見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

ダンスのレッスン・鍋島家の華/泉屋博古館分館

2007-02-14 21:55:42 | 行ったもの(美術館・見仏)
○泉屋博古館分館 企画展『大名から侯爵へ-鍋島家の華-』

http://www.sen-oku.or.jp/

 旧佐賀藩主・鍋島家伝来の装束や調度品を公開する展覧会である。私は佐賀には縁もゆかりもないが、鍋島家はヒイキなのだ。焼きもの好きなら当然のこと。有田・伊万里の窯業を保護育成してくれた恩人だから。「鍋島」様式は、高級すぎて手が出せないけど。最後の藩主にして、のちの侯爵・鍋島直大氏にも親しみがある。娘の梨本宮伊都子さんもヘンなもの集めていて面白いし。

 実は、直前に読んでいた前田愛さんの『幻景の明治』収「三島通庸と鹿鳴館時代」に、明治17年10月から、鍋島侯を幹事長とする舞踏の練習会が日曜日ごとに開かれることになった、という記述を見たのである。そうして促成栽培された踊るマネキン人形たちによって、翌18年5月には、初の公開舞踏会が開かれた。

 いやご苦労なことである。そう思ったら、上記のサイトに写真の上がっている、見事な夜会服が見たくなって出かけた。残念ながら、写真の夜会服は2/14から登場ということで見られなかった。その代わり、男性用と女性用、一対の舞踏会服があって、しかもこれが、明治20年4月20日、首相官邸の仮装舞踏会で、鍋島侯爵夫妻の着用したものだという。ちゃんと写真まで添えてある。なんと、前田愛さんの本にいう「百鬼夜行の狂宴」に着用された衣装が残っているとは!

 男性用は、長めの上着に半ズボン(だったと思う。記憶で書いている)。銀白色のカツラつき。なんというか、モーツァルトの時代ふうの礼服である。女性用も、やや短めのふわりとしたスカート。コシ・ファン・トゥッテふう。そうか、あれは「仮装」だったのか。確かに、てろりとした安っぽい生地。いまなら、素人劇団だって、こんな安物は使わないだろう、という衣装だった。

 その一方、江戸時代の装束は、どれも堅実な美しさを持っている。刺繍で埋めた女性ものの打掛や小袿(こうちぎ)もいいけど、連続文様を織り出しただけの、男性用の直衣や狩衣も、品があっていい。蒔絵の文箱や煙草盆など、調度品類もどれも趣味がいいだけに、仮装服の安っぽさは、悪夢のような気がする。嗚呼。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする