hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

井戸川射子『ここはとても速い川』を読む

2022年03月31日 | 読書2

 

井戸川射子著『ここはとても速い川』(2021年5月28日講談社発行)を読んだ。

 

講談社BOOK倶楽部の内容紹介

第一詩集で中原中也賞を受賞した注目詩人による、初めての小説集。

児童養護施設に暮らす小学5年生の集(しゅう)。園での年下の親友・ひじりとの楽しみは、近くの淀川にいる亀たちを見に行くことだった。温もりが伝わる繊細な言葉で子どもたちの日々を描いた表題作と、小説第一作「膨張」を収録。

 

第43回 野間文芸新人賞 受賞。本書には、表題作と『膨張』の2作。

 

「ここはとても速い川」

児童養護施設で暮らす少年・(しゅう)とひじりよしいち等の日々を子供目線の関西弁で淡々と語る。現実は大人に振り回されて、どうともならずにあきらめることも多い。しかし、集たちは大人たちが一方的に押し付けることの真の意味をちゃんと嗅ぎ取っている場合も多く、幼い考え方の反面、意外としっかり自分たちの立ち位置とらえているのだ。

主な登場人物は、集、ひじりや他の施設の生徒と、正木先生など何人かの施設の先生、近所のアパートに住む大学生のモツモツだけといった狭い世界での話を感性豊かな言葉で語る。

第43回野間文芸新人賞選考で、5人全員が丸をつけたという。

 

「膨張」

各地にある塾を職場とする津高あいりは、定住地を持たずゲストハウスなどを泊まり歩くアドレスホッパーの暮らしを続けている。そんな生活は、同性の恋人千里との生活を続けるためでもある。あいりは実家の留守番を頼まれ、アドレスホッパーの懇親会で会ったイブと5歳の息子のウオとしばらく暮らすことになる。

 

 

初出:「ここはとても速い川」群像2020年11月号、「膨張」群像2020年7月号

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

私には評価しようがない。いわゆる面白い小説ではないので、せいぜい二つ星だが、何か落ち着かない不思議な感覚が残り、作者の感性のきらめきにまぶしさを感じてもいるので三つ星にした。

 

つながりがない、ぶつ切りの文と文が続き、まったく詩人というやつはと、ぼやきつ読む。流れを感じながら流すように読む癖の着いた身には読みにくいことこの上ない。セリフがあっても改行せず、びっしり書いてあるのもうんざりだ。

 

内容はとくに読み取りにくくはないのだが、子ども視点の独特の文で、地の文も関西弁。登場人物もあだ名のままだったりして、筋が見えにくい。わざと曖昧なままにしていると思うと腹が立つ。
私には拒絶反応のある現代詩のように感じ取れる文は、しかしながらまとめて全体として何かを感じさせてくれる。これが新しい文学で、私はすでに置き去られてしまったのではと感じさせ、一方で、ついに私も過去形になったと、落ち着いた、幸せな気持ちにしてくれた。でも、本物なの?

 

 

井戸川射子(いどがわ・いこ)

1987年生まれ。関西学院大学社会学部卒業。

2018年、第一詩集『する、されるユートピア』を私家版にて発行
2019年、同詩集にて第24回中原中也賞を受賞

著書に『する、されるユートピア』(青土社)。本書が初の小説集となる。

 

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井の頭公園の花だより(4.満開)

2022年03月29日 | 散歩

 

3月28日9時半、満開を信じて井之頭公園へ。

まずは三角公園の神田川に枝を伸ばすサクラをパチリ。満開だ。

 

お気に入りの定点観測地点のひょうたん橋からも。水面にわずかに写るサクラ。

 

月曜日の9時半、まだ人影はまばら。

 

しかし、池には既にかなりな数のボート。向こう岸にはサクラの壁が。

 

 

見上げると青空を背景にサクラのコントラストが見事。

 

 

おなじみの七井橋の北側たもとの地点から。

 

よく見るとわずかに蕾も残っているのだが、間違いなく満開だ。

 

橋の上からこのサクラを見る。

 

 

池の上に両岸から枝を伸ばすサクラ。

 

「三鷹の森ジブリ美術館はここから1,100m」との看板の上からトトロが顔を覗かせている。

そういえば、まだ美術館へ行ったことがない。日程を拘束される予約は、定年生活では避けたいのだ。

 

満開の時期の土日には渋滞になるこの階段もパラパラと人が通るだけ。自粛?

