goo blog サービス終了のお知らせ 

一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

G.W.九州旅行第6日・点と線

2010-05-06 23:53:56 | 旅行記・G.W.編
5日(水)は未明の4時20分ごろ目が覚め、6時ごろに目が覚め、8時過ぎに目が覚め、そこでやっと起床した。前日の就寝が午後10時半だったから、じゅうぶん寝だめをしたことになる。やはり睡眠は体にいちばんよい。
博多どんたくの翌日は1日休みがあり、どうするか毎年悩む。しかしきょう(5日)やることは決まっている。松本清張不朽の名作「点と線」の舞台となった、福岡の近くにある「香椎駅」「西鉄香椎駅」に「表敬訪問」するのだ。
まず西鉄福岡の駅ビルに行って、路線図で西鉄香椎を探す。しかし見つからない。近くにいた駅員さんに聞くと、それならJR博多駅から行けば早いですが…と言う。いや私は小説のように、西鉄香椎からJR(国鉄)香椎駅へ向かいたいのだ。しかしこれが重大な錯覚であることに、私はまだ気づいていなかった。
とにかく西鉄香椎へ行きたいと言うと、地下鉄で貝塚へ行き、そこで乗り換えれば着く、と教えてくれた。
ちょうど9時09分天神発貝塚行きがあり、それに飛び乗る。終着貝塚から2両編成の西鉄電車に乗り換えて、9時32分、発車した。
いよいよ西鉄香椎へ着くと思うと胸が高鳴るが、途中で線路が高架になって、あれっ?となった。高架では往年の雰囲気が消滅してしまうではないか。
40分、西鉄香椎着。改札口で若い駅員に「点と線」にまつわるエピソードを聞くが、構内には何もない、とのことだった。代わって相手をしてくださったのが、香椎生まれと言う駅長さん?で、昭和22年生まれの駅長さんは「点と線」発表当時12、3歳だったという。現在もこの香椎駅を訪ねてくるファンがいるそうで、私の行動が奇行でないことにホッとした。
当時の遺構を聞くと案の定何もないとのことだったが、駅横に1本だけある老木の桜は当時からあったそうで、これが「事件」の生き証人とのことだった。
私はJR(国鉄)香椎駅の方角を聞く。その道を線路沿いに行って左に曲がればすぐだという。そのとき私は錯覚に気がついた。私はいままで、情死した(と思われる)佐山とお時は、西鉄香椎から国鉄香椎へ歩くと思っていた。しかしそれは逆である。ふたりは東京駅から特急あさかぜに乗って国鉄香椎に降りたのだ。だから当時のふたりのルートを辿るならば、JR香椎→西鉄香椎でなければならない。…とここまで書いて、賢明な読者はすでに異を唱えていると思うが、ふたりが情死した(と思われる)のは、厳密にいえば特急あさかぜに乗った数日後である。しかもふたりは西鉄香椎駅を下車していない。私はさまざまな勘違いをしていた。
ということは、私の行動は厳密に言うと、何の意味もなかったのだ。だが何はともあれ、両方の香椎駅に挨拶できて、私は頗る満足だった。
JR香椎駅から西鉄香椎駅に向かう(正しくは「引きかえす」)と、右手に本屋が見えてくる。ちなみに先年放映されたテレビ朝日系スぺシャルドラマ「点と線」では、駅前の八百屋のオヤジに聞き込みをしているが、そこと思しき場所は、パチンコ屋になっていた。
本屋の店内は、硬軟織り交ぜて、ひととおりの本が揃っているという印象だった。アダルト雑誌が充実していて、麻美ゆま表紙の雑誌もある。「国民的AV女優」のコピーが躍っている。麻美ゆまはそんなにスゴイ存在なのかと、思わず雑誌を手に取りたくなったが、ここでそれを買ってカバンを重たくするわけにはいかぬ。
奥の文庫コーナーに行く。やっぱり「点と線」が平積みにされている。松本清張の小説は「点と線」しか買ったことがなく、同じ本を買うのもバカバカしいが、記念に1冊求める。460円。
そのまま西鉄香椎駅を抜け、博多湾の香椎潟へ向かう。当時はなかった高速道路を横断し、15分ほどかかって到着。
佐山とお時の情死現場はすでに埋め立てられていて、面影はまったくなかった。彼方にはマンションが林立し、現代ではとてもとても心中の舞台にはなりえない。
