再 |
生エネルギー特別措置法案は19日に衆院を通過させることで、与野党国対委が先週合意した。引き続き26日の参院本会議で成立の見込みという。又、政府は本日の閣議で原子力安全庁を環境省の外局に設け、来年4月発足させる基本方針を閣議決定したという。
ネジレ国会で与野党対決の中殆ど成果を挙げることが無かった菅内閣だが、原子力規制の根本的な見直しは歴史に残る賢明な決定であったと高く評価したい。規制当局が経産省下にあったことが、今回の原子力事故対応の混乱の原因となったことは周知の通りである。
世界で最も信頼されているといわれるファイナンシャルタイムズ(FT)は、日本の原子力業界にはかねて安全性を軽視し、都合の悪い事実を隠蔽する体質が見られる。いわゆる「原子力村」の官僚や政治家、原発専門家の信用は大きく失墜したと報じた(日本経済新聞8/10)。
この政治決定はその根本原因を取り除くものだといってよい。浜岡原発の再稼動や玄海原発運転再開に待ったをかけた時、マスコミはこぞって首相の延命の為の唐突で思いつきの人気取りと切り捨てた。だが、菅首相の「待った」がかからなかったら、果たしてこの歴史的な政治決定がなされたか極めて疑問である。
海 |
江田大臣は経産省のシナリオに従って日本経済復興のため原発運転再開を進めようとし、多分手順を踏んで首相了解も取り付けたのだろう。マスコミは菅首相にコケにされたかのように報じた。多分それも本当だろう。だが、官僚の言うことを聞いて混乱を避けたら、それが日本にとって正しい判断が何か考え抜いた結果と言えるだろうか。
菅首相の豹変は正に「君子の豹変」であった、言い換えると我国にとって最も重要な意思決定をしたと評価する。手順を踏んだら正しい決定が出来るわけではない。浜岡原発を運転停止しその後ストレステスト実施指示は、日本を正気に取り戻させた健全な判断であったと思う。
脱原発依存を現実的にどう勧めていくかというHOWの議論はあっても、いまや、方針の妥当性について異論を挟む者はいない。しかし、首相決定直後のマスコミ報道は唐突だとか具体性に欠けると酷評するばかりで、政策の妥当性について全く議論しなかった。
私にとってはマスコミの「唐突」報道は、「歴史に残る政治決定」に対する「歴史に残る不見識な報道」であった。あの公正な事実報道を標榜するNHKの夜のニュースキャスターが、物知り顔に唐突と切って捨てた時のショックは忘れられない。悲しいばかりのマスコミの醜態だった。
だからといって菅首相退陣の動きは止まらないし、彼のパフォーマンスが優れていたという積りもない。しかし、決定的な場面で四方八方の非難を恐れることなく君子豹変し、我国にとって重要な決定をしたと私は評価する。マスコミに叩かれ四面楚歌の状態でよく決断してくれたと。■