○『dancyu』2014年6月号「甘い生活。」 プレジデント社 2014.5
食べ歩きを扱った雑誌は、ときどき買うのだが、『dancyu』は買った記憶がない。たぶん「daucyu」=「男子厨房に入る」がコンセプトだと聞いたことがあって、勝手に料理雑誌のカテゴリーに入れていたためだろう。買ってみたら表紙に小さく「食こそエンターテインメント」とあって、「食べる」と「作る」どちらも扱っているようだ。あと、むかしの表紙は料理の写真一本だったのが、最近は、いろいろ工夫を凝らしている。その中でも今回の「丁寧に、一生懸命描きました」的な大きなプリンアラモードのイラストは、これまでにない新機軸である。
小さな文字で添えられた「ケーキと大福、どっちが好き?」の控えめさが気に入った。中をめくってみると、和菓子の美味しいお店と洋菓子の美味しいお店が、どちらも載っているというお得感に、思わず買ってしまった。和菓子は、赤坂「塩野」の練り切り、日本橋「栄太楼」のきんつば、洋菓子は、「ダロワイヨ」のオペラ、「マッターホーン」のダミエなどに唾を飲み込む。でも、泉岳寺「松島屋」の豆大福とか、東京・平井「ワンモア」のホットケーキとか、よく見つけてくるなあ。
房総半島の最南端の館山駅前にある「館山中村屋」のルーツが、新宿中村屋に行きつくというのは初めて知った。もともと中村屋は本郷東大前(どこ?どのへん?)にあったパン屋。新宿に出した支店が、いまの新宿中村屋だという。当時、館山は避暑地として有名で、本郷の常連客も館山に移動してくるので、中村屋も夏の間だけ館山に出店していたという(※館山中村屋のホームページにも説明あり)。そういえば、学生時代の夏目漱石も、夏休みに房州から館山を旅行していたんじゃなかったっけ。行ってみたい。
本書を読んでいて、おや?と思ったのは、知っている名前があちこちのページで目についたこと。名店の名品を紹介する「甘い記憶」で「松島屋」の豆大福について書いているのは檀太郎さんだし、京都(ただし亀岡)「朝日堂」の最中について書いているのは姜尚美さん。というか、エッセイストを人選して、自由にお店を選ばせたから、普通のグルメガイドにないようなラインナップになっているのかな。永江朗さん、木村衣有子さんも登場。しかし、あくまでも「食品」と「写真」が主で、執筆者の名前は小さな活字で添えられているのが、奥ゆかしくてよい。
特集とは別に、平松洋子さんや角田光代さんも連載を持っている。ううむ、贅沢だなあ。美味しいものは、確かに一目見れば(本当は一口食べれば)美味しいと分かるのだが、そこを文筆で楽しむには、シェフやパティシエ並みの熟練が必要なのである。大人仕様の雑誌づくりで感心した。
食べ歩きを扱った雑誌は、ときどき買うのだが、『dancyu』は買った記憶がない。たぶん「daucyu」=「男子厨房に入る」がコンセプトだと聞いたことがあって、勝手に料理雑誌のカテゴリーに入れていたためだろう。買ってみたら表紙に小さく「食こそエンターテインメント」とあって、「食べる」と「作る」どちらも扱っているようだ。あと、むかしの表紙は料理の写真一本だったのが、最近は、いろいろ工夫を凝らしている。その中でも今回の「丁寧に、一生懸命描きました」的な大きなプリンアラモードのイラストは、これまでにない新機軸である。
小さな文字で添えられた「ケーキと大福、どっちが好き?」の控えめさが気に入った。中をめくってみると、和菓子の美味しいお店と洋菓子の美味しいお店が、どちらも載っているというお得感に、思わず買ってしまった。和菓子は、赤坂「塩野」の練り切り、日本橋「栄太楼」のきんつば、洋菓子は、「ダロワイヨ」のオペラ、「マッターホーン」のダミエなどに唾を飲み込む。でも、泉岳寺「松島屋」の豆大福とか、東京・平井「ワンモア」のホットケーキとか、よく見つけてくるなあ。
房総半島の最南端の館山駅前にある「館山中村屋」のルーツが、新宿中村屋に行きつくというのは初めて知った。もともと中村屋は本郷東大前(どこ?どのへん?)にあったパン屋。新宿に出した支店が、いまの新宿中村屋だという。当時、館山は避暑地として有名で、本郷の常連客も館山に移動してくるので、中村屋も夏の間だけ館山に出店していたという(※館山中村屋のホームページにも説明あり)。そういえば、学生時代の夏目漱石も、夏休みに房州から館山を旅行していたんじゃなかったっけ。行ってみたい。
本書を読んでいて、おや?と思ったのは、知っている名前があちこちのページで目についたこと。名店の名品を紹介する「甘い記憶」で「松島屋」の豆大福について書いているのは檀太郎さんだし、京都(ただし亀岡)「朝日堂」の最中について書いているのは姜尚美さん。というか、エッセイストを人選して、自由にお店を選ばせたから、普通のグルメガイドにないようなラインナップになっているのかな。永江朗さん、木村衣有子さんも登場。しかし、あくまでも「食品」と「写真」が主で、執筆者の名前は小さな活字で添えられているのが、奥ゆかしくてよい。
特集とは別に、平松洋子さんや角田光代さんも連載を持っている。ううむ、贅沢だなあ。美味しいものは、確かに一目見れば(本当は一口食べれば)美味しいと分かるのだが、そこを文筆で楽しむには、シェフやパティシエ並みの熟練が必要なのである。大人仕様の雑誌づくりで感心した。