遊歩道の傍らにあるベンチに座って一息つく。きょうもいい天気である。実にのどかだ。右から自転車に乗った3人の父子連れがやってくる。小学生低学年と思しき女の子が、
「やっぱり半袖を着てきてよかったなあ」
とか言っている。私にも子供がいて然るべき年齢だが、どこで歯車が狂ったのか、いい歳をして独り者で、相変わらずバカなことをやっている。激しい自己嫌悪に陥る。
その足で香椎宮に向かう。JR鹿児島本線の踏切のすぐ先に巨大な鳥居がそびえている。参道を少し入った右手にシャレた和食の店があったので、入る。朝は何も食べていないから、お腹がすいた。
本日の日替わりランチは、イカボールの揚げ物に、がんもどきとフキの煮物、セロリの煮物。食後にコーヒーがつく。カウンターの奥を見ると焼酎のボトルキープもやっていて、「黒霧島」の文字が見える。
食後に耳鳴り防止の薬を飲もうとゴソゴソやっていると、ママさんがサッと冷水を出してくれた。こういう配慮がありがたい。
店を出て再び香椎宮へ向かう。途中、また線路を交差する。立派な参道の間に堂々と線路が敷かれているのは珍しい。「ナニコレ珍百景」に投稿したいところである。あとで分かったのだが、これはJR香椎線だった。
香椎宮で、百円のお賽銭、絵馬、ご朱印の三点セットのお参りをする。ご朱印状を書いてくださったおばさまは達筆で、東京から来ました、と言うと、たいそうよろこんでくれた。
香椎駅へ戻る。もうやることがないが、ここまで来たら、松本清張生誕の地、小倉まで足を延ばしてみたい。小倉城のたもとには「松本清張記念館」があり、以前も入ったことがあるのだが、行けば何かがありそうだ。
香椎駅から快速電車に乗る。運よく座れる。昔の特急電車は、いまの快速電車並みのスピードではなかったろうか。
髪の長い、脚の綺麗な女性がナナメ前に座る。もう旅行も6日目だ。私は車窓を見るが、つい彼女の脚に目がいってしまう。駅に着いて、彼女が席を立った。こちらを振り返る。
ああそうか…。そうなのか…。何も見ないほうが良かった。
定刻を3分遅れた午後3時14分、小倉着。駅ビルの6階に「洋麺屋 五右衛門」の文字がある。これは日本レストランシステムの経営だろうか。なんだか懐かしい気分になって、6階へあがる。
「5種類のベーコン・サラミ・ソーセージのピリ辛トマトソース(950円)」をオーダーする。旅先でパスタを食すのは初めてである。たしかにピリ辛で、ボリュームもあり、美味かった。カウンターにあった液状のペッパーを見ると、「輸入元・日本レストランシステム」とある。船戸陽子女流二段なら、このペッパーも大量に振りかけただろう。
店を出ると、ビル2階の広場で、高校生の書道のパフォーマンスがあるという放送が入る。これはちょうどいいタイミングだ。
2階へ下りる。当然ながら、ものすごい人垣だ。福岡県立青豊高校書道部が出演しており、司会進行の女子高生によると、いままで数々の大会で優勝の実績があるという。また今年1月に放送されたNHK「とめはねっ!鈴里高校書道部」には、彼らの作品が「出演」したとのこと。
そんな彼らが、嵐のヒット曲や、ポッキーのCMで流れている音楽などに乗って、数メートル四方の白紙に見事な書を書きあげる。これこそ本当の「点と線」だ。若いっていいなあ、と思う。私が高校生のときは、これほどクラブ活動に打ち込んだろうか。将棋部では、いいことが何もなかった。
書道部の部員にインタビューを受ける。
「素晴らしい書で、感動しました」
と述べる。これは本心である。アンケートも受ける。
「博多どんたくを見たあと1日時間があったので、ふらっと小倉へ来た」
旨を書くと、部員の女の子がいたく感動してくれた。これも何かの巡り合わせであろう。
女子部員3人が、四字熟語を書く。「破顔一笑」「青雲之志」…エッ!? せいうんのこころざし…。
現在LPSAでは、金曜リーグの優勝者には希望女流棋士の直筆扇子、準優勝と3位には、色紙が贈られる。私は前回のリーグ戦で準優勝だったので、中倉宏美女流二段の色紙を所望した。そのときに書かれた揮毫が「青雲の志」だったのである。まさかここで中倉女流二段が出てくるとは…!!
