■京都国立博物館 特別展覧会『南山城の古寺巡礼』(2014年4月22日~6月15日)
南山城、すなわちいまの京都府南部、木津川流域の寺院に伝えられた仏像・工芸品・書跡・絵画などを紹介する展覧会。この地域は、交通の便がよくなかったり、拝観に予約が必要な寺院が多いので、なかなか訪ねる機会がないが、けっこう好きだ。
仏像だけかと思っていたので、冒頭に椿井大塚山古墳出土の三角縁神獣鏡(四神四獣鏡)や高麗寺跡出土の瓦など、考古資料が豊富に展示されているのを興味深く眺める。その後は、ひとつずつ寺院を取り上げていく。最初は海住山寺。小柄でシャープな十一面観音立像や四天王像はもちろん来ていらっしゃる。解脱上人貞慶の画像も懐かしく眺める。続いて磨崖仏のある笠置寺。ここは気になりながら、まだ行ったことがない。『笠置寺縁起絵巻』は同寺に伝わる室町時代の絵巻で、見た記憶がない作品だったが、すごく楽しい。1巻ずつ展示替えなんてケチなこと言わないで、全部見せてくれればいいのに。
浄瑠璃寺と岩船寺を経て、順路中央の大展示室に入る。まず南山城の寺院や史跡の写真があって、その中に宇治田原町の信西首塚があったのにはハッとした。ここも行ってみたい。私は孫の貞慶上人の肖像を見ると、信西もこんな顔立ちかなあと考える。あと橘諸兄も、この地域を語るとき、忘れてはならない人物だ。
大展示室には、仏像の名品が集められており、最もよいポジションをもらっているのが寿宝寺の千手観音立像。規格化された多くの脇手が、きれいな円を描いている。脇手以外の六臂、特に腹の前で碗を捧げ持つ二本の腕の曲線も円弧を強調しているようだ。寿宝寺には一度だけ行ったことがあって、三山木の駅から近い便利な場所にあったこと、自然光の下でしばらく拝観させていただいたあと、小さなお堂(収蔵庫)を暗くすると、赤い唇が浮き上がるようで、驚くほど印象が変わったこと(ね、がらりと変わりますでしょ、と案内のおじさんが嬉しそうだった)、ご朱印をお願いしたら、いや書けるかな、と困った顔をしながら書いてくださったことなどを断片的に覚えている。
禅定寺(宇治田原町)というお寺の、文殊菩薩騎獅像、地蔵菩薩踏下像、十一面菩薩立像はどれもよかった。特に文殊菩薩を乗せた、坊主頭みたいな獅子はあまりにも異相。ううむ、このお寺も行ったことがない。神童寺(木津川市)も、古拙でいい仏像があるなあ。いま、場所とアクセスを確認しながら書いている。
蟹満寺の銅像釈迦如来、観音寺(大御堂)の十一面観音立像は、ちょっと期待していたのだが、写真パネルしか来ていなかった。やむなし。最後は酬恩庵一休寺。原在中の絵がこんなに伝わっているとは知らなかった。
■龍谷ミュージアム 『チベットの仏教世界 もうひとつの大谷探検隊』(2014年4月19日~6月8日)
西本願寺の第22代宗主・大谷光端の命を受け、チベットで長期の留学生活を送った青木文教(あおき ぶんきょう、 1886-1956)と多田等観(ただ とうかん、1890-1967)に関する写真・資料、ゆかりの仏像・仏画など展示。見ものは、ダライラマ13世から多田等観に贈られた『釈尊絵伝』25幅だろう。あまりに色彩が鮮やかなので、19-20世紀の作品かと思っていたら、17世紀頃のものだという。チベット仏教美術の年代推定は全然できないな。多田等観の資料は、戦時中、弟が住職をしている寺に疎開させていた関係で、花巻市美術館に伝わっているそうだ。奇縁を感じる。
■大阪歴史博物館 特別展『上方の浮世絵-大坂・京都の粋(すい)と技(わざ)』(2014年4月19日~6月1日)
前日、見損ねた展覧会がどうしても気になるので、もう一回大阪に戻って見て行くことにした。一般に「浮世絵」というと、江戸で活躍した葛飾北斎や歌川広重、東洲斎写楽などが描いた「江戸絵」が想起されるが、これは18世紀末に大坂や京都で生まれた「上方絵」の展覧会。「美人画はあまりなく、作品の多くが役者絵だった」「役者を美化した江戸の作品とは異なり、写実的に描く特徴がある」というのは、展覧会サイトの解説。なるほど。私は、最も「江戸絵」らしい国芳の作品が大々好きであることはひとまず置き、全般的にいうと、当時の美意識で理想化された美女・美男子揃いの「江戸絵」よりも、どこか癖のある上方の役者絵のほうが好きかもしれない、と思った。
古代の難波宮から近代の大大阪まで。駆け足で見た常設展示も面白かった。大阪の歴史、もっと知りたい。
