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「甲越軍記」を現代仕様で書いてみた (147) 長尾家 60

2024年07月22日 08時53分13秒 | 甲越軍記
 松本大隅が弾に当たって討死すると、これに代わって色部修理の八百騎が取って返し突き立てれば、これに対して景虎の旗本、鬼小島、荒川、城、甘粕、萬願寺、奈弥、槍先を揃えて無二無三に突き立てる。
色部勢からも玉置備中、水谷郷左衛門、藤三左衛門、富永式部らの勇姿、ここを守らんと火水になって戦う
されど景虎勢の勢いはとどまること知らず、血の浪を飛ばして突きかかれば、色部勢もこらえきれず、富永、藤が討死、玉置、水谷は叶わじと馬を返して逃げるところに、長井上総介が六尺あまりの槍を引っ提げて声をかけて水谷郷左衛門に突きかかる。
これに郷左衛門も答えて馬を返して、ただ一突きにしてくれると槍を合わせる
互いに雷の閃くほどに槍を打ちあえば、長井の槍が松の木に突き刺さり、抜くことならず槍を捨て「いざ組み合わん」と言えば、水谷も剛の者なれば快く承知して槍を投げすてて組み合う
互いに金剛力を出して揉みあううちに、両雄の馬は崖から足を踏み外し、深き谷底へと転がり落ちて両雄共に岩に打ち砕かれて死す

泉澤河内守の勢も、色部勢を助けんと引き返したが、景虎勢の意気はますます盛んになり、その勢い留まるところ知らず、もはや誰も叶わぬことを悟り、府中勢は総崩れとなって我先に峠を転げて逃げる
味方の上に味方の馬が乗りかかり、馬に蹴られて死ぬもの、踏みつぶされるものと峠の細道は人であふれて、しかもここは北国に聞こえたる亀破坂の険、
峠道は人馬で溢れ、意に反して枝道、獣道へと逃げ入る者も少なからず
しかし枝道はやがて険峻な岩峰が海に向かって数千丈も切り落ちるところで突然切れてしまう
そうとは知らず入り込んだ兵は戻ろうとしても、後から続々と逃げ来る味方に押し戻されて崖下へと転がり落ちる
もはや戦で死ぬも、落下して死ぬも同じであれば、ますます府中勢の死傷数知れず。

長尾越前守房景は古豪の強者、こんな状況であっても一向に慌てず、兵をまとめて静々と混乱の周囲に合わせず峠を下って来た
一度は一族ゆえ府中の晴景に味方したものの、晴景の暗愚さは思いのほか重く、自分の戦略のことごとくを取り入れず滅亡の道を歩むに腹を立てた
峠下より、府中への本道から離れ再び南の山中に入り、本貫の上田の庄を目指して帰還する。

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