かぶれの世界(新)

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天邪鬼・日中摩擦

2010-09-27 14:58:51 | 国際・政治

尖閣列島の領有を巡る日中摩擦が、検察の政治判断で船長を釈放し新たな局面に入った。中国からは謝罪と賠償を要求される一方で、多くの野党や識者は政府の対応を非難し、国内報道はしたり顔の「外交惨敗」とかいう刺激的な評価が並ぶ。海外でも日本が恥をかかされたとの論評があった。

私も中国の態度は忌々しいと思うが、「なるべしてなった」という印象を受けた。交渉ごとにおいては妥協可能な目標と最悪時の失うものを見極めておくのが常識だ。日中どちらが失うものが多いかちょっと冷静に考えれば、日本は圧倒的に多くのものを中国から得ていると私は理解している。

手元に具体的な数字は無いが、日中貿易と双方の国への企業進出とそこから得る利益を総合すれば、日本は圧倒的に中国市場に依存している。中国も日本との経済関係が悪化すれば痛手を受けるが、日本の方が失うものがかなり多い。

私のビジネス経験がそのまま外交に当てはまるとは思わないが、交渉とは相手方が組織内(国内)で立場が守れる条件を見出し、こちらの妥協可能な条件と重なるウィン・ウィンの着地点を見つけることだ。一方で、お互いのダメージをバランスさせるという側面がある。

つまり、交渉ごとが上手く行かない時の最悪ケースを予測し、被るダメージに対する心構えとか準備をしっかりする、ということが交渉の結果を左右する側面がある。従って、得る物よりも相手方の最悪ケースの損失を出来るだけ正確に見積もり、損失を大きく見せる仕掛けや材料があることが極めて重要になる。

外交の世界で国際法とかルールや、まして国家の品格など通用しないケースの方が多いと考えるべきだ。それが短期的か長期的か、何が重要な価値観か異なるが、基本は国益と国益の戦いだ。共産党一党独裁維持が政策の最優先事項であり、国際法を無視し続ける北朝鮮を擁護し、資源獲得の為には大量虐殺した国を支援するのが中国であると忘れての議論は無意味だ。

一方で、現在の日本は痛みに弱い国になった。何かあれば直ぐに大騒ぎして国が割れ右往左往して目先の対策に追われる。それは経済だけの話だろうという声が上がるかもしれない。だが、今の日本は常に経済が優先するのが現実だ。その傾向は政財官+メディア+国民全てだ。つまり、それが今の日本の国益である。導かれるのは、最悪ケースの許容度が極めて浅いということだ。

外交上もっと上手くやれたという議論は多分正しいだろう。だが、それは調整の範囲であるように私には感じる。中国が経済的に日本を上回り、購買力平価では数年内に米国に追いつく、そのペースを上回る速さで軍事力を強化している。この現実が作る新しい国際バランスの大枠の中での微調整だ。しかもそのバランスはムービング・ターゲットだ。

筋を通す為に被る不利益を我慢する覚悟がない日本は恥をしのんでも首をすくめ、しかし実利だけはきっちり頂くということではないのだろうか。実は戦後の日本はそうやって繁栄の道を歩んできたと私は考える。沖縄返還だって金を払い米軍基地を日本各所に認めた上のこと、しかもそれで日本の防衛をやらせるという、世界史を振り返れば極めて稀で上手くやったといえる。

かつてサムライは大儀の為に常に死に場所を求めて日々を送っていた、下級武士ですらだ。勿論全てでは無いが。サムライの国がないがしろにされた時、どういう仕返しが帰ってくるか予想できない恐ろしさが日本にはあった。だが、今更軍隊を持てというのも無理がある。結果として相手国は軍事的な報復は考慮する必要が無いのも現実だ。

今、日本といえば金の力で武士と張り合った江戸時代の商人というのが私には一番ぴったり来る。国を変える気概は無いが、頭を下げ様が恥をかかされ様がしたたかに生き残る知恵はある。とすれば圧倒的な経済力が無くなった今、日本と上手くやらなかったことを後悔させる何かを、首をすくめて大事に育てていくしかないだろう。勿論、識者が指摘する外交交渉のテクを発揮して、なるべく損失をミニマムにする中で。それが期待通り行かなくてもじっと我慢し実利を取り機会を待とう。■

コメント
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