5日に‘世界市場乱高下’と書き込みした舌の根も乾かないうちに世界市場は一本道で下げ続けた。投資先の見直しは投機マネーからリアルマネーにまでわたり、その間乱高下は必然的に起こるはずと私は見たが、その後市場は下げ一方になり私の見方が楽観的に過ぎた。
もう一つ訂正しなければならないのが、最新の情報によるとヘッジファンドの損失は前回報告したより軽微だった。東欧やハイテック領域の投資は5-6%の損失が出たがトータルでは1.2%程度の損失に収まったらしい。
世界同時市場低落の背景はもっと構造的な投資家心理の不安に根ざしており、前回報告より深刻なものと言うのが今回の報告の趣旨である。
私は年頭の「大胆占い」で今年末に米国は景気後退期に入ると見て、市場は先行して下げに入るであろうと予測したがこれ程早く下げが来るとは思わなかった。Nikkei-BPを引用すると「原油高や住宅市場の減速を受けた消費マインドの悪化、自動車販売の落ち込み、・・・ 製造業活動の減速感など ・・・ 今四半期の米国経済の拡大モメンタムが ・・・ 勢いを削がれつつ」ある。景気後退を示す兆候が具体的な指標に出始めた。
ところが、一方で消費者物価指数は2ヶ月連続で上昇しインフレが進行する気配でバーナンキFRB議長の金融政策が不透明との印象をあたえた。一体利上げするのか打ち止めにするのか。議長の不透明さに対しFRBは景気後退よりインフレ警戒に傾き利上げは避けられないと市場は判断し、今利上げされたら景気後退が本格化すると考え今週一気に調整に入った。
今までの低金利による過剰流動性は新興市場を活性化し商品価格の高騰を招いたが、先月からインドやメキシコの株価は暴落し銅や錫などの急激な商品価格下落が起こっていた。前回私は「バーナンキ・ファクター」と名付けたが、微妙なタイミングでバーナンキ議長の曖昧なメッセージは市場の弱気を拡大させることになった。昨日Moneyはこれを「バーナンキ・パニック」と呼んだ。
世界の中央銀行がそろって利上げし(過剰)流動性が低下し世界市場に影響を与える状況を「バーナンキ・パニック」と言うのはちょっと酷だが、グローバリゼーションにより世界の連動性が高まり世界経済の米国依存度は益々大きくなった結果、FRB議長の影響力がかつて無く大きくなったと言うことである。
日本政府のスタンスは事態の沈静化を促すため、谷垣・与謝野両大臣は「調整」が進めば足元の日本経済ファンダメンタルズは良く市場は徐々に回復するはずとやや一国主義で希望的な発言をしている。世界のエコノミストも基本的には同じスタンスで、バブル部分の調整は進むが中印の経済成長は進む、しかし新興市場全体の投資減少は避けられず、回復には時間がかかるだろうと言う見方のようだ。■