何時ものようにテレビを見ながら朝食をとっていると、イチローがNYヤンキースにトレードされた速報が飛び込み、記者会見の様子が映し出された。トレードはイチローから切り出したもので、球団がイチローの要求を受け入れたというものだった。マリナーズは今期も最下位に低迷し、若返りを図るチームに自分の居所を失い、イチロー自身新たな刺激を求めたと説明された。
私はこの数年間いつも年初の「大胆占い」でイチローの限界が近いと予測し、昨年その通りとなった。一転して今期のイチローは復活すると予測したが、今までのところ昨年の不調から立ち直れないでいた。彼の飛びぬけて高い給与を考えると、このままでは来年はチームに残留するのは難しいかもしれないと最近の見直しで予測した。
実際、彼のサラリーで何人もの有望な若手選手を雇える。彼の説明はそのようなチーム事情と彼自身も新しい環境で刺激を受けて挑戦するという、両者にプラスの決断というもので私には理解できた。そしてヤンキースにも外野手が故障続きで補強する必要があった。三者にメリットのあるトレードだった訳だ。
だが、同時にイチローにとっては容易ではない厳しい賭けだと私は思った。ヤンキースの故障した外野手が来年には戻って来る、その時球団はどちらか選択肢を持つことになる。今日のトレードは今期だけの判断だが、来期はもっと先々を考えた契約になるだろう。仮に今年大活躍したとしてもそれはそれ、イチローが来年以降いつまで成績を残せるかが判断条件になるだろう。
ワールドシリーズでMVPになった翌年、松井は非情にもトレードされた。契約はそれまでの実績ではなく、それ以降どの程度チームに貢献できるかで決まった。その後の松井は泣かず飛ばずで、GMのトレードの判断は正しかったかもしれない。だが、その後ヤンキースもチャンピオンになっていないから100点ではなかった。いずれにしても極めてビジネスライクな判断だ。
イチローはインタビュー後2時間余りでヤンキースのユニフォームに着替え、マリナーズの本拠地セイフコ球場に立ちファンの歓声を浴びた。ファンは暖かい声援を送り、私はイチローのファンとして救われた気持ちになった。MLB中継を良く見る私にも極めて稀なシーンだった。久し振りにタイムズとポスト、といっても頭にシアトルがつくローカル紙、を読んだが概ね好意的な記事だった。
今期のイチロー・松井は不調で中継を最後まで見てない。全盛期とは別人のように打てない姿を見るのが辛く、途中でチャネルを切り替えるかテレビを見るのを止めた。大打者でもいつかは必ずバットを置くときが来る。
専門家によればイチローのスイング・スピードが少し落ちたのと、動体視力の低下が成績低下の原因と説明している。トレードによって新しい刺激を受けて体力の衰えを補い、イチローにはもう少し頑張って一花咲かしてもらいたいと祈る。■