 

風は強いが花びらはまだまだチラリと散るのみ。花見にはちょうど良い時期だ。

この年になるとわが身に思いをいたし、花吹雪は一層哀れが身に沁みる。

 

散る桜 残る桜も 散る桜 (良寛和尚の辞世の句)

 

さすがのネガティブブログ!

 

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濱野ちひろ『聖なるズー』を読む

2022年03月28日 | 読書2

 

濱野ちひろ著『聖なるズー』(集英社文庫、は56-1、2021年11月25日集英社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

犬や馬をパートナーとする動物性愛者「ズー」。大型犬を「僕の妻だよ」と紹介する男性。七匹のねずみと「群れ」となって生活する男性。馬に恋する男性。彼らはときに動物とセックスし、深い愛情を持って生活する。そんなズーたちと寝食をともにしながら、自身の性暴力体験を背景に、人間にとって愛とは何か、暴力とは何か考察を重ねる。人間の深淵に迫る、第17回開高健ノンフィクション賞受賞作。

 

解説は松浦理英子。

 

本書には、そして以下の私の記述にも、とくに“えげつない”行為や露骨な描写は含まれていないと思う。しかし、不快に思う不安のある方は、以下は読まれない方が良いと思う。

 

 

 

本書に関する著者へのインタビューが集英社のサイトに掲載されている。

 

獣姦(bestiality)は、もともと法律用語で、動物とのセックス行為そのものを差し、ときに動物に対する暴力的な態度や行動も含まれる。

一方で、動物性愛(zoophilia)は医療領域の用語として生まれ、動物に対する心理的愛着に重きが置かれていて、動物に対する暴力的な行為は含まれない。現在、精神医学では、動物性愛はパラフィリア(異常性愛、性的倒錯)のひとつ、つまり性にまつわる精神疾患とされている。

 

本書は、ドイツの動物性愛者(ズー、ズーファイルzoophile)の団体に取材し、彼らと生活を共にして、文化人類学的手法でフィールドワークを行った修士論文を元にしている。著者の悲惨な個人的性体験を掘り下げる必要があると感じ、論文を元にノンフィクションとして書き下ろした。

 

プロローグは、著者自身が19歳から22歳の大学生の時、当時のパートナーから性暴力を含む身体的・精神的暴力を振るわれていたのに、逃れることができなかった経験を語っている。

なぜそんなことになったか、なぜ逃れられなかったのか、それを求めてセクシュアリティーの研究に飛び込んだ。

 

動物性愛者(ズー)の団体は世界で今のところドイツの「ゼータ」だけだ。

 

ズーたちは動物を対等なパートナーとして接しようとしている。本当にそうなっているかは分からないが。

例えば、パートナーの犬が求めてこないので、セックスは一切しなかったり、動物の性をケアするためにマスターベーションをサポートする人もいる。さらに、まだ実際のセックスはしていない人もいる。

 

自分は「病気」ではないかと誰にも言えずに孤独を感じていた人たちが、オンライン・コミュニティを通じてつながり、徐々にカミングアウトが進んでいった。

 

 

本書は2019年11月書下ろし単行本として集英社より刊行。

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

本としての流れは整えられていて、話も分かりやすく、個々のズーの生活も把握されている。

しかし、ズーの一団体の数人に話を聞いた内容が書かれていて、統計的話も、考察の部分も少ない。困難な状況での突撃取材ではあるが、ノンフィクションというよりルポルタージュといった内容に近い。

 

内容も、なかなかつかめないズーへの手がかりから、一筋の糸を掴み、徐々に交友を広げていく経過にかなりなり力点が置かれていて、調査内容の整理、考察で充分ではない。まあ、それだけ闇の部分ではあるのだが。

 

 

濱野ちひろ(はまの・ちひろ)

1977年広島県生まれ。2000年、早稲田大学第一文学部卒業後、雑誌などに寄稿を始める。

旅行記事、映画評、インタビュー記事などを執筆するフリーライター。

2018年京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程修了。現在、同大学院博士課程にて、文化人類学におけるセクシュアリティ研究に取り組む。

 

 

