世界同時株安
先月後半から世界的株安が始まり、その後株価が乱高下している。日本市場だけではない。何か基本的なところに変化が起こったのではないかと気にかかる。将来利益の反映である株価が乱高下するというのは市場がどんなメッセージを発信していると解釈すべきか。
先月後半から原油価格の騰勢が一服し、貴金属材料値上がりがピークをうち、アジア株など新興市場が大幅に下落した。インド株の下落は20%を越え日本の投資家を慌てさせた。つい最近までアイスランドやニュージーランドへの投資も急増していたので火傷した投資家もいるはずだ。その背景はヘッジファンドの投資先が見直されている説が有力のようだ。
絶好調ヘッジファンド、5月に躓く
今年に入りヘッジファンドは絶好調だった。HFR(Hedge Fund Research)によればヘッジファンドは4月までのリターン(YTD)が平均8.1%だったが、5月半ばに今年儲けの半分を一気に失ったとCNN-Money報じた。パフォーマンスの悪化は上記の原油から金まで商品市場の落ち込みが原因であると見られている。
市場乱高下のボタンを直接押しているのはヘッジファンドなどの投機マネーの流れだが、背景は米国経済と世界的高金利動向の双子の不透明であるとの指摘がある。その説によると、ここで一旦利益を確定し他の市場に再投資するサイクルの過程で乱高下を生んでいる。
バーナンキ・ファクター
米国経済に対するバーナンキFRB議長の評価が明確でなく、結果として金融政策がどうなるか分からない、まだ前任のグリーンスパンほど市場の信頼を得てないことが、先々の不透明感の一因となっているようである。
住宅価格上昇が落ち着き米国経済の70%を占める消費が抑制されるという具体的な心配のタネが不透明感を強めている。しかし、バーナンキが無能だと言うわけではない、新人1年目は誰でもそういう見方をされるとメリルリンチのアナリストは擁護している。
投機マネーからリアルマネーへ
ヘッジファンドにとってみれば日本の量的緩和解除に続きFFレートが更に上昇すれば今までのように資金調達が簡単にはいかなくなり、投資に対して慎重になったと言われている。量的緩和の影響がこういうところに現れてきた。
先週末ロイターはこの世界的な高金利に対する不透明感は投資マネーからリアルマネーの投資戦略まで変化させ始めたと報じた。米国の個人投資家が株を売り債権に向かい年金などの機関投資家も後を追っている、日本のインド株投信も資金流出しインド株低落の要因になっているという。資金の流れが大きく変わりつつある。
アジア危機と日本?
アジア株式市場は軒並み15-20%下がったがその後やや値を戻した。アジア通貨危機が再発する条件が揃っていると大前氏は警告しているが、各国政府は十分学習効果したはずだ。外貨準備高を積み上げ、金融システムを強化、通貨危機の恐れは先ず無いと私には思われる。
堅調な成長を続ける日本経済だが、今後の業績予測が期待値を上回らず、市場混乱で経営者の投資判断が保守的になり設備投資の伸びが止まるようなことになると、日本株への投資スタンスが更に低下、海外投資資金が逃げ出し株価が低落する恐れがあるという。専門家は第2四半期の業績に向けて6月末の状況をウォッチしているようだ。■