駅前からの入口には「がんばろう福島」の旗が。
今日は6月から始まった朝市で、今回は宮城県石巻市を応援するための特産の焼きそば、海産物、野菜や、雑貨を販売している。
吉祥寺の人々を中心に、石巻市の湊町に定点を置いて被災地の応援を続ける「みなと応援村」の活動報告が貼り出されていました。
かわいい雑貨も並んでいました。
次回の朝市は11月20日朝7時から10時まで。ハーモニカ横丁限定商品販売や親子似顔絵教室など。
上野千鶴子著『女ぎらい -ニッポンのミソジニー』2010年10月紀伊國屋書店発行、を読んだ。
ミソジニー misogynyとは、男性にとっては「女性嫌悪」(著者によれば「女性蔑視」で、女性にとっては「自己嫌悪」)だ。
最近は介護分野で活躍し、優しさをかいまみせる上野千鶴子さんが原点のフェニストの姿で、男性に怒りまくり激しく語る。日本社会にしっかり根を生やした「女性嫌悪」を、「非モテ」「皇室」「負け犬」「少年愛」「東電OL」「秋葉原事件」といったキーワードや、吉行淳之介や永井荷風、林真理子らの小説の中から読み解く。
いくつか抜き出してみる。
(上野さんが何で今頃、過去の人とも思える吉行淳之介にこれほどこだわり、怒りをぶつけるのか理解しにくい。彼のような考えの男性が未だ多いということなのだろうが、他の例を出したほうが良いのでは。)
「ホモソーシャル」とはイヴ・セジウィックによる概念で、男性同士の性的な関係を示す「ホモセクシュアル」と区別して男性同士の「性的でない絆」を指すために用いられる。
男たちはホモソーシャル集団を形成し、自分たちだけの世界を作り上げ「おぬし、できるな」と互いに認め合い、連帯しランク付けをする。
「モテ」とは男と女の関係性を示す概念ではなく、男同士の関係性に発したものである。男は女そのものには興味がない。興味があるのは、女を〝所有〟している自分を見る男の視線だ。
私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
複雑な内容を読みやすく表現、説明している。とくにびっくりすることを述べているわけではないが、薄々感じていたことをはっきり言葉にしている。
久しぶりの上野さんらしい勢い良い、怒りにまけせた語り口だ。平凡な男性である私としては、そう言われれば確かにそういう面はあるなと思い、だんだん頭が下がってしまう。
「でも、そんな男に育てたのは母である女性でしょ」と言いたくなる。もちろん怖くて、直接上野さんにそんなこと言えるわけありませんが。でも彼女も言っている。「家父長制とは、自分の股から生まれた息子を、自分自身を侮蔑すべく育てあげるシステムのことである。」
目次
1.「女好きの男」のミソジニー
ミソジニーとは何か/吉行淳之介と永井荷風/女から逃走する男たち
2.ホモソーシャル・ホモフォビア・ミソジニー
男の値打ちは何で決まるか/男の連帯の成立条件/男は性について語ってきたか
3. 性の二重基準と女の分断支配――「聖女」と「娼婦」という他者化
ジェンダー・人種・階級/「聖女」と「娼婦」の分断支配/性の二重基準のディレンマ
4.「非モテ」のミソジニー
「性的弱者」論の罠/性の自由市場/秋葉原事件と「非モテ」/格差婚の末路/「男性保護法」の反動性/「男になる」ための条件
5.児童性虐待者のミソジニー
「欲望問題」/公的セックス・私的セックス/児童性虐待者たち/ミソジニーとホモフォビア
6.皇室のミソジニー
男児誕生/皇室はいつからミソジニーになったか/記紀の神話論理学/皇族と人権
7.春画のミソジニー
暴力・権力・金力/快楽による支配/ファロセントリズム/春画研究ことはじめ/男根フェティシズム/男無用の快楽?
