一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

竜王戦で5組降級の川上七段はどうなる

2024-05-18 00:12:30 | 将棋雑考
17日、川上猛七段が第37期竜王戦4組の残留決定戦で青嶋未来六段に敗れ、5組降級が決定した。
竜王戦は風通しがいいので降級は仕方ないが、竜王戦Wikipediaを見ると、気になることが書いてあった。
その前に、基礎知識を確認しておく。引退が決定した棋士が竜王戦5組に在籍していた場合、そこから2期の参加延長となる。仮に4組在籍だった場合は、制限なしで参加できる。
川上七段は第35期に5組でスタートしたが、決勝まで進出し、4組に昇級した。ランキング戦では先崎学九段、森下卓九段、南芳一九段など、元A級を撃破しての決勝進出だったから、4組昇級の価値は十分あった。
しかしフリークラスのほうは2023年3月末日に10年満期となり、川上七段は竜王戦だけが参加できることになった。現役引退棋士が4組、という初のケースだった。
翌第36期はランキング戦4組1回戦、昇級者決定戦で負け、残留決定戦に回ったが、A級の中村太地八段に勝ち、奇跡の残留を決めたのだった。
だが川上七段は今期も4組の1回戦、昇級者決定戦と負け、そして今回、青嶋六段に屈したわけである。
これで5組に降級したわけだが、ふつうに考えれば、5組は2期在籍が可能だから、第38期、第39期も参加できると思う。
ところがWikipediaには、5組の2期在籍は、4組の在籍期間も含む、とあった。
とするならば、川上七段は第36期、第37期と4組に在籍したから、今回の降級で即、引退ということになってしまう。
本当だろうか?
主催者は、順位戦の結果だけで(現役)棋士生命が縮められるのをよしとせず、延命ルールを構築したのだと思う。
それが今回新たに見つかったルールでは、棋士生命をあえて短くしているかのようである。
もういっそのこと、竜王戦独自の降級点制度を作ったらどうだろうか。
川上七段の去就は、20日に分かる。
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改姓の理由

2024-01-05 23:35:13 | 将棋雑考
2024年は能登大地震、羽田空港での炎上と、大波乱の幕開けとなった。そんな中、将棋界での大ニュースといえば、里見香奈女流四冠の結婚報告であろう。
言うまでもなく里見女流四冠は、女流棋界の顔である。よって私は、里見女流四冠が勝負の世界に身を捧げ、結婚とは無縁に生きるものと認識していた。それが結婚とは……。
だがそう言われてみれば、最近の里見女流四冠はメガネからコンタクトレンズに替え、妙に綺麗になっていた。ひろみGoの名曲を引くまでもなく、「恋する女は綺麗」なのである。その美貌の陰には、愛する男性がいたわけだ。
いずれにしてもめでたいことなのだが、私はどこかでその結婚をよろこべないところがある。私は里見女流四冠と面識はないし、今後も目にすることがないだろう。だがそうした歪んだ感慨を抱くのは、私がいい歳をしてチョンガ―だからだろう。
それはともかく、意外なことがひとつある。里見女流四冠はファイティングネームも変えたのだ。「福間香奈」とはなんぞや。情報によると、旦那さんの福間氏は、元奨励会員・福間健太氏とのことだった。
それで思い出した。福間氏は、元奨励会三段である。2014年4月から始まった第55回三段リーグでは序盤から飛ばし、15局を終えた時点で13勝2敗。3局を残してマジック1とした。
ところがそこから悪夢の3連敗。四段昇段はならず、涙を呑んだ。当時ネットでは大きな話題になったものである。
リーグ戦がなかったころなら、13勝2敗の成績は、四段昇段規定を余裕でクリアしている。ところがリーグ戦ゆえ18局まで戦わなければならないところに、今回の悲劇があった。否、13勝5敗だって、本来なら昇段レベルなのだ。福間奨励会三段は、本当に巡り合わせが悪かった。
福間奨励会三段は第56回も参加したが、6勝12敗で昇段ならず。このときすでに26歳で、年齢制限により、この回をもって退会となった。
その福間元奨励会三段と里見女流四冠が結婚したとなると、改姓の理由も見えてくる。すなわち、里見女流四冠は「福間」の名前を、将棋界に残したかったのではないか。そして「福間」の名前を背負うことで、対局時にも福間氏と二人がかり指している暗示をかけたかったのかもしれない。
名前にはある種の力が潜んでいる。「里見香奈」は将棋界で脅威のファイティングネームであり、それを放棄することは勝ち運を逃すことにも繋がると見ていたのだが、上の考えに倣えば、「福間香奈」も相当な存在感である。今後の福間香奈女流四冠の活躍に期待したい。
福間先生、あらためてご結婚、おめでとうございます。
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羽生九段-郷田九段の百番指しはあるか

