■東京国立博物館・本館15室 特集展示『就任100年 帝室博物館総長森鷗外の筆跡』(2018年5月15日~7月8日)
久しぶりに東博の常設展を見に行った。見たかったのはこの特集展示である。森鴎外は大正6年(1917)12月末に帝室博物館総長に就任し、翌7年(1918)1月から本格的に執務を始めた。就任100年を記念して、ここ数年来の調査によって判明した、館蔵資料の各所に残された鴎外の筆跡を紹介する。この展示趣旨を読んで、え?何それwと笑いながら行ったら、ほんとに趣旨のとおりだった。
合議書類の綴りに決裁の書き込みがあるのは分かる。「博物館書目解題」や「博物館蔵書著者略伝」など、未刊に終わった原稿が残されているのも分かる。面白いのはそれ以外に、博物館の蔵書のあちこちに鴎外の自由気ままな書き入れの跡があることだ。自由気ままと言っては失礼で、鴎外は、表題や書目の誤りを見つけると校正せずにはいられなかったようだ。中には、このくらい見逃してもいいじゃん…と思うものもあるのだが、鴎外の几帳面さが感じられて可笑しい。
東博の研究員の方も、よくこんなに見つけたなあと思うのだが、鴎外の文字は味があるというか自己主張があるというか、付き合っていると、だんだん見分けがつくようになってくる。古人に接近するには、著作を読むとか、写真・肖像画を見る方法もあるが、筆跡から入るのも方法の一であると思う。
■本館特別1室 特集展示『ひらがなの美-高野切-』(2018年5月8日~7月1日)
知らずに行ったら、こんな素敵な展示をやっていた。「高野切」は『古今和歌集』を書写した現存最古の写本(平安時代、11世紀中頃)で、一部のみ断簡で伝来する。3人の筆者が分担した寄合書(よりあいがき)の作品で、これを第1種、第2種、第3種と呼び分けており、第2種筆者は源兼行(1023-1074)と推定されている。
展示では、第1種、第2種、第3種を見ることができるのはもちろん、「第1種と同時代」「第2種と同筆」などの分類キャプションつきで、さまざまな筆跡を見ることができる。和漢朗詠集の漢字だけの断簡についても「第〇種と同筆」と分かるのが面白いなあと思った。プロの目から見ると第1種が究極の美品らしいが、私は第3種がわりと好き。現代人の平仮名に近くて、読みやすいのである。タイムマシンがあるなら、ぜひこの第3種の筆者に会ってみたい。東博の前に出光美術館の『歌仙と古筆』に寄って、もう少し古筆が見たいと思っていたので、ちょうどよかった。
久しぶりに東博の常設展を見に行った。見たかったのはこの特集展示である。森鴎外は大正6年(1917)12月末に帝室博物館総長に就任し、翌7年(1918)1月から本格的に執務を始めた。就任100年を記念して、ここ数年来の調査によって判明した、館蔵資料の各所に残された鴎外の筆跡を紹介する。この展示趣旨を読んで、え?何それwと笑いながら行ったら、ほんとに趣旨のとおりだった。
合議書類の綴りに決裁の書き込みがあるのは分かる。「博物館書目解題」や「博物館蔵書著者略伝」など、未刊に終わった原稿が残されているのも分かる。面白いのはそれ以外に、博物館の蔵書のあちこちに鴎外の自由気ままな書き入れの跡があることだ。自由気ままと言っては失礼で、鴎外は、表題や書目の誤りを見つけると校正せずにはいられなかったようだ。中には、このくらい見逃してもいいじゃん…と思うものもあるのだが、鴎外の几帳面さが感じられて可笑しい。
東博の研究員の方も、よくこんなに見つけたなあと思うのだが、鴎外の文字は味があるというか自己主張があるというか、付き合っていると、だんだん見分けがつくようになってくる。古人に接近するには、著作を読むとか、写真・肖像画を見る方法もあるが、筆跡から入るのも方法の一であると思う。
■本館特別1室 特集展示『ひらがなの美-高野切-』(2018年5月8日~7月1日)
知らずに行ったら、こんな素敵な展示をやっていた。「高野切」は『古今和歌集』を書写した現存最古の写本(平安時代、11世紀中頃)で、一部のみ断簡で伝来する。3人の筆者が分担した寄合書(よりあいがき)の作品で、これを第1種、第2種、第3種と呼び分けており、第2種筆者は源兼行(1023-1074)と推定されている。
展示では、第1種、第2種、第3種を見ることができるのはもちろん、「第1種と同時代」「第2種と同筆」などの分類キャプションつきで、さまざまな筆跡を見ることができる。和漢朗詠集の漢字だけの断簡についても「第〇種と同筆」と分かるのが面白いなあと思った。プロの目から見ると第1種が究極の美品らしいが、私は第3種がわりと好き。現代人の平仮名に近くて、読みやすいのである。タイムマシンがあるなら、ぜひこの第3種の筆者に会ってみたい。東博の前に出光美術館の『歌仙と古筆』に寄って、もう少し古筆が見たいと思っていたので、ちょうどよかった。