今日の東京証券取引所は絶不調、日経平均は過去2番目の大暴落、前日比1089円安の8458円で引けた。米国の主要各紙の論調は、金融不安がついに実体経済に波及し急速に悪化しているとの見方が広まり、世界同時株安は新しい段階に入ったと言うものだった。
ついに恐れていた事態になった。後からなら何とでもいえるが、だから言ったじゃないかという台詞(せりふ)が聞こえてくる。勿論私が言ったからということではなく、多くの専門家が、金融不安が続くと実体経済が傷み、その修復に長い年月をかけることになるという指摘だ。
だが、今春ベアー・スターンズを救済後、米国政府は事態の悪化に適切な手をタイムリーに打たなかった。リーマン・ブラザーズを破綻させ、75兆円の救済策が一旦否決されるという大失態を演じた。この1ヶ月余りに銀行が倒産、消費が低迷、失業率上昇など実体経済が急激に悪化した。もう一度、「だから言ったじゃないか」。
実際のところ、日本政府が10年かけてやったことを、米国は1年で同じことをやった。10倍も早く対応しているのに、何でうまく行かないのだろうと誰もが疑問に思うはずだ。住専問題で示された民意に比べれば、米国の場合たった1週間遅れで対応したじゃないか、と。それでも遅かった。
この日米の差は、当時と今回との物事が進む「スピードの差」、有体に言うなら「毒が回る速度の差」ということが出来る。世界の金融システムがインターネットを通してシームレスに一体化しているという技術的な側面があるが、それだけではない。制度と商品の差が決定的だ。
サブプライムが組み込まれた金融商品(証券)を大量に抱えた金融機関は、時価会計ルールによりその評価損を3ヶ月単位で決算報告しなければいけない。不良債権などの評価損を隠し続けた当時の日本の金融機関とは状況が違うし、当時毒は海外まで伝染していなかった。
しかも、今回は欧州を初めとする海外の金融機関もこの猛毒商品を大量に抱えている。サブプライムを組み込んだ金融商品の問題が最初に発覚したのはフランスだったことを思い出して頂きたい。これにより世界中で金融機関に毒が回ったことが判明し、金融システムが麻痺(貸し剥がし・貸し渋り)し、実体経済が傷み始めた。
特に、世界経済の牽引車である米国では、企業の運営資金が借りられず黒字倒産が増えているだけでなく、借金して買い物する消費者がクレジット・カードやローンの枠を狭められ、住宅や自動車が売れなくなり消費が失速、今年のクリスマス・セールを当て込んだアジアからの輸出が大打撃を受けると予想される事態となっている。
金融不安の実体経済へのインパクトはもう後戻りできないところまで来ている。日本の大手輸出会社トップはインタビューに答えて、最早直ぐ回復することはないだろう、最悪事態に備えねばならないと、暗い表情で言っていた。もう後戻りできない新しい段階に入った。昨日から今日にかけての株価暴落は、新しい段階に入った。最早金融の問題だけではなくなったのだ。
このテーマについて素人の悲しさか、中々大局的に捉えて議論できない。その都度、強く思った視点から議論してきた。つい先日は世界連鎖株安について希望的(楽観的とは言えなかった)な見通しを述べ、その前はリーマン破綻を非難し、遡ると昨年中頃はサブプライム問題を楽観視した。今後も視点を変えて議論していく中で、考えを纏めていきたい。■