トランプ大統領は就任演説で「米国第一」を繰り返し、米軍を強くしテロを根絶、雇用と成長を取り戻す、国境に壁を建て不法移民をなくす、全国民の為の貿易取引などの基本方針を発表した。自分に都合の悪い指摘には嘘つき呼ばわりし、言う事をコロコロ変える、およそ超大国のリーダーとして相応しくない「爆風トランプ」大統領が誕生した。女性蔑視や人種差別等論外だ。
このところ米国新大統領のニュースを聞くたびに不愉快になり、他国の大統領ながら予想もしなかった現実に向き合えない私になっていた。戦後の世界は圧倒的な軍事・経済力をもつ米国の下で、国際法に基づいて秩序を保ち発展してきた。戦後日本に自由平等・民主主義が根付き、普段米国に批判的な記事が多い朝日毎日新聞などが存在しえたのも元をたどれば米国のお蔭と私は思う。
このブログはそんな‘アメリカにかぶれた私’が、米国駐在から帰国後「かぶれの世界」と題して始めたものだ。だが、私がかぶれたのはこんなクソ大統領を選ぶアメリカではないという思いだ。最も深刻なのは、「世界の平和や自由を支えようという使命感がトランプ氏にはないことだ。」(日本経済新聞1/22) 残念だが的を得た指摘だと思う。
だが、ここで冷静になってより良き理解の為180度立場を代えてトランプの主張を考えてみた。我が国に拘らず普通の国のリーダーが「自国第一主義」を唱えるのは当たり前で、トランプ氏はその当たり前のことを言ったに過ぎない。米国だけ違う役目を続けるというのは不公平と考えてみた。つまり、米国は力の強い普通の国だと。
米国は戦後ずっと世界の警察官をやりその為に若者の血を流すこともあった。我々は米国の役割が当たり前と思い感謝することすら忘れていた。もちろん米国も警察官の役割を果たすことから巨大な恩恵を受けてもっとも豊かな国になった。だが、世界の警察官から米国第一主義への転換は何時かは来ると思い、予行練習を兼ねて準備すべきだったかもしれないと思う。
以前指摘したように強い日米の結びつきが大前提で、日本のアジア外交が成り立っている現実の再検証を強いることになる。ただ、今朝のサンデーモーニング(TBS)で米国抜きの安全保障を考える機会との指摘は、現実が分かっていない愚かで無責任な指摘だ。直近では民主党政権時代の鳩山首相の迷走がどれほど深刻な事態を招いたか分かっていない。今度は米国発で再検証が求められた時、如何にして同盟を守るかが鍵だ。
ではメキシコ国境に壁を作り違法難民を強制的に送り返すというのはどうだろうか。メキシコ国境から不法に越境して来た所謂不法移民が1100万人という数字に圧倒される。米国の倍以上の人口のEUで極右の台頭を許しドタバタしたのは100万人程度、日本では不法移民は殆どいない。トランプ氏の主張を非難するのは例え経済的な理由で受け入れた経緯を考慮しても不公平だ。他国が非難する筋合いのものではない。
それではNAFTAの再交渉やTPP離脱と言った通商条約の抜本的な変更はどうだろうか。私は理解できない。トランプ氏の最大の支持層である製造業の労働者に向けての政策としても近視眼的で、仮にその通り実現できても米国の雇用が守られ経済成長を倍増できない、失敗すると私は予測する。多くのメディアが指摘する通りで製造業は全労働者の3割以下、しかも競争力維持のため今後益々IT化・ロボット化が進む領域だ。
トランプ大統領が製造業を含めどのように経済を変えて行くか、ITが持つポテンシャルをよく理解しているようには思えない。彼の打ち出す政策が却って米国企業の競争力を弱める可能性がある。(シリコンバレー勢力の圧倒的優位を考えればその方が我が国には都合がよいかも知れない!?)彼の支持者たちが教育を受け変わらないと何れ不満が噴出することになるだろう。公平に見て米国も他国と同じ悩みを持つということだ。
長々と能書きを並べたが、結論としてトランプ大統領はただ「アメリカを普通の国にしたい」というだけではないかと思う。戦後の世界はアメリカの下での平和と繁栄(パックスアメリカーナ)の恩恵を受けて来た。米国の建国の理念である自由で民主的な価値観が世界経済を繫栄させ人々を豊かにする大きな貢献をした。だが、もう嫌だ、という訳だ。
かつて米国はソ連や中国が勝手に思い描く世界に歯止めをかけ世界は救われた。その米国が普通の国になったら何が起こるか不透明だ。だが、変化は一度には起こらない。今度は逆の意味で「日本が普通の国」になり、生き残るために目と耳を澄まして次の手を準備すべき時(変化は内側だけにしても)だと思う。是非ともそうすべきだ。私は生きているうちにそれを見たい。最後に、正直、やっぱりトランプは大嫌いだ。■
