中国がレアメタルの対日輸出規制をしたとニュース速報のメールが入ったのは、昨日の午前11時過ぎだった。NYタイムズからだ。レアメタルは日本のハイテック企業にとって必須の稀少金属であり、備蓄がかなりあることは知っていたが、一目見て大変なことになったと思った。
それではと、日本のメジャーな新聞のサイトに行くと関連記事が見られない。テレビ報道も夕方頃になって異常気象などの解説の後で触れられる「その他ニュース扱い」程度だった。昨夜のテレビのニュース解説や今朝の新聞(実家のある田舎では夕刊が無い)で報じられているものの、トップの見出し扱いではなかった。
価格交渉が進まないのにごうを焼いたロシアが、欧州向けのガスを止めたことを思い出した。中国もこういうことをする国だという印象があったので、驚きはしなかった。だが、日本の生命線ともいえるレアメタルが禁輸されたらメディアが大騒ぎすると予想したので拍子外れの反応だった。
尤も日本をアタフタさせるのが中国の狙いであったはずで、政府・産業界が少なくとも表面的には冷静に受け止めているのは良かったと私は考える。しかし禁輸が続けば深刻な事態になることも予想され、今回の比較的冷静な報道はメディアが鈍感なだけなのかもしれない。いずれにしろ、今回の中国のやり方は対中外交の当事者にとって予想通りとしても教訓になるだろう。
話題はがらっと変わり、イチローが今朝方10年連続200本安打を達成したニュースがテレビで大きく取り上げられた。皮肉だが、中国の輸出規制に比べ凄く早い。10年連続は大リーグ新記録だという。世界の一流選手が競うメジャー・リーグでトップクラスの成績を怪我もせず、大きなスランプも無く10年も続けることだけでも素晴らしい記録だ。正に100年に一度の記録だと思う。
米国内でどう見られているか気になってMLB、CNN(SI)、MSNBC、ESPNなどネットを調べると、相手チームの4番ボーチスタが今シーズン50号ホームランを打ったという扱いの方が大きく、イチローの記録が見出しに全く無いサイトもあった。何と言う軽い扱いだ。
彼らがどう見ているか分かる気がした。それは一概におかしいとも言えないところもある。というのも、ゲームはその50号本塁打が効いて1-0でトロント・ブルージエイズが勝った。豪快な本塁打はファンを楽しませるだけでなく、実際ゲームに勝つ貢献をしたという典型的な形で終った。
ホームランでなくとも人気チームのNYヤンキースのDジーターが、チーム内の通産安打記録が往年の名選手を上回ったというだけで、私にもニュース速報が来てヘッドラインの記事になった。彼のチームの勝利に対する貢献が認められてのことだと思う。が、この差には違和感がある。
先日イチローの所属するフランチャイズの地元紙が、近年チームが記録的な負け数が続く中、10年連続で200本安打記録達成に近づくイチローの奮闘振りを、「ビタースゥイート」という言葉を使って複雑な思いを報じていた。多分この辺のところが日本のイチローファンの心情に最も近いのだろう。
だが、それが米国人の一般的な考えではないことを理解してかかるべきだ。私には米国の方が中国をよく理解して対応しているように感じる。そしてイチローはどうだろうか。■