今月初めに「2012年大胆占い」の予測が半年経過後してどの位当っていたか見直しをした。その時は今年の世界経済の総ては欧州次第という大筋のシナリオが当った、どちらかというと悪い方向に、と総括した。同時に、先月末の欧州首脳会議の結果を好感して、今年後半は多くの専門家の予想より楽観的な見通しをたてた。
だが、48回目の首脳会議は47回目までと同じように直後に盛り上がった世界の証券市場は、数日のうちに期待が萎んで値を下げ「アナザ失望」となり、私の楽観論が吹き飛ばされた。日経の滝田編集委員はこの繰り返しを「危機対処の五段活用」(①危機発生②緊急会議③深夜まで会議④合意成立⑤翌朝市場がひじ鉄)をしている間に危機が世界に連鎖すると巧妙に表現した。
危機が収拾されたのか、単に問題先送りになったのか、この見分け方として直截的な市場の評価は冷酷で、如何に取り繕っても欧州リーダーの面子は丸潰れにされてしまう。ある意味、それはそれで必ずしも常に正しいとは言えなくとも公平な評価といえる。
その中でも少なくとも現時点ではメルケルドイツ首相の評価が指標になると感じる。今回の首脳会議が終った直後は、最初の反応はスペイン・イタリアが「経済成長協定」を人質にとって、「欧州通貨安定メカニズム(EMS)の銀行へ直接資金注入、欧州通貨制度(ESM)の国債買い支え」をドイツに飲ませた、「反緊縮路線の勝利とメルケルの敗北」として、驚きをもって伝えられた。
ドイツは欧州諸国だけでなく米国からも批判されて所謂「ドイツ包囲網」に屈した、メルケルの敗北とか黄昏といった報道があった。抗し切れなかったメルケル首相の外交手腕に失望を示し、ドイツ国民の経済負担が増すことを危惧する論調が目立ったらしい。
しかし、首脳会議の後でメルケルは国内向けの記者会見で「ドイツは原則を貫いた」と強調した。彼女は「何も約束していない、結果的に負担増を回避した」というのだ。つまり、メルケルの勝利なのだと。それを証拠に首脳会議の‘サプライズ’に急騰した世界の証券市場は翌日以降ずるずると値を下げた。おや、まあ、又もや五段活用だったと上記の滝田さんが言った訳だ。
その後の詳報や解説を見ると確かに、今回の会議でも資金力の限られたEMS(約50兆円)の出資をドイツが増やすなんて話はこれっぽっちも無い。金の当てが無いのに直接注入を決めた訳だ。イタリアなど重債務国の国債買い支えについても事情は同じだ。メルケルは押し切られたように見えたが、財布の紐はしっかり離さなかった。
今回コンセプト(酒の皮袋と飲み口)は作ったが、酒樽の栓はメルケルがしっかり握って離さなかった。前段でメルケルは負けたといわれ、後段でメルケルは勝ったという。欧州とは何と了見の狭い国と毎度の事ながら呆れる。ということで世界経済の先行きは依然不透明、その間に少しずつ経済は傷んで行くのが怖い、私のなけなしの蓄えがメルケルにかかっている構図は続く。■