ワールドカップで寝不足気味、読書を始めるとついウトウト。来月から田舎の実家で過ごし晴耕雨読の生活をするつもり。しかし、未読在庫リストが魅力的でないのがちょっと問題だ。公立図書館もその名に値しない。何が利用できるかもう一度調べてみるつもりだ。
今回のお勧めは「文明が衰亡するとき」(高坂正尭)、著者の優れた歴史観と洞察力に基づく現実主義の一端を感じ取れた。生前彼の同時代を見る目には違和感があったが、歴史を見る目を別に持っているのだろうか。参照している文献が私と妙に一致しているのが不思議だ。
(2.0)在日 姜尚中 2004 講談社 在日と言われる著者の精神遍歴自伝。同時代に生きるものとして時々の事件への感じ方の違いが興味深い。現韓国の人達に共通する「朝鮮動乱と米国介入」の記憶喪失は私には不思議、歴史は歴史として大地の恵みに対する感謝のような気持ちを生まれ育った国に対して持てと言うのは残酷か。
(2.0)野中広務 差別と権力 魚住昭 2004 講談社 出身の野中氏の弱者に対する心情と、理より権力闘争をベースにした政治手法の限界とそのアンバランスが興味深い。「独自の国家戦略を持たず、潮目を作り出さず潮目を見る政治家」の評価は妥当。
(1.5)いじめと妬み 土居健郎・渡辺昇一 1995 PHP 94年にいじめで小学生が自殺した事件についての評論。戦後教育のせいで子供に戦う気持ちがなかった、いじめた側に妬みあったと根拠なく推測し得意の分野に引き込み評論する我田引水的論理展開の良き見本。
(1.5)バカの壁 養老孟司 2003 新潮社 尤もらしい決め言葉が根拠なく次々と出て来る。何故そうなのか深い議論がない。この本手の本が最近ベストセラーになるのは勿論需要があるからで、直ぐ結果が欲しい読者が増えている反映かもしれない。「・・・品格」物と同じ線上にある、食いつく読者も見透かされている。
(1.5)運のつき 養老孟司 2004 マガジンハウス 厳しい評価で申し訳ないが、悪く言えば老人の繰言、良く言えば趣味のいい時間潰し。特定のテーマについて著者の考えは如何にと肩に力を入れ読み始めると、突如本論から離れ脇道を通って終わり、肩透かしを食らう。
(2.0)表の論理・裏の論理 会田雄次 1977 PHP 著者の広範な歴史観で日本人の本音を味わい深く解説。しかし、後半の全てを使い古今東西の人生の大家の言葉を駆使して繰返し女が男と異なると説く。30年前はOKでも今なら排斥運動が起こり教授は追放されたかも。
(1.0)経営者のための図で見る中小企業白書2003年版 中小企業庁 ぎょうせい データ集と思えばよい。2年前は景気回復の兆しの一方、開業減・倒産増、貸し渋りを思い出させる。当時これが「遅行指標」だと理解できず執拗に非難した評論家を思い出す。
(2.5)コレラが街にやってくる 藤田紘一郎 2002 朝日新聞 温暖化が生物学的に如何に衝撃的な影響を与えるか分かり易く解説、題名の軽さに似合わない真面目な内容。
(3.0)文明が衰亡するとき 高坂正尭 1994 新潮選書 「衰亡論は不思議に人を惹きつける」という書き出しに私も惹きつけられた。ローマとベネチアの衰亡を論じ、現代に戻ってベトナム戦争後の米国の苦悩と日本の未来について語る。著者は歴史散歩といい、歴史から教訓を引き出すつもりはないというが示唆するところは大である。
(2.0)1991年日本の敗北 手嶋龍一 1993 新潮社 湾岸戦争の戦費拠出交渉が外務・大蔵の対立により130億ドルの貢献を台無しにした日本外交の失敗を生々しく描いている。結果として嫌米感が生まれたのは、一国平和主義が落とし穴に入ったと感じる。これがトラウマとなって今日のイラク戦争の日本の対応が決まったといってよい。「世界観を欠く箱庭外交」がテーマだが、しっかりした世界観から説き起こしてないのが残念。今日メディアに共通する弱点。
(2.5)帝国の傲慢(上・下) 2005 元CIAのイスラム専門家がイスラム圏の既知情報を駆使して、テロはイスラム原理主義者でなく「文明の衝突」の延長線上にあり13億のイスラムの意思と捉え、外交・戦争遂行の根本的な見直しを求めている。理論展開は乱暴だがこちらには上記と異なり根拠となる世界観がある。
(1.5)ゴールキーパー論 増島みどり 2001 講談社 「論」と言うよりサッカーから水球まで5つの球技のトップクラスのゴールキーパーとの対談集。W杯を楽しく見る為の読書と思ったが期待外れ、しかしGKに共通する意外な心理が面白い。
(X)痛風に克つ 内田詔爾 1995 講談社 必要に迫られ読む。痛風は積極性や指導性があり自己主張の強い人がストレス下でなりやすい。症状の段階によって薬が異なる。初めての発作から慢性になるまで平均12年。食事療法はそれほど効果なし、しかし痩せるのは効果大。痛風のことは良く知っていると思ったが参考になること多。■