(2014年12月17日海竜者発行)を読んだ。

 

2008年、2009年頃に各メディアに載った約45編を集めたエッセイ集だ。

 

「聡明な女は老いを楽しむ」

50歳で子育てを終えたとき「林住期」の旗を掲げてエンジンを切り、・・・カナダのバンクーバーに海と山と森を望む「林住庵」を設けて豊かな自然と親しみ・・・。

 

そして古希の祝いの席で宣言した。

「・・・七十代は再び家住期に軸足を戻してエンジンを再始動し、最期のご奉公と思って日本に向き直り、しっかり一働きします」

以下、自宅で開催する私塾「森羅塾」の話が続く。

 

「エイジングとは熟成すること」

心ある後輩の方々は、先輩を「お若い」ではなく「お綺麗」とか「お元気」とかいって褒めて下さいね。

 

一人暮らしの伯母が重症の脳梗塞で病院に運ばれた。駆けつけた桐島さんはものの見事に整理整頓された留守宅を見て胸を衝かれた。

遺言書はもちろんのこと、入院したら連絡する人と、死亡の場合だけ通知する人のリスト、各種支払いの明細、延命治療拒否の書類、献体登録書と死体引き取り先の電話番号まで記されている。

・・・

いささかの甘えもなく自力で人生を全うしようという覚悟はご立派としか言いようが無いが、ここまで伯母が強くならざるを得なかったことが何か哀しい。

「私は遠慮なくあなたたちの世話になるからね、覚悟しなさいよ」と、子供たちに言い渡しておこう。

 

「本物の贅沢」

バンクーバーでの生活の素晴らしさ。

 

「自分の身体にありがとう」 歩の心得、減量への道、正しい呼吸法、・・・

 

「足るを知る」 略

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

著者の合理的な考え方には、そうだ、そうだと賛成することが多い。割り切った考え方で、さっぱりしているのだが、知性も思いやりもあり、矜恃さえあると思える。オシャレでもあり、女性の一つの理想形とも思える。

 

なら、なぜこのエッセイ集は「三つ星」かというと、数年前に書いたと思われる古いものが多く、エッセイ集はどれもそうなのだが、本としてのまとまりがなく、ダブりも多いためだ。

 

 

私は桐島さんには幾度かお会いしたことがある。バンクーバーでお会いしてお菓子の家のような桐島宅を訪問したり、この本にも出てくる「古希の祝いのパーティ」に参加したりした。東京のオトナの寺子屋「森羅塾」にも一度お邪魔した。歳を感じさせない早足と早口には驚かされた。

桐島洋子の森羅塾へ

Capilano Golf Clubでパーティ

 

 

 

 

 

 

桐島洋子(きりしま・ようこ)
1937年東京生まれ。作家。
1972年『淋しいアメリカ人』 大宅壮一ノンフィクション賞受賞。
以来著作・テレビ・講演などで活躍しながら、かれん(モデル)、ノエル(エッセイスト)、ローランド(カメラマン)の3児を育て上げる。50代で子育てを了えてからは、“林住期”を宣言。仕事を絞り、年の数カ月はカナダで人生の成熟の秋を穏やかに愉しむ。
70代からは日本で、マスコミよりミニコミを選び、東京の自宅にオトナの寺子屋「森羅塾」を主催している。

 

その他、『マザー・グースと三匹の子豚たち<』『ガールイエスタデイ -わたしはこんな少女だった-』(絶版)『わたしが家族について語るなら』『バンクーバーに恋する』『林住期ノート』、『刻(とき)のしずく 続・林住期ノート』と、『林住期を愉しむ 水のように風のように』

林住期が始まる』『聡明な女たちへ』『 50歳からのこだわらない生き方』『人生はまだ旅の途中

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伊坂幸太郎『オーデュボンの祈り』を読む

2015年05月12日 | 読書2

伊坂幸太郎著『オーデュボンの祈り』(新潮文庫い-69-1、2003年12月1日新潮社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている“荻島"には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?

 

 

プログラマーとしての生活に疲れてしまった主人公・伊藤は、祖母を失い心のバランスを崩し、コンビニで強盗し、かつての級友であり凶悪な警官・城山に逮捕される。しかし、連行中のパトカーの事故で逃亡し、気がついたときは、江戸時代から孤立している荻島にいた。

荻島は、外部との交流は、ただ一人、轟という男だけが船で外部からの物品を持ち込むという鎖国状態にあった。事故で両親を失ったが、お人好しな日比野が島を案内する。この島には、会話ができ、未来を予測できるカカシの優午がいた。

この島には多くの変人がいた。罪を犯した者を有無を言わさず射殺する「桜」、妻を強盗に殺されて以来、実際とは反対のことしか言わなくなった元画家「園山」、300kgにも太った「ウサギさん」、寝転がって地面の音を聞く少女「若葉」などが登場する。

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

伊坂幸太郎は15冊読んだが、デビュー作は読んでいなかった。

充分評価されている今時点で、新人の作品として見ると、才能は感じるが、現在の伊坂幸太郎とは差がありすぎる。

 

