見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

村落のアーカイブズ/八瀬童子(京都文化博物館)

2013-01-19 22:43:38 | 行ったもの(美術館・見仏)
京都文化博物館 企画展『重要文化財指定記念 八瀬童子-天皇と里人-』(2012年12月15日~2013年1月14日)

 新春の関西旅行(名古屋→大阪→京都→名古屋)で見てきたもの、取り急ぎ。京都で何を見ておくべきか、いろいろチェックしていたら、この展覧会を見つけた。公式ホームページのトップに『明治天皇大喪奉舁参観図』(大喪の輿をかつぐ八瀬童子たち)の古写真が使われていたのを見て、これは行ってみなくては、と思い立った。

 関東の人間である私が「八瀬童子」の存在を知ったのは、1986年に刊行された猪瀬直樹の『ミカドの肖像』だった。やがて、昭和天皇の御不予が伝えられ始めると、当時の友人と「八瀬童子の登場はあるのか?」と、興味津々、語り合った記憶がある。なので、2010年4月、東博恒例の特集陳列『新指定国宝・重要文化財(平成22年度)』で「八瀬童子関係資料」が国の重要文化財に指定されたと知ったときは感慨深かった。

 今回は、その「八瀬童子関係資料」の中から約70点の資料を展示。会場に入って、予想よりずっと人が多いことに、びっくりした。さすが京都人は、地元の歴史に関心が高いんだな。

 冒頭、中世以来の歴代天皇が発した「綸旨」がずらりと並んでいて壮観。地租課役の永代免除にかかわる大事な文書であるのだが、有名寺院でも公家・武家の名家でもなく、ただの村落共同体に、これだけの文書が保存されているって…やっぱり驚くべきことだと思う。そして、地租課役の免除は、中世以来、漫然と認められてきたわけではなく、時には隣接する延暦寺と、境界をめぐる争いがあり、村民は生活権をかけた「異議申し立て」を行い、訴えを受けた朝廷や幕府も、適切な調停策を示して、解決を図ってきた。権利というのは、こういう不断の努力によってしか、守られないものなのだ…ということを感ずることができる。

 仏像も数体。木造十一面観音立像(平安時代)は、東博でも見たような気がするのだが、私の記憶違いかもしれない。身長に比して両腕が長い、古風なプロポーションである。

 中世の村落共同体の様子を伝える資料が多くて、近代の資料はあまりなかったが、明治新政府に出仕して、宮内省の職員となった者の名簿や、大正天皇の大喪に際して、支給された装束などは面白かった。最後は、八瀬の伝統行事、赦免地踊り(しゃめんちおどり)の紹介。この華やかな祭礼も、延暦寺との境界争いで、八瀬村に有利な裁定を下した老中秋元但馬守の遺徳を偲ぶお祭りだと知って、いよいよ興味を増した。一見、中華文化圏のランタン祭りみたいだが、女装した少年が燈籠を頭にのせて練り歩くというのを見てみたい。10月第二日曜日か…行けるかな。

 同時開催の『池大雅-胸中の山水-』(2012年12月6日~2013年1月27日)もサッと見ていく。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする