9月になり秋の気配が漂ってきた。久し振りに大風呂敷を広げて、アフガン撤退後の世界について論じてみたい。
<アフガン撤退の歴史的意味>
バイデン大統領の「唐突な8月末迄にアフガン撤退」宣言以降の世界の大混乱は、「アメリカかぶれ」を自称する私もお手上げだ。著名人の解説を聞いても一部だけを取り出したもので、トータルでなる程と納得するような説明になってない。彼等も全容を把握して無いように感じる。
世論調査によれば米国民の多くはアフガニスタン撤退を支持しているが、バイデン大統領の唐突なやり方は失敗だったとみている。だが、事態はそれ程単純ではなさそうだ。今日入ってきたニュースは、米国に出国する人達を空港までタリバンがガードしたという。彼等にはそうする理由があった。
<米国の衰退より不信感が問題>
「かぶれ者」としては、そもそも歴史的に米国は理解を越える国だったと、開き直った方が良いかもしれない。米国は世界の警察官を止めた、一方同盟国を引き続き大事な友国だ、と信じていた米国頼りの国々はいつか裏切られアフガンのように放り出される不安が渦巻いている。
多くの場合不安の対象は中ロ等だろう。バイデン大統領は先ず「自助」があって初めて米国は「支援」すると再度基本を明確にした。だが、自助の範囲は武力からサイバー戦まで広がった。攻撃を抑止する為の先制攻撃とかサイバー攻撃への対処など素人には全く理解しがたい議論がある。
<日本が問われる立場>
戦後日本の不戦の誓いは時々の現実に合わせ憲法解釈して対処して来たが、我国には戦争の後遺症と憲法上の制約がある。経済と地政学上の重要性の上に歴代政権の巧妙な交渉で今日の姿に収まっているが、今後米国の相対的力の衰えに従い難しい立場に置かれる可能性が高いと予測する。北朝鮮の脅威を直接受ける韓国の軍事費が日本を超えたというニュースが日本の立場を鮮明にした。
どういう対応をすべきか、私は「巧妙な自助の強化」がベストと信じる。依然として米国との同盟が最も重要なのは間違いないが、その米国は一体どういう国なのか再定義する必要がある状況になった。「米国は意味不明の国」になった、今迄とは違う国になったと考えて同盟関係を見直すべきだ。
<米国は南北戦争の最中、意味不明の国に>
そういう出来事は今米国で頻発している。最も注目されるのは2024年の大統領選だが、国民は私の知っていた90年代頃の人達とは異なる国になった。典型的な例はコロナの新規感染者数で、ミシシッピ州やアラバマ州など東南部諸州はワクチン接種が進まず急増し、一方NYやマサチューセッツ州の6倍近くもある別の国だ(日経8/31)。これは現代の南北戦争だと思った。
世論調査会社PRC(ピュウリサーチセンター)によればトランプ大統領の後遺症として、全国ニュースメディアCNN、NYT、WPや三大ネットワークを信用する人は36%しかいなくなったと報じた。手元にデータはないが、バイデン大統領時代になって寧ろ低下したと思う。米国メディアの信頼度と菅首相の支持率は皮肉にもほぼ同じ程度しかない。
<米国のワクチン接種率が頭打ち、アフガン撤退が追い打ち>
他の人達は地元紙とか共和党支持のニュースメディアを信じる。日本では報じられないが、ワクチン接種もマスクもしない人達が国民の少なくとも3割いるのだ。それが東南部諸州のコロナ感染が急増している理由だ。米国が先行したワクチン接種率が頭打ちになり政府は頭を抱えている。
2024年の大統領選で民主党候補が勝利するか予断を許さない状況だという。共和党が多数の州で黒人やヒスパニックの投票を制約するとみられる規制を立法化する動きが進んでいる。今朝流れたニュース速報によれば、テキサス州は最も厳しい投票規制が成立したという。そして今回のアフガン撤退が引き起こした混乱はバイデン大統領の失敗と見做され選挙に不利に働くという。
バイデン大統領が国民の支持を得て大統領選を有利に運ぶためには、(1)コロナ感染を沈静化する、(2)中国の影響力を許容可能なレベルに抑えることだ。どちらも決定的な対策を打てないだろう。コロナ感染はブースター(3回接種)に後戻り、中国との経済関係も絶対に切れないだろう。
<日本のあるべき舵取り>
その中で日本がアフガン撤退後の世界で取るべき方針は、日本が得意にしてきた曖昧戦略ではないか、換言すると「巧妙な自助の強化」だと私は考える。姑息とみられる覚悟で日本は「見かけ自国を守る仕組み」を作り、意味不明の米国でも日本と同盟を組み守るメリットがあると認識させることだ。簡単ではない。安倍前首相時代の世界のトップと知己を広げ活用するような外交術が必要だ。
自助をアピールできる最低限の仕組みは、自国防衛を合法とする憲法改正が必要だ。今回のアフガン撤退において他国に比べ自衛隊の活動が制限されて十分機能しなかった。こんな屈辱的で他国に不信感を招くようなことは絶対避けるべきだ。憲法改正して自助精神を徹底しても最小限のコストで対応する道を選ぶべきだ。タリバンとの裏取引で人命を守るしたたかさがあってもよい。■
