一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

佐藤天彦九段、名人挑戦ならず

2025-03-05 23:46:16 | 男性棋戦
4日は第83期A級順位戦プレーオフ・永瀬拓矢九段VS佐藤天彦九段戦があった(主催:毎日新聞社、朝日新聞社、日本将棋連盟)。
この日は夜半に雪の予報があったのだが、雪の名人挑戦プレーオフといえば、1986年3月23日に指された、大山康晴十五世名人VS米長邦雄九段戦を思い出す。下馬評では、本割1勝4敗から追い上げた米長九段が有利だったが、実戦は大山十五世名人が意表の仕掛けを敢行し、完勝。63歳の名人戦登場が実現したのだった。
本局は永瀬九段の先手で対局開始。佐藤九段は角を換わって向かい飛車に振った。その前、▲6五角を防いで△7四歩が微妙なところで、やむを得なかったとはいえ、このキズは小さくなかった。果たして局面が落ち着いてみると、形勢バーは「永瀬60:40佐藤」になっていた。
ちなみにこのバーは朝日新聞社のYouTubeによるもの。私は当日、そんなに時間はなかったのだが、このYouTubeはつねに見ていた。朝日新聞社の計らいに感謝である。
ところがこのYouTubeは夕方までの配信だった。以降の中継はないんだろうから、あとは5ちゃんねるの雑談から形勢を類推するしかなかった。
深夜、自宅から5ちゃんねるを見ると、形勢は「永瀬50:50佐藤」のようだった。あああ、局面が見たい!! と思ったら、どうもこの時間も、朝日新聞社や毎日新聞社でYouTubeを配信しているらしかった。
たんに番組が変わっただけだったらしい。
それで朝日新聞社のYouTubeを見ると、まだ「50:50」である。これは名局ではあるまいか?
ところがそこで永瀬九段が角を切り込んだのが疑問の構想で、ふつうに対応した佐藤九段が必勝形になった。
と、そこで永瀬九段が相手の考慮中、席を立つ。双方残り時間は1ケタだから、お手洗いだろう。
そこで佐藤九段は銀を取りつつ馬を作り、こちらも急いでお手洗いに立った。
やがて永瀬九段が戻り、相手のいない盤に金を打つ。ここで「永瀬7:93佐藤」になった。すなわち佐藤九段勝勢で、この金は受けになっていないということだ。
具体的には、馬で飛車を取り攻めを続ければ後手勝ち。あるいは黙ってと金を作ってもよい。
ここで佐藤九段が戻ったが、ここは決めどころなので、最後の考慮に入ると思われた。
ところが佐藤九段はさして考えず、当たりになった馬を引いた。
「エエーーーーッ!?」
私は心の中で悲鳴を上げた。
形勢バーはググーッと動き、「永瀬37:63佐藤」となった。まだ佐藤九段が有利ではあるが、その優位を持続させるためには、佐藤九段が難解な順を踏まなければならない。よって実戦的には、永瀬九段が有利になった。
私はこのとき、昨年12月3日に立川市で指された達人戦立川立飛杯本戦・丸山忠久九段VS増田裕司七段の一戦を思い出した。

図は丸山九段が▲8九香と埋めたところだが、ここで増田七段は桂を取りつつ△2九竜と逃げた。これが大事な終盤で後手を引いた大悪手。以下、丸山九段が逆転勝ちした。
図では△8九同馬と切り込み、▲同金に△7八金と張り付いて、難解ながら後手勝勢だった。
私はこの△2九竜と、佐藤九段の馬の逃げに、同じニオイ…すなわち、ただ逃げただけの緩さを感じたのである。
局面に戻り、先手を取った永瀬九段は桂の王手。これが佐藤九段が見落としていた好手で、形勢バーはまだ互角に近いが、実戦的には永瀬九段勝勢である。永瀬九段、さっきまでは負けを覚悟していただろうから、指し手に勢いがある。まさに地獄から天国の気分だっただろう。
いっぽう佐藤九段は、さっきまで形勢我に利あり、と意識していたと思うが、思わぬ悪化にとまどいを隠せない。
以下も小さな疑問手を続け、最後は永瀬九段の粋な金打ちに、いまはこれまでと投了となった。
いやあ……。振り飛車の名人戦を期待していた私はがっかり。文字通り呆けてしまった。
それにしても悔やまれるのはあの馬引きである。あそこ、プロでもアマでも、まずは飛車を取ることを考えるのではないだろうか。少なくとも藤井聡太竜王・名人なら、1000%飛車を取る。そしてあっと言う間に先手玉を受けなしにして勝っただろう。
否、佐藤九段だって、ちょっと考えれば読めたはずだ。だがお手洗いに行ってすっきりし、穏やかな気持ちになったのがマズかった。そんなに急ぐこともあるまいと、穏やかな順を選んでしまった。実際はそんな猶予はなかったのに……。
かくして、名人戦にも永瀬九段が登場となった。藤井―永瀬のタイトル戦はいささか飽きたが、どうするんだこれ。
負けた佐藤九段は、今後も振り飛車を続けるのだろうか。藤井―佐藤の振り飛車戦を見たかったが、無理な注文だったかもしれない。
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2 コメント

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天彦先生を観たかった... (将子)
2025-03-06 15:07:53
結構、五分五分のところで寝落ちしてしまって、夜中にチェックしたら、やっぱり永瀬先生になっていてちょっとガッカリでした。
天彦先生、お手洗いで、穏やかな気持ちになってしまったんですかねー(笑)
ABEMAのコメント欄、ほとんどが天彦先生を応援していて、やはり、天彦先生と藤井先生の新鮮な闘いを見てみたかった人が多かったんでしょうね。
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残念だった (一公)
2025-03-07 01:10:38
>将子さん
佐藤先生は、プロ棋界(AI界)では不利といわれている振り飛車にチェンジしたのが大きかったですね。
振り飛車は、アマ棋界では大人気ですから、佐藤先生推しが増えたのだと思います。私もそのクチです。
だから今回は本当に残念でした。もし挑戦者になったら、大変な話題になっていたでしょう。
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