○九州国立博物館 平常展示(文化交流展)
http://www.kyuhaku.jp/
2005年10月に開館した九州国立博物館を初めて訪ねた。福岡には、2004年7月に来ていて、そのとき、大宰府の九州歴史資料館に寄った。同館内に、建築中の新・国立博物館の写真(高空から全景を撮影したもの)が飾られていて、うねる大波のようなガラス張りの威容が、何年経っても強い印象に残っていた。
だから今回、太宰府天満宮の脇から専用エスカレーターで峠を越え、九博の建てものが目の前に現れたときも、初めてなのに懐かしさを感じた。写真のとおり、巨大なガラスの壁面に映った山なみが、周囲の稜線につながって、一瞬、「だまし絵」のように見えるのが面白い。
3階の特別展示室は休室中だったので、4階の平常展示室(文化交流展示室)へ。中に入ると、とりあえず暗い。スポットライトの当たった展示ケースが島のように点在している。中央の大ホールは、曖昧にいくつかのセクションに区切られているようだが、各セクションのテーマを示す看板も、闇の中に遠慮がちに浮かんでいるだけ。最近よくある、固定的な順路を示さず「お好きなように回ってください」というタイプの展示室だ。私は上海博物館を思い出した。そういえば、ガラス張りの外観は天津博物館(高松伸設計→写真)に似ているかもしれない。
さすが九州、と思ったのは、考古遺物の面白いものが多いこと。弥生時代の「机」には感激したなあ! 杉板でできた文机で、近世・近代のものと全く変わらない形をしている。福岡市出土。ほかに、半島文化の強い影響を感じさせる金属製の馬具とか、埴輪とか。大きな船の埴輪には驚嘆したが、よく見たら「三重県松阪市出土」とあって、それもまた興味深く思った。
この博物館ができたら、周囲の博物館(九州歴史資料館)や寺院の文物は、全て集められてしまうのだろうか?と思っていたが、そうはならなかったらしい。観世音寺からは、仏像(塑造)の心木(顔の部分、かなり巨大)と、金箔を貼った平安の木造仏(釈迦立像か?)が出品されている。後者は、なかなか端正な名品である。だが、観世音寺の”お宝”巨大な馬頭観世音と不空羂索観音そのほかは、現地に残されたらしい。ちょっとホッとした。
この博物館、よく見ていくと、他館からの借出品(寄託?)が非常に多い。兄弟館の東博、京博だけでなく、大阪東洋陶磁美術館、町田市立博物館、中近東文化センター、京大人文研など、実にさまざまなところからいろいろなものを借りている。広開土王碑の拓本が、埼玉県の「高麗神社蔵」というのも不思議だなあ。国内だけでなく、おとなり、韓国の慶州博物館や国立中央博物館からもずいぶん借りている。九州という立地を考えれば、こういう交流は好ましいことだと思う。
ほか、興味深かったのは、高島海底遺跡(長崎県沖)で引き上げられたという元の軍船の遺物。1281年、第二次元寇のもの。大砲の弾や兜が痕跡をとどめている。韓国国立中央博物館の新安船遺物と見比べるのも興味深い。それから、対馬宋氏が日本と朝鮮の国交を円滑に保つため、偽造した木印。これ、大好きなのである。偽造印が重要文化財なのだから。何度か東京などで見ているが、ここに来ると常設で見られるのだな。
また、遣唐使船の船倉を復元したコーナーがあって、それらしく、織物、仏典、什器、香辛料などが積み上がっている。部屋の狭いところがリアル。香料の匂いを嗅いだり、復元品に「触れる」のが楽しい。でも、この部屋くらい写真撮らせてほしかったのに「駄目です」と言われてしまった。再考していただけないものだろうか。
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2005年10月に開館した九州国立博物館を初めて訪ねた。福岡には、2004年7月に来ていて、そのとき、大宰府の九州歴史資料館に寄った。同館内に、建築中の新・国立博物館の写真(高空から全景を撮影したもの)が飾られていて、うねる大波のようなガラス張りの威容が、何年経っても強い印象に残っていた。
だから今回、太宰府天満宮の脇から専用エスカレーターで峠を越え、九博の建てものが目の前に現れたときも、初めてなのに懐かしさを感じた。写真のとおり、巨大なガラスの壁面に映った山なみが、周囲の稜線につながって、一瞬、「だまし絵」のように見えるのが面白い。
3階の特別展示室は休室中だったので、4階の平常展示室(文化交流展示室)へ。中に入ると、とりあえず暗い。スポットライトの当たった展示ケースが島のように点在している。中央の大ホールは、曖昧にいくつかのセクションに区切られているようだが、各セクションのテーマを示す看板も、闇の中に遠慮がちに浮かんでいるだけ。最近よくある、固定的な順路を示さず「お好きなように回ってください」というタイプの展示室だ。私は上海博物館を思い出した。そういえば、ガラス張りの外観は天津博物館(高松伸設計→写真)に似ているかもしれない。
さすが九州、と思ったのは、考古遺物の面白いものが多いこと。弥生時代の「机」には感激したなあ! 杉板でできた文机で、近世・近代のものと全く変わらない形をしている。福岡市出土。ほかに、半島文化の強い影響を感じさせる金属製の馬具とか、埴輪とか。大きな船の埴輪には驚嘆したが、よく見たら「三重県松阪市出土」とあって、それもまた興味深く思った。
この博物館ができたら、周囲の博物館(九州歴史資料館)や寺院の文物は、全て集められてしまうのだろうか?と思っていたが、そうはならなかったらしい。観世音寺からは、仏像(塑造)の心木(顔の部分、かなり巨大)と、金箔を貼った平安の木造仏(釈迦立像か?)が出品されている。後者は、なかなか端正な名品である。だが、観世音寺の”お宝”巨大な馬頭観世音と不空羂索観音そのほかは、現地に残されたらしい。ちょっとホッとした。
この博物館、よく見ていくと、他館からの借出品(寄託?)が非常に多い。兄弟館の東博、京博だけでなく、大阪東洋陶磁美術館、町田市立博物館、中近東文化センター、京大人文研など、実にさまざまなところからいろいろなものを借りている。広開土王碑の拓本が、埼玉県の「高麗神社蔵」というのも不思議だなあ。国内だけでなく、おとなり、韓国の慶州博物館や国立中央博物館からもずいぶん借りている。九州という立地を考えれば、こういう交流は好ましいことだと思う。
ほか、興味深かったのは、高島海底遺跡(長崎県沖)で引き上げられたという元の軍船の遺物。1281年、第二次元寇のもの。大砲の弾や兜が痕跡をとどめている。韓国国立中央博物館の新安船遺物と見比べるのも興味深い。それから、対馬宋氏が日本と朝鮮の国交を円滑に保つため、偽造した木印。これ、大好きなのである。偽造印が重要文化財なのだから。何度か東京などで見ているが、ここに来ると常設で見られるのだな。
また、遣唐使船の船倉を復元したコーナーがあって、それらしく、織物、仏典、什器、香辛料などが積み上がっている。部屋の狭いところがリアル。香料の匂いを嗅いだり、復元品に「触れる」のが楽しい。でも、この部屋くらい写真撮らせてほしかったのに「駄目です」と言われてしまった。再考していただけないものだろうか。