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花見前の井の頭公園

2022年03月27日 | 散歩

 

3月17日、花見前の井の頭公園を散歩した。

 

井の頭通りから神田川源流の水門へ出る水門通りを南へ行くと、井の頭線のガードにぶつかる。

左から渋谷からの井の頭線が通過。

 

直後に右から吉祥寺駅を出たばかりの渋谷行が通過。

むかしむかし、駅のホームで「どちら側から電車が来るの?」と聞いて、母親を困らしたことを思い出す。電車は左側通行であることを分かっていれば、答えは簡単だったのだ。行と帰りの線路が交差していない普通の駅では常に左側通行になるよう(右側に反対方向の電車を見るように)に電車は来るのだ。

 

公園にはまだサクラは咲いていない。池端では白いコブシの花だけが咲いている。

 

 

「こちらの遊具は桜花の期間の間 使用できません」と使えないようになっている。本当に必要なのだろうか?お役人の言い訳のために子どもがかわいそうなめにあっている気がする。

 

そのくせ護美箱(古っ!)は準備万端。

 

鳥も暇そうに見える??

 

公園のメインの入口、吉祥寺駅から丸井脇を通る七井橋通り。その階段脇にジンチョウゲが並んでいるのに初めて気がついた。

 

サクラの季節とぶつかり忘れ去られる花たちに注目。通年のサクラ満開の土日にはこの広い階段も、渋滞でジワリジワリとしか進まないほどの人が通るのだが。

 

 

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3月(2)の散歩花

2022年03月26日 | 散歩

 

定点観測地点のミモザ。今年は3月16日±5日を満開と宣言します。(参考:「2月の散歩花」)

 

3月20日、さらに見事なミモザを発見。

 

拡大すると、小さな花が固まって房になっているのがよくわかる。

 

大きな赤いボケ。

 

白とピンクが混じるボケ。

 

ほぼピンク一色のボケ。

 

何本か並ぶ白梅?

 

ズーム撮影すると、花びらの先端が割れている。梅だ。

 

左側に白梅が多く、右側がほぼ紅梅。

 

下の方の枝分かれ部分の左が白、右が赤。接ぎ木したのだろうか。

 

木肌の感じからも、こちらは桜だろう。

 

庭先に咲くコブシの花?

 

伸び上がるコブシ

 

赤のジンチョウゲ

 

白いジンチョウゲ。あの良い香りが感じられないが、臭覚障害?

 

 

青と黄色のパンジー。これなら私でもわかります。

 

白もあるで~。

 

開き切ったチューリップ2種。花と葉を見ればこれも画像検索しなくてもわかる。

 

派手さはないが、落ち着いたそぶりのクリスマスローズ。相方のご指導を受けて覚えました。

 

最後は、唱歌にある菜の花畑。ゆでると柔らかくておいしいと最近知った、真綿のように知識を吸収する傘寿、将来が楽しみ。

 

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井の頭公園の花だより(3) 桜はまだかいな

2022年03月25日 | 散歩

 

3月24日9時、ひょうたん橋から見た桜。このところの寒さから期待はしていなかったが、なんとけっこう咲いているではないか。といっても2,3分かな?

 

3月17日、1週間前の朝9:40にはまだまだ蕾で、花一輪も見えなかった。

 

3月24日、歩きながら見上げると、ちらりと花を見つけることができて、ほころびかけた蕾があちこちにチラチラと見える。

 

七井橋たもとのサクラも、蕾が膨らんでいるように見える。

 

ズームすると、ほら、ほころびかけているでしょう。

 

 

3月17日にはまだこんなに固かったのだから。

 

「梅は咲いたが 桜はまだかいな」 桜は、春は、もうそこまで来ています。

 

 

この記事、急遽すでにアップ済のものと差し替えました。
予約投稿で半月くらい先まで投稿済なもので、タイムリーな記事を急遽アップするには差し替えが必要になる場合があります。
退屈なときにまとめて記事を作ってアップするには予約投稿は便利なのですが、途中に差し替えするとややこしくなります。一日おき投稿のルールを曲げて、間に差し込めばいいだけなんですけどね。複数の話題を載せた記事をアップする手もありますが、私の場合は過去の記事を日付で検索するもので、一日一件にしたい事情があります。

 

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時代小説の勧め

2022年03月23日 | 読書2

 

