おはようございます。ヒューマン・ギルドの岩井俊憲です。
作家の五木寛之は、100歳の松原泰道師(南無の会会長、龍源寺前住職)との対談の前半で次のような表現を用いました(月刊『致知』2008年4月号)。
私は、法然上人、親鸞聖人、蓮如上人というお3方に非常に関心がありまして。これは私の勝手な思い込みですけれども、法然上人というのは大切なことを易しく教えた方だなという感じがするのです。そして親鸞聖人は法然上人が易しく教えられたことを深く極められ、また蓮如上人はその深いことを広く伝えようとされた。
こういう「易しく」「深く」「広く」という3つの仕事をなさったお3人を大きな関心を持って眺めてきたのです。
私は松原先生のお仕事を遠くから拝見させていただいていて、「易しく」「深く」「広く」の3つの他にもう1つ、「長く」というのをおやりになっているなと敬服しておりました。大事なことをを易しく、易しいことを深く、深いことを広く、そして広いことをずっと長くなさっているのが松原先生の偉大なところだと思っていたのです。
これは、相手の存在を完全に承認し、敬服する勇気づけの言葉です。
まず、前触れとして浄土系の大僧侶である法然上人の「易しく」、親鸞聖人の「深く」、蓮如上人の「広く」を布教の方法として関心を示し、松原泰道師をその3人と肩を並べるように「長く」と紹介しているのです(「100歳ならあたりまえ」と言えそうですが、そうは言いません)。
さらに、松原泰道師が3人の「易しく」「深く」「広く」を体現した上で「長く」まで兼ね備えたような表現を用いているのです。
松原泰道師は、五木寛之の言葉に対して「五木さんにそういう評価をいただいてくれしい限りです」と語り、彼が学生時代薫陶を受けた坪内逍遥の講義に話が及び、以後の対談がスムーズに展開されます。
確かに松原泰道師は、優れた学僧で、『般若心経入門』『仏教入門』『法句経入門』『禅語百選』(すべて祥伝社)の入門書など私も10冊近く彼の本を読んで、五木寛之が勇気づけするに値する要素を持った人であることに賛同します。
それにしても五木寛之は、仏教の理解者で、対談上手であるだけでなく独特の勇気づけを行う人であります。