カカシが喋る鎖国の島を舞台とし、これでもかという変人ばかり登場するシュールで、メルヘンチックな環境の中で、日常的、現実的な出来事が起こる。村上春樹に似てないこともない話だが、私としてはあまり好みの話ではない。

まだ、伊坂ワールドに必須のブラックユーモアや切れがあるシャレたセリフがない。話の途中で挿入される数行の主人公へ諭した祖母の含蓄ありそうな話が片りんを思わせる。

 

 

途中に秘めた伏線を最終部で回収している謎解きもこの小説には少ない。

 

登場人物のキャラクタも、ただただ変人ばかりで、魅力に乏しい。

 

 

伊坂幸太郎&既読本リスト

 

 

荻島(おぎしま):仙台の先の牡鹿半島をずっと南に来たところ。

オーデュボン:19世紀のアメリカの鳥類学者。『アメリカの鳥』という自分で描いた鳥の図鑑を出版。リョコウバトが絶滅に至った経緯を観察し、その最後の命を絵に残した。

 

伊藤:主人公。28歳。5年間システムエンジニアとして働き、ボロボロにコンビニ強盗を犯し逃走中だったが、知らぬ間に荻島に連れてこられた。

日比野:主人公に島を案内した男。適当で、人の話をあまり聞かない。

轟:島で唯一船を所有し、外に出られる人間。見た目が熊にそっくりらしい。色々となぞが多い男。

曽根川:もう一人の、島の来訪者。主人公より前に来ていて、轟と何かあるらしい。

園山:愛妻を殺された元画家。何を聞いても嘘しか言わない。決まったスケジュールで行動する。

若葉:10歳前後の少女。左の脇腹を地面につけて横たわり音を聞いて遊ぶ。

草薙:郵便局員。年上の女房が百合。

桜:30歳くらい。美男子。拳銃を所持しており、島で唯一殺人を許されている。詩をよく読んでいる。

ウサギ:体重300kgで身動きできなくなった女性。

佳代子と希世子:美人の双子姉妹。日比野は佳代子に思いを寄せる。

小山田:島の警察官

優午:話すことができるカカシ。荻島が孤立した江戸時代の終わり(1855年)から立ち続ける。未来を予知できが、それを語ることはしない。

城山:人を痛めつけるのが趣味の警察官。もっとも警察官になってほしくない警察官。伊藤を追い続ける。

静香:伊藤の元恋人。

田中:足が悪い。優午と仲がいい。オーデュボンのリョコウバトの話を伊藤に伝える。

 

 

  

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小黒一正『財政危機の深層』を読む

2015年05月04日 | 読書2

小黒一正著『財政危機の深層 増税・年金・赤字国債を問う』(NHK出版新書449、2014年12月10日発行)を読んだ。

 

 

日本政府の債務は、国と地方で累計約1000兆円、対GDP比200%。財政破綻は起こっていないが、高齢化が進むこの先にはより破綻の確率が増す。

 

国債償還費用などと、社会保障関連費で、一般会計と特別会計の純計237兆円の72%を占め、今後ますます増加する。公共事業や防衛費などの割合は小さく、しかも削減できる額が少ない。

 

「経済成長さえすれば……」「インフレにさえなれば……」「行政がムダを省けば……」といった「甘言に惑わされてはいけない」と著者は主張する。「先送りすればするほど、痛みはより大きくなって私たちに襲いかかってくる」からだ。

 

 

いずれ、国債の利回りが急激に上がり、破綻がやってくる。しかし、現在時点では、日銀が猛烈に国債を買っているため、国債の利回りは今異様な低下を見せている。この政策は、先行き過度なインフレになる時限爆弾だと本書は警告する。

 

消費税を大幅増税し、社会保障費や年金を削減せざるを得ないのが現実だ。

 

引退世代が自分たちのことだけ考えて政治選択をするなら、国債をどんどん発行し、負担を将来世代に先送りすることになるだろう。近年の政府債務残高の膨張や、財政改革・世代間格差の是正が進まないのはこのためだ。

現政府は財政の長期推計を明らかにしていない。本当の財政の姿を公式に示して、そこから、本格的議論、本当の改革が始まる。

政治的に中立で学術的に信頼性の高い公的機関を設立し、財政の長期推計等の試算をさせるべきだ。

 

 

私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

内容としてはおおよそわかっていることが多いが、分かりやすい説明、実感できる図で説得力がある。

 

どんなに頑張って政府支出を削減しても、社会保障費や年金を削減しない限り、日本国の債務が減少しないで破綻する。この厳しい現実をはっきり示してくれる「ありがたい」本だ。無駄遣いが多い、議員報酬を削減しろなどと、マスコミが騒ぐのは、基本的問題から目をそらすことになるだけだ。

 

確かに、どう見ても平均的には年寄りが豊かで若者には希望がない。

 

なお、消費税の逆進性を否定し、生活必需品への軽減税率は利より害が多いと主張する著者の論には疑問がある。(詳しくはメモの第4章)

