首相選出プロセスとしては合格
菅首相を再選した民主党代表選は近年にない関心を呼んだ。都心の演説会には多くの人が集まり耳を傾け広場が熱気で包まれた。選挙結果を見るため街角のテレビに人だかりができた。代表選が次期首相を選ぶプロセスであったこと、2週間にわたる選挙戦が白熱したのも一因だ。だが、国民の真の関心は小沢氏を首相に選んでよいのかどうかの判断を迫られたからである。
事前の世論調査では一貫して圧倒的にアンチ小沢であり、結局その通りの結果になった。民主党の代表選が国民の意思を反映した結果となったことは、先ずは首相を選ぶプロセスとして評価できる。逆の結果になれば、国民の意に反した首相の烙印が押され、正統性を失った小沢民主党内閣は困難な政権運営を迫られ、国民にとって不幸なことになったろう。
具体的政策の議論が不十分だったという指摘はあるものの、2週間あれば両候補の政策上の争点が明らかになった。小沢氏の主張するマニフェスト順守と無駄の徹底排除・基地問題の見直し方針が、選挙戦が進むに連れ意外に具体性に欠け一部失望をかった。それが菅首相の曖昧だけど現実的な政策、財政規律重視のマニフェスト実行や日米合意順守を上回れなかった。
小沢氏のイメチェン成功か?
昨日「汚名ロンダリング」で書いたように選挙期間中に小沢氏のイメージが随分変わったように感じたが、私の予想に反して民主党の党員・サポーターは世論調査のコピーのような結果を出した。石原都知事は永田町の常識と世論のギャップを鋭く指摘したが、私も痛い所を突かれた感じだ。私もテレビの影響をかなり受けた可能性はある。
民主党議員に世論との乖離を反省する言葉が聞かれなかったのは少し気になる。何も言わないが、心の中では思うところがかなりあると思う。というのは、次の選挙で再選されるかどうかが多くの議員の最大関心事であり、世論に反して勝つことの難しさを今回痛感したはずだ。
代表選直後からの報道は、小沢氏及び小沢グループの人事上の処遇に集中している。依然として話題の中心に小沢氏がいる。良くも悪くもこの報道姿勢が結果的に小沢氏の影響力を保ち、政治生命を延ばすことになるだろう。何時かは分からないが、イメチェンした小沢氏の再登場があるように感じる。意図しなくとも報道が大きな役割を果たすだろう。
ネット世論いまだ浮上せずとも期待
一方、ネット世論は圧倒的小沢氏支持とことさらに取り上げる専門家がいたが、私はネット世論は国民世論を反映しておらず、狭い世界での未熟で影響力のないものと予測し、その通りとなった。私の目には数年前と少しも変わってないように感じた。ネット世論のレベルアップの一助と思って記事を投稿し続けてきた私には残念なことだが、これも今回改めて思い知らされた。
冒頭に私は世論を反映する民主党代表選は首相を選ぶプロセスとして合格と言ったが、一方で、世論ばかり気にしたポピュリズム政治になるという批判が聞こえてくる。それが首相をコロコロ変えることになると。今回は検察情報を報じてネガティブキャンペーンを続けた主流メディアが、反小沢の世論を誘導し小沢氏の代表を阻んだと。
だが、それは本末転倒の危険な考えだ。世論を反映した政治は民主主義プロセスの基本であり、政治はそれを超えて世論を説得し導くのがあるべき姿である。その為にメディアは国民に判断材料を提供する重要な役割がある訳だし、ネット世論が主流メディアに対抗できる発信源になると期待したい。■