おはようございます。アドラー心理に基づく勇気づけの研修(外部研修も)とカウンセリングを行う ヒューマン・ギルド の岩井俊憲です。
『ヒトは「いじめ」をやめられない』(中野信子、小学館新書、780円+税)をもとにしていじめと共同体の関係を考える第2回目です。
今回は、この本を離れて「共同体」(ゲマインシャフト)とは、そもそもどういうものかを示すことにしましょう。
ドイツの社会学者のF. テンニエスは『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト』(岩波文庫)で次のように書いています。
「実在的有機的な生命体」としての共同体(ゲマインシャフト)は、典型は家族、地域等の「すべての信頼に満ちた親密な水入らずな共同生活」
ここで、「信頼」とか「親密」はよくできますが、「水入らず」とはどういうことでしょうか?
研修中にさまざまな人に尋ねても明快な回答が得られません。
『広辞苑』で調べると、「水入らず」とは「内輪の親しいものばかりで、中に他人を交えないこと」とあります。
ここでの大きなポイントは、「水入らず」を求める共同体には「排他性」が存在することです。
『ソーシャルエコノミー 和をしかける経済』(阿久津 聡・谷内 宏行他著、翔泳社)では、F.テンニエスの『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト』を参考にしながら共同体が有する特質が都市と比較して次のようにまとめられています。
人の動き・・・・固定的
人間関係・・・・血縁・知り合い
参加・不参加・・・・初めから決められている
優先順位・・・・個より「集団」
長所・・・・安心・一体感・絆
短所・・・・しがらみ・閉塞感
特に注目したいのは、短所と長所です。
「安心・一体感・絆」の長所を有する一方で、「しがらみ・閉塞感」の短所も併せ持つのです。
ということは、固定的な共同体の中で構成員の「安心・一体感・絆」を侵すように感じさせる異質な存在を排除しようとする心理が働き、それがいじめを引き起こすことになると、私は考えるのですが、いかがでしょうか?
<お目休めコーナー>5月の花(31)
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