南山城、すなわちいまの京都府南部、木津川流域の寺院に伝えられた仏像・工芸品・書跡・絵画などを紹介する展覧会。この地域は、交通の便がよくなかったり、拝観に予約が必要な寺院が多いので、なかなか訪ねる機会がないが、けっこう好きだ。
仏像だけかと思っていたので、冒頭に椿井大塚山古墳出土の三角縁神獣鏡(四神四獣鏡)や高麗寺跡出土の瓦など、考古資料が豊富に展示されているのを興味深く眺める。その後は、ひとつずつ寺院を取り上げていく。最初は海住山寺。小柄でシャープな十一面観音立像や四天王像はもちろん来ていらっしゃる。解脱上人貞慶の画像も懐かしく眺める。続いて磨崖仏のある笠置寺。ここは気になりながら、まだ行ったことがない。『笠置寺縁起絵巻』は同寺に伝わる室町時代の絵巻で、見た記憶がない作品だったが、すごく楽しい。1巻ずつ展示替えなんてケチなこと言わないで、全部見せてくれればいいのに。
浄瑠璃寺と岩船寺を経て、順路中央の大展示室に入る。まず南山城の寺院や史跡の写真があって、その中に宇治田原町の信西首塚があったのにはハッとした。ここも行ってみたい。私は孫の貞慶上人の肖像を見ると、信西もこんな顔立ちかなあと考える。あと橘諸兄も、この地域を語るとき、忘れてはならない人物だ。
大展示室には、仏像の名品が集められており、最もよいポジションをもらっているのが寿宝寺の千手観音立像。規格化された多くの脇手が、きれいな円を描いている。脇手以外の六臂、特に腹の前で碗を捧げ持つ二本の腕の曲線も円弧を強調しているようだ。寿宝寺には一度だけ行ったことがあって、三山木の駅から近い便利な場所にあったこと、自然光の下でしばらく拝観させていただいたあと、小さなお堂(収蔵庫)を暗くすると、赤い唇が浮き上がるようで、驚くほど印象が変わったこと(ね、がらりと変わりますでしょ、と案内のおじさんが嬉しそうだった)、ご朱印をお願いしたら、いや書けるかな、と困った顔をしながら書いてくださったことなどを断片的に覚えている。
禅定寺(宇治田原町)というお寺の、文殊菩薩騎獅像、地蔵菩薩踏下像、十一面菩薩立像はどれもよかった。特に文殊菩薩を乗せた、坊主頭みたいな獅子はあまりにも異相。ううむ、このお寺も行ったことがない。神童寺(木津川市)も、古拙でいい仏像があるなあ。いま、場所とアクセスを確認しながら書いている。
蟹満寺の銅像釈迦如来、観音寺(大御堂)の十一面観音立像は、ちょっと期待していたのだが、写真パネルしか来ていなかった。やむなし。最後は酬恩庵一休寺。原在中の絵がこんなに伝わっているとは知らなかった。
■龍谷ミュージアム 『チベットの仏教世界 もうひとつの大谷探検隊』(2014年4月19日~6月8日)
西本願寺の第22代宗主・大谷光端の命を受け、チベットで長期の留学生活を送った青木文教(あおき ぶんきょう、 1886-1956)と多田等観(ただ とうかん、1890-1967)に関する写真・資料、ゆかりの仏像・仏画など展示。見ものは、ダライラマ13世から多田等観に贈られた『釈尊絵伝』25幅だろう。あまりに色彩が鮮やかなので、19-20世紀の作品かと思っていたら、17世紀頃のものだという。チベット仏教美術の年代推定は全然できないな。多田等観の資料は、戦時中、弟が住職をしている寺に疎開させていた関係で、花巻市美術館に伝わっているそうだ。奇縁を感じる。
■大阪歴史博物館 特別展『上方の浮世絵-大坂・京都の粋(すい)と技(わざ)』(2014年4月19日~6月1日)
前日、見損ねた展覧会がどうしても気になるので、もう一回大阪に戻って見て行くことにした。一般に「浮世絵」というと、江戸で活躍した葛飾北斎や歌川広重、東洲斎写楽などが描いた「江戸絵」が想起されるが、これは18世紀末に大坂や京都で生まれた「上方絵」の展覧会。「美人画はあまりなく、作品の多くが役者絵だった」「役者を美化した江戸の作品とは異なり、写実的に描く特徴がある」というのは、展覧会サイトの解説。なるほど。私は、最も「江戸絵」らしい国芳の作品が大々好きであることはひとまず置き、全般的にいうと、当時の美意識で理想化された美女・美男子揃いの「江戸絵」よりも、どこか癖のある上方の役者絵のほうが好きかもしれない、と思った。
古代の難波宮から近代の大大阪まで。駆け足で見た常設展示も面白かった。大阪の歴史、もっと知りたい。