かぶれの世界(新)

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返り討ちしまなみ海道(下)

2013-11-03 16:06:42 | スポーツ

糸山サイクルセンターに戻り返却手続きをし、時刻を聞くと420分だった。往路よりかなり速いペースで走ったことになる。単純な私は怪我をしても不思議に満足だった。私を見た職員が驚き救急車を呼ぼうかと聞かれ、不要だと答えた。洗面所に行き鏡に映る顔を見て驚いた。左目下から出た血が頬から顎まで流れて固まっていた。人差し指を何度か引っ張ったが戻らなかった。

ロビーに戻ると救急車を呼んだので承知してくれと職員に言われた。放っておけなかったと。礼を言うしかない。間もなく救急車が来て今治市内の救急病院に連れて行かれた。車中、救急車出動の事故扱いになるので警察に調べられことになると、事故の場所や経緯を聞かれた。

最初CTとレントゲン撮影をした。設備が最新鋭の大病院だった。最初外科で顔の裂傷を縫合してもらった。6針縫ったという。CTの輪切りにした写真で、頬骨の折れやすい薄い部分とかを示し、骨に異常がなかったといわれた。骨折など予想もしなかったが、改めてホッとした。

その後、先生が代わって指の脱臼を戻してくれた。このとき指の根元と関節に打った麻酔が一番痛かった。看護婦にそう言うと、力ずくで骨を戻すのだから強い麻酔が必要と笑いながら説明してくれた。考えてみると両方とも荒っぽい原始的な治療だ。術後のレントゲンであっち向きになっていた指の骨が見事に繋がっていた。だが、添え木を付け3週間は用心しろ、帰京後は整形外科に行けと言い、手紙を書いてくれた。

会計を待っている間に、今治署の警官2人が来て事故の説明をした。何度か説明しているうちにぼんやりしていた記憶が確かになった気がした。土地勘もなく曖昧で推測でいった部分を繰り返すと確かな事実になっていく過程を経験してなるほどと思った。彼らにとっては起こった場所が問題だった。生口島は因島警察の管轄と分ると、調べの結果は因島署に伝えておく、事故扱いするかどうかで処理が変わるので連絡するよう指示された。その時は意味が良く分かってなかった。

保険証も治療費も持ち合わせのないので、支払いは銀行振り込み、保険証はファックスで送ることで了解してくれた。待ち時間に因島警察署に一報を入れると、話が通じていた。同じ説明を繰り返し、事故扱いにするかどうか確認され、サイクルセンターと相談して連絡するよう助言された。

その頃には、大分気分が良くなって車で自宅に帰る気分になっていた。治療を受ける前には夜間の運転は自信がなく、今治のホテルで一泊するか迷っていた。看護婦は目の近くの治療だったので、安全の為ホテルに一泊することを勧めてくれた。だが、実家のベッドで安眠したかった。

その前に眼鏡の修理が必要だった。幸いレンズは無事だった。会計の女性が教えてくれたコンビニに行き相談すると親切に対応してくれた。残った眼鏡の軸に付ける接着剤を勧めてくれ、若い店員が私の代わりに取り付けてくれた。何とか片耳にメガネはぶら下がった。

その次は処方箋の薬だ。7時過ぎになると殆どの店が閉まっており、3軒目の薬局の灯りがついていた。最初現金も保険証もないので難色を示していた。店の主人と四方山話をし今治の景気を聞いたが、人口減がモロに響く商売で景気良いとは言わなかった。独り暮らしの母を見るために田舎に来ていると言うと、彼も瀬戸内海の小島に独り暮らしの母親がいると言う。病院での扱いを説明して同じ扱いで了解してくれた。主人が奥さん風の女性に目配せしているのが見えた。

奥さんが呼んでくれたタクシーでサイクルセンターに戻った。運転手は私の様子を見て気にかけてくれた。家族に知らせたかと言うから、今は実家にいるので連絡しても心配かけるだけと応えた。彼は年金を貰いながら仕事をしていると言い、私もそうだと応じた。タクシー業界と自由化の話で盛り上がった。

運転手はホテル兼用だから係りがいるはずと言った通りで、サイクルセンターの明りはついていた。窓口で簡単に報告し迷惑をかけたと言い、型どおりだが礼を言った。保険は明日係りから連絡するという。路肩に止めた車に行きトレーナーを着た。かなり気温が下がっていたはずだが、その時まで寒さを感じなかった。

どうも、私の見かけは同情を買うには十分なくらい悲惨だったようだ。帰途、ガソリンを入れた後お釣が出ないとベルを鳴らすと中年の係員が出てきて、目が良く見えなくてお釣りに気がつかなかったみたいだ(実際そのとおりだった)。大洲まで行くと言うと、「用心して帰れ、高速は必ず法定速度を守れ、特に反応速度の遅れが危険」と言い、彼が目を悪くした時の経験を教えてくれた。

