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「甲越軍記」を現代仕様で書いてみた (148) 長尾家 61

2024年07月23日 08時24分17秒 | 甲越軍記
 そのころ長尾景虎は米山峠の頂、米山寺に追い上がりここで陣を張った
縁側を巡り、金津新兵衛を呼んで其の手を取り
「汝も覚えて居ろう、我七歳の時、父に憎まれ、兄晴景に陥れられ府内を追われ、汝の背におぶさり、この堂にたどり着いたとき、この恨みをいつか晴らそうと、ここを陣所にして敵を討たんと言ったが、果たして今日それが実現した」と言えば
新兵衛も涙をハラハラと流し、「誠に思い出しました、幼き時より戦略戦術を考え賜うこと只の人ではあるまいと思っておりましたが、今日こうして見事に思いを遂げられ、某も今日まで生き延びてこれを見ることが出来たのは限り無き喜びでございます」と喜んだ。
新兵衛は傍らで二人の様子を唖然として見ている宇佐美と本庄に向かい11年前の主従の誓いを話して聞かせれば、二人共舌を巻いて驚く

宇佐美は景虎の本陣から戻り諸将らに「先刻、少しも君の深い心のうちを考えもせず罵ったが新兵衛の話を聞き只今合点がいった」と伝えた
諸将らは口をそろえて「それにしても未だわからぬのは君が坂下まで追い詰めて来ながら急に兵を止めて寝てしまったことであります、あれは如何なことであろうか」と問えば、宇佐美は
「只今に至って推察すれば、峠の高見にある敵の足元から攻めあがれば、頭上から人馬、弓矢にて逆落としに攻められるのは必死、そうなれば今日の戦の裏返しであっただろう、君はこれを最初から推察して敵が峠を半ば下りるまで時を稼いでいたのだ」と言えば、諸将これを納得して景虎の冷静な判断を賞賛して、「この知恵のあることはまさに仏神の化身なり、天晴天下の名将なり、末頼もしや」と大いに喜ぶ。

景虎もここに姿を見せると、本庄美作守が進み出て
「栃尾に敵が攻め寄せた時、君は敵が夜半に去ると言われたが、あれはどうしてわかったのでありましょうや」と問えば
「なあに、敵は大軍で押し寄せて陣を張ったが、寄せ手を見るに軍兵ばかりで小荷駄兵糧の姿は少しも見えなかった、これでは腰兵糧だけの敵は一晩もここにいることはできまいと思ったまでの事である」と答えたので、みなみな景虎の目の付けどころ、戦場の細かな分析に驚きますます景虎が名将であることを認識したのであった。

いよいよ景虎の軍は府中郊外まで迫り、ここに陣を張った
その先には敵方も備えを構えて景虎勢に向かう構えを見せている
景虎勢の先陣、山村若狭守、息の右京亮、大熊備前守、新発田尾張守、同掃部介。
二陣は直江神五郎、竹俣三河守、杉原常陸介、長井善左衛門、柿崎和泉守
これらが潮の湧くがごとく敵陣に向かって攻めかかった。


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