見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

ご先祖さまから/日本の神様大集合(徳川美術館)

2013-01-15 23:19:11 | 行ったもの(美術館・見仏)
徳川美術館 企画展示『日本の神様大集合-徳川美術館へ初詣-』(2013年1月4日~2月3日)+蓬左文庫 『大名と鷹狩 一富士・二鷹・三茄子』『名古屋城下図』(2013年1月4日~2月11日)

 徳川美術館へは、名古屋開府400年の2010年秋に来て以来になる。観光ルートバス「メーグル」を初めて利用。やや遠回りだけど、美術館の前まで連れていってくれるのはありがたい。常設展示では、第1室(武具・刀剣)、源平の昔を思わせるような古様な箙(えびら)や重籐の弓に目が留まる。実は18世紀(江戸時代)の倣古品である。こういうのが、現代人の歴史認識をややこしくしているんだよな…と思う。第2室(茶の湯)では、梅花天目、珠光青磁(銘・翁)、黒楽茶碗(銘・横槌)。どれも小ぶりで、仰々しくないところがよい。伊賀焼の水指の説明に「へうげものが好まれた時代の作品らしく…」と書いてあったのに、にやりとしてしまった。

 第5室(奥道具)の参考作品、楊州周延の浮世絵『千代田之大奥』(明治27-29年)もチェック。解説によれば、江戸時代は大奥のことを話したり描いたりすることは禁じられていたので、明治中頃になって、ようやくこうした浮世絵が登場するという。われわれの歴史認識の作られかたには、いろいろと慎重な検証が必要であると思う。

 参観ルートに従い、隣接する蓬左文庫に入る。『大名と鷹狩』は面白かった。鷹に関する資料だけで、こんなに集まるものか。鷹の姿、飼育法、道具、儀礼と法度など。鷹狩といえば、徳川将軍をはじめ、近世大名が愛好したイメージがあるが(領地の視察や世情観察の意味もあったらしい)、古墳時代にも鷹匠埴輪(→これですけどw)があり、平安時代には天皇や公家の好む狩猟として発達したという。『春日権現験記絵巻』(模本展示あり)にも鷹狩の様子が描かれている。ただし、明治時代の絵本『鷹かがみ』に描かれた藤原定家の図について「定家は鷹を愛好し、鷹百首和歌や鷹五百首和歌を詠んだ」という解説はアヤシイ。調べたら、確かに定家には鷹を詠んだ和歌が多いそうだが(意識したことなかったなー)、後世の仮託作品もあるので、要注意である。

 そして、徳川美術館の特別展『日本の神様大集合』へ。始まりが天照大神やイザナギ・イザナミでなく、東照大権現(徳川家康)→八幡大菩薩(武士の信仰を集めた)という登場順なのが、徳川美術館らしくて、なるほどと思った。「尾張徳川家に伝わる様々な神様」では、伊勢・熱田・春日の神様を紹介。伊勢信仰に関係する小さな雨宝童子像(赤栴檀厨子入)がかわいい! なんとなく唐風。

 絵画資料では、ここにも『春日権現験記絵巻』(模本)あり。『年中行事絵巻』(模本・個人蔵)は田楽の図。見物のために、ばらばらと集まってくる人々の散らばり方が幻惑的で、何とも言えない。どこにも中心がなく、余白もない! 展示は江戸時代に作られた白黒の模本だが、原本は江戸初期に焼失してしまったという。惜しいなー。もっと謹厳な宮中行事を描いたもののイメージが強かったが、こんなふうに生き生きと民衆の風俗を描いた巻もあるのか。さすがは、遊びの達人・後白河法皇が作らせた絵巻である。江戸ものだが、原在明筆『岩清水八幡臨時祭礼図巻』は、ためいきの出るような色彩の美しさ。全巻見てみたいたい。

 また、解説を読んで、思わぬ「作者」名に、へえ、と見直した作品もあった。冒頭の徳川家康(東照大権現)像は、尾張家初代・徳川義直(家康の九男)筆。神様になった父親を、どんな気持ちで描いていたのだろう。天海筆「東照大権現」の神号、尾張家2代・光友筆の布袋図、同14代・慶勝筆の福禄寿図などもあった。
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