大きな車の後につけて走る私にしては極めて安全運転で、9時過ぎに無事実家に戻った。味噌汁を作り残り物を食べた。両手の治療した部分が痛く、濡れないように料理するのは凄く不便だった。昨夜はぐっすり眠れた。首を回すと鞭打ち症のように鈍い痛みを覚え、今日も続いているがそれだけだ。だが看護婦が予言したように、今朝はもっと酷い顔になっていた。見かけは最悪だ。

朝食後、尾道サイクルセンターから保険の件で電話があった。交換した自転車に保険をかけているのでそうなるという。何がしかの保険金を出す、事故扱いは不要と言う。私は納得して事故扱いしない旨因島警察に伝えると、それならば現場検証立会いは不要、最後「迷惑かけました」と「お大事に」を交換して電話を終えた。何だか皆親切だった、ホント迷惑かけました。■

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返り討ちしまなみ海道(上)

2013-11-03 16:02:33 | スポーツ

「やってしまった」、意識がかすむ中で最初に頭に浮かんだ言葉だ。或いは一瞬だったかもしれないが、暫くして頭を上げて周りを見回した。バラバラになったメガネや自転車用灯火、携帯などが散乱していた。右の人差し指に痛みを感じ、見ると異様に曲がり動かせなかった。

そのチョット前、前回果たせなかった因島大橋を渡ったところで、午後1時を回り引き返す時間になった。ホンの少し距離を伸ばせたが、今回も本州には到達しなかった。日が短くなったので5時までに自転車を返却してくれと借りる時に言われ、残った時間を考えると引き返すしかなかった。

この5日間、毎晩サイクリングの仕度をして寝たが、朝起きるとやり残したことがあり気が乗らなかった。だが、やるべき事はすべてやった。残るはしまなみ海道サイクリング往復完走だ。リベンジだ。昨日の朝はやる気マンマンだった。自宅を出たのは720分、今度は最初から高速道路に乗って時間を節約した。

小松JCTで乗り換え今治に向かった。196号線を北上し、今治直前で少しでも時間を節約しようとたった1区間高速に乗ったのが失敗だった。今治北のインターチェンジで降りそこない、気が付けば来島海峡を渡ってしまった。時間ロスもさることながら橋の通行料金が馬鹿高い。忌々しい。引き返して糸山サイクルセンターに着き、自転車を借りて出発したのは920分だった。

しかもこの時期は夕方5時までに返却しなければいけなかった。残された時間は7時間40分、午後1時には折り返ししなければならない、この時間の制約の下で走らなければならないと素早く計算した。厳しいけど、何とかなるだろうとその時は思っていた。だが、2つ目の不運が待っていた。自転車のギアの調子が悪かった。

借りたのは2X8段ギアのロードタイプだったが、走り始めて間もなく時々後輪ギアが飛び一瞬空回りしたような感じになった。騙し騙し走っていたが、今度は上り坂でロウギアに切り替えた時、ペダル側ギアでチェーンが外れた。次のサービスセンターで自転車を取り替えるしかないと思った。

多々羅情報センターで自転車交換を依頼したが、ママチャリと子供用しかなかった。近くのサービスセンターに代車がないかと聞くと、対応してくれた女性職員はパンフレットを示しここに電話して聞けと言う。酷いサービスだと思ったが、多分色々兼務しているのだろう。カチンときたが怒る気にはならなかった。文句言う時間が惜しい。これ以降、こんな不親切な対応はなかった。

多々羅橋を渡って瀬戸田町に入った最初のサービスセンターで3X8段のロード・バイクを借りた。どこかで擦れる音がしたが走りは悪くなかった。3つ目の不運は、同じ町で目抜き通りを閉鎖したレースがあったので、回り道を通り少し時間をロスした。色々と道草を食って、因島大橋を渡ったところで1時を回った、時間切れだ。残念ながら今回も尾道には到達しなかった。

橋を見ながら軽く食事をして直ぐ復路に取り付いた。今回は曇天で微風、帽子にサングラスを用意し、水分補給も普通にとった積りで体調は良かった。だが、体調が良い分少し無理した走りをしたかもしれない。因島大橋から一般道に出る下り坂でもスピードを緩めなかった。

突然携帯が鳴ってポシェットから取り出し右手に持ったところで、一般道と接続するT字路が目の前に見えた。直前まで右折か左折か迷い、あわてて右にハンドルを切ったが減速が十分でなく転倒した。どの位時間が経過したか分らないが、気を取り戻し散乱した眼鏡等のかけらをバッグに入れた。自転車は灯火以外に異常はなかった。足は擦り傷だけ、右手も人差し指以外は使えた。自転車が動き、足が使えると分かったので落ち着いたと思う。

この日は体調が良く前回よりも脚足は十分残っていた。怪我をしたもののサイクリングに支障はなかった。その時頭にあったのは自転車の5時返却だけで、その後は休み無しで私のレベルでは爆走を続けた。瀬戸田はレースの通行止めが続いていた。擦違ったサイクラーに声をかけると2年目の行事だと言う。彼は私の顔を見て反応が無かったので、大したことがないのだろうと思った。(続く)

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