今、日本は全国的に壮大な規模で「イジメ」が進行している。テレビは多分大津市のいじめに関る報道に最も時間を使っているだろう。教育の専門家から芸人やタレント、更には一般の人が出てきて厳しい非難を繰り返した。全員が東を向いているようなので、例によって立場を変えて私の見た西向きのいじめ論を紹介したい。
勿論、大津市で起こったいじめで自殺したといわれる中学生の事件についてだ。テレビを中心とするマスコミの論調は、中学教師と市の教育委員会及び所轄の警察の対応が適切ではなかったというものだ。異常なのはマスコミが1週間余にわたり繰り返し最大限の非難の集中豪雨を続けたことだ。反論は許されない、彼らは一切の言い訳を許されない被告席に立たされた。
事態はエスカレートされ学校と教育委員会に県警本部の捜査が入り、教育委員会のあり方から政治問題にまで発展しそうな勢いだ。教育関係者が非難されるのは当然だと私も思う。いわば見に覚えのある「不作為」が原因との非難は甘んじて受け入れ、まずは事実と原因解明に協力をすべきだ。
だが、一方で私はマスコミの集中豪雨的非難の嵐に違和感がある。誰の目にも明らかに非があり、非難しても安全と分った瞬間から、キャスター・評論家・タレントなどからなるマスコミムラの連中が一斉にターゲットを叩き始める。口を揃えて非難することにより出演者も視聴者もカタルシスを得る。これは非常に日本的なことか世界共通なのか分らないが、私には異常に感じる。
マスコミのイジメには条件があって、そのターゲットは余り強くなくメチャクチャ言っても反抗してこないことが絶対的な条件だ。その条件が満たされると安心して念入りに時間をかけてターゲットをボコボコニにする。学校の現場でやると、これはいじめといわれる。何のことはない、彼等マスコミはいじめのお手本を示しているのだ。これでは全国的にいじめは蔓延るばかりだ。
だが、全国規模でマスコミがやるとニュースの一環となり誰からも非難されない。国民全員が傍観者だ。何と壮大な!このイジメはネタ切れになりそうになると、お抱え評論家に新たに理屈付けさせ或いは使えそうな海外の論評を見繕って引用する。しかも、このイジメは殆どチェックされない、仕返しが怖いからだ。
この全国規模のイジメは防ぎようが無い。別の事件が起こり、次の獲物(ターゲット)が見つかるとスーッと消えて行く。心配することはない、幾ら深刻な問題でも、何故かスーッと消える。忘れた頃に裁判などの新しいイベントで思い出させてくれるが、大抵は叩く相手ではなくなっている。
だが、今回の場合これだけ大規模な凄いエネルギーでイジメられると、第二の犠牲者が出ないか心配だ。2、3日前いじめの対応に苦慮したと思われる校長が自殺というニュースを見てドキッとした。もしかしたら今回の大津市のいじめ自殺事件に関係してないかと。
ところで大津市の教育関係者の前までは、東電が完璧で理想的なイジメのターゲットだった。国会事故調の報告書が指摘するように、実は原発事故は東電だけではなく長年にわたる原子力ムラ、更に私のように拡大解釈するならば立地自治体からマスコミにまで責任は求められるのだが、東電イジメを続けることにより長期的な隠れ蓑にもなる便利なものだ。■