見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

岩佐又兵衛と17世紀の風俗画/MOA美術館

2007-02-18 22:55:24 | 行ったもの(美術館・見仏)
○MOA美術館『所蔵名品展-国宝紅白梅図屏風-』

http://www.moaart.or.jp/

 熱海のMOA美術館では、毎年、この時期に光琳の国宝『紅白梅図屏風』を展示する。考えてみると、見に行ったのはずいぶん昔のことなので、今年あたり、久しぶりに行ってみたいな、と思っていた。

 他にどんな作品が出るのだろう、と思って、上記のサイトをチェックしてみたら、うわ!!私の好きな岩佐又兵衛の『山中常盤物語絵巻』『浄瑠璃物語絵巻』『堀江物語絵巻』が、一挙に見られるではないか。これは行かねば、と即断即決。『紅白梅図』は、すっかり頭の隅に追いやられた感じで、わくわくしながら出かけた。

 伝・岩佐又兵衛筆絵巻は、最初の展示室で待っていた。確かに3作品。ただし、それぞれ70~80センチ(1場面)しか開いていない。けち~。まあ、仕方ないか。『山中常盤』は、野盗が常盤御前の着物を剥ぎ取る場面である。大和絵であるから、人物や建物の輪郭は当然、墨で描かれているのだが、着物の輪郭やひだを見ると、墨の線の内側に金色の細い線が入っていて、これが人物を華やかに際立たせているようだ。解説プレートによれば、江戸時代初期、前代に盛んであった操り浄瑠璃を絵巻物語化することが、諸大名間で流行したのだそうだ。ふうーん。浄瑠璃の流行と絵巻の盛行は同時ではなくて、少し時間差があるのか。

 『浄瑠璃物語』は、御曹司(義経)が浄瑠璃姫の寝所に忍び込む場面。部屋の柱にくるくると巻きつけられた文錦(あやにしき)。幾重にも引き回された屏風。部屋を埋め尽くす富の表象(書物、掛け軸、陶磁器→青磁、華南三彩の緑釉モノあり)。過剰なまでにデコラティブで、眩暈がしそうに思ったのは、原本が少し波打っていて、直線が直線に見えないせいもある。それにしても、姫君のほつれ毛の繊細なしどけなさ。

 一転、『堀江物語』は、秋霧(?)たなびく枯れ野に身を潜めた大軍勢を描く。色彩の少ない白っぽい風景と、色とりどりの武具甲冑の対比が、西陣織か何かのようだ。画面左端にたたずむ地味な頭巾姿の男は何者? 『浄瑠璃』と『堀江』は、描写がやや類型的なので、又兵衛個人というより、工房の作品か、と言われているそうだ。でも魅力的である。

 同室には、江戸初期(17世紀)の絵画が多数展示されていた。私はこの時期の風俗画がとても好きだ。江戸盛期の絵画とはずいぶん違う。まだ本格的な「近世(モダン)」が到来していないため、描かれているのが、人間(近代人)とも人間でないともつかないところがある。西洋絵画でいうと(不案内だけど)北欧ルネサンスに通じるように思う。じっと身を縮めたような生硬なポーズにもかかわらず、控えめな人間の息づかいが伝わってくるのだ。

 伝・雲谷等顔の『花見鷹狩図屏風』はいいなあ。花見図では、思い思いのファッションで花の下に繰り出した女性たちが、愛らしい雛人形のように小さく描かれている。リボンのような細い帯、パッチワークのようなあでやかな着物。頭巾で覆面したり、麦わら帽子のような笠を被ったり。西洋のカーニバルのようだ。画面の左端では、駕籠掻き人足のむさくるしい男たちが休んでいる。月代を剃っていないのが面白い。

 長くなってしまったので、以下、明日に続く。
コメント (5)
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