かぶれの世界(新)

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米中経済摩擦に備える中国

2007-04-21 22:57:16 | 国際・政治

久し振りに中国ネタをやります。ブッシュ大統領はWTO提訴して対中国強硬路線に転換した一方で、日本と中国の関係は温家宝の訪日を機に「氷」が解け始めた。経済の側面から情報分析して読み解いて見たい。

米国の強硬路線への転換

今月10日米国は知的所有権の侵害に適切な対応をしていないと中国をWTO(世界貿易機構)に提訴した。過去7年間で米国映画会社は模造品で10億ドル(約1200億円)の収入を失ったと見積もられている。世界模造品の70%は中国製、中国GDP8%が模造品によるものという。

ブッシュ政権は従来の柔軟路線を取って来たのに、突然強硬路線に変更したように見える。実際のところは昨年中間選挙で民主党に敗北して以来、徐々に路線変更して来た。今年2月に中国の紙(製品)の輸出振興補助金を警告し、3月には懲罰的関税を課していた。

これが80年代の日米貿易摩擦と同じような展開に繋がるかどうかは分からない。当時、唐突に米国製品の輸入促進の政府ミッションで航空機の輸入したものだが、既に胡主席が訪米時シアトルに立ち寄りお土産の買い物リストを持ってワシントンに向った。正に歴史は繰り返す。

急速に中国の米国依存が低下し始めた

しかし同時に中国は80年代の日米貿易摩擦を詳細に研究したと思われる。中国は昨年頃から今日を予測して着々と準備していたのではないかと思われる。今年になり中国貿易の米国依存度が急速に低下していることをNYタイムスが18日伝えた。

中国の対米貿易は全出荷量の10%にもなり、米国の対中貿易依存度の25倍のも達する。つまりクリティカルな状況になった時は首根っこをつかまれた状態にある。貿易国の多様化は中国の国家的危機管理として軍事強化と並び最優先事項であったと思われる。

途上国向け貿易急増、ユーロ高が拍車

上記の記事によれば2000年の米国向け輸出は中国全輸出の31%だったが、昨年11月に24%、2月に22.7%と急激に減少している。アジア地区への輸出が微減、欧州地区の輸出がやや増加しており、インド・ブラジル・ロシアへの輸出が過去7年で倍増しこの冬には32%に達したという。つまり最大の輸出先が途上国になった。

中国の商品はかつての主力商品Tシャツや玩具から、安価で頑丈なトラックなど耐久商品がスペインやイタリーなど購買力に限りのある(やや貧乏で高い商品が買えない)南ヨーロッパでよく売れている。同じ理由で開発途上国でも急速にシェアを伸ばしているという。

この変化は過去数年徐々に起こっていたが、今年始めの対元ドル安とユーロ高が拍車をかけたという側面もあるらしい。又、必ずしも国家の方針に従った訳ではなく中国民間の市場開拓の成果でもあると記事は報じている。中国政府は何としても貿易摩擦の悪化を避けようと更なる政府ミッション派遣を計画しているという。しかし全体として国策に従った動きのように私には思える。

政治リスクよりビジネス優先の日本

ところで日本といえば2005年の例の反日デモが燃え上がった直後一時期下火になると予想された対中直接投資が、実のところその後も堅調に増加し2005年でも前年比20%増の60億ドルに達し、2006年には何と約140万人の雇用を生んでいるという。

2006年には日中貿易は2000億ドルに達し、今年は香港を除く中国本土との対中貿易が米国を抜いて我国の最大の貿易国になるという。広東に進出した自動車工業と関連会社が主力で合計3000社を上回る数になり上海と肩を並べる勢いだそうだ。(ファイナンシャル・タイムズ4/16) 

この日本の姿勢は中国にとって我々が思うよりとても有り難い存在のはずだ。反日感情が強い中、温家宝首相はぎりぎりの芝居をうったという論評がある。しかし、数日前NHKBS1が放映したドキュメンタリー番組で中国下層階級の深刻さと貿易摩擦などの危機管理を考えると、先日訪日した温家宝首相のメッセージも分かり易くないだろうか。■

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