新川帆立著『剣持麗子のワンナイト推理』(2022年4月22日宝島社発行)を読んだ。
宝島社の宣伝
連続ドラマ化決定! 『このミステリーがすごい!』大賞受賞作『元彼の遺言状』のヒロイン再び!
弁護士・剣持麗子は今夜も徹夜で謎解き――寝不足必至のミステリー短編集
亡くなった町弁のクライアントを引き継ぐことになってしまった剣持麗子。
都内の大手法律事務所で忙しく働くかたわら、業務の合間(主に深夜)に一般民事の相談にも乗る羽目になり……。
次々に舞い込む難題を、麗子は朝までに解決できるのか!?
法律相談に運動会(?)に、剣持麗子は今日も眠れない!
第一話 家守の理由
不動産屋の主人が何者かに殺害された。麗子は「武田信玄」と名乗る第一発見者の男に呼び出されるが、男は本名も住所も明かそうとせず……。
第二話 手練手管を使う者は
バーでホストの「信長」が殺された。状況からすると店で寝ていたという「光秀」が怪しいが、彼は無実を訴えて麗子に助けを求めてくる。
第三話 何を思うか胸のうち
事務所の先輩弁護士の急死。しかしその状況は一度倒れてから蘇り、その後再び亡くなったかのような奇妙なものだった。
第四話 お月様のいるところ
認知症を患っているらしいおばあさんを家まで送った麗子は、そこで男の首つり死体を発見する。しかもおばあさんは警察署から忽然と姿を消し……。
第五話 ピースのつなげかた
三隣亡の日に瓦の葺替えを行ったA家の近隣で、不幸が相次いでいるという。法律でAさんを訴えられないかという相談に、麗子は頭を抱えるが――。
新川帆立(しんかわ・ほたて)の略歴と既読本
法律にも無知だが、冒頭の条文引用を見て、驚いた。善意・無過失で10年、あるいは20年他人の物を所有すれば自分の物になると読める。
民法 第162条(所有権の時効取得)
1.20年間、所有の意志をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占拠した者は、その所有権を取得する。
2.10年間、所有の意志をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占拠した者は、その開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
あの広大な土地は、私の物かもしれない。念のため、所有権を主張しておかねばならない??
参考
主要人物
剣持麗子(けんもち・れいこ):企業相手の「山田川村・津々井法律事務所」の弁護士だが、その他に、前々作「元彼の遺言状」で死亡した村山権太弁護士からの業務を引き継ぎ、同事務所の仕事が終わった深夜に仕事する。通常は高飛車でお金に厳しいのだが、今回はついほだされて金にならない仕事もしてしまう。
黒丑益也(くろうし・ますや(苦労しますや)):「クラブ・ウィング」のホスト。剣持の臨時下働き。進藤殺害の容疑者。源氏名は武田信玄。
橘五郎:「新宿警察署」刑事課強行犯捜査係の係長。だらしない服装で女性的話し方。
「家守の理由」
進藤昌夫:「進藤不動産」の社長。殺害された。不動産仲介業務はほとんどしていなかった。
真美:湾岸線を暴走し、アルコールが検出され逮捕。奈良漬けのせいだと言い訳した。
「手練手管を使う者は」
織田信長:黒丑の先輩ホスト。「バー翼」で殺害された。信長は源氏名。
明智光秀:黒丑の先輩ホスト。信長殺害の容疑だが無罪と主張。光秀は源氏名。
木下雄一郎:「バー翼」の経営者。元ホストで信長らの先輩でもあった。
「何を思うか胸のうち」
川村:「山田川村・津々井法律事務所」のパートナー弁護士。
三上愛:同事務所の弁護士。「AI三上」と呼ばれる。日本語がすごくうまい外国人のような明瞭な発音。
峯口:最近同法律事務所に転職してきた男性弁護士。ロッカーで死体が発見。過去に問題を起こし、事務所を転々。パワハラ気質で神経質。ダイエット中で、間食は全てナッツにしていた。
典子:遺産相続の件で麗子に相談する女性。
信夫:麗子の恋人。IT企業で働いている。
「お月様のいるところ」
瀬戸みえ子:認知症を患っているカーディガンを着た高齢女性。
牧田原信二:瀬戸を送り届けたアパートで首吊り死体で発見された男性。5年前に起きた水難事故で、業務上過失致死の疑いで逮捕されていた。
鎌田容子:5年前の水難事故の被害者。
「ピースのつなげかた」
三隣亡の日に瓦替をした隣家のAさんのせいで、近所で立て続けに不幸が起こったので訴えたいと浦山が麗子に相談。瓦替の翌日浦山家に泥棒に入り、一週間後、建設会社の社長・D家の主人が亡くなり、3日後。Bさん宅でボヤ騒ぎが起きる。
橘「どうせあの青年が犯人ですよ」
剣持「なんで分かるのよ」
橘「刑事の勘ってやつですかね」
剣持「数々の冤罪事件を作り出してきた悪名高いファンタジーね」(p99)