先週末に長野県茅野市の白樺湖に行って来た。息子が大学時代の同窓生が経営するホテルを利用して旅行を計画してくれた。私が会社勤めを始めた頃に職場旅行で来たことがあるのを思い出した。白樺湖は以来40年ぶりになる。
普段多忙で殆ど余裕の無い生活をしている息子は、旅行の直前になって3連休だと気がついたそうだ。合わせて5家族が参加して大所帯の連休中の旅行では大変なことになりそうだと悪い予感が当り、旅の出足からつまずいた。
新宿のセンタービルには定刻に全員揃わないし、東京駅からのバスはもっと遅れてきた。中央高速は大渋滞、約6時間かけて午後4時前にやっとホテルに着いた。実は、翌日の帰りも小仏トンネルまでの渋滞のお陰で7.5時間もかかった。旅行の半分はバスに乗っていた。でも、家族のお喋りは時間の経過を忘れさせてくれ、それ程苦痛ではなかった。
白樺湖サイクリング
ホテルにチェックインして直ぐ、自転車を借りて白樺湖の周回コース(専用路はない)を周った。短い距離なので普通に走って15分で1週できる、次に逆方向に回った。二周目は娘夫婦の借りたタンデムに末の息子と乗ったが、これが大変。
二人の呼吸が合わないと曲がり角でスピードを変化させた時不安定になり、転倒しそうになったり車道に飛び出しそうになったりした。今まで楽しそうに乗るカップルを見たが、見るとやるのは大違い。ワーワー、キャーキャー言っているうちに無事戻ったから、まあ楽しんだということだろう。
その後、ブラブラしている家内を見つけて湖の北側に続く山道を散歩した。湖畔からは気がつかなかったが、少し登って行くと別荘が点在していた。20-30年経った感じの古ぼけた建物が多かった。たまに目に入る比較的新しい建物は壁が白く、屋根の傾斜が急だった。田舎の実家が無ければ、こういう所に別荘を持つ生活をさせてやりたかったと言い訳がましく聞こえるように呟いた。
翌朝目が覚めると窓の外は嵐で、横殴りの雨が音をたてて大きな窓に吹きつけて来た。何百人も入りそうなレストランでバイキングスタイルの食事をしている間も嵐は続いていた。10時のチェックアウトが迫ってきたので、延長した私の部屋に荷物を集め、風呂に入ったり夫々に時間を過した。
11時過ぎ頃だったか気がつくと、外は雨が上がり、強い風で道が乾いていた。突然スイッチが入った。「車山に登ってくる、誰か一緒に行かない?」と聞くも、誰からも返事なし。3時半に帰りのバスが来る、説得する時間も無い、直ぐに一人で出かけた。
車山登山
持ち物は水と小ぶりのメロンパン、クッキー、昨夜の酒のツマミ。格好はジーンズ、長袖シャツ、トレイル・ラン・シューズにタオル。登山口はホテルと反対側の湖畔から。帰任時に米人がくれたSuuntoの時計は標高1300mを指している。車山山頂が1920mだから約600mの登りだ。
右手に白樺湖を見ながら登り始めて、40年前の記憶が甦った。だが、山道は両側から雑草が伸びてきて余り踏み固められている感じがしなかった。実際、ただの一人のハイカーともすれ違わなかった。右手下方のビーナスラインを群れになって走るバイクの爆音がやけに大きく響いた。
だが、それは車山駐車場までのことだった。ここから一気にハイカーが増えた。今時のハイカーはここまで車で来てリフトに乗るか、或いは登山を開始するようだ。もう昔のようには歩けない私だが、お年寄りや子供連れのハイカーをドンドン追い抜いて行った。ここは軟弱ルートなのだろう。
途中一度も休まず歩きながらパンやクッキーを食べ、水を飲んだ。最後の100m位の登りが急で途中降り始めた雨が強くなり、平らな石の上で滑らないよう注意しながら歩いた。頂上に着いたのは1時20分頃、登山口か約1時間半、万歩計は約11,000歩を指していた。
山の天候
それは一瞬のこと、急に強くて冷たい風が吹き横殴りの雨が降り始めた。頂上付近のハイカーは建物の陰や避難小屋に隠れ、争ってリフトの券を買い始めた。私の目には登山靴に雨具で完全武装している様に見えたが、殆どは中高年女性だからしょうがない。
そういう私は誰よりも軽装、雨に濡れて冷たくなってくるのを感じた。こんな山でも馬鹿にしないほうがいいと誰かに忠告しようと思ったが、最初に言われるべきは私だったかも知れない。ということで直ぐに下山することにした。
100-200m下山するとガスが消えて遠くが見えるようになり雨も弱まった。頂上は変わらずガスで覆われ、強い風で東側下方にガスがたなびいていた。里に下りて湖畔の洒落たカフェのママによると、白樺湖は朝の嵐が収まった後、雨は降らずずっと曇天だったという。
1700m-1500m付近の草原はニッコウキスゲが黄色いつぼみを開き始め、満開直前の美しい姿を見せていた。登りでは余裕が無かったのか気がつかなかった。途中いかにも山慣れしていないオバサン達を見つけてガンバレとからかいながら下山を急いだ。
約50分かけて登山口に戻った。下りの歩数は8,000歩だった。ざっと計算すると上りは1歩55cm、下りは75cmというところか。急ぎホテルに戻ると帰路のバスも遅れているので、勧められて風呂に入って汗を流した。4時にバスに乗り、新宿に着いたのは11時前、その日のうちに自宅に戻れた。■