<アフガン撤退の歴史的意味>
バイデン大統領の「唐突な8月末迄にアフガン撤退」宣言以降の世界の大混乱は、「アメリカかぶれ」を自称する私もお手上げだ。著名人の解説を聞いても一部だけを取り出したもので、トータルでなる程と納得するような説明になってない。彼等も全容を把握して無いように感じる。
世論調査によれば米国民の多くはアフガニスタン撤退を支持しているが、バイデン大統領の唐突なやり方は失敗だったとみている。だが、事態はそれ程単純ではなさそうだ。今日入ってきたニュースは、米国に出国する人達を空港までタリバンがガードしたという。彼等にはそうする理由があった。
<米国の衰退より不信感が問題>
「かぶれ者」としては、そもそも歴史的に米国は理解を越える国だったと、開き直った方が良いかもしれない。米国は世界の警察官を止めた、一方同盟国を引き続き大事な友国だ、と信じていた米国頼りの国々はいつか裏切られアフガンのように放り出される不安が渦巻いている。
多くの場合不安の対象は中ロ等だろう。バイデン大統領は先ず「自助」があって初めて米国は「支援」すると再度基本を明確にした。だが、自助の範囲は武力からサイバー戦まで広がった。攻撃を抑止する為の先制攻撃とかサイバー攻撃への対処など素人には全く理解しがたい議論がある。
<日本が問われる立場>
戦後日本の不戦の誓いは時々の現実に合わせ憲法解釈して対処して来たが、我国には戦争の後遺症と憲法上の制約がある。経済と地政学上の重要性の上に歴代政権の巧妙な交渉で今日の姿に収まっているが、今後米国の相対的力の衰えに従い難しい立場に置かれる可能性が高いと予測する。北朝鮮の脅威を直接受ける韓国の軍事費が日本を超えたというニュースが日本の立場を鮮明にした。
どういう対応をすべきか、私は「巧妙な自助の強化」がベストと信じる。依然として米国との同盟が最も重要なのは間違いないが、その米国は一体どういう国なのか再定義する必要がある状況になった。「米国は意味不明の国」になった、今迄とは違う国になったと考えて同盟関係を見直すべきだ。
<米国は南北戦争の最中、意味不明の国に>
そういう出来事は今米国で頻発している。最も注目されるのは2024年の大統領選だが、国民は私の知っていた90年代頃の人達とは異なる国になった。典型的な例はコロナの新規感染者数で、ミシシッピ州やアラバマ州など東南部諸州はワクチン接種が進まず急増し、一方NYやマサチューセッツ州の6倍近くもある別の国だ(日経8/31)。これは現代の南北戦争だと思った。
世論調査会社PRC(ピュウリサーチセンター)によればトランプ大統領の後遺症として、全国ニュースメディアCNN、NYT、WPや三大ネットワークを信用する人は36%しかいなくなったと報じた。手元にデータはないが、バイデン大統領時代になって寧ろ低下したと思う。米国メディアの信頼度と菅首相の支持率は皮肉にもほぼ同じ程度しかない。
<米国のワクチン接種率が頭打ち、アフガン撤退が追い打ち>
他の人達は地元紙とか共和党支持のニュースメディアを信じる。日本では報じられないが、ワクチン接種もマスクもしない人達が国民の少なくとも3割いるのだ。それが東南部諸州のコロナ感染が急増している理由だ。米国が先行したワクチン接種率が頭打ちになり政府は頭を抱えている。
2024年の大統領選で民主党候補が勝利するか予断を許さない状況だという。共和党が多数の州で黒人やヒスパニックの投票を制約するとみられる規制を立法化する動きが進んでいる。今朝流れたニュース速報によれば、テキサス州は最も厳しい投票規制が成立したという。そして今回のアフガン撤退が引き起こした混乱はバイデン大統領の失敗と見做され選挙に不利に働くという。
バイデン大統領が国民の支持を得て大統領選を有利に運ぶためには、(1)コロナ感染を沈静化する、(2)中国の影響力を許容可能なレベルに抑えることだ。どちらも決定的な対策を打てないだろう。コロナ感染はブースター(3回接種)に後戻り、中国との経済関係も絶対に切れないだろう。
<日本のあるべき舵取り>
その中で日本がアフガン撤退後の世界で取るべき方針は、日本が得意にしてきた曖昧戦略ではないか、換言すると「巧妙な自助の強化」だと私は考える。姑息とみられる覚悟で日本は「見かけ自国を守る仕組み」を作り、意味不明の米国でも日本と同盟を組み守るメリットがあると認識させることだ。簡単ではない。安倍前首相時代の世界のトップと知己を広げ活用するような外交術が必要だ。
自助をアピールできる最低限の仕組みは、自国防衛を合法とする憲法改正が必要だ。今回のアフガン撤退において他国に比べ自衛隊の活動が制限されて十分機能しなかった。こんな屈辱的で他国に不信感を招くようなことは絶対避けるべきだ。憲法改正して自助精神を徹底しても最小限のコストで対応する道を選ぶべきだ。タリバンとの裏取引で人命を守るしたたかさがあってもよい。■