砂楽から指宿方面へ少し戻ったところに、中華料理屋「紅蘭」がある。以前1回入って美味い食事にありつけたのだが、翌年以降は昼の休憩タイムにばかり遭遇し、なかなか入店できなかった。だが今回は夕飯タイムにかかっているから、さすがに大丈夫だろう。
店の前に行くと、ちょうど開店したところだった。あと15分で午後6時だから、けっこうゆっくりである。
揚げ焼きそばパリパリ麺(760円)と黒豚餃子(7ヶ・300円)を注文した。
待っている間、スマホから今夜の宿を予約する。私はスマホのヘビーユーザーではないと思うが、あればあるで重宝だ。ただし、だいぶ眼を悪くした。
ゴールデンウィーク最後の宿は、天文館の「HOTEL&RESIDENCE南洲館」が3,700円と安かったので、こちらにした。ネットでの評価がやたら高く、なかなか泊まれない宿だったということもある。
パリパリ麺と餃子は、これぞ日本の中華料理という感じで、どちらも美味かった。
大いに満足して指宿駅に戻ると、上り18時29分の列車はすでに出ていた。次は19時48分だが、待つよりない。
駅前の広場の足湯では、大学生と思しき女性らがつかっていた。私が20代だったら下心ミエミエでお邪魔するところだが、禿げたオッサンが闖入しても敬遠されるだけである。
私は喫茶店を求めて彷徨う。しかしそれはなく、気が付けば、ひとつ先(上り)の駅の方角に向かっていた。
そこで私は考える。指宿から鹿児島中央までのJR料金は1,000円だった。今夜は中央駅から天文館まで市電を利用する予定だが、市電運賃は一律170円なので、谷山電停から乗っても同じである。調べてみると、指宿-谷山のJR運賃は840円。何と160円も安くなるのだ!
そこで指宿より1つ手前の駅から谷山までの料金を調べると、何と740円だった。
このまま駅でのんびりするより、運動不足の解消も兼ねてぶらぶら歩けば、260円の節約となるのである。これは大きい! 私はそのまま歩いていくことにした。
道路は線路と並行して一本道。このまま国道だか県道だかを歩いていけばよい。
たかが一駅といえども、歩いていけばさまざまな変化がある。美味そうな定食屋があったが、さっきたらふく食べたし、第一時間がない。
弥次ヶ湯温泉、という共同浴場もあった。さすがは温泉王国九州、どこでも沸いているのだ。いつか指宿を見送ってこの温泉にも入ってみたいものだが、そんな日が来るかどうか…。
簡易郵便局もあった。指宿からいくらも離れていないのに、もう「簡易」になってしまうのか…。
辺りがにぎやかになってきた。私は通行人に道を聞く。
もう駅は近くで、その先を左折すると踏切が見えるから、そこを渡っていくのがいい、と教えてくれた。
私はその忠告を無視し、踏切手前のあぜ道を進むと、駅舎の入口は向こう側だった。私はその先まで歩き、やっと線路を渡ったが、大きく迂回した形だ。だから通行人が言った通り、最初の踏切を渡らなければいけなかったのだ。
二月田(にがつでん)駅に着いた。辺りは住宅街だからあるいはとも思ったが、やはり無人駅だった。だが駅舎は白一色と瀟洒で、中央の三角屋根の窓にはステンドグラスが嵌まっていた。近隣住人に愛されている駅に思われた。
近くには高校生と思しきグループがおしゃべりをしていた。このあたりは格好のたまり場なのであろう。
中には自動券売機があって、私は感激した。ほかには地元のビデオ映像まで流れていて、表にはジュースの自動販売機も2台あったし、意外に設備は整っている。
初夏の九州だが、さすがに夜の帳は下りている。私はベンチに座ってボーッとする。この時間がなんとも言えずいい。駅に住みついている猫?が私の足元にまとわりついた。
19時51分、列車が入線した。二月田駅舎と猫とは、これでお別れである。
20時39分、谷山着。まさかこの駅に戻ってくるとは思わなかった。私は重吉そば跡を横目に、谷山電停に急ぐ。
谷山電停は1番系統の始発だから、2本が止まっていた。その片方に乗り、タイム32分で朝日通電停下車。
宿にはここから数分とのことだったが、盛大に道に迷った。だが時間はまだあるし、こんな探検もまた楽しい。