(陽子さんにはラー油をプレゼントするのに、私には何もないんだ…そうなんだ…)
とかいう声が聞こえてくる。
(私は7日夜の金曜サロンの担当なのに…)
あ~、どうしよう。あ~、どうしよう。
1時間のパフォーマンスが終わり、とりあえず清々しい気持ちになった私は、その足で「九州高速鉄道」に乗る。「九州高速鉄道」とはずいぶん大仰な名称だが、モノレールである。しかし今年で創業25年というから、意外に歴史は古い。このモノレールは駅構内に乗り入れており、最初に見たときはビックリした。
このコンコースで数年前、名人戦フェスティバルが行われた。このとき私はたまたま旅行で訪れていたのだが、谷川浩司九段の詰将棋や森信雄七段の次の一手が出題されたりして、たいそうな賑わいだった。しかしその名人戦が数年後、朝日新聞と毎日新聞の共催になるとは夢にも思わなかった。
九州唯一のモノレールには、いつか乗りたいと思っていた。いい機会なので、乗ることにする。乗客は少ないが、運転席後方で前方を見る。静かな走りで、眺めもよい。約19分で、終着・企救丘に到着。
そこから少し歩くと、JR日田彦山線・志位公園駅に接続する。博多までの1,430円は痛いが、周遊券らしきものを持っていないので、仕方がない。
西小倉で鹿児島本線に乗り換える。車内は転換クロスシートの2人掛けだが、どこもひとりだけ座っている。
ドア付近にいると、すぐ前に座っていた妙齢の女性の隣りに、白髪のオッサンが座った。私のアンテナが反応する。ふつう男性は、男性の席の横に座るものだ。然るにこのオッサンは、ほかに空席がいくらでもあるのに、わざわざ女性の横に座った。このオッサンは怪しい。
案の定、オッサンはこっくりと舟を漕ぎつつ、女性のパーソナルスペースを侵略してくる。女性もオッサンを睨みつけるが、オッサンは寝たフリをしているのだろう。
それが数十分続いたころ、前の男性が席を立って下車した。すかさず女性がその席へ「避難」する。さてこのときオッサンはどうしたか。何食わぬ顔で、電車を降りたのである。
ギルティ。
だいたい小倉付近から博多付近へ向かおうとする者が、手ぶらで電車に乗るのがおかしい。東京では埼京線に痴漢が多く出没するが、地方都市の車内でも、こうした人間のクズがいる。
博多で下車し、筑紫口から数分歩いたビジネスホテルに旅装を解く。ここは前日カプセルホテルに泊まったときに、楽天トラベルを通じてネット予約したものだ。無料の朝食がついて3,000円。それに楽天ポイントを500使ったから、支払額は2,500円となる。何と言う安さか。これはホテル収入の貢献のために、何かあと1,000円くらい遣ってあげたいところである。
一息ついたあと、とりあえず最後の晩餐に出る。いままで安い食事ばかりだったから、最後の夜くらい豪勢に行きたい。
筑紫口を出た左側に食堂街がある。そこを入った左手には、牛丼の吉野家がある。牛鮭定食にも食指が動くが、さすがにパスだろう。蕎麦屋がある。天ぷら蕎麦はリーズナブルな値段だ。私は旅行する際、ラーメン、蕎麦、寿司を食すことにしているが、今回の旅行ではまだラーメンしか達成していない。
寿司屋があった。にぎり各種の値段が示されている。私は店頭に食べ物の値段を表示している店を優先的に入ることにしている。蕎麦にも後ろ髪を引かれるが、前日うどん定食を食べたので、ここは寿司屋に入る。
博多にぎり(1,600円)を注文する。私も偉くなったものだなあと思う。出されたネタは小さいながら、しっかりと仕事がされていて、美味だった。ただ茶碗蒸しにスが入っていたのが、唯一の瑕だったか。
まだやるべきことがある。コーヒーとケーキセットを食していなかった。大分の美術館では、コーヒーと饅頭だったから、儀式としては不可である。私はコンビニに寄り、缶コーヒーと「しっとり半熟チーズケーキ(220円)」を買う。
ホテルへ戻ったら、私は1,000円を遣う腹づもりだ。しかしその流れで、私の部屋に女性が来ることになろうとは、このときは夢にも思わなかった。
コメント (12)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする