○千葉市美術館 『仏像半島-房総の美しき仏たち-』(2013年4月16日~6月16日)
千葉県≒房総半島の仏像など約100件150体を展示。展示替えがあるので、一度に見られる数はもう少し少ないが、かなり大規模な展示会だ。4月の末に見てきて、ずいぶん経つのだが、記憶にしたがってレポート。
会場に入って、「うわ、広い」というのが第一印象だった。このところ千葉市美術館といえば、若冲、蕭白、英泉など、近世絵画の展覧会で注目を集めていた。会場の作りは、当然、多くの作品を展示する壁を確保するため、迷路のようになる。ところが今回は、ぶち抜きワンフロアの大会場に、いくつかの展示ポイントが「島」のように点在している様子が、入口から見渡せる。テーマカラーは深い青。房総の海(外海)を表しているのかな、と思った。
冒頭には、印旛郡・龍角寺の薬師如来像。結跏趺坐した坐像だが、たぷたぷした衣が、前方に長く垂れ下がっている。肉付きのよい、温和な顔立ちと合わせて、余裕あふれる豊かな印象を与える。白鳳仏はいいなー。これは銅造だが、あとはしばらく木造。千葉市・東光院の兜跋毘沙門天像は、足元を支える地天女が愛らしい。「下総には意外に都ぶりの仏像が多いのに対して、上総には古様で力強い造形が多い」という解説があった。ちなみに房総半島の南部=突端が上総、北部=根元が下総である(子供の頃、よく混乱した)。
南房総市(最南端)・小松寺の秘仏・薬師如来立像には驚いた。前に立っているかぎり、どうということもないのだが、「側面は10数センチしかない」という解説を読んで、え?!と思いながら、回り込んでみると、次第に薄くなる体躯に驚嘆する。正面から見た時の量感を考えると、だまし絵みたいである。同じく南房総市・真野寺の千手観音菩薩立像は「覆面観音」と言われ、素顔の上に菩薩面の覆面をつけている。丑年と午年にご開帳が行われるが、そのときも素顔を拝むことができないという異形の仏像だ。
長南町・東光寺の薬師如来坐像など、いくつか記憶にある仏像も見つけた。たぶん2008年に千葉県立中央博物館で開かれた『房総の仏像・仏画』展で見たのではないかと思う。
後半には「七仏薬師と妙見菩薩」の特集があった。そういえば、千葉氏は妙見信仰と縁が深かったなと思い、妙見菩薩といえば、読売新聞社所蔵の童子形の立像があったな(2009~2010年の『道教の美術』展で見た)と思い出していたら、まさにその像が出ていて、懐かしかった。さらに、ほほう、仏画もあるのか、と思って見ていくと、何やら豪快な迫力のある『十六羅漢図』双幅があり、作者名を見たら狩野一信筆だった(前期4/16-5/19のみ)。成田山新勝寺蔵。これは不意打ちすぎて、言葉を失う。水墨なのに絢爛たる極彩色が見えるような気がした。
※参考:インターネット・ミュージアム『仏像半島-房総の美しき仏たち-』
同展の会場の様子がムービーで紹介されている。「覆面観音」は、よーく見ないと、私が何を言っているか、分からないかもしれない。とってもありがたいサイトなんだけど、千葉市美術館ホームページの「Youtubeで展覧会の紹介ムービーがご覧いただけます」のバナーをクリックすると、以前の『浮世絵師 溪斎英泉』展のムービーが流れるのは、惜しい。惜しすぎる。
なお、美術館の1階では『信仰遺跡写真展』を開催中。県内(市内?)で発掘された小さな神像、仏像や則天文字の記された土器、「佛佛」と墨書(字の練習?)された土器など、これも面白かった。
東京に帰る途中、両国・回向院の『善光寺出開帳』(2013年4月27日~5月19日)に寄った。軽い気持ちだったが、「東日本大震災復興(幸)支援(縁)」を掲げるこのイベントには、震災で被災し、発見・修復された東北の仏像や、陸前高田の被災松材で新刻された仏像が来ていて、ああ「仏像半島」の仏像も、こうした被災・復興・祈りの歳月を重ねて、伝わってきたんだろうなあ、と思ったら、じんわり泣きそうになった。