 

 

小黒一正 (おぐろかずまさ)
1974年東京都生まれ。法政大学経済学部准教授。専門は公共経済学。

1997年京都大学理学部卒後、一橋大学経済学研究科博士課程修了。大蔵省(現財務省)入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官などを経て、2013年4月から現職。 

<主な著書>『2020年、日本が破綻する日』、『アベノミクスでも消費税は25%を超える』など。

共著に『Matlabによるマクロ経済モデル入門』、『日本破綻を防ぐ2つのプラン

 

 

以下、私のメモ

 

 

序 章 迫り来る「財政破綻」

第一章 財政の現状はどうなっているのか(2014年度予算)

 

一般会計予算は96兆円(税収等55兆円、公債金収入(借金)41兆円、他)

歳出は、一般歳出(社会保障関係費・文教費等)57兆円、地方交付税交付金16兆円、国債元利払い金23兆円

国債残高は780兆円に、借入金などを加えた国の債務残高は、1144兆円。

つまり、年収55兆円で、約20倍の借金がある。

特別会計予算は400兆円だが、重複分を除くと、220兆円~240兆円。(国債償還が200兆円、年金が80兆円)

 

 

第二章 経済成長だけで財政再建はムリ

 

日本の一人当たり実質GDP成長率は、2003年~2012年の平均で0.82%。先進主要7か国の中で豪・独・米に次ぎ、遜色ない。しかし、少子高齢化・人口減少が進み、実質GDP成長率は低下しやすい。


第三章 歳出削減はなぜ進まないのか

一般会計と特別会計の重複を除いた純計は、237兆円。

国債費91兆円39%と、社会保障79兆円33%で170兆円72%。いずれも削減どころか増える可能性が高い。

地方交付金19兆円8%は、3兆円ほど削減できても大幅は無理。

財政投融資(各種公共プロジェクトの資金)17兆円7%は、独立勘定なので削減しても税財源の節約にはならない。

公共事業7.1兆円。老朽インフラの維持・更新は必要。

防衛費4.9兆円は対GDP 1%を維持しており、中国の1/4であり、削減は難しい。

 

日本は「低福祉・超低負担」の国

 

第四章 このままだと「消費税30%」も避けられない

社会保障費を抑制しない場合、たとえインフレ率2%が達成できたとしても、消費税率は25%でも不十分。

 

消費税の逆進性を否定する著者に論には疑問がある。著者は、年収ベースで見て逆進性が生じても、生涯賃金ベースが同じなら、逆進性が消え、比例税率という意味では公平だと主張する。しかし、消費税は生涯賃金が低い人により重くのしかかってはいないという説明にはなっていない。

 

また、生活必需品への軽減税率は利より害が多いと主張する。「どこまでが必需品でどこからがぜいたく品か決めるのが難しい。軽減すると税収が減少し、税率を上げざるを得なくなる」というのが著者の言う害だが、ようするに貧乏人には配慮しなくていいというだけだ。軽減税率は、高所得者への恩恵はその支出のごくわずかな割合しかないのに、貧乏人には大きな割合で恩恵があり、逆進性の緩和策に一つなのに、著者は「高所得者もその恩恵を受けてしまう」のが問題だという。このあたりが、著者が財務省の手先と言われる由縁だろう。

 

第五章 「異次元緩和」の巨大リスク

量的緩和の止め方(出口戦略)も大爆発を起こさない方策を探らなくてはならず、難しくなってきた。

 

第六章 「国債安全論」を撃つ

 

金融資産保有高は、60歳代で平均1535万円、中央値670万円、ない世帯が30%、70歳以上で平均1581万円、中央値552万円、ない世帯28%

 


第七章 年金は「100年安心」ではない
第八章 「世代間格差」を解消せよ

 

道路・ダムといった社会資本や、治安・国防、医療・介護といった公共サービスから得られる「受益」と、そのサービス供給に必要な税金、保険料といった「負担」を生涯分計算する。60歳以上の世代は約4000万円の受益超過、50歳代は約990万円の受益超過だが、それ以降の世代は純負担となる。とくに将来世代は、約8300万円もの支払超過だ。

財政の役割の一つは豊かな人から貧しい人へ富を再分配することだが、現行制度では、年金も、国債発行も、将来世代や若い世代から上の世代へ富の移転が行われている。将来世代への過剰な負担を「財政的幼児虐待」と呼ぶ人もいる。

 

現役世代が納めた保険料などを同時代の老齢世代の給付金に充てる「賦課方式」が世代間格差を生んでいる。解決には「事前積立方式」の導入と、「完全積立方式」への移行がある。

 

年金積立金は現在130兆円だが、750兆円不足している。

 

終 章 「民主主義」の困難を乗り越えるために

 

若い有権者が多いと、将来のことを考えた政治的意思決定がなされるが、老齢者が多くなると政治的意思決定の時間視野は短くなる可能性がある。

20代や30代の投票率は50代以上より下回っていて、勤労世代より引退世代の政治的影響力が強く働いている。

 

  

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