■東京国立博物館・東洋館8室(中国の絵画/中国の書跡)『文人たちの肖像』『漢時代の書』(2014年4月1日~5月11日)
4月28日に特別展『キトラ古墳壁画』を見たレポートは書いたとおりだが、この日は終日、東京国立博物館で過ごした。まず東洋館。
『文人たちの肖像』は、中国絵画の鑑賞者であり、制作者でもあった文人たちが、理想の自己イメージを表現したもの、という説明がついていたが、その中に愛らしい「美人図」も混じっている。ううむ、文人たちが表向きの書斎に掛けたのは隠逸・清雅な文人図や高士図だったのかな。それじゃ「美人図」はどこで楽しんだろう?などと考えてみる。清・王素筆『棚荳閑話図』(19世紀)は、ヘチマ(?)の棚下に椅子を並べて夕涼みする人々の姿を描いていて、久隅守景の『納涼図屏風』を思い出した。上半身裸のおやじは、今の中国の街角でもよく見る。
金箋紙というのだろうか、鈍く輝く扇面にやわらかな色彩で描かれた扇面図がいくつか出ていて、どれも美しかった。同じ扇面でも、日本の、たとえば琳派などとは異なる美意識。でもどちらも捨てがたい。
書は全て拓本。隷書きれいだな~と思って端から見始めたら、新しいもの→古いものを見て行く順路になった。次第に隷書と篆書が入り混じり、特異で奇怪な書体があらわれる。行きついた先にあったのは「開通褒斜道刻石」。8行ずつ2面の拓本に取られている。じっと見ていると、奇怪な文様の中から、見慣れた文字が現れるのが不思議。
■本館 8室・11室 『平成26年 新指定 国宝・重要文化財』(2014年4月22日~5月11日)
前日会った友人から「今年は点数が多い」ことと「いつもの特別1室・2室ではなく、平常陳列の中で展示している」という情報を聞いていなかったら、かなり戸惑ったかもしれない。11室(彫刻)は、京都・蓮華王院(三十三間堂)の千手観音像3体を除き、彫刻・伎楽面など新指定文化財の10件を展示していた。
奈良・当麻寺の木造十一面観音立像は口元の微笑が印象的。頭上面が大きくて、1つ1つに表情がある。髪は肩に垂らす。側面から見たスカート(裳)の細かい立襞が美しかった。滋賀・九品寺(甲賀市?)の木造観音菩薩立像は「近江らしい観音様だな~」と思ってしまった。膝を軽く曲げ、流れるような動きを表現する。丸顔、小柄だが、筒型の冠によって高さが強調されている。大分・羅漢寺の石仏も指定になったらしいが、これは写真パネルだけだった。
14室の特集『舞楽面と行道面』やら、16室から15室に移った記録資料(歴史の記録)やら、18室(めずらしく上村松園筆『焔』公開)やらを覗き、2階の7室(屏風と襖絵)で尾形光琳筆『風神雷神図屏風』を見て、8室へ。新指定の後半はこの部屋。『六百番歌合』(最古写本)『遊仙窟残巻』(最古写本、なぜか天野山金剛寺所蔵)『慈鎮和尚夢想記』『慈鎮和尚伝』など興味深い文献資料が並ぶ中で、やっぱり関心を引いたのは『後白河院庁下文』(永暦元年/1160)。「太宰大弐平朝臣」の文字の下に平清盛が花押を据えている。平頼盛、平時忠の名前も見える。
ほかに、考古資料の「一括」指定や『武雄鍋島家洋学関係資料』一括、北海道の『開拓使文書』や東京の『東京府・東京市行政文書』は、いちおう数量が明示されているとはいえ、一括指定に近く、今年は例年より分量が多いように感じた。急にどうしたんだろう? 正当な理由があるのなら、もちろん喜ぶべきことなんだけど。
とりあえず一休止。
4月28日に特別展『キトラ古墳壁画』を見たレポートは書いたとおりだが、この日は終日、東京国立博物館で過ごした。まず東洋館。
『文人たちの肖像』は、中国絵画の鑑賞者であり、制作者でもあった文人たちが、理想の自己イメージを表現したもの、という説明がついていたが、その中に愛らしい「美人図」も混じっている。ううむ、文人たちが表向きの書斎に掛けたのは隠逸・清雅な文人図や高士図だったのかな。それじゃ「美人図」はどこで楽しんだろう?などと考えてみる。清・王素筆『棚荳閑話図』(19世紀)は、ヘチマ(?)の棚下に椅子を並べて夕涼みする人々の姿を描いていて、久隅守景の『納涼図屏風』を思い出した。上半身裸のおやじは、今の中国の街角でもよく見る。
金箋紙というのだろうか、鈍く輝く扇面にやわらかな色彩で描かれた扇面図がいくつか出ていて、どれも美しかった。同じ扇面でも、日本の、たとえば琳派などとは異なる美意識。でもどちらも捨てがたい。
書は全て拓本。隷書きれいだな~と思って端から見始めたら、新しいもの→古いものを見て行く順路になった。次第に隷書と篆書が入り混じり、特異で奇怪な書体があらわれる。行きついた先にあったのは「開通褒斜道刻石」。8行ずつ2面の拓本に取られている。じっと見ていると、奇怪な文様の中から、見慣れた文字が現れるのが不思議。
■本館 8室・11室 『平成26年 新指定 国宝・重要文化財』(2014年4月22日~5月11日)
前日会った友人から「今年は点数が多い」ことと「いつもの特別1室・2室ではなく、平常陳列の中で展示している」という情報を聞いていなかったら、かなり戸惑ったかもしれない。11室(彫刻)は、京都・蓮華王院(三十三間堂)の千手観音像3体を除き、彫刻・伎楽面など新指定文化財の10件を展示していた。
奈良・当麻寺の木造十一面観音立像は口元の微笑が印象的。頭上面が大きくて、1つ1つに表情がある。髪は肩に垂らす。側面から見たスカート(裳)の細かい立襞が美しかった。滋賀・九品寺(甲賀市?)の木造観音菩薩立像は「近江らしい観音様だな~」と思ってしまった。膝を軽く曲げ、流れるような動きを表現する。丸顔、小柄だが、筒型の冠によって高さが強調されている。大分・羅漢寺の石仏も指定になったらしいが、これは写真パネルだけだった。
14室の特集『舞楽面と行道面』やら、16室から15室に移った記録資料(歴史の記録)やら、18室(めずらしく上村松園筆『焔』公開)やらを覗き、2階の7室(屏風と襖絵)で尾形光琳筆『風神雷神図屏風』を見て、8室へ。新指定の後半はこの部屋。『六百番歌合』(最古写本)『遊仙窟残巻』(最古写本、なぜか天野山金剛寺所蔵)『慈鎮和尚夢想記』『慈鎮和尚伝』など興味深い文献資料が並ぶ中で、やっぱり関心を引いたのは『後白河院庁下文』(永暦元年/1160)。「太宰大弐平朝臣」の文字の下に平清盛が花押を据えている。平頼盛、平時忠の名前も見える。
ほかに、考古資料の「一括」指定や『武雄鍋島家洋学関係資料』一括、北海道の『開拓使文書』や東京の『東京府・東京市行政文書』は、いちおう数量が明示されているとはいえ、一括指定に近く、今年は例年より分量が多いように感じた。急にどうしたんだろう? 正当な理由があるのなら、もちろん喜ぶべきことなんだけど。
とりあえず一休止。