千葉県≒房総半島の仏像など約100件150体を展示。展示替えがあるので、一度に見られる数はもう少し少ないが、かなり大規模な展示会だ。4月の末に見てきて、ずいぶん経つのだが、記憶にしたがってレポート。
会場に入って、「うわ、広い」というのが第一印象だった。このところ千葉市美術館といえば、若冲、蕭白、英泉など、近世絵画の展覧会で注目を集めていた。会場の作りは、当然、多くの作品を展示する壁を確保するため、迷路のようになる。ところが今回は、ぶち抜きワンフロアの大会場に、いくつかの展示ポイントが「島」のように点在している様子が、入口から見渡せる。テーマカラーは深い青。房総の海(外海)を表しているのかな、と思った。
冒頭には、印旛郡・龍角寺の薬師如来像。結跏趺坐した坐像だが、たぷたぷした衣が、前方に長く垂れ下がっている。肉付きのよい、温和な顔立ちと合わせて、余裕あふれる豊かな印象を与える。白鳳仏はいいなー。これは銅造だが、あとはしばらく木造。千葉市・東光院の兜跋毘沙門天像は、足元を支える地天女が愛らしい。「下総には意外に都ぶりの仏像が多いのに対して、上総には古様で力強い造形が多い」という解説があった。ちなみに房総半島の南部=突端が上総、北部=根元が下総である(子供の頃、よく混乱した)。
南房総市(最南端)・小松寺の秘仏・薬師如来立像には驚いた。前に立っているかぎり、どうということもないのだが、「側面は10数センチしかない」という解説を読んで、え?!と思いながら、回り込んでみると、次第に薄くなる体躯に驚嘆する。正面から見た時の量感を考えると、だまし絵みたいである。同じく南房総市・真野寺の千手観音菩薩立像は「覆面観音」と言われ、素顔の上に菩薩面の覆面をつけている。丑年と午年にご開帳が行われるが、そのときも素顔を拝むことができないという異形の仏像だ。
長南町・東光寺の薬師如来坐像など、いくつか記憶にある仏像も見つけた。たぶん2008年に千葉県立中央博物館で開かれた『房総の仏像・仏画』展で見たのではないかと思う。
後半には「七仏薬師と妙見菩薩」の特集があった。そういえば、千葉氏は妙見信仰と縁が深かったなと思い、妙見菩薩といえば、読売新聞社所蔵の童子形の立像があったな(2009~2010年の『道教の美術』展で見た)と思い出していたら、まさにその像が出ていて、懐かしかった。さらに、ほほう、仏画もあるのか、と思って見ていくと、何やら豪快な迫力のある『十六羅漢図』双幅があり、作者名を見たら狩野一信筆だった(前期4/16-5/19のみ)。成田山新勝寺蔵。これは不意打ちすぎて、言葉を失う。水墨なのに絢爛たる極彩色が見えるような気がした。
※参考:インターネット・ミュージアム『仏像半島-房総の美しき仏たち-』
同展の会場の様子がムービーで紹介されている。「覆面観音」は、よーく見ないと、私が何を言っているか、分からないかもしれない。とってもありがたいサイトなんだけど、千葉市美術館ホームページの「Youtubeで展覧会の紹介ムービーがご覧いただけます」のバナーをクリックすると、以前の『浮世絵師 溪斎英泉』展のムービーが流れるのは、惜しい。惜しすぎる。
なお、美術館の1階では『信仰遺跡写真展』を開催中。県内(市内?)で発掘された小さな神像、仏像や則天文字の記された土器、「佛佛」と墨書(字の練習?)された土器など、これも面白かった。
東京に帰る途中、両国・回向院の『善光寺出開帳』(2013年4月27日~5月19日)に寄った。軽い気持ちだったが、「東日本大震災復興(幸)支援(縁)」を掲げるこのイベントには、震災で被災し、発見・修復された東北の仏像や、陸前高田の被災松材で新刻された仏像が来ていて、ああ「仏像半島」の仏像も、こうした被災・復興・祈りの歳月を重ねて、伝わってきたんだろうなあ、と思ったら、じんわり泣きそうになった。