おはようございます。アドラー心理に基づく勇気づけの研修(外部研修も)とカウンセリングを行う ヒューマン・ギルド の岩井俊憲です。
昨日(2月1日)の午後は、ある大学の社会人向け講座を担当することについて打ち合わせに行ってきました。
7月から9月に向けて担当することになりそうです。
とても楽しみです。
正式契約終了後に公開しますね。
18:00には 梶野 真さん(一般社団法人 日本アドラー心理学協会 理事長、一般社団法人 日本支援助言士協会 理事・講師、ヒューマン・ギルド 特別講師兼アドバイザー、写真中央)にオフィスにお越しいただき、ヒューマン・ギルドの法人事業部長の宮本秀明さん、研修部長の永藤かおるさんと4人でオフィス近くの「ちゃんこのある居酒屋 水町」で会食・懇談を行いました。
さて、ヒューマン・ギルドの2月度のニュースレターにも書いた文章ですが、『人生の<逃げ場>-会社だけの生活に行き詰っている人へ』(上田紀行、朝日新書、760円+税)があまりにもいい本だったので、一部修正してブログでも紹介します。
著者の上田氏は文化人類学者。東京工業大学リベラルアーツセンターで学生たちから一番人気の教授。
私は1980年代にスリランカの「悪魔祓い」で有名になったころから注目し、数年前は『生きる意味』(岩波新書)に深く感動しました。
『人生の<逃げ場>-会社だけの生活に行き詰っている人へ』は、アドラー心理学の思想である「共同体感覚」の「共同体」を問い直すのにうってつけの本です。
「共同体」は社会学でよくいわれる概念で、もともとは血縁・地縁をもとにした「すべての信頼に満ちた親密で水入らずな共同生活」(F.テンニエス、『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト』)です。
上田氏によれば、会社単線社会で生きてきて、会社に共同体の役割を期待していた人は、その会社から外れることが人生の落伍者になることを意味していました。「しかし」として次の文章が続きます。
「会社単線社会はリスクが大きな社会であるにもかかわらず、1990年代半ばぐらいまでは、それなりに機能していました。そこで働く人にとっても、なかなか居心地の良い場所でした。
なぜ機能していたかというと、かつての会社は、単に『会社』であるだけではなくて、私たちが切り捨てていった『共同体』や『宗教』の役割についても担っていたからです」
その役割が崩壊する変わり目がありました。バブルが崩壊してリストラが進められるとともに、成果主義が導入されるころです。さらに、新自由主義的な価値観が日本社会を変質させていったのです。
その後も居場所を失っている人たちに上田氏は「勇気を持って『逃げ場』を確保して欲しい」と訴えます。「逃げ場」というと「敗北」だと感じる人に対して、「逃げ場」を持つことはむしろ自分を活かすための「創造」であり、周囲の人たちとの幸せともつながることだと説きます。
では、どうやって会社単線社会から脱却していけばいいのか? 上田氏は処方箋を提供しています。
「できる人」より、「魅力的な人」になる(第2章)
勇気を持って休む。すると見えてくることがある(第3章)
過去の記憶が、自分を助けてくれることもある(第4章)
子どもが「私」と「社会」をつなげる(第5章)
共同体のしがらみをあえて引き受ける(第6章)
絶対肯定できるものを見つけると、人の心は安定する(第7章)
人生最後の20年を価値のあるものにする(第8章)
そして最後は、世の中がある人を交換可能な存在として扱ったとしても、その人に対して交換不可能な存在として接し続け、その人の持っている固有の喜びや悲しみに寄り添い、決して切り捨てる側には回らないことによって、今の時代の成果重視、効率重視の価値観からの脱却を可能にすると呼びかけて終わります。
この本は「共同体」の現代の意味を問い直し、その中で「勇気づけ」がどういう意味を持つかを考えさせてくれる、アドラー心理学を補完する本だということになります。
強くお勧めする本です。
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