見もの・読みもの日記

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2013博物館に初もうで+東洋館リニューアル(東京国立博物館)

2013-01-07 23:04:42 | 行ったもの(美術館・見仏)
東京国立博物館の恒例「初もうで」企画は月末までだが、それとは別に2週間限りの新春特別公開(2013年1月2日~1月14日)もあったので、さっそく行ってみた。

■特別1室・2室 特集陳列『博物館に初もうで-巳・蛇・ヘビ』(2013年1月2日~1月27日)

 冒頭の『パリッシー写し 蛇の皿』は、リアルなヘビが皿の上にわだかまったデザインで驚く。ドイツ製。キャプションによれば、明治9年、英国から寄贈されたものというものが、まさか21世紀の巳年の正月に展示されようとは思わなかったろうな…。この「初もうで」企画、始まった当初は、日本美術が中心だったように思うが、今年は地中海出土の蛇形容器(個人蔵)があったり、南アジアのナーガ像があったり、韓国・金庾信墓護石の巳神の拓本があったり、バラエティに富んでいた。東洋館リニューアルを意識したのかも。

■総合文化展(常設展)

 新春特別公開の目玉は、国宝室の『松林図屏風』と第7室(屏風と襖絵)の光琳筆『風神雷神図屏風』だろう。どちらも人が多かった。私は第3室(宮廷の美術)に出ていた神護寺蔵『山水屏風』が嬉しかった。平安時代の大和絵の風情を伝える数少ない遺品といわれているが、実はこれも鎌倉時代(13世紀)の作。平安時代の文物・風俗って、ほんとに伝わってないんだなー。

 「万葉集」の元暦校本(高松宮本、古河本)と各種断簡も面白かった。しかし、平安時代の代表的な古写本を「五大万葉集」と呼ぶのは書道・古美術の用語だな。文学史では聞いたことがない。

 佐竹本三十六歌仙絵巻断簡の『住吉大明神』もよかった。いま別室で特集陳列『松永耳庵の茶道具』(2012年11月27日~2013年2月24日)をやっているが、この断簡も耳庵旧蔵である。王朝の美女や貴公子を描いた他の断簡に比べると、全く見栄えのしない作品で、価格もいちばん安かったらしいが(※逸翁美術館に記録あり)駘蕩として捉まえどころのない感じが、正月に似つかわしい。あと耳庵翁の器の大きさにも合っているように思う。

■東洋館リニューアルオープン

 2009年6月から休館していた東洋館の耐震補強工事が終わって、リニューアルオープンした。入ってすぐ感じたのは「暗くなった」こと。いや、周囲を暗くして作品にスポット照明をあてるほうが見やすいんだけど、個人的に、こういう展示手法を知ったのが、90年代末の上海博物館だったので、以後、こういう展示室に出会うと「上海博物館みたい」と思うようになってしまった。

 その「上海博物館みたい」な展示室で中国の石像彫刻に囲まれていると、自分の居場所をふっと忘れてしまいそうだ。彫刻の細部や銘文が見やすくなったのはとてもありがたい。この日は東魏の『如来三尊立像』背面の結縁者に胡姓が多いことを興味深く眺めた。

 以前は中国彫刻と同居していた(ような気がする)ガンダーラ彫刻は、2階に上がった。西域美術のコーナーには、大谷探検隊の足跡を記した大きな解説パネルが設けられた。西アジア・エジプトの美術があって、中国の陶磁があって…と円環を描くように昇っていく「さざえ堂」スタイルは、基本的に以前のフロア構成と変わっていない。ただ、各フロアの展示ケースが整理されて見晴らしがよくなり、迷宮感覚は薄れたように思う。

 第8室「中国の書画」では『中国書画精華(前期)宋元の山水画と花鳥画』(2013年1月2日~1月27日)を開催中。 一番よく来ていた部屋なので、『雛雀図』も『竹鶏図』も『瀟湘臥遊図巻』もなつかしかった。『瀟湘臥遊図巻』は、乾隆帝愛蔵の四名巻と呼ばれるもの。→他の三作品は『女史箴図巻』(大英博物館)、『蜀川図巻』(フリア美術館)、『九歌図巻』(中国国家博物館)のことらしいので、ここに書きとめておく。

 最上階が朝鮮美術。中国の陶磁は暗い室内+スポット照明だが、朝鮮の陶磁は、比較的明るい室内に置いているのを面白いと思った。作品がいちばん美しく見える環境を追求すると、そうなるのだろうか。エレベータで地下1階に降りると、クメール彫刻、インドの細密画など、東南~南アジアの展示エリアが充実した。東洋館を「アジア・ギャラリー」と呼び始めたのは、改修工事に入る前だったろうか。これで、ようやく「アジア・ギャラリー」の名にふさわしいフロア構成が整ったのではないかと思う。

 館内に設けられたオアシス(教育普及スペース)が、どのくらい受け入れられるかは未知数。また、TOPPANのVR(バーチャル・リアリティ)シアターが有料のミュージアムシアターとしてオープンしたが、今後、500円払っても見たいコンテンツがあるかどうか、様子を見守りたい。
コメント
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