生来の本好きである。もっとも難しい本は読まず、もっぱらエンタテインメント小説を好む。心の負担なく気軽に読めるミステリーもお勧めだが、ここでは若い人に人気が無いのではと思われる時代小説をお勧めしよう。

 

歳と共に好きな本の分野は変化していく。小説に限っても、若い頃は先端的な小難しい小説を好んだ。といっても私は革新的とか、難解とかの評判の小説を買って、ほぼこれ見よがしに持って歩くだけだったが。
仕事に追われる中年になると、楽に読めてくつろげるエンタテインメント小説しか読まなくなる。私は子供の頃から漫画を馬鹿にする癖があって、そこまでは落ちたくない(?)と小説にこだわった。時代のせいもあるが、ゲームにも凝ることはなかった。
引退して家事など生活が身近になると、本好きの相方の影響もあって、女性作家による日常の生活に根差した、あるいは微妙な感情のやりとりのある小説なども読むようになった。
そして、若い時から一貫して好きで、山谷はあっても常に読んでいた小説が時代小説なのだ。

 

時代小説というと、のさばる悪漢を正義の味方が退治するという勧善懲悪物を思い出す人も多いだろう。水戸黄門など毎回同じ筋書きのTV番組を、だらりと見ている中高年の男性をイメージして嫌悪する女性も多いだろう。しかし、小説の世界はもっと深い。どう違うのかは、まず良質の時代小説を読んでみてから判断して欲しい。

 

 

まず推薦したいのはおなじみの藤沢周平だ。彼の小説には名の知られた英雄は登場しない。下級藩士や次男坊、浪人、あるいは、市井の人では無法者、身を売る女、悪に誘われる職人などが主人公となる。これら下積みの疎外された者に光を当て、その哀歓、人情の機微を温かいまなざしで描く。登場する女性は常に美人で、ひたむきに相手を愛し、男性にとって現実がむなしくなる程の理想像だ。まあ、この辺りは彼の限界ではある。
中でも一番のお勧めは「蝉しぐれ」だが、「たそがれ清兵衛」「時雨のあと」などどれを読んでもご満足いただけると思う。エンタテイメントでありながら、格調高さを失わない。高橋源一郎はからかい半分に“伝統芸”と言ったが、私には褒め言葉に聞こえる。

 

気に入った作家の作品を読み進めていくと、どんどん読む本がなくなってしまうので、若い作家にも手を伸ばすことにしている。とくに女性には高田郁(かおる)を勧めたい。時代小説と言えば、捕物や剣豪がおなじみだが、料理で人を幸せにする話を書きたいと始めたのが「みをつくし料理帖」シリーズ十巻だ。
大阪の店で腕を磨いた少女・澪(みお)が江戸の小さな蕎麦屋「つる家」で新しい種々の料理を考案し、江戸で評判の店に成長させる話だ。泣き虫の少女が周囲に助けられ、天才的料理人に成長していく。
漫画原作者だった著者の登場させる人物はキャラが立っていて掛け合い会話も面白い。
著者を非効率の人と評した解説者がいた。時代考証のため図書館に何日もこもり、話に出てくる創作料理で部屋を一杯にする。三週間、朝昼晩キュウリの試作品を食べ続け、すっかり痩せたこともあるという。こんな作者の渾身の作を読んで幸せにひたろう。

 

 

参考までに

藤沢周平の略歴と既読本リスト

 

高田郁(たかだ・かおる)

1959年、兵庫県宝塚市生れ。中央大学法学部卒。
1993年、川富士立夏の名前で漫画原作者としてデビュー。高田郁は本名。
2006年、短編「志乃の桜」
2007年、短編「出世花」(『出世花 新版』、『出世花 蓮花の契り』)
2009年~2010年、『みをつくし料理帖』シリーズ『第1弾「八朔の雪」、第2弾「花散らしの雨」、第3弾「想い雲」
2010年『 第4弾「今朝の春」
2011年『 第5弾「小夜しぐれ」
『 第6弾「心星ひとつ」』
2012年『 第7弾「夏天の虹」』
みをつくし献立帖
2013年『 第8弾「残月」』
2014年『第9弾「美雪晴れ』『第10弾「天の梯」
2016年『あきない世傳 金と銀 源流篇』、『あきない世傳 金と銀 二 早瀬篇』、『あきない世傳 金と銀 三 奔流篇

 2019年『花だより みをつくし料理帖 特別巻

その他、『 ふるさと銀河線 軌道春秋』『銀二貫』『あい 永遠に在り

エッセイ、『晴れときどき涙雨

 

 

 

 

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藤沢周平(ふじさわ・しゅうへい)の略歴と既読本リスト

2022年03月22日 | 読書2

藤沢周平(ふじさわ・しゅうへい)の略歴と既読本リスト

 

1927年12月26日 - 1997年1月26日。山形県鶴岡市に農家の次男として生れる。
1949年、山形師範学校卒後、隣村の中学校教師に赴任。
1951年、肺結核が発見され休職。
1953年、東京・東村山の病院で手術。
1957年、5年間闘病生活で休職期間が切れ、業界紙記者となる。以下、2、3の小業界紙を転々。
1971年、「溟い海」により44歳で「オール讀物」新人賞
1973年、「暗殺の年輪」で直木賞受賞
1986年、「白き瓶」で吉川英治文学賞
1989年、「市塵」で芸術選奨文部大臣賞、菊池寛賞受賞。

その他、『たそがれ清兵衛』、『隠し剣 鬼の爪』、『蝉しぐれ』、『武士の一分』などが映画化。

他、『三屋清左衛門残日録」、『周平独言(しゅうへいどくげん)』、『時雨のあと』、『天保悪党伝』、『橋ものがたり』、『隠し剣孤影抄』、『春秋の檻 獄医 立花登控え1

 

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本というものが好きだった

2022年03月21日 | 読書2

 

子供の頃から本が好きだった。本の先に広がる世界に魅せられていた。
でも一体、そもそも本の何が好きなのだろうか? もちろん一番は、読んで楽しく、なるほどと思う内容が好きなのに違いない。しかし、本を読む楽しみ自体は大きいのだが、考えてみれば、本を読んでしまい、時が経てば多くの記憶は消え去り、わずかな思い出だけしか残らない場合がほとんどだ。それなのに、本自体を大切にとっておき、棚に丁寧に並べていた。中学生の頃は、消しゴムで蔵書印など作って、御大層に数冊しかない我が本の巻末に押して、フムフムと満足していた。

 

本の見た目にも私には好みがある。本屋で漫然と本を探すとき、タイトルが心を誘うかどうかも重要だが、本の装幀、手に取ったときの感覚も私を誘う。村上春樹自身の装幀という「ノルウェイの森」のあの一面赤と緑の鮮やかな表紙は衝撃だった。

 

本の物理的な存在そのものにも、私は静かな安心感を覚える。本屋の棚の前に立つと、まだこんなに読んでいない本があるという焦りと共に、本たちのたたずまい、匂いに包まれて心が落ち着く。かって一冊しかなかった私の本が一杯に並ぶ我が家の本棚を見ているだけで満足し、「ああ、あの本。この本も」と一冊一冊、かすかな思い出をたどり、しばし蔵書の旅に出たものだった。

 

定年後、時間だけは十分持ち合わせているはずなのに、読みたい本、読んだら面白そうな本、妄想で既に読んだ気になった本、つまり積読の本が机の上、棚に増えていった。読む意欲があるというより、意欲を持っていると思いこみたいために買った本も、多分読まないだろうなとあきらめていて、読まれない本のために本好きの心が痛む。

 

約10年前の人生8回目の引越しを機会に、「終活」の一環として数段階に分けて思い切って蔵書を処分した。本好きというのが、いつのまにか一部は所有欲に変わってしまっていると感じたこともある。
再読しないだろう本や、未読だが読めそうもない本を、中味を見ずにまとめて処分した。それでも想いが深く捨てきれないダンボール2箱分は現住居に持ってきたが、数年後諦めて大半をリサイクルに出した。

 

 

寂しいことに、現在の私の蔵書は子供の頃の唯一持っていた石井桃子「ノンちゃん雲にのる」と、お気に入りの藤沢周平の「蝉しぐれ」、その他IT関連実用本など10冊足らずになってしまった。実体のない電子本は数冊あるが、愛着が湧かず読み返すこともない。

 