2022-11-11 21:57:39 | 将棋雑考
8日は伊藤園お~いお茶杯王位戦予選で、佐藤康光九段と森内俊之九段の対局があった。今年3月の竜王戦2組以来の対局で、通算75局目である。
本局は佐藤九段が勝ち、佐藤九段40勝、森内九段35勝となった。ただ、100局はちょっと厳しい。
そしてきのう10日は、B級1組順位戦で、羽生善治九段と郷田真隆九段の対局があった。
これが実に両者86局目で、これは羽生九段-渡辺明名人の80局を上回る。そして先のカードが、現在100局に最も近い。羽生-郷田戦は、100局に達するだろうか。
では、両者の対戦の歴史を記してみよう。左が羽生九段、右が郷田九段の勝数、カッコ内はタイトル戦の対局数である。

1991年度 0-1
1992年度 1-0
1993年度 5-1(4)
1994年度 6-4(7)
1995年度 5-2(6)
1996年度 0-0
1997年度 3-3(4)
1998年度 2-0
1999年度 2-0
2000年度 0-0
2001年度 2-3(5)
2002年度 4-0
2003年度 1-0
2004年度 1-1
2005年度 1-0
2006年度 1-1
2007年度 0-1
2008年度 2-0
2009年度 4-3(7)
2010年度 1-0
2011年度 3-0
2012年度 2-2
2013年度 3-0
2014年度 1-2
2015年度 3-4(6)
2016年度 1-0
2017年度 0-0
2018年度 1-0
2019年度 1-0
2020年度 0-0
2021年度 0-1
2022年度 1-0

以上、86局戦って、羽生九段の57勝、郷田九段の29勝。タイトル戦は、羽生九段の5勝、郷田九段の2勝である。86局中39局がタイトル戦で、タイトル戦率は45%。やはりタイトル戦が絡むと、対局数が稼げる。
そんな2人の100局だが、ここ数年は1局か0であり、今後この2人がタイトル戦をまみえるとは思えないから、かなり亀の歩みになる。
まず、順位戦は現在同じクラスだが、現在は郷田九段に負けが込み、ちょっとヤバイ。郷田九段が降級してしまうと、かなり対戦が遠のく。
竜王戦は、羽生九段は1組だが、郷田九段は今期3組に降級してしまったので、ちょっと当たらない。
王位戦は、羽生九段はリーグに残留しているが、郷田九段は予選を戦い、決勝で永瀬拓矢王座戦を控えている。
ま、100局達成まで20年かかるだろうか。
そんな先のこと、考えたくない。
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棋聖戦における棋譜利用のガイドライン