やっと南洲館を見つけた。チェックイン時、朝食の有無を聞かれたが、パスしておく。
だが部屋に入って冷静に考えると。明日は朝に余裕があるし、ネットでは朝食の評判がよかったことを思い出して、やはりオーダーした(864円)。
その足で夜食を摂りに行く。天文館といえば、牛丼は「すき家」である。いつもの店舗に入って、並盛を味わう。今年も天文館で牛丼が食べられ、うれしい。だが来年は食べられるかどうか分からない。実に複雑な味だった。
翌7日(日)。冒頭に述べたが、今日は私のチョンボのせいで、昼過ぎには家に着かなければならない。
宿の食堂に行くと、すでに大勢の宿泊客が朝食を摂っていた。
私は和食をオーダーしていて、ご飯、みそ汁、その他もろもろが出された。だが、何かメインがない、と思ったら、豚の野菜鍋が出てきてビックリした。
いやずいぶん豪勢で、なるほどこのメニューなら評判がよくなるわけだ。
私は全部平らげると、スタッフさんが、デザートにヨーグルトを勧めてくれた。これは洋食メニューのはずだが、その辺は互換性があるらしい。
こちらも美味しくいただいて、私は大いに満足した。ホテルでは棒アイスのサービスもあったみたいだし、一泊朝食付で4,564円なら、かなりのお値打ちと思った。
ちょっと遅めにチェックアウト。天文館バス停から、鹿児島空港行きのバスが出ている。現在いわさきカードの残りは1,200円。空港までは1,250円だから50円足りない。が、いわさきカードは空港行きの場合、100円割引してくれるのだ。チャージ時に1割得をしているから、二重の割引が受けられるということである。
このサービスが現在も続いていれば1,150円となり、スムーズに乗車できるのだが…。
バスが来た。私がカードをタッチすると、「1150」の数字が出た!
鹿児島空港に着き、手荷物検査場を抜ける。と、小さな自動券売機があり、それが「羽田空港→浜松町→山手線内」で500円という、破格値で売られていた。
これは繁忙期や週末に、羽田空港駅で販売されているものである。最近は買った覚えがないが、この企画切符がまだ売られていて、しかもここ福岡で購入できるとは思わなかった。
最後の最後までトクをして、私は感激を抑えきれない。ああ、今年のゴールデンウィーク旅行は楽しかった。どこに行っても美味い飯が食べられ、ありがたいサービスも受けられて、イベントや観光も見応えがあった。
今年は冒頭から自動車事故を起こし、その直後に会社の廃業が決定した。そしてこれからはその後始末という大仕事が待っている。そして私は就職も決めなければならない。
そんな苦難が渦巻く中、神様はこの5日半だけ、私に幸運と幸福を与えてくれた。
ありがとうありがとう!!
私は澄んだ気持ちで、飛行機に乗った。
(おわり)
店の前に行くと、ちょうど開店したところだった。あと15分で午後6時だから、けっこうゆっくりである。
揚げ焼きそばパリパリ麺(760円)と黒豚餃子(7ヶ・300円)を注文した。
待っている間、スマホから今夜の宿を予約する。私はスマホのヘビーユーザーではないと思うが、あればあるで重宝だ。ただし、だいぶ眼を悪くした。
ゴールデンウィーク最後の宿は、天文館の「HOTEL&RESIDENCE南洲館」が3,700円と安かったので、こちらにした。ネットでの評価がやたら高く、なかなか泊まれない宿だったということもある。
パリパリ麺と餃子は、これぞ日本の中華料理という感じで、どちらも美味かった。
大いに満足して指宿駅に戻ると、上り18時29分の列車はすでに出ていた。次は19時48分だが、待つよりない。
駅前の広場の足湯では、大学生と思しき女性らがつかっていた。私が20代だったら下心ミエミエでお邪魔するところだが、禿げたオッサンが闖入しても敬遠されるだけである。
私は喫茶店を求めて彷徨う。しかしそれはなく、気が付けば、ひとつ先(上り)の駅の方角に向かっていた。
そこで私は考える。指宿から鹿児島中央までのJR料金は1,000円だった。今夜は中央駅から天文館まで市電を利用する予定だが、市電運賃は一律170円なので、谷山電停から乗っても同じである。調べてみると、指宿-谷山のJR運賃は840円。何と160円も安くなるのだ!