先日、めったに寄ることもなくなった本屋さんへ久しぶりに入ったら、何十分ものんびり居並ぶ本を眺めて最近の動向に思いを馳せたり、顔を突っ込むように必死に本を吟味したりしたかっての私の姿が見えた気がして、ふと微笑んでしまった。

 

これでもやっぱり、まだ本が好きだ。

 

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3月(1)の花

2022年03月19日 | リタイヤ生活

 

3月7日に届いた花

 

黄色、ピンク、紫などのラナンキュラス7本とヒョロヒョロな小さな花芽が3本。

高く突っ立っているストック2本。白く広がったコワニー。遠景にユキヤナギ。

 

 

「お手入れ方法」に書いてあったが、ラナンキュロスは茎が柔らかいため、茎が痛みやすい。

右下のラナンキュラスは茎が折れてお辞儀しっぱなし。翌日には一本刺しにしたが、茎が折れて糸のようになりしなびてしまった。

 

幾重にも重なる花びらが、中心の蕾の周りにふんわりと開く。花言葉通りの「華やかな魅力」を持つ花だ。

 

幾重にも花びらが重なるタイプもある。

白い花は、アリウム・コアニ―。目立たないけどよく見るとけっこう可憐。ネギ属と言われると、そんな気もしてくる。

 

先端の方まで咲くとなかなかあでやかなストック。

 

4日後にはもう滅びの前の美しさ、哀れさを漂わせている。女性ならさしずめ、てなことは思ってもいません。

 

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ロマンス 

2022年03月17日 | 個人的記録

   

子供の頃、小田急線の線路の傍に住んでいた。


当時最高速度を記録した箱根行きの流線型特急ロマンスカーが、ときどきピーポー、ピーポーとサイレンを鳴らしながら走ってきた。小学生の私は外で遊んでいるときにその音を聞くと、家の前の崖をよじ登って、線路ぎわへ急いだ。特急は高いサイレンの音を響かせ、代々木上原駅のカーブを傾きながらすごいスピードで近づいてくる。


風を巻き起こして豪快に先頭車両が目の前を過ぎると、とたんに音は低音でちょっと間延びしたピイーイー、ポーオオーとなり、長い列車が地面を揺らし轟音と共に一気に通り過ぎる。そして、東北沢駅の方へまっすぐ延びた遠い線路上へあっという間に小さな点になってしまう。
子供にはけして行けないはるか遠くの世界へ、甘酸っぱい幼いロマンを乗せて消えていってしまう。

 

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3月(1)の散歩花

2022年03月15日 | 散歩

 

道端に無造作に置かれていた花。じっと見つめていると肉厚な花びらが原始時代の花のようで気味悪く思えてくる。

Google画像検索では「Artificial Flower 造花」と出て来たが、気持ちはわかる。サボテンの花だろうか?

 

画像が少なくて困ったときの柑橘系。

 

生垣の足元など所々に見かける低木。たいていは黒ずんできているのに、ここのは日が当たっているせいだけなのか、鮮やかな赤色だ。Googleは葉だけに切り取っても、「木」とだけ。

 

梅、4種。

3月25日

 

3月7日、桜?

 

3月10日、3本並び

 

3月15日。しだれ梅?

 

群生する小さな花。Googleさんは「eastern redbud アメリカハナズオウ」と聞きなれないことをおっしゃる。

 

葉が少し大きいように思いますが、サザンカでしょう。Googleさんは「rose」ですって、ハイハイもう結構です。

 

ドウダンツツジ(灯台躑躅)の垣根。秋には火のように燃えていた。白く釣り鐘のような花が咲く春が楽しみ。

 

 

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井の頭公園花だより(2)

2022年03月13日 | 散歩

 

3月12日(土)9時半、井の頭公園の東の端にある三角公園から。

 

ヒイラギナンテン(柊南天)の大株がいくつか。

 

満開の桜の木(?)。

 

大きなツバキの木

 

木の下に花がそのまま落ちているので、サザンカでなくツバキだろう。

 

井の頭公園に入るとジョギングの人が多い。走っている人は、スリムでその必要がなさそうな人ばかり。そろそろ何とかしないと、と思えるような人は走っていない。 途中経過の人は見られないのか? それとも、なんとかしようと思い、実行する人はもともといないか、すぐやめてしまうのか? 