2022-06-02 23:05:49 | 将棋雑考
第93期棋聖戦・藤井聡太棋聖VS永瀬拓矢王座の五番勝負はあす3日から始まる。
それに伴い1日、将棋連盟から「ヒューリック杯棋聖戦における棋譜利用のガイドライン」が発表された。棋戦個別としては、王座戦、王将戦に次ぎ3例目となる。
ところがきょう2日に早くも、「改定」があった。それならもっと文言を突き詰めてから発表してくれよ、と思うがそれはともかく、改定版は要するに、「商用」は連盟に前もって連絡をすること、「非商用」は断りなく棋譜を使用してよい、ということらしい。
私はこのブログで1円も儲けていないので「非商用」でいいと思う。
ところで以前は、当ブログに直近の棋譜(一部)を載せると、アンチ一公の棋譜警察から、「連盟に断りを入れたんですか」と、抗議?のコメントが来たものだ。そのたびに私は当該記事を非公開にし、連盟に問い合わせをしたものだ。しかし1回も、返事は来なかった。
そんなわけだから、私はほかの将棋ファン以上に、棋戦別のガイドラインを欲しているのである。
ちょっと話が脱線したが、棋聖戦のガイドラインに話を戻すと、末尾に「ツイッターで指し手をつぶやくのも、棋譜利用にあたる」とあり、これがいま現在、物議を醸しているのだ。
対局中継を見ていて、指し手をつぶやきながらワイワイやるのがネットの醍醐味だと思うのだが、将棋連盟と主催者は、それを禁止したわけだ。
すごいよね。例えばプロ野球を見ていて、数々のプレーでつぶやきたくなるのは人情だろう。それを禁止しろ、と言っているようなものである。
将棋においては、「指し手」が「プレー」にあたる。この感想すら、リアルタイムでは発言できないのか。
たとえば「▲4三銀にはシビレタ」とつぶやいたとして、それが棋聖戦の指し手であると、誰が証明できる? 第三者の将棋を偶然、同時刻につぶやいただけかもしれないじゃないか。
たとえばいま、棋士の大半はツイッターをやっていると思う。棋士も指し手をつぶやいてはいけないのだろうか。いや、棋士は主催者側だからいいのか。でも、棋士がハンドルネームでつぶやいた場合はどうなのだろう。……そのアドレスは将棋連盟が管理しているから、問題ないのだろうか。
それと、私はここまで「棋聖戦」とふつうに書いてきたが、これも「ヒューリック杯棋聖戦」と書かなければいけないらしい。
これは、私がプロ野球のオールスターゲームを語るとき、「サンヨーオールスターゲーム」と書かなければいけない、と言っているようなものであろう。
なんだか面倒くさいことになった。私がこれを無視して「棋聖戦」と書いたら、棋譜警察から「ヒューリック杯棋聖戦と書いてください」と、イヤミなコメントが来るのだろうか。
あーあ、住みにくい世の中になった。
とりあえずあすは一日、黙っています。
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人間の構想

2021-05-15 02:07:27 | 将棋雑考
現在読売新聞の竜王戦観戦記は、ランキング戦2組準決勝・▲藤井聡太二冠VS△松尾歩八段の一戦を掲載している。14日の第6譜では、例の「▲4一銀」が飛び出した。
観戦記を読むと、この将棋は松尾八段が過去の実戦とAIでの研究をミックスして、藤井二冠にぶつけた。厳密にはわずかに疑問の構想だったのだが、松尾八段は自身の考えやすい局面になることから、あえて採用したという。
対して藤井二冠はその将棋を研究していなかったものの、ほぼ最善手でついていき、松尾八段をラクにさせない。
手順中▲3六飛と銀を取る手が最善だったのだが、藤井二冠はその銀を取らず▲3四飛と浮いた。ここでわずかに松尾八段に形勢が傾いたのだが、逆に松尾八段の意表を衝くことになり、なんと137分の大長考となる。
最善手▲3六飛をなぜ藤井二冠が指さなかったのか、またその先の変化はどうなのか、観戦記には書いてないのでもどかしいが、それはともかく、これが人間同士の戦いである。つまり、疑問の構想と承知の上、その作戦を選んだ松尾八段。そして、誰でも見える銀を取る手を指さず、あえて飛車を浮いた藤井二冠。まあ藤井二冠は▲3四飛を最善手と読んで指したのだろうが、最善手をあえて指さないところに、人間将棋の妙味がある。
大山康晴十五世名人は、「人間は悪手を指す」の信念を持っていた。だから劣勢の終盤では、相手の読みを外すために、あえて疑問手を指すことがあった(という)。それで相手の読みが狂い、却って悪手が出現しやすくなる――。
たとえばABEMAでの評価値を見てみると、終盤で形勢に差がつくと、そこから双方の最善手が続いても、評価値がぐんぐん離れていく。これでは勝てないから、疑問手を指して、評価値を崩してしまう。そのスキに、一瞬の勝機を見つけるのだ。大山十五世名人はこういった指し方が本当にうまかった。
また序盤戦術にしても、大山十五世名人は居飛車の急戦に対して、美濃囲いの銀を4七(6三)に上がてから袖飛車にしていた。これは金銀が離れているうえに玉飛接近の形だから、評価値としてはかなりダウンだろう。
だがその形で大山十五世名人はごちゃごちゃした戦いに持っていき、そこそこ勝利を収めていた。ちょっと松尾八段の思想に似ていないだろうか。
いまはほとんどの棋士がAIを活用しているが、このぶんなら、人間の構想主体の戦いになるに違いないと、私は少し安心したのであった。
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