このところ米国新大統領のニュースを聞くたびに不愉快になり、他国の大統領ながら予想もしなかった現実に向き合えない私になっていた。戦後の世界は圧倒的な軍事・経済力をもつ米国の下で、国際法に基づいて秩序を保ち発展してきた。戦後日本に自由平等・民主主義が根付き、普段米国に批判的な記事が多い朝日毎日新聞などが存在しえたのも元をたどれば米国のお蔭と私は思う。
このブログはそんな‘アメリカにかぶれた私’が、米国駐在から帰国後「かぶれの世界」と題して始めたものだ。だが、私がかぶれたのはこんなクソ大統領を選ぶアメリカではないという思いだ。最も深刻なのは、「世界の平和や自由を支えようという使命感がトランプ氏にはないことだ。」(日本経済新聞1/22) 残念だが的を得た指摘だと思う。
だが、ここで冷静になってより良き理解の為180度立場を代えてトランプの主張を考えてみた。我が国に拘らず普通の国のリーダーが「自国第一主義」を唱えるのは当たり前で、トランプ氏はその当たり前のことを言ったに過ぎない。米国だけ違う役目を続けるというのは不公平と考えてみた。つまり、米国は力の強い普通の国だと。
米国は戦後ずっと世界の警察官をやりその為に若者の血を流すこともあった。我々は米国の役割が当たり前と思い感謝することすら忘れていた。もちろん米国も警察官の役割を果たすことから巨大な恩恵を受けてもっとも豊かな国になった。だが、世界の警察官から米国第一主義への転換は何時かは来ると思い、予行練習を兼ねて準備すべきだったかもしれないと思う。
以前指摘したように強い日米の結びつきが大前提で、日本のアジア外交が成り立っている現実の再検証を強いることになる。ただ、今朝のサンデーモーニング(TBS)で米国抜きの安全保障を考える機会との指摘は、現実が分かっていない愚かで無責任な指摘だ。直近では民主党政権時代の鳩山首相の迷走がどれほど深刻な事態を招いたか分かっていない。今度は米国発で再検証が求められた時、如何にして同盟を守るかが鍵だ。
ではメキシコ国境に壁を作り違法難民を強制的に送り返すというのはどうだろうか。メキシコ国境から不法に越境して来た所謂不法移民が1100万人という数字に圧倒される。米国の倍以上の人口のEUで極右の台頭を許しドタバタしたのは100万人程度、日本では不法移民は殆どいない。トランプ氏の主張を非難するのは例え経済的な理由で受け入れた経緯を考慮しても不公平だ。他国が非難する筋合いのものではない。
それではNAFTAの再交渉やTPP離脱と言った通商条約の抜本的な変更はどうだろうか。私は理解できない。トランプ氏の最大の支持層である製造業の労働者に向けての政策としても近視眼的で、仮にその通り実現できても米国の雇用が守られ経済成長を倍増できない、失敗すると私は予測する。多くのメディアが指摘する通りで製造業は全労働者の3割以下、しかも競争力維持のため今後益々IT化・ロボット化が進む領域だ。
トランプ大統領が製造業を含めどのように経済を変えて行くか、ITが持つポテンシャルをよく理解しているようには思えない。彼の打ち出す政策が却って米国企業の競争力を弱める可能性がある。(シリコンバレー勢力の圧倒的優位を考えればその方が我が国には都合がよいかも知れない!?)彼の支持者たちが教育を受け変わらないと何れ不満が噴出することになるだろう。公平に見て米国も他国と同じ悩みを持つということだ。
長々と能書きを並べたが、結論としてトランプ大統領はただ「アメリカを普通の国にしたい」というだけではないかと思う。戦後の世界はアメリカの下での平和と繁栄(パックスアメリカーナ)の恩恵を受けて来た。米国の建国の理念である自由で民主的な価値観が世界経済を繫栄させ人々を豊かにする大きな貢献をした。だが、もう嫌だ、という訳だ。
かつて米国はソ連や中国が勝手に思い描く世界に歯止めをかけ世界は救われた。その米国が普通の国になったら何が起こるか不透明だ。だが、変化は一度には起こらない。今度は逆の意味で「日本が普通の国」になり、生き残るために目と耳を澄まして次の手を準備すべき時(変化は内側だけにしても)だと思う。是非ともそうすべきだ。私は生きているうちにそれを見たい。最後に、正直、やっぱりトランプは大嫌いだ。■