 

ひょうたん橋からの定点観測。

 

土曜日の9時26分なので、「ART*MRT」アートマーケッツ(手作りアート作品と大道芸の出展)の準備を始める人たちが。

 

七井橋たもとの観測地点

 

拡大すると花は無いが、蕾が膨らんでいるような気がする。東京は19日開花と聞いた。

 

9時33分、漕ぎだしたボートが2隻。

 

ベンチに座ってしばし休憩。

おそらくおじいさんが孫娘ふたりのために寄付した「思い出ベンチ」なのだろう。

 

ふだん何気なく通り過ぎているが、座ってゆっくり見ると、目の前の景色もなかなかのもの。

 

9時40分。あと少し時間を潰してから買物でもするか。

 

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DONQ(ドンク)でランチ

2022年03月11日 | 食べ物

 

吉祥寺駅の東側を走る吉祥寺大通りと、JRとの交差点近くでパワー切れ。もっとも手近なアトレ吉祥寺東館1Fにあるパン屋・DONQ(ドンク)でランチした。

 

ドンクは今年で創業116周年という伝統あるパン屋さん。しかし、食事処は狭く、いつも混んでいて、今回はカウンター。

 

店でパンを買って、奥にあるカウンターで飲物を注文して食べることもできるのだが、手軽なランチセットを注文。

 

私は冬限定のカスクルートセット・ドリンク付き(¥770)。カスクルートとは、バゲットにハム、チーズをはさんだサンドイッチのことらしい。

 

それなりの味で、手軽。傘寿の私でもちょっと物足りないが、相方のお流れをいただいてご満悦。

ちなみに傘寿は数え年で80ということで、満年齢ではありません! どうでも良いとお思いでしょうが、念のため。

 

 

相方はキッシュ・ロレーヌ・ドリンク付き(¥715)。ロレーヌとはフランスのロレーヌ風ということ。

「お味はまあまあだけど、Bo-peepにはかなわない」とのご神託。」

 

 

カウンターの前に張り出された紙。

ばらまきに専念する大きな政府からの「小さなお願い」3連発。

 

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久しぶりの「梅の花」でランチ

2022年03月09日 | 食べ物

 

吉祥寺東急に10時半開店と同時に入店したのに、買物を済ますと11時半。手近かなところでランチして帰ろうと、今なら混んでいないだろうと9Fへ。どこも早くも混んでいて、待たなくて良いのは「梅の花」だけ。

豆腐尽くしの店だが、色々工夫した料理で、飽きさせることはない。

 

「梅の花」は、横浜に住んでいた頃、はるか昔に「立場店」に良く行っていた。最近では新百合丘店へ時々行ったのだが、吉祥寺東急の店には入ったことがなかった。
いつも行き当たりばったりで、
予約しないので断られていたのだ。今回は、大広間か、カウンタ席ならと言われて入店した。

 

下の写真の突き当り右側へ曲り、靴を脱がずに入れるカウンタ席へ。

 

半円形のカウンタ席の前は畳敷きで、ひざまずいてサーブしてくれる。

 

私の選んだメニューは「春の特別ランチ」

 

まず運ばれたのは、

 

次に、豆乳もち 海老そぼろあん掛け

 

そして、桜鯛と春野菜のセイロ蒸し

 

 

肉を選択し、黒毛和牛の溶岩焼き。脂が飛ばないように紙の屏風で覆う。

 

海老などの炊き込みご飯、湯葉吸い物と香の物

 

デザートにコーヒーをプラスした。

 

 

相方は「彩ランチ」

 

最初は、豆腐サラダ、茶椀蒸し、など。

 

湯豆腐、湯葉揚げ

 

白く泡だったら食べごろ

 

生麩田楽

 

ご飯は私のものと同じ。海老入りの炊き込みご飯がいたくご好評。

 

私のものと違うデザートとコーヒー

 

最後に箸置きを、2つをご紹介

 

「ふるさとや  実梅を量る  母の枡」中村汀女

 

「むめ一輪 一りんほどの あたたかさ」服部嵐雪

この有名な句は芭蕉の弟子の服部嵐雪作で、元の句では梅のことを「むめ」と書いていたと、勉強になったし、

二人で 7千円足らずなら、それほど豪華ではないが、たまには好いかと、けっこうなランチということで。

 

 

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