8.近代のミソジニー
「母」の文化理想/「ふがいない息子」と「不機嫌な娘」/「自責する娘」の登場/近代が生んだ女のミソジニー/自己嫌悪としてのミソジニー
9.母と娘のミソジニー
反面教師としての母/母の代償/母は娘の幸せを喜ぶか/母の嫉妬/母と娘の和解
10.「父の娘」のミソジニー
家父長制の代理人としての母/「父の娘」/「誘惑者」としての娘/日本の「父の娘」/「父」への復讐/「父の娘」でも「母の娘」でもなく
9.母と娘のミソジニー
反面教師としての母/母の代償/母は娘の幸せを喜ぶか/母の嫉妬/母と娘の和解
10.「父の娘」のミソジニー
家父長制の代理人としての母/「父の娘」/「誘惑者」としての娘/日本の「父の娘」/「父」への復讐/「父の娘」でも「母の娘」でもなく
11.女子校文化とミソジニー
男の死角/女子校の値打ち再発見/女子校文化のダブルスタンダード/「姥皮」という生存戦略/ネタとベタ
12.東電OLのミソジニー
メディアの「発情」/東電OLの心の闇/男たちの解釈/二つの価値に引き裂かれる女たち/娼婦になりたい女/女が男につけた値段/「性的承認」という「動機の語彙」/売買春というビジネス/女の存在価値/女の分裂・男の背理
13.女のミソジニー/ミソジニーの女
ふたつの「例外」戦略/林真理子の立ち位置/女と女のライバル関係/コスプレする「女」/女と女の友情
14.権力のエロス化
夫婦関係のエロス化/プライヴァシーの成立/性的満足の義務?/サディコ・マゾヒズムの誕生/セクシュアリティの脱自然化/身体化された生活習慣
15. ミソジニーは超えられるか
ミソジニーの理論装置/欲望の三角形/ホモソーシャル・ホモフォビア・ミソジニー/セクシュアリティの近代/ミソジニーを超えて/男の自己嫌悪
上野千鶴子の略歴と既読本リスト
有川浩著『阪急電車』2008年1月幻冬舎発行、を読んだ。
大阪と神戸の中間あたりにありながら、ほのぼの和やかな阪急今津線の北線の8駅が舞台。それぞれの話が互いに関連し合う連作短編。
会話文が多いので、本を読む感覚はさくさく進んでいくと思います。心理描写は多少多く、風景描写が控え目。内容がソフトでも、陰険な重い内容でも、すべてさわやかに
小学生1,2年の女の子が意地悪される話が出てくる。
意地悪しようと、〇〇ちゃんを隠している少女たちがクスクス笑っている。その笑い方が幼いくせに既に女の卑しさを含んでいる。実際には隠しているのに意地悪リーダーの女の子が言う。「〇〇ちゃんだったら先に帰ったって言ってるでしょう」
意地悪された??ちゃんは凛として言い返す。「きいてないのに教えてくれてありがとう」
ぎゅっと唇を噛んで黙々と目元を拭きはじめた誇り高い??ちゃんに、友達を寝取られて復讐した女性が言う。「あなたみたいな女の子は、きっとこれからいっぱい損をするわ。だけど、見ている人も絶対いるから。あなたのことをカッコいいと思う人もいっぱいいるから。私みたいに」
この作品は「パピルス」11号~16号に掲載されたものに「折り返し分」を書き下ろしたもの。
私の評価としては、★★(二つ星:読めば)(最大は五つ星)
若いというか、幼いに近い女性のおとなしい恋の話が大部分だ。まあ今でも実際には、女性の多くは淡い思いにドキドキし、オドオドし、なんとか付き合い始めるのだろう。若い女性には胸キューンで人気があるようだ。
ベタな恋愛小説にはもはやついて行けない私には遠い話だ。しょせんおじいさんの読む小説ではなかった。
片道20分ほどの通勤電車の中で読み、2日ほどで終了。簡単に読めるが、まあこんなものかという感じだ。
女子高生と付き合うバカな社会人男性の話が7ページに渡って書かれていて、私には退屈だった。この話、電車で実際に聞いたままに近いと有川さんはあとがきに書いている。事実は小説より奇なりというが、事実をほぼそのまま小説として書いても、面白くないということなのだろうか。
有川浩(ありかわ・ひろ)の略歴と既読本リスト
川上未映子著『ぜんぶの後に残るもの』2011年8月新潮社発行、を読んだ。
新潮社の宣伝文句はこうだ。
津波にも地震にも奪いきれないものが、わたしたちのなかにはある!
震災に関するエッセイが最初に8編。週刊誌に連載されたものなので、震災直後の動揺の中で書かれているのだが、著者の芯がしっかりしているのに感心した。若いし、ミュージシャン、女優でもあり才能はあるが、軽いのりの人と思っていたが。
大部分(多分48編)は、著者の身の回りで起こったこと、ネットで知ったことなどについてのエッセイ集。
いくつか、ご紹介。
困った人がクレームの電話を編集部にかけてくる。受話器をそのまま置いて別の仕事をして7時間後に思い出して耳にあてるとまだ同じテンションで話を続けていた。断ったのにそちらに伺いますと言ってやってくる。玄関で追い返したら、「行くところがありません」という。ではと、ライバル社の編集部の地図を渡すと、「あのわたし、いま、ここから来たんですけど・・・」ライバル社がこちらの地図を渡していたのだった。
初出:週刊新潮「オモロマンティック・ボム!」2010年4月22日号~5月12日号、日本経済新聞「プロムナード」2010年3月31日から4月28日
私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
日常のささいな話が多いので、男性には受けないかもしれない。しかし、細かな感情のあやが、ユーモアやちょっとした驚きと共に独特の文体でつづられている。
絨毯を見に行って50万円と聞いてそのまま帰ってくる。子供の頃、母と絨毯を買いに行ったことを思い出す。8千円と1万2千円でさんざん迷い、結局高い方を買い、担いで帰る。畳の上に広げて、家族で照れ笑いし、本当に幸せな気持ちになった。・・・