そこで指宿より1つ手前の駅から谷山までの料金を調べると、何と740円だった。
このまま駅でのんびりするより、運動不足の解消も兼ねてぶらぶら歩けば、260円の節約となるのである。これは大きい! 私はそのまま歩いていくことにした。
道路は線路と並行して一本道。このまま国道だか県道だかを歩いていけばよい。
たかが一駅といえども、歩いていけばさまざまな変化がある。美味そうな定食屋があったが、さっきたらふく食べたし、第一時間がない。
弥次ヶ湯温泉、という共同浴場もあった。さすがは温泉王国九州、どこでも沸いているのだ。いつか指宿を見送ってこの温泉にも入ってみたいものだが、そんな日が来るかどうか…。
簡易郵便局もあった。指宿からいくらも離れていないのに、もう「簡易」になってしまうのか…。
辺りがにぎやかになってきた。私は通行人に道を聞く。
もう駅は近くで、その先を左折すると踏切が見えるから、そこを渡っていくのがいい、と教えてくれた。
私はその忠告を無視し、踏切手前のあぜ道を進むと、駅舎の入口は向こう側だった。私はその先まで歩き、やっと線路を渡ったが、大きく迂回した形だ。だから通行人が言った通り、最初の踏切を渡らなければいけなかったのだ。
二月田(にがつでん)駅に着いた。辺りは住宅街だからあるいはとも思ったが、やはり無人駅だった。だが駅舎は白一色と瀟洒で、中央の三角屋根の窓にはステンドグラスが嵌まっていた。近隣住人に愛されている駅に思われた。
近くには高校生と思しきグループがおしゃべりをしていた。このあたりは格好のたまり場なのであろう。
中には自動券売機があって、私は感激した。ほかには地元のビデオ映像まで流れていて、表にはジュースの自動販売機も2台あったし、意外に設備は整っている。
初夏の九州だが、さすがに夜の帳は下りている。私はベンチに座ってボーッとする。この時間がなんとも言えずいい。駅に住みついている猫?が私の足元にまとわりついた。
19時51分、列車が入線した。二月田駅舎と猫とは、これでお別れである。
20時39分、谷山着。まさかこの駅に戻ってくるとは思わなかった。私は重吉そば跡を横目に、谷山電停に急ぐ。
谷山電停は1番系統の始発だから、2本が止まっていた。その片方に乗り、タイム32分で朝日通電停下車。
宿にはここから数分とのことだったが、盛大に道に迷った。だが時間はまだあるし、こんな探検もまた楽しい。
やっと南洲館を見つけた。チェックイン時、朝食の有無を聞かれたが、パスしておく。
だが部屋に入って冷静に考えると。明日は朝に余裕があるし、ネットでは朝食の評判がよかったことを思い出して、やはりオーダーした(864円)。
その足で夜食を摂りに行く。天文館といえば、牛丼は「すき家」である。いつもの店舗に入って、並盛を味わう。今年も天文館で牛丼が食べられ、うれしい。だが来年は食べられるかどうか分からない。実に複雑な味だった。
翌7日(日)。冒頭に述べたが、今日は私のチョンボのせいで、昼過ぎには家に着かなければならない。
宿の食堂に行くと、すでに大勢の宿泊客が朝食を摂っていた。
私は和食をオーダーしていて、ご飯、みそ汁、その他もろもろが出された。だが、何かメインがない、と思ったら、豚の野菜鍋が出てきてビックリした。
いやずいぶん豪勢で、なるほどこのメニューなら評判がよくなるわけだ。
私は全部平らげると、スタッフさんが、デザートにヨーグルトを勧めてくれた。これは洋食メニューのはずだが、その辺は互換性があるらしい。
こちらも美味しくいただいて、私は大いに満足した。ホテルでは棒アイスのサービスもあったみたいだし、一泊朝食付で4,564円なら、かなりのお値打ちと思った。
ちょっと遅めにチェックアウト。天文館バス停から、鹿児島空港行きのバスが出ている。現在いわさきカードの残りは1,200円。空港までは1,250円だから50円足りない。が、いわさきカードは空港行きの場合、100円割引してくれるのだ。チャージ時に1割得をしているから、二重の割引が受けられるということである。
このサービスが現在も続いていれば1,150円となり、スムーズに乗車できるのだが…。
バスが来た。私がカードをタッチすると、「1150」の数字が出た!
鹿児島空港に着き、手荷物検査場を抜ける。と、小さな自動券売機があり、それが「羽田空港→浜松町→山手線内」で500円という、破格値で売られていた。
これは繁忙期や週末に、羽田空港駅で販売されているものである。最近は買った覚えがないが、この企画切符がまだ売られていて、しかもここ福岡で購入できるとは思わなかった。
最後の最後までトクをして、私は感激を抑えきれない。ああ、今年のゴールデンウィーク旅行は楽しかった。どこに行っても美味い飯が食べられ、ありがたいサービスも受けられて、イベントや観光も見応えがあった。
今年は冒頭から自動車事故を起こし、その直後に会社の廃業が決定した。そしてこれからはその後始末という大仕事が待っている。そして私は就職も決めなければならない。
そんな苦難が渦巻く中、神様はこの5日半だけ、私に幸運と幸福を与えてくれた。
ありがとうありがとう!!
私は澄んだ気持ちで、飛行機に乗った。
(おわり)